魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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第九話

新入部員勧誘週間も4日目。

 

初日にはあった、らんちき騒ぎも収まりつつあり、平穏と呼べる日が増えてきた。

校舎内を物見遊山な気持ちでパトロールしていると、

懐の携帯端末が振動する。レシーバーを耳に付けると、

 

『こちら生徒会です。第一武芸場で乱闘騒ぎあり。手の空いている風紀委員は向かって下さい』

「こちら一年、世羅。向かいます」

 

返答をして学生棟から部活棟へ駆け足で向かう。

 

学生棟から部活棟への連絡通路に差し掛かった時だ。

走っている俺の足元に魔法式が展開されるのを知覚した。

その魔法の始点を感じとって、その方向に右手を振り魔法式を破壊する。

 

魔法を発動しようとした誰かさんは、魔法発動がキャンセルされた衝撃でよろめいたが、立て直してその場を駆け去っていった。

その襲撃者の右手には、白に赤と青で縁取りされたリストバンドが見えた。

 

乱闘騒ぎを抑えるため、あえて追わないが、なんか最近増えたよな。こういう妨害。

まぁ、どうとにもなるからいいんだけど、結構な頻度であると鬱陶しい。

そう考えながら、再度、第一武芸場へと足を向けて駆け出した。

 

新入部員勧誘週間の最終日。

最終日は風紀委員の全員が集まり、渡辺先輩による総括が行われて解散となった。

全日程を終えてようやく、風紀委員も一旦のお役御免となった。

 

それが終わり、皆が待っている学校の入り口に達也と一緒に向かっている際にふと気になったので、聞いてみることにした。

 

「達也、ちょっと」

「どうした?」

 

俺は達也を人気のない廊下で引き止めて、周りに人が居ないことを目視で確認する。

 

「やけに周りを気にするな。大事な話か?」

「ああ。渡辺先輩には報告しなかったけど……」

「けど?」

 

俺はさらに達也に近づいて、小声で話す。

 

「勧誘週間の後半の辺りになんか妨害とか無かった?」

「! お前もあったのか?」

「も、って事は達也の方にもあったんだ」

 

達也は俺の方に更に近づき、声を抑えて話す。

 

「ああ。相手は見えたか?」

「いや、離れていたし、失敗したとなると即座に逃げたから見てない」

「……腕は見えたか?」

「見えた。白に赤と青で縁取りされたリストバンドをしてた」

「やはりな。という事は俺と同じシンパだな」

「やっぱりー? ってことはさ、『あそこ』なんだよね?」

「おそらくな」

 

そこで俺は達也から身体を離して、声も普通の大きさに戻した。

達也も声のトーンをいつもと同じ位まで戻した。

 

「だよねー。まぁ、理解ってスッキリしたよ」

「俺もだ」

「ひとまずは、ステイでいい?」

「ああ。それが無難だろう」

「じゃ、帰ろう」

 

そうして、密談は終わり、俺達は皆が待つ校舎入り口へと向かった。

 

本日、生徒会室で昼食をとるのは、深雪、達也、俺。その反対側に、あーちゃん先輩。七草会長、渡辺先輩となっている。

俺も昼食は生徒会室で取ることが通例になっている。

なぜなら、深雪がお弁当を作ってくると言ったあの日から、本当にお弁当を作ってきてくれているからだ。

深雪は生徒会室で昼食を取るので、俺も必然的にそうなった。

が、だ。

深雪が俺の弁当に対する力の入れっぷりが半端ない。

 

明らかに、主食であるご飯もそうだけど、おかずの手の込みようが違う。

それは同じ家から持ってきている達也と比べても、明らかだ。

左手が不自由な俺の介護をして机にお弁当を広げている、楽しそうな深雪に聞いてみた。

 

「なぁ、深雪さんや?」

「はい、なんでしょうか?」

「明らかにお弁当に差があるのはどういった事かな?」

「どう、とは?」

 

お弁当を広げる手を止めて、コテンと首をかしげる深雪。くそっ! 可愛いじゃないか!

 

「いやね。お弁当を作ってくれてることは大変有難いことです」

「いえいえ、好きでやっていることですから!」

「……。だからといってね? 隣の達也くんとのお弁当に差があるなと思いまして。同じので十分なのですよ?」

「俺は別に気にしてないぞ?」

「黙ってね? ……なので本当に気を使わないでね?」

「そんな! せっかくですから栄養を十分に考えた物を、お食べになって頂きたいのです!」

 

だめだ。これ、折れる気配がない。

そうしているうちに俺の前には、立派なお弁当が展開されていた。

 

「どうぞ!」

「……ありがとうございます」

 

るんるんな足取りで自分の席に戻っていく深雪。

これはもう俺が折れるしかない。

さっきまでの会話を聞いていた、七草会長が俺に向かって言ってきた。

 

「それでは、芥くん。挨拶をお願いします」

 

俺は、右手を顔の前に持ってきて、

 

「いただきます」

「「いただきます」」

 

みんな、揃って挨拶し、昼食が開始された。

昼食が進んでいく中、渡辺先輩が話題を切り出した。

 

「達也くん。2年生の壬生を言葉責めにしたというのは本当かい?」

「へー、やるねぇ、達也」

 

それに乗っかる俺。

 

「……誤解ですね。そんな事実はありません」

「そうなのか? 昨日カフェで、壬生と足を突き合わせている姿を見たやつがいてな」

 

俺は期待を込めためで渡辺先輩を見る。

 

「そいつが壬生は恥じらって顔を真っ赤にしていた、と言っていたんだが」

「流石、お兄様」

 

俺は思いっきり達也をからかった。そしたら、テーブルの下から足が飛んできた。痛い。

その後、達也は弁明として壬生先輩と離した内容を再現した。そして、

 

「どうやら、風紀委員は優遇されているように見えるそうです」

 

その言葉で締めくくった。

 

「それは壬生の勘違いだな。風紀委員は名誉職でメリットがない」

 

渡辺先輩はそう返して、七草会長も同感のようだ。

 

「だけど、そういう印象を持たれているもまた事実。正確にはそう見えるように、印象操作している人がいるんだけどね?」

 

しかし、達也はそこから先に踏み込んだ。立ち上がり、七草会長に向かって問いただした。

 

「その操作している連中の事はわかっているんですか?」

「え、ううん。噂の出どころなんてそう簡単に掴めないものだから」

「……突き止められれば楽なんだけどな」

 

七草会長も渡辺先輩も言葉を濁すような返答をする。

しかし、達也は止まらない。

 

「俺が聞いているのは、噂を流している下っ端のことではなく、その背後で操っている連中のことなんですが」

 

その質問に七草会長も渡辺先輩も答えられない。だが、

 

「例えば、『ブランシュ』みたいな組織とか?」

 

俺が最後の追撃を行う。

七草会長と渡辺先輩は驚愕で硬直する。達也は俺の方に視線を移しただけだった。

 

「どうしてその名前を……!?」

「別に秘匿されている情報でもないですし。さっきも言われましたが噂の出どころは解らないものですよ?」

 

俺は続ける。

 

「こういうのは、隠すほうが良くないと思いますが。……あー、会長の事を批判しているのではないですよ?」

 

七草会長を攻めているように感じた俺はフォローを入れる。

 

「ううん、芥くんの言うとおりよ。魔法師を敵対視している団体があるのは事実なのだから。私たちはそれと対峙することから逃げてしまっている」

 

だが、七草会長は真面目に受け取ってしまったようだ。

俺は更にフォローを重ねる。

 

「それは仕方のないことなのでは? 会長の立場では秘密にしておくのも仕方のないことだと思いますよ」

 

優しい口調でいい。七草会長に笑顔を向ける。

 

「そ、そうかしら」

「自分で追い込んで置いて、自分でフォローする。なかなかにジゴロだな。君は」

 

渡辺先輩に冷たい視線を送るが無視された。この人はホントに。

渡辺先輩の言葉をどう受け取ったかは、解らないが焦った様子で立ち上がり渡辺先輩に抗議する。

 

「ちょっと摩利!変なこと言わないで!」

「顔が紅いぞ、真由美」

「摩利!」

 

じゃれ合う、2人を横目に俺は食事の続きをする。

深雪の冷たい視線を受けながら。あと、部屋の温度も下がっている気がする。

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