魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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第四話

相手方の魔法によって炎が、氷が、嵐が、この場所を舞っている。

しかし、それが芥に触れることはない。芥も舞うように攻撃を躱している。

 

転生者(リターナー)は何かしらのギフテッドを持っている。

才能の大小に関わらず、確実に()()を持っている。

 

今、芥に襲いかかっているのは、その中でも攻撃性に特化した転生者(リターナー)達のようだ。

その隙間を縫うように芥は雲散霧消(ミスト・ディスバージョン)を使って攻撃しているが、相手も魔法師。

サイオンの壁が邪魔して術そのものが通らない。

 

他の手も使って攻撃を繰り出しているが、どうやら相手には「再構築」持ちがいるようだ。

攻撃が当たってもそんなの関係ないと言わんばかりに、ゾンビアタックをしてくる。

 

芥は、だんだん苛立ってきた。

なるほど、達也を相手にした場合は、こういう事が起きうるのか。

だが、攻撃が当たっても起き上がってくる恐怖では無く、こんな連中に足止めされていることに腹が立ってきた。

そして、決めた。

全員を一気に潰せば良いんだろう、と。一種の開き直りである。

 

バックステップで相手方と距離を取る。

そして、()()()()()()()()()

左腕を虚空に向かって、横薙ぎにした。

 

すると、相手全員がピタッと凍りついたように動きが止まり、同時に首に手を当てて繋がっているかを確認している。

そして、自分の首が繋がっている事にホッと安堵している。

 

精神干渉系魔法「死神の刃(グリムリーパー)」。

初撃で相手に死のイメージを植え付ける。

そして、二撃目で植え付けられた死のイメージを自身で何万倍にも増幅させ、自分で自分を殺す魔法。

二撃決殺。

 

その魔法に気づいた者は2人ほどだった。

次が来る前にと、慌てて芥を攻撃する。

二度目の鎌が振られる前に。

 

だが、二度目の鎌が直ぐさま振り下ろされた。

再度、左腕が虚空を切り裂く。

瞬間、敵方とされる全員が、首から血を流し絶命した。

 

ちまちまと攻撃してくる相手が消えたことで芥の溜飲も下がり、次の場所に移動しようとしたその時、芥を押しつぶそうとする強烈な念が上から降り注いだ。

サイオンの流れのみを感じる、純粋な力。サイコキネシス。

 

芥は自身の六感に従い大きく後ろに飛び退った。直前にいたビルは強烈な圧力と共に()()()()()()

妖精の眼(エレメンタル・サイト)で相手の位置を確認する。

今まで感じることが無かったその人物は、芥が先程までいた隣のビルの屋上にスラリと立っていた。

その男は戦場に似つかわしくないダブルのスーツを着こなし、金色の髪を風になびかせている。

 

「流石に、この程度の不意打ちでは殺られてはくれませんか」

 

金色の髪に青い目だが、流暢に日本語を使い物騒な事を言ってくる。

芥にはその人物に心当たりがあった。

 

「まさか、幹部であるクリス・ウォーカー様が、直々に戦場に来るとはね」

「それもここで貴方に消えてもらうため。やはり先程の連中程度では、相手にもなりませんか」

「お前でも相手になるか、な!」

 

その言葉と一緒に芥は相手に向かって跳躍し、左手で殴り掛かったが、ガンッと音と共に視えない分厚い壁に阻まれて届かない。

クリスと呼ばれた男はスーツのポケットに手を入れたまま、涼しい顔でその攻撃を眺めている。

クリスからサイオンが立ち上ったかと思うと、芥は身体の真横から巨人の手で殴られたように吹っ飛ぶ。

 

吹っ飛ばされた芥は、隣のビルの壁面に叩きつける前に身体を入れ替え、慣性を殺しビルの壁面に立つ。

はてさて、あのサイコキネシスの壁をどうやって超えたものか。

……ここは古式ゆかしい方法でいきますか。

 

芥は再度跳躍してクリスへと迫ると、もう一度左拳を構えた。

クリスも先ほどと同じ様に、サイコキネシスで分厚い壁を作る。

 

しかし、結果は先ほどとは違った。

 

拳が当たる瞬間、芥は身体を巧妙に操作して拳を前に突き出す。

サイコキネシスの壁に拳が当たるが、今度は音はしなかった。

代わりに、クリスの身体がくの字の曲がった。

 

「がはっ!」

「はは! やっぱり「遠当て」は有効なんだな!」

 

拳を当てた芥の直上から巨大な力が襲ってくるが、その範囲を正しく()()薄皮一枚で躱し再度、遠当てで相手を打つ。

再度、クリスの顔が苦痛に歪んだ。

心臓を狙った一撃だったが、サイコキネシスの壁で思っていた以上に力が減衰されたため、心臓を潰すまでには至らなかったようだ。

クリスは後ろに大きく跳躍し、2つ後ろのビルの屋上に降り立って、芥と距離を取った。

 

物理的な距離を取って安心したのか。クリスの顔には笑顔が戻っていた。

しかし、そんな距離は芥にとっては意味がない。

 

「遠当て」とは「遠くに当てる」から「遠当て」なのだ。

芥はその場で、何もない虚空に向かって、左腕を打った。

そして、三度、クリスの身体がくの字の曲がり、心臓を抑えている。

口の端から血を流しながら、恨みがましくクリスは告げる。

 

「規格外だとは思っていましたが、ここまでとは」

「自身の力に溺れて、研鑽を怠っていたか?」

 

芥の頭上に突如、物理的な殺気が現れた。

「瞬間移動」を持ってクリスから数キロの距離を離れる。

芥が先程いた場所から数キロ四方が、()()に押しつぶされた。

 

しかし、数キロ離れたからといって、芥には関係ない。

視えていれば良いのだ。

再度、芥の左腕が虚空を打つ。

数キロ先で、苦悶の声が上がる。

 

「どうする? このまま一方的に殴られるか?」

「……悔しいですが、ここまでのようですね。我々は次こそ貴方を殺しましょう」

「まぁ、逃さないけど」

 

左指をパチンと鳴らすと、クリスの周りが「夜」に包まれた。

が、クリスはサイコキネシスでその空間を内側から強引に破壊したため、「夜」の空間が砕け散る。

しかし、サイコキネシスが壊す前に「夜」を発動していたので、そのタイムラグでクリスは負傷していた。

 

クリスは苦虫を噛んだような顔をして、芥にサイコキネシスを向けて目眩ましをすると、その場から消え去った。

後を追うことも考えたが、これ以上介入してこなさそうなので、無視することに。

それを見届けた後、芥は全身で伸びをした。

 

「んー! だぁ! とりあえず「連中」は退けたし、あとは残党狩りかな」

 

左目で状況を確認すると、歩兵は撤退中。機動兵器も壊滅。

戦況は殆ど、こちらに傾いている。というか一方的だ。

 

そんな時、魔法師協会本部がある、横浜ツインタワーの方で虎の気配を感じた。

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