魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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第五話

虎の気配を感じた芥は横浜ツインタワーの方に「瞬間移動」する。

 

「瞬間移動」した先では既に、交戦状態だった。

呂 剛虎<リュウ カンフウ>が白い鎧を来て、摩利や真由美に迫っていた。

レオとエリカの姿は視えない、既に捌かれたようだ。

 

呂 剛虎が摩利に迫っているその間に、芥は強引に割り込んだ。

加速魔法で突進してくる呂 剛虎に対し、気を合わせることによって、力のベクトルを逆方向に変える。

突進してきた速度よりさらに加速して呂 剛虎は、後ろに止まっていたトレーラーへ向かって飛んでいく。

ベキッメキッという音と共に、トレーラーがへしゃげる程の速度で呂 剛虎は激突した。

 

「出過ぎましたかね?」

 

それを成した後、後ろにいる摩利に向かって芥は、何事も無かったかのように告げる。

 

「いや……、そんなことはないが」

 

眼の前で起こったことに、呆然としながら摩利はつぶやく。

硬気功で身を守っているからかダメージが無い様子で、ひしゃげたトレーラーから呂 剛虎が立ち上がり、怒りの為か咆哮を上げている。

再度、加速魔法を使って突進しようと魔法を発動し構えを取っているが、その出掛りを芥が潰す。

彼我の差を一瞬で詰め、左手で呂 剛虎の頭を鷲掴みにすると同時に身体を操作して、仙気を相手に叩き込む。

 

呂 剛虎がは硬気功により、外側からの攻撃には強くなっているが、内側への攻撃に対しては肉体の強度に依存している。

肉体の限界を超えた仙気を叩き込まれ、肉体が内側から壊れていく。

口や鼻、果ては目や耳から血を流し、自らの血の海に呂 剛虎は沈んでいった。

 

自らの血の海に沈んだ呂 剛虎を見届けると、芥は摩利達の方に向かって普通に歩いていく。

しかし、その「普通さ」が逆に恐怖を駆り立てていることに、芥は気づいていない。

途中、先にヤラれたのかレオとエリカが、形が崩れたキャビネットから這い出ようとしていた。

 

「大丈夫か? 2人とも?」

「ああ」

「こっちも大丈夫よ」

 

問題なさそうな声色で返答してきたので、それを素通りして摩利と真由美の方に近付く。

摩利達の前までたどり着くと、芥は周りを見渡しながら、

 

「これで一通りは終わったんでしょうか?」

「ええ、外はこれで片付いたと思う。おそらくだけど、中の方も片付いたと思うわ」

 

芥は気付いていない。

摩利や真由美の顔が若干引きつっているのを。

 

「そうですか。では、皆も早く脱出を。戦況がこちらに傾いているとはいえ、脱出できるならその方が安全ですから」

「ええ、そうさせてもらうわ。芥くんはどうするの?」

「『全部終わる』まではここで遊んでいるので、気にしないで下さい」

「……わかったわ」

 

それじゃ、と言い残し芥は「瞬間移動」でその場から消える。

あとに残った摩利や真由美は、芥の圧倒的な実力に少しの恐怖を覚えていた。

 

「瞬間移動」で移動した先は、横浜ツインタワーの屋上。

「左目」で確認した所、敵艦が戦線を離脱しようとしているのが視えたので、排除に向かうためだ。

 

すると、芥に頭痛が走る。

……すこし左腕を使いすぎたか。あと一時間くらいが限界だろう。

そう感じながら屋上を見渡すと、先客がいた。

 

風間と藤林、そして初めて見る士官と、真っ黒なムーバブル・スーツを来た達也だった。

大きめのケースを控えているその姿から、これから大掛かりな魔法を使うことが読み取れた。

風間達は、突然現れた芥に気付くと慌てて敬礼をしてきた。こんなときでも律儀な人達だ。

芥も敬礼を返す。

 

「そちらが先でしたか。では、自分の出番は無さそうですね」

 

敬礼を崩すと、風間が応答と共に告げてきた。

 

「いえ、そんな事は。……大佐、上申を許して頂けますか?」

「聞きましょう」

「現在、我々は潰走する敵艦を沈めるべく対応を進めています。ですが、大佐も敵艦を沈める方法をお持ちではないのでしょうか?」

「……自分に手の内を開かせと?」

「いえ、我々の対応は極めて秘匿事項が高いものになります。使わずに済むならその方が良いのです」

「まぁ、理屈は通っていますね。確かに、「アレ」はそう簡単に見せて良いものでも無いでしょうし」

「っ!? ……知っておられましたか」

「何処にでも目と耳はあるものです。分かりました。今回は自分が対応しましょう」

「ご配慮ありがとうございます!」

 

風間以下、全員が芥に向かって再度敬礼をする。

芥は、屋上の縁の方に向かって歩き、達也を同じ様に海が見える位置にまで移動する。

俺が前に出ると、達也は場を明け渡すかのように後ろに下がった。

 

左目を瞑り、「ミネルヴァの梟」と「妖精の眼(エレメンタル・サイト)」で敵艦を補足する。

補足完了後に左手を前に突き出して、一言。

 

「燃えろ」

 

言葉を合図に敵艦に魔法式が展開する。

 

上空の空気が歪み、レンズを形成していく。

その中央に日光が収束していく。

収束した光はレンズを通過し、敵艦に向かって焦点をあわせた。

 

レンズで集約され焦点に集まった、光の温度は有に数万度を超える。

光が、敵艦を包む。

その光に包まれた敵艦は爆発すること無く、一瞬で()()した。

収束系魔法「メギド・フレイム」。

光を収束させることで温度を上げ、焦点にいるターゲットを蒸発させる戦術級魔法。

 

横浜ツインタワーで「それ」を見ていた者たちは、一瞬、海上に閃光が走ったのを確認した。

しかし、それで全ては終わっている。

芥は風間達の方に向き直すと、

 

「終わりましたよ?」

 

と、軽い調子で言った。

藤林が慌てて、タブレットで状況を確認している。

確認が終わったのであろう、

 

「……敵戦艦の消滅を確認しました。周囲環境への影響はありません」

 

藤林のその言葉に芥を除く、全員が呆然としている。

芥の言葉で全員が、はたと現実に引き戻される。

 

「で、これであらかた終わりましたが、そちらはどうするんですか?」

「……我々はこれを持って作戦完了とし、撤収します。後処理は後詰めの部隊に任せようかと」

「そうですか。では、自分も撤収しますか。……ああ、あまり館花をいじめないで下さいね?」

「わかっております。では自分らはこれで失礼致します」

 

再度、芥に敬礼をして風間達は屋上から降りていった。

芥は水平線を少し眺めた後、「瞬間移動」でその場を去った。

 

これが「灼熱のハロウィン」に繋がる「横浜事変」の顛末だった。

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