第一話
「いやー、なんとかなるもんだな」
2095年。
国立魔法大学付属第一高校、通称「魔法科第一高校」。
その入学式が行われる講堂へ向かって歩きながら「俺」こと、世羅 芥 <せら かい>は一人つぶやく。
魔法科第一高校は校舎だけがあるような普通の学校ではなく、複数の施設で成り立っている大学のキャンパスに近い。
当然、講堂へも少し歩くことになるが、それすらも俺にとっては楽しい。
真新しい制服に身を包み、春の朗らかな午前中の空気で肺を満たす。
それのなんと心地良いことか! これぞ新生活であり、ありふれた日常よ!
鼻歌交じりのテンションで歩いている俺に無遠慮な視線が在校生、または同じ新入生から突き刺さる。
それは制服の胸に八枚花弁のエンブレムが無いためか、それとも、左腕の袖に厚みがなく風に揺れていることか。
この体になってからそれなりに時間が経つのでまぁ、慣れたもんだ。
10分程歩いて、講堂に着き中へと足を踏み入れる。
入学式の開始まで、あと20分ほどか。
席は殆ど埋まっていたがその並びには明らかな規則性があった。
壇上の前の方には、八枚花弁のエンブレムが付いた一科生が座り、後方にはエンブレムがない二科生が座っている。
見事に綺麗に別れていて、傍目でも一科生、二科生に壁があることが解る。
俺はそれを横目に、たまたま空いていた最後尾の席に座る。
隣の人が俺を見てぎょっとしていたが、それは意識に入れないようにした。
入学式が始まり、校長の式辞から始まる。普通なら眠くなりそうな展開だが俺にとっては違う。
長ったらしい校長の式辞も楽しく聞けるというもの。
あー、そうだよねそういう事を言うよね、と、うんうんと内心頷きながら聞いている。
次は生徒会長が祝辞を述べる場面だ。
壇上にあがった生徒会長は制服を綺麗に着こなし、ウェーブが掛かった長い髪を揺らしながら壇上を歩いている。
遠目からでも解る美少女だった。小悪魔的な、とは適当であるか解らないがそんな魅力を感じる。
そして、場面は新入生代表挨拶に移る。
新入生代表を務める少女が壇上に上がると、そこで明確に空気が変わった。
白を基調とした制服を見事に着こなし、黒く艶やかな長い髪を軽く揺らした、絶世と呼べる美少女が颯爽と壇上を歩いている。
誰もがその姿に、容姿に眼を奪われていた。かくいう俺もその一人だ。
時代が進み、全体的に男女の容姿が前世紀より整ってきていても、その少女は飛び抜けて可憐だった。
そして、新入生代表挨拶は思っていた以上に苛烈だった。
俺でもわかる。その内容は一科生、二科生の待遇の差を痛烈に批判していた。
大勢は気が付かないだろうが、声の抑揚と上品な日本語で上手く隠してる。
新入生代表挨拶が終わると、少女は綺麗な一礼をして壇上を去った。
入学式が終わると、レクリエーションの時間になる。
そこで初めて学生証を渡される。クラス分けが解るのもここでだ。
俺は渡された学生証を手にとって、ようやくというか高校生になったという実感が湧いてきた。
学生証に記載されたクラスは「1-E」だ。
その日は、そのまま終了となり俺は家に帰った。もちろん一人で。
家に帰ると制服から部屋着に着替え、俺はリビングで横になりながら学生証を眺めてニヤニヤしていた。
夜になり夕食も済ませ、リビングで本を読みながら寛いでいると、テレビに音声通話がいきなり繋がった。
相手の名前は画面に表示されていない。会話は通話先相手の質問から始まった。
『初日はどうだった?』
「んー。特になにもなかったよ。でも、学校ってすばらしいね!」
『そうか。……クラスは解ったのか?』
「ああ、1-Eだよ」
『1-Eだと……!』
通話先の相手が驚いている。なぜだろうか?
「何かあった?」
『いや、お前……。1-Eって……』
「ん?」
『あー、いや。なんでもないや。まぁ、明日からも楽しんでこいよ!』
「おう」
そうして通話は切れた。
最後の通話で相手は何を言おうとしていたのだろうか?
笑いを堪えている感じがしたのは気のせいだろうか?
が、そんな事はすぐに忘れてしまい、その日は就寝となった。