魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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第十話

生徒会室でブランシュの話題が出て、幾日か過ぎた日。

本日の教習日程が終了し、放課後になったその時だった。

 

各教室のスピーカー、いや学校全てのスピーカーに電源が入った。

そして、そのスピーカーから流れてきたのは、

 

『僕たちは学内の差別撤廃をめざす、有志一同です! 我々は生徒会、部活連に対等な交渉を求めます!』

 

そんな突拍子もない要求だった。

それを教室で聞いていた、俺と達也は目を合わせると、教師を飛び出し放送室へと向かった。

 

放送室前にたどり着くと、既に生徒会の生徒会長を除く生徒会の面々、そして巌の様な体格をした十文字会頭も居た。

もちろん、風紀委員の面々と委員長である渡辺先輩もいる。

 

俺達は渡辺先輩に近づくと、状況を確認した。

 

「電源をカットしたので、これ以上放送はできないだろう。しかし、連中が鍵を掛けて中に入れない」

「外から開けれれないんですか?」

 

達也がもっともな意見を言うが、

 

「奴らマスターキーを使っていてな。外からは開けられない」

 

渡辺先輩の反論に沈黙せざるを得なかった。

そして、扉の前にいる面子の意見も割れていた。

渡辺先輩は風紀委員として迅速に解決すべきだと主張し、

十文字会頭は、彼らとの交渉に応じるという。ここで膿を出し切ったほうが後顧の憂いを立つ。という考えだ。

 

そんな千日手の中、達也は携帯電話を取り出し何処かに通話を開始した。

 

「壬生先輩ですか。……今どちらに。……それは災難ですね」

 

そうして話を進め、こちら側は交渉の準備がある事を告げると、通話を切った。

そして、達也はそこに居並ぶ面々に向かって、

 

「出てくるそうです。なので取り押さえる体制を作りましょう」

「今、君は自由を保証すると言った内容を伝えたようだが?」

「俺が自由を保証したのは、壬生先輩だけです。他は取り押さえるべきでしょう」

 

そう、しれっと言い放った。

 

そして、扉の解錠音がして、放送室の扉が開いた。

開かれた隙間から風紀委員の面々が中に滑り込んでいく。

中からうめき声が聞こえるのは、取り押さえられたからだろう。

 

俺は制圧が終わった放送室にヒョイッと顔だけだして中を見た。

壬生先輩らしき女子生徒は達也が、それ以外の面子は風紀委員の先輩方が取り押さえていた。

 

壬生先輩は達也に食って掛かかっていた。

 

「私たちを騙したのね!」

「俺が自由を保証したのは、壬生先輩だけです」

 

そこに十文字会頭が詰め寄る。

 

「司波はお前を騙してなどいない。お前たちの主張を聞き入れる事と、取った手段を容認するのは別問題だ」

 

そして、更に侵入者が現れる。七草会長だ。

 

「壬生さんを離してあげて。交渉の余裕が無いと、これからの話し合いができないわ」

 

達也は壬生先輩と離すと、七草会長がこちらへ、といって壬生先輩を伴って放送室の外に出た。

交渉の結果、明後日、生徒会と差別撤廃を表明する有志との討論会が開かれる事になった。

 

討論会、当日。

俺は風紀委員として、講堂の舞台袖で待機となった。

風紀委員も各所で待機してる。「何か」が起こった時に即対応するためだ。

 

討論会は終始、七草会長のペースで進んだ。

魔法科の部活予算の高待遇なとを有志は主張したが、それはエビデンスと七草会長の説明で論破された。

それ以後の討論も似たような感じで進んでいった。

 

しかし、七草会長は討論だけでは終わらなかった。

一科生、二科生における精神的差別、それを取り払い真に一つの魔法科高校としてあるべき姿を目指したい、と自分の主張も声高々に発した。

その主張は討論会にいた全員に響き、万雷の拍手と共に討論会は生徒会の圧勝で終わった。

 

そう、討論会「は」終わった。

 

突如、講堂の外で爆発が起きて講堂が揺れる。

それに乗じて幾人かの生徒が動き出そうとした。

達也が素早くそれをキャッチし、渡辺先輩は無線に向かって指示を出す。

 

「委員長!」

「取り押さえろ!」

 

その合図と主に、俺と達也は舞台袖から講堂に出て、この混乱の中、立ち上がっている例のリストバンドをしている生徒を取り押さえた。

各所でも同じような事が起こっているだろう。

 

渡辺先輩の無線に方向が飛んでくる。

 

「……そっちにも侵入者が!?」

 

達也は俺に目配せしてきた。

俺は頷くと取り押さえている生徒の拘束を解いて、達也の横に並ぶ。

達也は渡辺先輩に向かって、言い放つ。

 

「委員長! 俺達は爆発が会った実技棟の方に行きます」

「私もお供します」

 

いつの間にか、俺達の隣に来ていた深雪が同行すると言ってきた。

俺を見た渡辺先輩はシニカルに笑い、

 

「ああ、気をつけろよ!」

「「はい!」」

 

そう返事をして、俺と達也、深雪は講堂から出て、実技棟の方へ駆けていった。

 

実技棟の方は既に乱戦の様相を呈していた。

実技棟へ向かっている俺達の視界にレオが目に入った。

レオは3人を相手に大立ち回りを演じている。

 

そこに深雪が、加重魔法を掛け三人を直上高く吹き飛ばした。

相手3人は受け身もろくに取れず、背中から落ちて行動不能に。

レオは若干、混乱しながらもこちらに近づき状況を把握しようとする。

 

「達也、これはいったい!?」

「レオ! ……っと、援軍が到着していたか」

 

そこにCADを持ったエリカが駆けつけてきた。

俺達は手短に状況を説明する。

 

「テロリスト? じゃあ、問答無用で叩きのめしていいってわけね」

「生徒以外はな、他に侵入者を見なかったか?」

 

そこに以外な闖入者が現れる。

 

「連中の目的は、図書館です。壬生さんもそこにいます」

 

現れたのは、カウンセラーの小野 遥だった。

カウンセラーがこの場に自然といるのが若干、不自然ではあったが。

そして、小野先生は、カウンセラーとして壬生先輩には手心を加えてほしいとも、付け加えてきた。

それを達也が両断する。

 

「甘いですね。……いくぞ」

「おい、達也! ちょっと冷たくねえか?」

「レオ、余計な情で怪我をするのは、自分だけじゃないんだぞ」

 

そう言い放ち、達也は図書館の方に駆け出していった。

俺もその後に続く。他の皆も渋々といった感じで付いてくる。

 

視線の先にある広場では、既に乱戦になっていた。

敵であるテロリストと、在校生が取っ組み合いをしている。

生徒同士の取っ組み合いも見られるため、敵味方の判断が難しい。

 

その判断が面倒くさくなった俺は、達也より前に出て前方に振動系魔法を叩き込んだ。

これは単に空気を振動させただけなので、

それだけで制圧できるものではないが、その振動に驚いて動きを止めるもの。三半規管を揺らさせて膝を付くもの。

その場を膠着状態にするのは覿面だった。

 

前に出ている俺をさらに追い越して、レオが硬化魔法を展開しながら突撃していく。

制服を来ていないテロリストを片っ端から相手している。

俺もレオに続いて、テロリスト達を相手していく。時には物理で、時には魔法で臨機応変に対応していく。

 

その横を駆け抜けていく達也が走りながら

 

「レオ、芥、ここは任せた!」

「おうよ!」

「あいよ!」

 

俺とレオに声を駆け、図書館の方へ向かっていった。

 

しかし、こちらはあまり手間取らなかった。

俺が最初に全体攻撃をしたからか、テロリスト共の足は鈍り、内通している生徒は例のリストバンドをしているので分かりやすかった。

達也たちが図書館に向かって、10分、15分位したときにはもう、その場を鎮圧していた。

俺は無線に向かって渡辺先輩に報告をしていた。そんな俺にレオが近づいてくる。それを目線でレオに待ったを掛ける。

 

「渡辺先輩、こちら世羅です。……はい、実技棟の方は鎮圧できました。……はい、ではこちらで待機します」

「なんだって?」

「こっち側の連中を縛り上げといてくれってさ、レオも手伝ってくれ」

「おうよ」

 

テロリスト共とそれに加担した生徒を俺とレオ、そしてその場で戦ってくれた人達も協力してくれて、この場を治めた。

その後、達也達の方も制圧できたようで、一校を狙ったテロリズムは終結となった。

 

夕方、放課後と言える時間帯に一同は、壬生先輩が休む保健室へと詰めていた。

一同とは、七草会長、渡辺先輩、十文字会頭、レオ、エリカ、達也、俺になる。

 

「洗脳」が解けた、壬生先輩は計画を先導した剣道部主将の話をぽつぽつと始めた。

剣道部主将が、差別を助長し、ブランシュへ勧誘したこと。

一年生の勧誘週間に、渡辺先輩から言われたことを誤解していたこと。

そうして、壬生先輩は自分の感情を全部吐露し、声を抑えて涙を流した。

 

俺達の話題は、ブランシュの方に移ることになった。

その話題は達也から切り出された。

 

「さて問題は、ブランシュの奴らが今何処にいるか、ということですが」

 

その言葉に、七草会長、渡辺先輩が焦った声で反応したが、

 

「達也くん、まさか一戦交える気なの?」

「それは学生の領分を超えている!」

 

達也は極めて冷静に答えた。

 

「叩き潰すんですよ」

 

そして、と付け加え警察に任せた場合の今後の流れを話した。

警察に任せるなら、壬生先輩は強盗未遂で捕まってしまう。そうならないためにも独自に潰す必要がある、と。

それを聞いた十文字会頭が達也に確認を投げる。

 

「司波、一人で行くつもりか?」

「ええ、そのつもりでしたが……」

 

その言葉を俺が遮る。

 

「俺も行くよ」

 

それにエリカ、レオ、深雪も続く。

 

「わたしも行くわ」

「俺もだ」

「私もお供します」

 

そうして、同行する人が決まりつつある中、達也は俺の方を向くと質問をしてきた。

 

「芥、ブランシュの現在地に心当たりはないのか?」

「なんで俺に聞くかなぁ……。まぁ、知ってるよ」

 

それは場に驚愕をもたらした。

全員の視線が俺に集まり、そして、それは「なぜ、お前が知っている?」というのが見える視線でもあった。

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