魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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第三話

放課後。

 

またまた、レオからの発信で行動することになった。

 

「帰ろうぜ!」

「ああ」

「帰るかー」

 

達也と俺が返答する。

この時代はカバンを持ってこなくても学校生活を送れるのがいいところ。

俺、レオ、達也、エリカ、美月のグループで帰る。ああ、これぞ青春って感じ!

 

一校の校舎を出た所で、一科制のグループとかち合った。

その中に、一際目立つ美少女がいる。

あの新入生代表挨拶を努めた美少女が、こちらのグループの達也に気づくと近寄って来た。

そして、達也に語りかける。

 

「お兄様、今お帰りですか?」

「ああ。みんなと帰るところだ」

「ならば、ご一緒してもよろしいでしょうか?」

 

すると、なぜかこちらグループの視線が俺に集中した。その視線に俺は首をかしげると、

 

「そう言えば、芥は初めてか。俺の妹、司波 深雪だ」

 

達也はそう言って妹を紹介してくれた。

俺は紹介された少女に体を向けて自己紹介をしながら、軽く会釈する。

 

「初めまして。自分は世羅 芥と言います」

 

少女、司波 深雪も返答しようと俺と向き合ったその時、そよ風が2人の間を通り過ぎ、俺の左袖がひらひらと揺れた。

 

「初めまして。私は司波……」

 

その視線が俺の左腕に吸い込まれた。

ひらひらと揺れる左袖に衝撃を受けたようで挨拶を途中で切り、両の手を口に当てて眼を見開いている。

 

俺は不思議に思ったので、聞いてみた。

 

「どうかされましたか?」

「いえ……、あの……、その腕は……?」

「ああ。これですか。昔、事故に合いまして。今は生活に支障はないですよ」

 

左肩を少しだけ上げると、無い袖がふわりと揺れる。

少女の驚きは消えていない様子だったが、自己紹介中だった事を思い出したのか、改めて姿勢を正し

 

「失礼しました……。私は司波 深雪と申します」

 

と、深々と腰を折って礼をした。自己紹介にそこまで大げさな。

 

「これはこれは、ありがとうございます。司波さん」

 

礼を戻した司波さんに丁寧に返す。当たり障りの無い呼び方をしたつもりだったが、

 

「いえ、私のことは深雪、とお呼び下さい」

 

きっぱりと、断言する口調で言い放った。

おおう、そうですか。綺麗な人にそう言われるとちょっと圧が強い。

 

「わかりました。深雪さん」

「いえ、深雪、と。それと口調もラフで結構です」

 

ずいっと体を寄せてきてまで、名前呼びを強制してくる。

しかも、その相手は圧倒的な美少女だ、()()()()()()()()()()()()、精神は体には引っ張られる。

精神的年齢は年相応に近くなっているためか、顔が赤らんでしまうのは仕方が無いことである。

 

「っ……。わかったよ、深雪。これでいいかな?」

「はいっ!」

 

俺の返答に満足が言ったのか、俺の眼の前で花のような笑顔を見せてくる。

こんなの誤解するなと言う方が難しい。

そうして、俺から離れると深雪は「行きましょうか」と皆を先導した。

 

深雪が見えない所でふーっと深く息を吐く。が、それは達也に見られていた。

 

「悪いな、芥。いつもはあんな積極的ではないんだが……」

「いや、大丈夫。ちょっとキャパシティを超える美少女を浴びただけだから」

「美少女を浴びるってどんな表現よ。まぁ、解らなくはないけど」

 

エリカがフォロー(?)してくれたので、俺達も深雪に付いてこうとして歩き出そうとした、その時だった。

 

「ちょっと待てよ! 司波さんは俺達と帰るんだろう!」

 

元々いた一科生のグループから待ったが掛かった。

しかし、それを呼ばれた本人がぶった切った。

 

「いえ、私はこちらのみなさんと帰ります」

 

それを火蓋に、一悶着が始まった。

美月とエリカ、レオが矢面に経って、一科生の男子生徒と口論をしている。

俺と、深雪、達也は一歩引いた所でそれを見守っていた。

 

意外にも一番矢面に立っているのは美月だった。

 

「深雪さんは、お兄さんと一緒に帰るって言ってるんです!」

「これは1-Aの問題だ! 二科生(れっとうせい)ごときが一科生(ゆうとうせい)に口出しするな!」

 

その言葉を聞いたレオとエリカが、臨戦態勢に入ったのが傍目でもわかった。

そして、その鉾先は俺にまで飛んできた。その男子生徒は俺を指さし、

 

「それに、そんな片腕のやつがいるなんて、二科生の質も落ちたもんだ!」

 

と、言い放った。もう口が止まらないようだ。

それに関して俺は何も感じなかったが、隣にいた深雪が反応した。正確には反射的に魔法が発動しようとした。

 

「貴様っ……!」

 

サイオンが深雪の魔法演算領域に注がれる。しかし、その直前に俺はそのサイオンを()()()()()()()()()()()

結果、深雪の魔法は不発となった。

 

「なっ……!」

「えっ……?」

 

兄妹それそれが反応を返しこちらを驚愕の面持ちで見るが、俺は素知らぬ顔を通して前を見続ける。

 

そして、美月の正論も止まらなかった。

 

「同じ新入生じゃないですか……。貴方達、一科生が今の時点でどれだけ優れているのですか!?」

「くっ……」

 

その正論パンチを食らった生徒はたじろんだが、口元を歪めると、

 

「どれだけ優れているか知りたいか? これが才能の差だ!」

 

そういって、男子生徒は見事な身体操作で懐からCADを取り出し魔法を起動させた。その発動速度には眼を見張る物がある。

しかし、それはエリカの警棒の一閃によって阻まれた。

 

その一閃はCADだけを正確に打ち抜き、CADが男子生徒の手から飛んでいった。

確かにこの距離では魔法より物理の方が速いが、それでもエリカの速度も真に迫っていた。

 

しかし、それは油に火を注ぐ行為でもあった。

周りにいた生徒たちが感化されて、それぞれの腕に付けたCADをエリカやレオ達に向けてきた。

 

やばいなー、と何処か他人事のように考えながら、

発動された術式を破壊しようと右手にサイオンを集めようとした所で、こちらに近づいてくる人物に気づいた。

達也が確認をとってくる。

 

「芥」

「大丈夫だと思うよ」

 

一科生の少女が発動しようとした術式が、外部から干渉を受けて起動式が破壊される。

それに衝撃を受けた少女はよろめいたが、後ろにいた少女に受け止められた。

 

起動式を破壊した人物、生徒会長は毅然とした態度で、こちらに近づいてきた。

 

「自衛目的以外での対人魔法の使用は犯罪行為ですよ!」

 

そして、もう一人。

 

「風紀委員長の渡辺 摩利だ。事情を聞きます。全員付いてきて下さい!」

 

そういって、場の混乱を治めに来た。

 

皆が呆然として立ち尽くしている所、俺はその風紀委員長へと近づいていった。

右手で頭を掻き、眉を下げながらという、申し訳なさを演出しながら、

 

「いやー、申し訳ありません。悪ふざけが過ぎました」

「悪ふざけ?」

 

近づいた俺に風紀委員長はきつい視線を送ってくる。結構美人だから迫力がある。怖い。

 

「はい、森崎一門のクイックドローは有名ですから。後学の為、見せてもらっただけです」

「しかし、その女子が攻撃魔法を使用していたのは、どう説明する?」

 

風紀委員長はよろめいた少女に目線をむける。が、

 

「あれは閃光魔法ですし、威力も押さえられていましたよ?」

「ほう? どうやら君は展開された起動式を読み取ることが出来るようだな」

 

更に演技を続け、大げさに顔の前で右手を左右に振る。

 

「いえいえ、そこまでではありませよ」

 

風紀委員長はニヤリを口元を上げると、

 

「ごまかすのも得意なようだ」

「ごまかすなんてとんでもない。自分はただの二科生ですよ」

 

そうして、その場は解散となった。

風紀委員長と生徒会長による厳重注意は受けたが、それだけで済んだのは、先輩方の懐が深かったためだろう。

 

解散する間際に一科生の男子生徒が捨て台詞を吐いていった。可愛らしい。

 

帰ろうとする俺達に近づいてくる人影が2つあった。

それは先程、閃光魔法を放とうとした少女とその近くにいた少女だった。

 

髪を両サイドで結んでいる少女が俺達の前に来ると、ぐっと制服のスカートを握って謝罪してきた。

 

「光井 ほのかです。先程は失礼しました!」

 

後ろにいる少女も一緒に頭を下げている。

それに俺達はちょっと呆気にとられた。一科生が二科生に頭を下げるなんてそうそう無い。

そうして、こうも付け加えてきた。

 

「私たちも一緒に帰ってもいいですか!?」

 

こうして、『あいつ』が言っていた放課後の一波乱は収まったのだ。

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