魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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第四話

パーティーから翌々日。

今日からが九校戦が始まる日だ。

 

昨日の夜、()()()()()()()()()()を感知したが、対処した人物を()()気にするのを止めた。

 

午前中の開会式の後、すぐさま競技が開催される。

初日は本戦のスピード・シューティングの予選と決勝、バトル・ボードの予選が行われる。

スピード・シューティングは七草会長が、バトル・ボードは渡辺先輩がエントリーしている。

 

七草会長の勇姿を拝見するべく、エリカ達と一緒に一般に解放された観客席に向かう。

俺達はあくまで呼ばれた側ではないから、選手席には入れない。

観客席に足を踏み入れると、開始前だというのに静かな熱気が蔓延していた。

 

エリカが席後方に達也、深雪、ほのか、雫を見つけたので、俺達もそっちに移動する。

達也たちの後方の席を確保して、各々に挨拶をした。

挨拶具合から感じるに深雪達、特に雫の興奮度合いは伝わってきた。

 

達也からスピード・シューティングの説明を受けている、その時、客席前方で黄色い歓声が上がった。

七草会長の番になり、会場に現れたのだ。

 

七草会長はゆるく巻いた髪を揺らしながら、ウエストを絞った襟付きのジャケットを着て、ストレッチパンツを履いている。

それがまた様になっていた。いつものゆるゆるな会長を見ているので、そのギャップに驚かせられる。

 

競技時が始まるのか「お静かに」の案内が出る。

その静寂に満ちた競技場に一人佇む、七草会長。

そして、開始番のライトが順番に消えていき最後のランプが消えると、競技が開始された。

 

七草会長の競技自体は満点で終了した。が、それ達はその技術に見惚れていた。

俺は独りゴチた。

 

「いやー、理解ってはいたけど、ちゃんと見ると凄いな」

「ああ、あれほどの魔法はなかなか目にする機会がないからな」

 

俺の独り言に、達也が関心した様子で返してきた。

流石は生徒会長といったところか。

 

その後、俺達は会場を移動して、渡辺先輩が出るバトル・ボードの予選観戦に移った。

バトル・ボードは会場も大きいので移動にも時間がかかる。競技はそれも考慮された開始時間が設定されていた。

 

こちらの会場も会場前方には観客が詰め寄っている。ただ、男女比は七草会長の時と逆だったが。

それを見て俺は一言。

 

「ミーハーってやつは何処にでも居るんだな」

「別にあんな女、見てもしょうがないわよ」

 

返答はエリカから来た。彼女には珍しく辛辣だった。

俺達は前の会場と一緒で後ろの方に陣取った。

 

渡辺先輩が現れると、本当に黄色い歓声が上がった。

渡辺先輩は女子受けがいいようだな。まぁ、ウエットスーツを着た渡辺先輩は様になっているから仕方ないか。

 

競技が始まっても、黄色い歓声が止むことはなかった。

なぜなら、渡辺先輩の勇姿は、当然の様に見栄えするものだったからだ。戦術も上手い。

しかし、達也はその勇姿の裏で実行されている、魔法の処理能力に感嘆していた。

 

「凄いな。常時、3から4種類の魔法をマルチキャストしているのか」

 

その感嘆をさも当然の様に受け取っている、渡辺先輩はそのまま一位で予選を通過した。

 

その後も競技は続き、八月五日。

バトル・ボードの決勝戦。

そう、「あいつ」から聞かされていた通りなら、何かが起こるのはここだ。

 

俺は注意深く試合を見つめていた。

そして、それは試合開始の直後に起こった。

最初のカーブに渡辺先輩が達し、その後に七校の生徒が差し掛かった時だ。

七校の生徒はカーブに対し、減速では無く加速して渡辺先輩に向かって突っ込んでいった。

 

ボードから投げ出された七校の生徒を渡辺先輩が受け止めようと、慣性中和魔法を発動させる。が、それが何故か発動しなかった。

七校の選手ともつれるようにして、渡辺先輩も壁に激突するコースを取っている。

 

俺は素早く右手を前に突き出して、慣性中和魔法を発動させた。俺の魔法はギリギリ間に合ったようだ。

壁に激突する直線に俺の慣性中和魔法が発動し、壁に大きな衝撃も無く2人はふんわりとぶつかった。

重い衝撃は無かったと思うが、油断は出来ない。

 

大会は中止を意味するレッドフラグが舞い、決勝戦は中止となった。

達也が素早く立ち上がり、

 

「俺が行く。みんなはここに居てくれ」

 

達也は足早に会場を後にした。

 

「一体何がどうなってんだ?」

「明らかにあれはおかしいわよ」

 

会場に残された面子は、それぞれに疑問を口にしながら推論を重ねていった。

 

その中で俺、一人だけは落ち着いていた。

何かある。とは思っていたがちゃんとあったな。

最低限、魔法が間に合ったから良かったものの、何もしなければ、大きな事故に発展していただろう。

それを発生させた連中の事に、想いを寄せながら、俺は静かな闘志を燃やしていた。

 

幸い、渡辺先輩の症状は重くはなかった。

軽い脳震盪だということだが、大事をとって1週間の養成を言い渡された。

そのため、渡辺先輩が出る予定だったミラージ・パットは棄権することになった。

その代わりとして、新人戦を辞退する形で深雪が本戦に出ることが決定した。

 

事故があったその日、俺は達也に一校の機材車に着てくれと、呼び出しを受けた。

夜、機材車に向かうと、美月と幹比古も機材車の前に居た。

 

「あれ? 2人とも」

「芥さんも呼ばれたんですか?」

「ああ、2人も?」

「ああ、何か相談事があるようだったよ」

 

俺が機材車のドアをノックすると、深雪が中に入れてくれた。

中では達也、五十里先輩。千代田先輩がコンソールに向かっていた。

どうやら、渡辺先輩が事故を起こした場面を皆で検証しているようだ。

 

達也は、事故の原因が意図的ではないか? それに精霊魔法が使われたのではないか? と疑っている。

幹比古を呼んだのはそのためだろう。

達也の質問に、幹比古の答えは「出来る」だった。ただ、準備は必要とのことだが。

 

そして、なぜか俺にも聞いてきた。

 

「芥にも出来るか?」

「なんで俺に聞くのか分からないけど、出来るよ」

「どうやってだ?、幹比古と同じく会場に入らないと駄目か?」

 

達也の質問は幹比古に質問した以上に、難しい事を聞いてきた。

 

「会場外からって事? 一応、地脈を通じてその先を見る千里眼的な事は出来るけど、それもはっきりと見えるわけじゃないから、一度はちゃんと目で見る必要があるかな」

「そうか、お前でも難しいか。渡辺先輩を守った魔法発動から見るに出来そうに見えたが」

「あれでも最速で発動したやつだから、完全に緩和はできなかったけどね」

「それでもあれは、有効だったよ」

 

俺の言葉に幹比古は、驚いているようだった。なにかおかしな事を言っただろうか?

いろいろと仮説は検討できたが、はっきりとした答えは出ないまま、皆の胸にしこりを残したまま日は進んでいった。

 

その後、日程は新人戦に移っていく。

 

雫のスピード・シューティング。

ほのかのバトル・ボード。

2人とも、新人戦の大きな舞台でありながら、優勝を勝ちとる快挙を成した。

 

これまでの新人戦で一番盛り上がったのは、蒼い振袖を着た雫と、緋色の袴と白の単衣を着た深雪のアイス・ピラーズの決勝だっただろう。

2人見た目もさることながら、繰り出された魔法の数々も観客を魅了していた。

そのハイレベルな争いには俺も感嘆したものだ。あれ、完全に高校生の領域を超えてそうだけどな。時に深雪は。

 

ここまでは大きなアクシデントが無く、大会は順調に進んでいった。

しかし、運命の振り子は均衡を保つ。

良い方に振り子が振れたなら、次は悪い方に振れるのだ。

それは現実となり、新人戦のモノリス・コードで運命の振り子は悪い方に振れた。

 

試合開始直後に、一校の選手に向けて四校の選手が「破城槌」の魔法を放ったのだ。

密閉空間での「破城槌」は殺傷ランクが規定を超える。それはフライング気味に発動し、一校の選手を飲み込んでいった。

またもや、レッドフラグが振られて、競技は中止となった。

運ばれていく一校の選手はかなりの重体だった。

 

起きてはいけないことが、2度起きた。つまりそれは、3度目もありうるということ。

 

俺は自分の部屋で、情報を集めていた。幸い「あいつ」が調べてくれる情報は正確だった。

やはり「無頭竜」が関わっているようだ。

 

別の場所では一校が今、緊急ミーティングを開いているそうだ。

まぁ、結果としては達也達がモノリス・コードに参戦する流れになるんだろうな。

なんて、他人事の様に考えていた時。

 

部屋に備え付けられて電話が鳴り、俺はその緊急ミーティングに呼び出しを受けた。

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