魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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横浜騒乱編
第一話


夏休みが終わり、生徒会選挙も終わった(あーちゃん先輩が生徒会長になった)10月の始め。

全国高校生魔法学論文コンペティションの時期が近づいてきた。

 

といっても芥に出来ることはほとんど無い。

芥は理論派では無く、実践派。それも理論をすっ飛ばして実践するタイプだ。

予定通り達也がコンペ要員になったので、あちら側のいざこざは達也が対処するだろう。

 

そんな中、風紀委員の仕事も無く、放課後の帰り道。

月末の横浜までどう時間を潰そうか考えていた時、レオと一緒の居たエリカから声が掛かった。

 

「ねぇ、芥。あんた、暇ある?」

「あるけど、どうしたの?」

 

ちょっとといい?、と言ってエリカは歩き出した。

その後にレオも続いていき、芥もそれに続く。

 

すると、エリカはいつもの喫茶店に向かっていた。

何も言わすにレオと芥もそれに続く。

喫茶店のドアを開け、テーブルに着くと飲み物を頼んでもなお、沈黙が続いた。

 

エリカの正面に座る芥はコーヒーを一口飲みながら、会話を待つ。

口を着けたコーヒーをコースターに置いた所で、姿勢を正したエリカが切り出した。

 

「芥さん、あなたに頼みたい事があります」

 

いつものざっくばらんな感じではなく、丁寧な口調でエリカは切り出した。

俺は視線で次を促した。

 

「私たちに稽古をつけて貰えないでしょうか?」

 

そう言うとエリカとその隣に座るレオも頭を下げた。

芥は突然の事にちょっと動揺したが、もう一度コーヒーを口にしてから質問した。

 

「内容は解った。けど、なんで俺なんだ? 稽古自体なら千葉の家でも問題ないだろ?」

「はい、稽古だけならばウチでも問題ないです。私たちに必要なのは実戦を想定した闘いです」

「俺、武器術は苦手だよ?」

「それは解ります。が、それを問題にしないほど、あなたの技量は優れている」

「芥、俺からも頼む。これ以上置いてきぼりにはされたくないんだ」

 

エリカもレオも眼差しは真剣だった。

それはキチンと自分の技量と現実に向き合った結果でもあった。

 

「本来、あなた程の実力者ならば自分の技をひけらかしたりしないことも解っています」

「……エリカなら解っていると思うけど、俺の技は制するための技じゃない。殺すための技だ。それでも良いんだな?」

「ええ、私たちに必要なのは、『必ず殺す技』なの」

 

「必ず殺す技」ね。

 

「……分かった。俺で良いなら教えよう」

「重ね重ね、有難うございます」

「有難うございます」

 

エリカとレオは再度俺に向かって頭を下げた。

 

「で、何時から始めるんだ?」

「芥が良いなら今日からでも」

 

いつもの口調に戻ったエリカを見ながら、芥はコーヒーを飲み干すと、

 

「じゃ行こうか」

 

と、2人に言った。

2人は慌てて飲み物を飲み干すと会計を済ませて、さっさと喫茶店を出た。

駅からキャビネットに乗り、都内のある高層ビルへと滑り込んでいく。

キャビネットから降りエントランスに降り立ったレオとエリカは高層ビルを見上げている

 

「ここは何処なんだ?」

「俺が私的に使えるビルだよ。こっちだ」

 

ビルの中に入ると、外にはいなかった武装した警備員が巡回している。

これだけでこのビルの価値が高いことが証明されている。

受付を顔パスで通り、エレベーターホールに向かい、地下へと降りていく。

 

エレベーターの表記では「B4」。

そこは訓練用にあつらえた、広いホールがありモニター類や更衣室も完備している。

 

「女子用の更衣室はあっち。ロッカーの中にウェアがあるから着替えてきて。レオはこっち」

 

レオといっしょに男性用の更衣室に入り、ウェアに着替える。

先に着替え終わった男子がエリカを待つが、エリカも直ぐに出てきた。

 

「で、獲物は何を使うんだ?」

「出来れば刀が良いわね」

「了解」

 

ホール前にある小部屋のコンソールを操作すると、壁の一部分がスライドして武器庫が現れる。

 

「それ使って」

 

エリカとレオはそこから模擬刀を取り出すと、スライドしていた武器庫が壁に戻る。

それを確認して、訓練用のホールへと足を踏み入れる。

一辺20メートルの正方形をしたそのホールの中央で芥とレオ、エリカが対峙する。

 

「まずは、今までどんな事をしてきたのか聞こうか」

「レオには千葉家の秘剣「薄羽蜻蛉」を伝授している所。あたしは変わらずって所ね」

「なーる。基礎は千葉家で教えているのね。じゃ、次からは自分の獲物を持ってきてね」

「……わかったけどよ、俺が言うまでも無く危ないぜ?」

「いいかい、レオ。技なんてもんは全部危険なの。でもそれは当たるから危険なのであって、当たらなければ技に意味は無い」

「それって……」

「だから、当ててみせろって話だ。分かりやすいだろ?」

 

芥はニヤリと笑った。

それを見てレオが獰猛な笑みを返す。エリカもニヤリと返す。

こうして、俺達の秘密の特訓が始まった。

 

1時間後。

床に大の字でへばっているレオと、なんとか膝に手を突きながら立っているエリカ。

そして、息も切らしていない芥がホールに立っていた。

軽く模擬戦をやっただけで、そこまで消耗するとは思っても見なかった。

 

「なんで、お前は、そんな、疲れてないんだ……」

「そうよ、絶対に、おかしいわ……」

 

2人とも肩で息をしながら、芥に詰問して来る。

 

「そりゃあ、年季も違うし、何より身体の使い方が違いすぎるんだよ」

 

レオが上半身を起こし、

 

「身体の使い方?」

「まず、レオは身体に余計な動きがありすぎる。だから疲れるし読みやすい。千葉の家で型を学んで身体の使い方を覚えなさい」

 

次はエリカの方に向けて、

 

「エリカは剣術が身にしみているから、外側の動きは綺麗だよ。でも、内側が動きすぎている。だから疲れるんだ」

「身体の内側?」

 

エリカは大分呼吸を戻しながら聞いていくる。

 

「そ、型としては綺麗だけど、それでも内蔵や細かい筋肉がまだ制御出来ていない。それが体力を消費を助長している」

「けど、それって本当に出来るものなの?」

「出来るも何も、今見せただろ? 俺はそれが出来るから疲れないんだよ」

「……」

 

2人とも疑問に思っているが、実査に目の間で見せられてしまっては何も言い返せない。

 

「じゃ、休憩終わり。次のターンを始めるぞ」

 

2人の呼吸が戻ったタイミングで、次を始める。

 

「んじゃ。来なさい」

「行くぜ!」

「はぁ!」

 

レオとエリカは気合を入れて再度、芥に向かっていった。

結果は先ほどと変わらずの惨敗だったが。

 

これからのスケジュールはこんな感じだ。

レオは千葉家での訓練を続行し、それをこの場で試して、技を練り上げる。

エリカは、元々持っていた技を実戦用に昇華させる。

 

こうして、秘密の特訓はコンペの日まで続いた。

 

10月31日。

全国高校生魔法学論文コンペティションの当日。

後に「灼熱のハロウィン」と呼ばれる日が訪れた。

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