翌日。
朝、登校すると俺は指定されたクラス1-Eに向かい、指定された席に着く。
たしか学生証を指して、コンソールを起動するんだよな。大丈夫、予習はちゃんとしてある。
コンソールを立ち上げ、校則やこれからのカリキュラムについての資料を読んでいると、俺の席の前にいる男子生徒達の会話が聞こえてきた。
その言葉を耳に入れながら右腕でコンソールを叩いていく。
「いや、この時代にタイピングなんて珍しくてな。わりぃ」
「構わないさ。慣れればこっちの方が速いんだがな」
「そういうものか。俺は西城 レオンハルト<さいじょう れおんはると>。レオって呼んでくれ。将来は機動隊や山岳警備隊を希望してんだ」
「俺は
そのあと、周りに居た少女達も自己紹介を初めたが、その名前を聞いた瞬間、俺の頭の中の混乱スイッチが入った。
ん? 司波 達也?
まって? ここがあの「魔法科高校の劣等生」の世界だってのは知っている。一応そのくらいの
しかし、いきなり主人公が目の間にいるのはちがくないか? 単純に俺のリサーチ不足か?
そうして、コンソールに向かったまま固まっていると、
前の席の司波 達也の肩越しに赤毛のガタイが良い西城 レオンハルトがこちらを見てきた。
片腕が無くコンソール前で固まっている俺を心配したのだろうか、俺に向かって声を掛けてきた。
「なぁ、あんた大丈夫か? コンソールを立ち上げたまま固まってるけど」
それがきっかけで俺の前の席にいた集団が全員、こちらに視線を向ける。
当然、前の席にいる黒髪を短くした、少し鋭い目つきの司波 達也も椅子の上で体を捻り、こちらへと体と視線を向ける。
いや、落ち着け。落ち着くんだ、俺。そう素数を数えよう。1,1,2,3,5,8,13…。
なんとか混乱したまま、返答する。
「ああ、ちょっと面食らっていただけ。新しい機材には慣れて無くて」
「そっか。俺は西城 レオンハルトだ。レオでいいぜ、よろしくな!」
「ああ。俺は世羅 芥だ。芥でいいよ、よろしく」
すると、レオは視線を司波 達也に向けた。その視線の意味を理解した司波 達也は自己紹介をしてくれた。
「俺は司波 達也だ。俺の事は達也でいいぞ。よろしく」
「解った、達也。よろしく」
「……」
「どうかした?」
達也の視線は俺の無い左腕で注がれている。
達也は頭を振ると「なんでもない。悪い」といって会話を切った。
そして、周りにいた少女達も自己紹介をしてくれた。
先ずは、紅い髪のショートヘアの少女だ。
「次はわたしの番ね。わたしは千葉 エリカ<ちば えりか>。エリカでいいわよ。よろしくね」
「よろしく、エリカ」
次はメガネを掛け、黒髪をセミロングで切りそろえている少女。
「私は柴田 美月<しばた みつき>です。美月でいいですよ。よろしくお願いします」
「よろしく、美月」
なんとか、無難に返事を返したが、一気に情報を浴びせられて、混乱は最高潮に達した。
主人公グループと親交を持ってしまった! これからどうなるんだ? いや、関わる気は全くなかったけどさぁ!
そんな俺をよそにエリカが、気にするのも野暮なのかな? といった感じで俺に質問してきた。
「まぁ。面と向かって聞くのはマナー違反なんだと思うけど、芥さ。『それ』で大丈夫なの?」
「それ」と言われて視線も注がれれば、流石に俺も気付く。俺は先が無い左肩だけを軽く掲げて、応じる。
「慣れればなんとかなるもんだよ? だからあまり気にしないで欲しいかな。助けがいる時は声を掛けるよ」
「そっか」
「そうだよ」
レオは張り切った声で言う。
「ああ、助けがいる時は何時でも言えよ!」
「そうさせて貰うよ」
達也もそれに乗っかってくる。
「俺も何かあったら手伝うよ」
「ありがとう」
エリカと美月もそれそれ助力してくれることを言ってくれた。
この体になってから気を使われたのは初めてだったのですごく、すごく嬉しかった。
そうして、雑談に花を咲かせていると(大体はレオとエリカのじゃれ合いだったが)教室の入り口が開き、教員らしき人が教壇にむかって歩いていく。
一校は生徒が自身で講義を選択するスタイルなので、担任という制度は無くなったと聞いていたが。
その教員、小野 遥<おの はるか>は自身をスクールカウンターだと名乗った。
カウンセリングの話に関する話が終わると、これからのカリキュラムに関する説明を行った。
俺はなんとかコンソールを操作して、講義を聞きながらカリキュラムを設定していく。
分からないところは、前の席の達也に聞きながら、時間内に設定することが出来た。
昼休み。
前時代を思わせるチャイムがスピーカーから流れると、レオは俺達の方に向いて率先して言った。
「なぁ、学食行ってみようぜ!」
「そうだな」
「行きましょ、行きましょ。混む前に席確保しないと」
達也、エリカがそれに応えて、美月も学食に行くようだ。
だが、
「悪い。俺はちょっと電話することがあるから、今回はパスで」
「そっか。次は一緒にいこうぜ!」
片手を上げて謝罪をし、みんなの背中を見送る。
俺は廊下に出て、懐から携帯電話を取り出す。通話相手はもちろん昨日の夜に話した相手だ。
通話相手はすぐに出た。周りに気づかれないように、廊下の窓の方を見ながら会話する。
「おい! なんで司波 達也が1-Eにいるって教えてくれなかった!?」
『いや、なんかその方が面白くなりそうだなって思って。てか、
「俺の記憶なんてとっくに劣化してるよ! 細かい事は覚えてないんだって!」
『いやー、草生えるわ!』
「生やすなや!」
『今は時間的に昼休みか? まぁ、ここでも一悶着あるから行かなくて正解だったかもな』
「え? そうなの?」
『そうなの。後は放課後だな』
「……放課後もなんかあるの?」
『……大分薄れてんな。後で、細かいことは教えてやるよ。今は学生生活を楽しみな!』
携帯電話からつーつー、と聞こえてきて、会話が終了したことをお知らせしてきた。
はーっ、と溜息をついて携帯電話を懐にしまう。
廊下の窓から空を見上げると曇り無く青く澄んできた。俺の心は暗澹としているが。
俺は昼ごはんを買うべく購買部に足を運んだ。昼ごはんは中庭でパンと牛乳で胃袋を満たした。