魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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司波 深雪の独白

私、司波 深雪には想い人がいる。

 

七年前のとある事件に巻き込まれた私を助けてくれた、男の子。

ちょっと、いや、()()()()あったが、私に勇気という物がどんなものかを見せてくれた。

私の心はあの時から、本当の勇気を知っている。

 

あの男の子に会いたくて、お礼を言いたくて探しまくった。

しかし、どんな手を使っても、あの事件の後の足取りを追うことが出来なかった。

()()()()を借りたがそれでも、知ることが出来なかった。

私の心はあの時から、後悔が残っている。

 

三年前に死ぬはずだった私を助けてくれたお兄様に、敬愛の情はある。

しかし、それを持ってしても、あの男の子への想いが消える事は無かった。

いや、死を間近に感じたからこそ、あの勇気の素晴らしさを知ることが出来た。

私の心はあの時から更に、想いは募っていった。

 

そうして七年が経った。

想いだけが残り、男の子を探すことを半ば諦めかけていたその時、あの人は私の前に現れた。

国立魔法大学付属第一高校に入学し、兄の知り合いとして紹介された少年。

 

世羅 芥。

 

初めてそのお顔をみた時の印象は、似ているな、面影があるな、程度だった。

だが、芥さんの左腕を見た時の衝撃は凄まじかった。

 

あの時の少年は左半身が瓦礫で埋もれていた。左手を失ったとしても不思議ではない。

その少年への関心は疑惑へと変わった。

芥さんがあの時の男の子かも知れない……。

 

そして、その疑惑は次に好奇心へと変わる。

お兄様の風紀委員化にまつわる一騒動。

それに巻き込まれる形で、見せられた、いえ、魅せつけられたあの絶技。

それが私を魅了し、さらなる好奇心を芥さんにもたらした。……後から考えればここが恋慕に変わる決定打だったのかも知れない。

 

その後のブランシュに関する騒動の後、私とお兄様は芥さんを夕食に招待した。

答えが聞けるかも知れない。

私は腕によりをかけて料理に取り組んだ。今まで一番楽しく調理ができたと思っている。

 

食事後、改めて芥さんにお兄様が問いただした。あの時に助けてくれた男の子なのか? と。

芥さんは肯定を返してくれた。

 

その時の嬉しさたるや。

七年越しに見つけた、あの時の男の子。

あの時よりもより男性的になり、そしてハンデをものともしない圧倒的な強さ。

私の心臓は早鐘をうった。おそらく人生で一番早鐘をうっただろう。

……あの時の事を覚えていないのは、ちょっと癪だったが。

 

そして、九校戦。

新人戦の選手として出場することになった私は、気合が入っていた。

いや、正確には、前日の懇親パーティーで芥さんを見かけたときからだ。

 

私の勇姿を直にその目に映す事ができる。それだけも出場する価値があるというもの。

アイスピラーズ・ブレイクでの衣装にも気合が入ると言うもの。

それを芥さんに褒めて貰ったのは、心の底から嬉しかったものだ。

部屋でそれを思い出しながら、ニヤケ顔が止まらなかった。

 

しかし、それに暗雲が立ち込める。

芥さんがアウトスタンド・ワンに出場すると決まったからだ。

生徒会役員である私は、その競技の特殊性、危険性を十分に知っていた。

夜に一人、男性の部屋を訪れるなんて、今思えば大分はしたない行為だが、その時はそれ以上に不安が勝った。

私の独りよがりな不安も、芥さんはキチンと受け止めてくれた。

……だいぶはしたない事をしたとも思っているので、思い出すと顔が赤くなる。

 

アウトスタンド・ワンの一回戦は、全くの不安を感じさせずに終わった。

あそこまで圧倒的な実力差があるならば、怪我なく終わるだろうと思った。

 

だが、決勝がはじまる前に私の心は絶望に落とされる。

芥さんが持ってきたケースには義肢が入っていた。白く美しい義肢だ。

それは見るからに間接的接触で動くタイプではなく、直接的接触で動くタイプ。

つまり、()()()()()()()()()()()()ということになる。

 

私は堪らなくなり、更衣室へと足を向けた芥さんの後を追う。

そして、聞こうとした。あれから何があったのか? と。

しかし、芥さんは聞いてはくれなかった。ただ、私の責任ではない、と言うばかり。

冷たく突き放され、私は何も出来ず、何も知らない自分に自責の念が浮かぶのを止められなかった。

 

アウトスタンド・ワンの決勝。

私はスタンドで胸の前で両の手を組み、無事であるように、と祈り続けた。

私の心の苦しみを知らずか、芥さんは防護服を着ずに制服姿で現れた。

そんな無謀な!

私が握る両の手は、元々に白い肌を更に白くさせるほど、強く握られた。

 

だが、試合が始まると、私のそれは杞憂に過ぎなかったと思わされた。

戦場における名乗り上げ。人の枠を超える絶技。

それに私も魅了された。

あの風紀委員の一幕に見せたものなど、児戯に見える程の技と業。

今ままで抱えてた不安など忘れ、私はその姿にただただ、魅了された。

 

そして、極めつけはあの「夜」。

他の誰にも真似できない伯母上の魔法をいとも容易く再現し、あまつさえそれを魔法で更に上書きするという奇跡の御技。

私だけではない。全ての魔法師が目と心を奪われた。

 

最後の激突の後、唯一立っている芥さんの姿を見た時、私の目からは知らず知らず涙がこぼれ落ちた。

芥さんは変わらぬ勇気をそのままに、更に強くなっていた。

 

……この想いは呪いに近いのかも知れない。

あの時見た真なる勇気に、心を焼かれたからかもしれない。

 

しかし、私はそれでも良いと思っている。それで良かったとさえ思っている。

モニターに映る芥さんを誰よりも想っている自分に誇りさえ持っているからだ。

 

いつか、この思いが私を引き裂くかも知れない。だが、それでも良い。

今はこの甘美なる想いに身を委ねていたいのだ。




映画「四葉継承編」を見たからか、重い深雪を書きたくなった。
書けてるといいな。
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