芥の左隣を歩いているリーナから、手刀が飛んでくる気配を感じた。
芥はそれを躱そうともしない。
手刀が芥の身体にどんどん迫ってくる。
芥は何もしなかった。ただ歩いているだけだ。
しかし、手刀は芥に触れること無く、身体を素通りするかのように傍からは見えた。
右手に本来返ってくるはずの衝撃が返ってこないことに、リーナは目を丸くして驚いて立ち止まってしまった。
「流石だな」
「まぁ、普通じゃない?」
そして、芥と達也はは数歩先を歩きながら感想を言い合っている、そして、立ち止まっているリーナに振り返ると、
「どうしかしたか?」
「あ、ああ。ごめんなさい……」
リーナは自分がされたことに気づいていないが、達也は何をしたのか目ざとく気付いていた。
そうして、狐につままれた顔をしたリーナを連れて学校の巡回を終わらせた。
週末の夜。
芥は渋谷の街をぶらぶらと歩いていた。
繁華街ではなく人々の隙間にあるような、暗がりを中心に。
目的はもちろんパラサイトに遭遇することだ。
ただ、物質世界では無く、精神世界に存在している存在を知覚する、なんて事は今までしたことがなかったので、なかなか見つけることが出来ない。
そんな感じで、本来掴みにくい方向に知覚を伸ばしていたからか、それに気づくのに時間が掛かった。
暗がりの中、立ち止まり振り返ると
「隠れて着いてこないで、普通に隣に来なよ」
そうつぶやくと、街灯の下に2人の
2人の少女が芥に近づいてくる。年の頃は芥とそう変わらないだろう。
「気づかれてしまいましたか」
その内の、ゴシック調の真っ黒な服装をした少女が答えた。
「普段ならもっと早く気付けたんだけどね。今日は違う方向に視ていたから」
挨拶もそこそこに歩き出し、芥を先頭して少女達は後ろに着いて徘徊を続ける。
「それは、件の吸血鬼事件を追っていたからですか?」
こちらの真っ黒なノームコア系の服装をした少女が聞いてきた。
「そうだよ」
「自己紹介がまだでしたね。
「僕は黒羽 文弥、文弥と」
「自分の事は芥でいいよ。君たちはご当主関連だと思って良いのかな?」
「はい。その通りで御座います。ご当主より手伝うように仰せつかっております」
その言葉を聞いて芥は顔をしかめた。
「ご当主にここまでされるような事した覚えないんだけどなぁ」
「
「それほどご当主もこの事件が気になっているということかと」
そんな感じで話しながら、散策していると文弥が唐突に話題を変えた。
「あの! 芥さん! 九校戦のアウトスタンド・ワン凄かったです!」
キラキラした目で見つめてくる文弥に亜夜子が嗜める。
「こらこら、文弥。あまり芥さんを驚かせないの」
「ご、ごめんなさい」
「いや、いいんだ。ありがとう。結構はめを外したから恥ずかしいけど」
そんな雑談を話しながら渋谷の街を徘徊している。
そうしていると芥の首筋にチリチリを産毛が逆立つ感じが走った。
立ち止まり、辺りを見回す。
「どうかされましたか?」
目を閉じて感覚に委ねる。道の前にある公園からだと気づくと、そこに向かって走り出した。
何も言わずに2人も着いてくる。
とある公園に踏み入ると、全身をコートで固めた人物が、ぐったりとした男性を抱えていた。