一科生との一悶着のあと光井 ほのか<みつい のほか>と北山 雫<きたやま しずく>と一緒に俺達は下校した。
途中、アイスを買食いしながらも、2人の興味は達也の方に向いていたので、まぁ、結果としてはオーライか。
そんな中、俺の隣に来た深雪は俺の事をねぎらってくれた。
俺の身長は達也くらいなので、深雪を見る目線は自然と下になる。
その心遣いは正直いって嬉しかった。結構面倒な役割を引き受けたからな。
「お疲れ様でした」
「ああ……、まぁ、出しゃばりすぎたかな?」
「そんな事はないかと。程よく場を治めたと思います」
「そっか、ありがとう」
「いえ!」
深雪はなぜか嬉しそうにしていた。俺が目立つのが嬉しいのだろうか?
そんな事を言いながら、俺達は放課後の雑談を終えて、それぞれに帰宅した。
帰宅後、制服から部屋着に着替え、コーヒーを取り出してリビングで今日の疲労を溶かしながら、一息ついていた時。
また「あいつ」から通話がとんできた。その声には多分に愉悦が含まれている。
『どうだった?』
「どうもこうも、学校2日目であんな重いイベントがあるとは……」
そして、向こうの「あいつ」は確信を持って聞いてきた。
『司波 深雪とは会えたんだろ?』
「ああ、会えたよ。それもお見通しか」
『今回のイベントを考えると必然的にそうなるだろうよ。で、どうだった?』
その言葉には絶世の美少女と会ってどうだったか、というのが言外に含まれていた。
「どうとは……。まぁ可愛らしい少女だなとは思うよ。それだけだよ、押しは強そうだけど」
『で、重度のブラコンは感じたか?』
「いや、達也に対して一定の親愛は見て取れたが、深い感じはしなかったな」
『やはりそこも改変が入っている感じか……』
必要があるか分からないその情報だけで「あいつ」は考え込んだ。しかし、次の言葉に俺は衝撃を受けた。
『司波 深雪だけどな、おそらく彼女が
「え、マジで!? たしかに俺の左腕を見た時に衝撃を受けていたけど……」
『当時の資料を見るに、彼女があそこに居たのは間違いないからな』
「そっか、あの時の女の子が深雪なのか……。まぁ、良いことだと捉えよう」
『そうだな。で、明日だけど』
「明日も何かあるの……?」
もう、お腹いっぱいなんだけどなー。
『お前には直接関係無いかも知れないが、司波 達也が風紀委員に任命される』
「あー、そのイベントは覚えてるわ」
『もしかしたら、お前にもアクションがあるかもしれん。備えておけ』
「了解」
そして、通話は切れた。
そっか、
そう心の中で思いながら、俺はコーヒーを置いて夕食の準備に入った。
同じような時間帯、司波家でも似たような話がされていた。
しかし、向こうとは対象的に深雪と達也は深刻そうな面持ちで、リビングにて話し合っていた。
「では、芥が……」
「はい。あの時、私を助けてくれた少年かと思います。ちゃんとお顔を見たら面影がありましたから……」
「そうか。それは何かしら礼をしないとだが……、しかし、あいつが見せたあの技術……」
「まさか、他人が発動しようとしたサイオンを横取りするとは……」
そう。
「ああ。そんな技術聞いたこともない。注意を払っておく事になるだろうな」
「しかし! あの方は!」
「お前の気持ちも解る。だが、ガーディアンとしては、危険要素を見過ごすわけにはいかない」
「……わかりました」
しぶしぶといった感じで深雪は引き下がった。
そうして、2つの家の夜は更けていった。
翌日。
朝、最寄り駅に着いて、学校への道を一人で歩いていると、レオにぽんっと肩を叩かれた。
「よっ、おはよう。芥」
「ああ、おはよう。レオ」
2人並んで、学校へ向かう。
無意識だろうが、レオは俺の左側を歩いている。こういうさりげない気遣いがレオっぽい。
話題はそうそうに、昨日の放課後の事に移った。
「昨日は大変だったな!」
「大変だったのはこっちだよ。レオもエリカもやる気まんまんだったじゃないか」
「いやー、あんだけ言わわれりゃ、そうもなるって」
「そこは自制して欲しいところだったよ」
「まぁ、あの女が先に手を出さなければ、俺が動いていたしな」
なんて、他愛もない会話をしながら俺達は登校した。登校万歳。こういった「普通」に憧れていたのだ。
教室に着き席に向かうと、美月は既にいたが、達也やエリカはまだのようだった。
「おはよう、美月」
「おはようさん」
「おはようございます。芥さん、レオ君」
挨拶をかわして自分の席に座り、コンソールを立ち上げて今日のスケジュールを確認する。
今日は魔法の実技があるのか。ようやく魔法科高校っぽくなってきたな。
そうしていると、達也も登校してきた。
「おはよう」
「おはようございます」
「おう、おはようさん」
「おはよう」
美月、レオ、俺の順番で朝の挨拶を返す。
達也は席に着くと、体を俺の方に向けて尋ねてきた。どうしたんだろうか?
「芥、昼休みに時間はあるか?」
「昼休み? ああ、空いてるけど、何かあった?」
「ああ、朝に生徒会長と会ってな。深雪と一緒に昼食に誘われたんだが、お前も連れてきて欲しい、と言われたんだ」
「……なんで俺が?」
「昨日の立ち回りを見た限り、生徒会長はお前に興味を持ったんだろうな」
「まじかー」
思わず天を仰ぐ。そこまで悪目立つつもりは無かったんだけどなー。
俺は顔を達也の方に戻して、
「わかった、参加させてもらうよ」
「助かる」
言い終えると、達也は体を戻して自分の端末に向き合った。
その背中を見ながら思う。
もう生徒会のメンバーとコネが出来るってことか。ペースが速いなー。
もう少し、普通の高校生活ってやつを堪能したかったんだが。