魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

36 / 36
第五話

バレンタインから明けて2月15日。

前日とは別の方向で学校は浮ついていた。

 

噂の出どころはロボ研、ロボット研究会のお手伝いロボが、勝手に動いた、かつ魔法を放ったというのだ。

その噂につられてロボ研のプレハブには野次馬の壁が出来ていた。

達也は調査のため呼ばれたのだが、芥達は完全に見物のために集まっていた。

その後、いろいろといざこざがあったが、本人の名誉のために口を閉ざそう。

事実として分かったのは、ロボ研のお手伝いロボットにパラサイトが寄生しているということだった。

 

冬の2月も終盤になり、その週の中頃に差し掛かった時、家のリビングにいつも通りというか真夜さんから連絡があった。

なんか最近は真夜さんとばっかり話をしているのは、気のせいだろうか。

まあ、あんな美人と会話する機会なんて深雪以外にあまりないから、楽しいからいいんだけど。

スクリーンに映し出された真夜さんは、肩から上がレースになっている黒のドレスを着込んでいて相変わらず麗しかった。

 

『単刀直入にいいます。今週末、第一高校の野外練習場に現存するパラサイトが集結します』

 

本当に単刀直入に話題に入った。

 

「それはまた唐突ですね。何か狙いがあるのですか?」

『こちらがそうしたわけではなく、結果そうなってしまっただけです。向こうの狙いは殲滅らしいので』

 

はーっと溜息をつく真夜さんの声色と表情から、この事態に納得していないことが分かった。

ここ最近でようやく真夜さんの表情を読み取れるようになってきたな。

 

「こちらもその動きに合わせると?」

『いえ、こちらはその思惑とは別に動きます』

 

そういうと、真夜さんは一転して笑顔を見せ、両の手を胸の前で合わせた。

可愛らしいそのポーズが、様になっているのがまた不思議な女性だ。

 

『芥さんにお願いがあるのですが?』

「お願い、ですか」

『ええ、パラサイトを何体か生け捕りにしてくれませんか?』

「……また無茶なお願いですね」

『そうでしょうか? 芥さんの腕前からすれば無茶では無いと思っていますよ』

 

その視線、声色、表情からこちらへの信頼が見て取れる。そこまでの関係を築いていたとは驚きだ。

こちらとしては、使い使われる関係だと思っていたからな。

生け捕りということは、パラサイトの封印処理をしないといけないということだ。

現状そういった知識がないから、なんとも言えないが、

 

「どれくらいあればいいんですか?」

『最低でも1体。2体もあれば十分です』

「……成功するか解りませんが、まぁやってみましょう」

『ありがとうございますわ! そうですね、成功した暁には何かご褒美を差し上げましょうか』

「ご褒美」

『ええ。……そうですね。私とデートをする、というのはどうでしょか?』

 

これまた以外なご褒美だ。四葉家ご当主とデートなんてどんなにお金を積んでもできないだろう。

芥としてもそれに文句はないのだが、一応、顎に手を当てて考える素振りをする。

即答したら、がっついていると思われてしまうからね。

 

「……デートとはまた望外な報酬ですね。俄然やる気が出るというもの」

 

その言葉が嬉しかったのか、真夜は顔を上気させて少女のような花のある笑顔を浮かべた。

本当に可愛いなこの人。

 

『では、お願いいたしますね? サポートには亜夜子ちゃんと文弥くんを付けますので』

「ありがとうございます」

『では、これで』

 

真夜が通話が終了しようとするが、

 

「ああ、そう言えば」

『はい?』

「チョコレート有難うございました、とても美味しかったです。お礼にはあまり期待しないでおいて下さい」

 

その返答が以外だったのか、少し呆けた後、目をキラキラさせて相手の印象に深く刻まれるような微笑みを称え、

 

『ええ、期待していますわ』

 

甘い声色で応えて、会話は終了した。

芥はすぐさま「あいつ」と連絡を取った。

 

「古式魔法における封印術式の情報を片っ端からストレージに上げてくれ」

『わかった。排除ではなく封印なんだな?』

「ああ、スポンサーの意向でそうなった。封印系は苦手なんだけどな」

『まぁ、向こうとはいい関係でいたいからな。なるべく意向には逆らうなよ』

「あいよ」

 

そうして、ストレージに次々をアップされていく術式を見ながら、週末に向けての対策を練り始めた。

 

そして、週末の夜。

第一高の野外演習場のフェンス前で、亜夜子ちゃんと文弥くんと合流した。

亜夜子ちゃんも文弥くんも、ゴシックロリータ風の衣装を身にまとっていて、はたから見ると本当に同性の双子に見える。

他には黒スーツの男性が何名か。こちらは亜夜子ちゃん達の部下だろう。

芥は亜夜子と文弥を交互に見やりながら

 

「前々から思っていたんだが、文弥くんのそれは個人的な趣味なのかな?」

「違います! 姉が仕事の時は性別を隠したほうがいいというので、こういう服装になっているだけです!」

「でも、文弥には似合っているでしょう?」

「そうだね、傍から見ると同性にみえるよ」

 

そういうと、文弥は肩を落とした。

どうやら男性的に見られていないことは、少なからずコンプレックスのようだ。

そんな文弥を尻目に、亜夜子が芥に尋ねる。

 

「それで手筈はどうしましょうか?」

「基本は自分が一人で動くよ。封印が出来たら2人を呼ぶ。ただ……」

「ただ?」

「どうやら、パラサイト以外のお客さんも結構いるみたいだから時間との勝負かな」

 

お客さんと聞いて亜夜子と文弥の顔に緊張が走る。

 

「どれくらいか分かりますか?」

「そうだね。自分たちを1グループとすると、最低4つはグループがいるかな」

「よくそこまで把握できますね……」

 

文弥は尊敬の眼差しで芥を見つめている。おもばゆい。

 

「それならば、早速動くとしましょうか」

 

亜夜子のその言葉を合図として、このグループは野外演習場へのフェンスを乗り越える。

人口森林に足を踏み入れた所で、

 

「じゃあ、亜夜子ちゃん達はここで待機で。終わったら呼ぶよ」

「分かりましたわ」

「ご武運を」

 

その言葉を背に受けて、芥は森が作り出す闇に溶けていき気配が消える。

一瞬で芥を見失った2人は、驚き関心しながらも芥の連絡を待つためにその場で身を潜めた。

 

闇に身を溶かしながら、芥は森を進んでいく。

一度接触したからか、パラサイトの位置はなんとなく解るようになっていた。

封印対象は2体。が、どこも3体以上で固まっているので手頃なのが見つからなかった。

 

(まぁ、最悪1体は排除しても問題ないか)

 

そう考え直して、群れの一番端にいるグループに目星を付ける。

本隊との距離もはなれているので、助けが来るまでの時間もあるだろう。

と、考えているうちに、反対方向で戦闘の機運が高まったのを感じた。

 

(どこかのグループが戦闘を始めたか。それに乗っからせてもらおう)

 

戦闘が始まったグループの合流しようと動き出した、最端のグループにこちらも攻撃をしかける。

芥は移動しようとしたパラサイトの一体の懐に既に入っていた。

 

地面を踏み込み、その反発力を滞らせることなく上半身に伝え、上半身をひねり右拳を相手の心臓に向かって突き出す。

「裏打ち」を持ってパラサイト本体に直接打撃を叩き込む。

ダメージを受けたパラサイトは、防御が弱くなり本体がむき出しになる。

 

その隙を狙って、拳打から掌打へと攻撃を変化させる。掌打で心臓を再度撃ち抜くと同時に封印術式を叩き込む。

右腕からサイオンの光が溢れる。イメージとしてはサイオンを球状の檻の様に展開して封印する。

球状の檻に閉じ込められたパラサイトは、宿主との接続を切られその場に膝を着いて倒れ込んだ。

 

他のパラサイトが気づいたのは、仲間が倒れ込んだ所からだった。

仲間の視線が芥に向く。

その間に芥は二人目のパラサイトの懐に入り、同じ様に拳打から掌打を叩き込み封印処理を成功させた。

そこでようやく最後の一人は迎撃体勢を取っており、大型のナイフを構えている。

 

(ノルマは達成した。あとは殲滅でいいか)

 

二人目が崩れ落ちるのを確認せず、最後の一人に芥は向かう。

最後の一人も決して油断していたわけではない。何時でも迎撃できるように気を張っていた。

しかし、気を張っていても視えなければ、認識していなければ意味はない。

 

芥の拳に起こりはない。起こりが無いということは相手に攻撃が認識されないということ。

いわゆる「無拍子」といわれる呼吸を持って、芥は最後のパラサイトの心臓に拳打をめり込ませた。

爆発的なサイオンを、相手の核に叩き込む。受け止めきれないほどのサイオンを流し込まれ、最後のパラサイトは消滅した。

パラサイトが消滅し、宿主が地に伏したのを見届けた後、雲散霧消を使って死体を物理的に抹消する。

封印された2体を見下ろしながら通信端末に話しかける。

 

「亜夜子ちゃん、こっちは終わったので回収をお願い」

『分かりました。そちらに向かいますわ』

 

数分後、亜夜子と文弥、そしてお付の人達が合流してきた。

亜夜子はお付の人達に指示を出して、パラサイトを拘束していく。

 

「それにしてもあっという間でしたわね」

「時間掛けても仕方ないしね。手早く済ませられるならその方がいい」

 

芥は今も戦闘が行われている方を見ながら答える。

お付の人が「完了しました」と報告してくる。

 

「撤退、でよろしいですか?」

「うん。余計なイザコザに巻き込まれる前に退散しよう。目標は達成したし」

「了解しましたわ」

 

そうして、達也たちとは別に行われた戦闘は、他に知られることも無く静かに終わりを告げた。

 

3月。

小体育館では卒業式を終えた三年生の送り出すパーティーが執り行われていた。

芥は風紀委員として、各会場を回りながら警備に当たっている。

一通り会場を回った後、カフェテリアに入ると先に達也が入っているのを見つけた。

達也の反対側の席に座って、

 

「達也は休憩か?」

「いや、深雪を待っているんだ」

「そっか」

 

そうして達也を雑談をしていると、パーティーが終わったのか、深雪、真由美、リーナがカフェテリアに入っていきた。

 

「おまたせしました、お兄様」

「いや、待ってはいないよ。それでパーティーはどうだったんだ」

「リーナが盛り上げてくれたので、大いに盛り上がりました」

「何したんだ?」

「バンドを組んで、素晴らしい歌声を披露してくれたので場は大盛り上がりでした」

 

リーナは顔を手で覆って赤面している。大分恥ずかしがっているようだ。

そうして、パーティーは思っていた以上に卒業生に楽しんでもらえたようだった。

芥は風紀委員なので、お手伝いはしていないが。

 

どんなに「知識」があったとしても予想外なことは起こる。

春休みに入って幾日たったある日。芥の家に来客があった。

 

呼び鈴がなり、インターホンから来客を確認する。

インターホン越しに見えるのは、大きめの鞄を抱えグレーのワンピースを来た小柄な少女だった。

玄関に向かい、扉を開ける。

扉を開けた先にいたのは、三つ編みのおさげを両肩から下げている少女で、玄関先で腰を折り礼をすると自己紹介を始めた。

 

「四葉より使わされてきました胡 弓奈<えびす ゆな>と申します。本日より住み込みの家政婦としてお勤めをさせて頂きます」

 

芥はその言葉にフリーズした。この展開は全く予想していなかったからだ。

少しの沈黙が走ったが、

 

「とりあえず中にどうぞ」

 

と、絞り出すのが精一杯だった。

リビングに少女を座らせて、お茶を出して自分も座ると弓奈は鞄から一枚の手紙を取り出し芥に差し出した。

受け取ったその手紙の主は真夜さんだった。

封を明けて中身を確認する。要約はこうだ。

 

弓奈ちゃんは今年から第一高に進学することは決まっています。

弓奈ちゃんは今後、四葉の護衛者を候補に入れているので、鍛えてあげてくれますか?

弓奈ちゃんはメイドとしても仕込まれているので、貴方の生活の補助になるでしょう。

 

なんかこれもう四葉に囲われている気がするんだろうが、気のせいだろうか。

手紙を読み終わり視線を弓奈に向けた芥に対して、弓奈は立ち上がり腰を折りながら、

 

「不束者ですが、よろしくお願い致します」

 

どうやら、俺には拒否権は無いようだ。

こうして、怒涛の一年間の学園生活は終わりを告げたが、これからを思うを頭が痛くなる思いだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

魔法科高校の劣等生 四葉の火の鳥(作者:ペンギン豚)(原作:魔法科高校の劣等生)

世界とは理不尽である。▼少年はそう思った。だからこそ人を救い続けないといけないと感じていた。▼物語は囚われの少女を少年が救出するところから始まる。▼※初めての投稿になります。


総合評価:539/評価:5.96/連載:63話/更新日時:2026年06月17日(水) 00:45 小説情報

自己加速しすぎてスタープラチナ・ザ・ワールド(作者:常谷 優大)(原作:魔法科高校の劣等生)

‐自己加速術式‐▼術者自身の運動速度を向上させ、移動速度や白兵戦の攻撃速度を爆発的に高める魔法である。▼魔法師の中では初歩的な魔法...▼のはずだった。▼西暦2095年、国立魔法大学付属第一校--通称"第一高校"に入学した一人の少年、▼「比企谷八幡」▼彼の使う自己加速魔法は、世界の理さえ覆す。▼「魔法科高校×やはり俺の青春ラブコメは間違っ…


総合評価:1083/評価:6.84/連載:3話/更新日時:2026年05月27日(水) 21:31 小説情報

魔法科高校の異端魔術師(作者:もやしになりたい)(原作:魔法科高校の劣等生)

死の間際、佐藤雄馬は他人を庇って命を落とした。▼その死は、本来あるはずのないものだった。▼神の手違いにより、『魔法科高校の劣等生』の世界へ転生した雄馬は、英霊たちとの縁を与えられ、新たな人生を歩み始める。▼そこで彼が触れたのは、魔法が技術として完成された世界と、英霊たちが語る神秘としての魔術だった。▼想子によって情報体へ干渉する“魔法”。▼魔術回路と魔力によ…


総合評価:2381/評価:7.19/連載:37話/更新日時:2026年05月14日(木) 16:46 小説情報

私の主は最高です(作者:ノーム)(原作:魔法科高校の劣等生)

これは魔法科高校劣等生に登場する北山雫の幼馴染み(義弟)兼北山家の(自称)最高執事を目指す男の物語▼本作の主人公は年下です


総合評価:674/評価:7.53/連載:15話/更新日時:2026年06月16日(火) 00:02 小説情報

魔法科高校の劣等生の弟(仮)(作者:検討使)(原作:魔法科高校の劣等生)

劣等生の兄には優等生の妹、……そして最強の弟が居た。


総合評価:165/評価:6.67/連載:9話/更新日時:2026年06月09日(火) 06:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>