魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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第四話

全身をコートで固めた人物がぐったりとした男性を抱えているのを見た芥は、亜夜子と文弥を置き去りにして加速魔法を使って、彼我の差を一瞬で零にした。

右足を相手の眼前に踏み込み、腰を回して右手を相手の胸に向かって右拳を突き出す。

加速魔法で生まれた慣性力をそのままに、相手の胸に打撃を叩き込む。

 

しかし、右手から返って来た感覚は肉体とは別の固い感覚だった。

ボディーアーマーを着込んでいるのか、金属を思わせる固い感覚だった。

 

それを認識したときにはタイミングが遅かったので、芯に威力を通す事は出来なかったが、相手をふっとばすことは出来た。

芥はコートの人物と被害者の間に立ちながら、

 

「亜夜子ちゃん、文弥くん、被害者を頼む」

「分かりましたわ」

「わかりました!」

 

コートの相手はダメージが無いように起き上がり、両の手を握り身体の前に縦に置いて構えを取った。

それに対しても芥も警戒心を高めながら対峙する。

芥は相手に対して距離を取りながら、円を描くように歩法を進める。

パラサイトという理外の者をどう扱っていいか迷っているのだ。

 

そのためか第三者がいるということに頭が回っていなかった。

それに気づいたのは、彼我の中央にスプレー缶みたいな物が放り投げられた時だった。

投げられたものの正体に気づいた芥は声を発する。

 

「目を……!」

 

フラッシュバンが破裂し、辺りを一瞬の閃光が覆う。

間一髪目を覆うことに成功したため、目をやられることは無かったが隙を作ってしまった。

閃光が収まった時には相手すでに退散していた。

一本取られた形になったが、初回の遭遇をとしてはまあ良いほうだろう。

芥は亜夜子と文弥の方に近づくと、

 

「どう?」

 

と倒れている男性の容態を尋ねる。

亜夜子が首を振った。

 

「そっか。とにかくここから離れよう。匿名で警察に通報できる?」

「出来ますので、対応します」

 

亜夜子が通報し終えると、警察が来る前に俺達は公園を後にした。

公園を後にした俺達は近くの喫茶店に入った。

各自が飲み物を頼み一息をを着いた所で、話題は先程の事に移った。

亜夜子が先に口を開く。

 

「アレが例の吸血鬼と言うやつですか」

「だろうね。逃げられたのは失敗したけど」

 

亜夜子はカップを口につけて唇を潤わすと、単刀直入に聞いて行きた。

 

「芥さんは吸血鬼の正体に気付いているのでは無いですか?」

 

芥の目を見てま直ぐに聞いてくる。

 

「多分だけどパラサイトってやつが関係していると思う」

「パラサイト?」

「悪霊とかデーモンとかそう言われている存在の事。人間に取り付いてその存在を豹変させてしまう存在」

「そういった物が存在すると?」

「まあ、そうなるね」

 

亜夜子は顎に手をおいて考えている。

 

「この件、ご当主様にご報告させていただきますが、問題ありませんね?」

「ああ、問題ないよ」

 

そうして、初の吸血鬼との遭遇は不完全燃焼で終わった。

 

翌週、学校へ登校する準備をしていると、エリカからテキストメッセージが届いた。

その内容は、レオが件の吸血鬼に襲われて入院したという簡素なメッセージだった。

放課後、芥は皆とレオのお見舞いに病院を訪れた。

傍から見る分には元気そうに見えるが、かなり我慢しているのが芥にはわかった。

 

そこでレオから吸血鬼との遭遇の経緯を聞き、幹比古がそこから推論を導き出した。

レオが遭遇したのは、パラサイトと呼ばれる理の外から来たものではないか、と。

ただ、遭遇例は殆んど無いので確証は無いが、とも付け加えられた。

 

その夜、真夜さんから通話があった。

 

『御学友の事は聞きました。大したことにならないようで良かったですわ』

「御心使いありがとうございます」

『例のパラサイトについても聞きました。しかし、かのような者をどうとらえればいいか』

「それについてはこちらの方でなんとかします。一度接触したので視えそうです」

『……あなたは本当に規格外ですわね』

「褒められたと思っておきます」

『亜夜子さんと文弥さんは出来るだけサポートに回します』

「助かります」

 

短いが真夜との会話は終わった。

 

その後、芥が接触した吸血鬼を見つけることはなかなか出来なかった。

どうやら、表に出て活性化するのを避けているようだ。

次に芥がその吸血鬼を察知するのは翌週の第一高で、だった。

 

昼休み、簡単に昼食を取り、どうやってパラサイトを補足するかを考えながら散策していたときだった。

学校の裏側の方でその「異物」がいきなり出現したのだ。

その場に駆け足で着くと既に交戦状態だった。

認識阻害の陣が敷かれているが、それに構わず陣の中に入る。

 

その陣の中心には、達也、深雪、エリカ、リーナ、克人が、少し離れた所に美月と幹比古が待機している。

 

「状況!」

「パラサイト本体から攻撃を受けているが、何処にいるかがわかっていない!」

 

達也が状況を簡潔に報告してくれる。

芥は背筋に悪寒が走るのを感じた。パラサイトがこちらを認識して攻撃をしてきていのだ。

しかし、この個体は芥が一度接触した個体のようだ。

芥にはおぼろげに相手の位置がわかった。拳を構え無に向かって「裏打ち」を放つ。

相手の身体の裏側を打つのではなく、世界の裏側にあるものを打つ、真なる「裏打ち」だ。

 

その攻撃は確かにパラサイトを撃ち抜いた。

その弱ったパラサイトに向かって、幹比古が「魔」を払う炎を放った。

炎によってパラサイトは更に弱まり、その存在がはっきりと認識できるようになった。

認識としては、アメーバ上の物が触手を周りに伸ばしているといったところか。

ただし、楽観はできなかった。その触手は美月に方に伸びていた。美月を次の宿主にするつもりなのだろう。

 

そうはさせじと、芥は再度「裏打ち」を放つ。それと同時に輝くサイオンの本流がパラサイトを吹き飛ばした。

だが、パラサイトに致命傷を与えた手応えは無く、パラサイトの気配は消えてしまった。

パラサイトを倒すという決定打を与えられなかったので、全員が苦虫を噛んだ顔をしていた。

 

明けて、2月14日。バレンタイン当日。

芥が駅に降り立つと既に周りの雰囲気は浮ついていた。

男子は何も気にしていないとばかりに無表情を取り繕っており、女子は普段は持たない鞄を大事そうにもちそわそわと周りを気にしながら学校に向かっている。

そんな中、学校に向かおうとすると珍しく、深雪と達也が待っていた。

 

「おはよう、2人とも」

「おはよう」

「おはようございます」

 

そうして、3人で学校に向かった。学校につくと深雪が

 

「芥さん、申し訳ありませんがこちらに来て頂けますか?」

 

というので、芥は深雪に付いていくと人気のない学校裏に連れて行かれた。

人に聞かれたらまずい話でもあるのかと、思っていたが深雪は周りに人がいない事を確認すると、鞄から丁寧に梱包された包箱をとりだし芥に渡してきた。

 

「ハッピーバレンタインです。芥さん」

「……そっか今日はバレンタインか。ありがとう深雪」

 

差し出された小袋を右手で受け取った。

 

「お返しを考えておかないとな」

「そんな、お気遣いなく」

「流石にそうはいかないよ。まぁあまり期待しないでね?」

「期待してお待ちしております」

 

そういって深雪は意地が悪い笑顔を浮かべて軽く腰を折った。

その日「学校」で貰ったチョコは美月とエリカからの義理チョコだけだった。

 

しかし、家に帰ると宅配便が届いていた。

宛名もメッセージもないそれは、バラを象ったブラックチョコレート。

送ってきた人物の心当たりは一人だけだった。

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