昼休み。
達也と一緒に学生棟の4階へと上がる。そこの角部屋が生徒会室だ。
生徒会室の前には既に深雪が立って待っていた。俺達は深雪に近づく。
「待たせちゃったかな?」
「いえ、私も先程来たばかりですから」
ひとまず、俺と深雪で社交辞令を交わす。
全員が揃ったことを確認すると、深雪が代表して生徒会室の重厚な扉をノックする。
すると中から「どうぞー」という声が聞こえてきたので、扉を開けて俺達は中に入る。
先ずは達也が先に入り、深雪、俺の順番だ。
中に入ると、生徒会のメンバーが一通り揃っているようだった。
入り口正面にある会議用の長机には、
一番上座に生徒会長、その右隣に初めてみる長い髪の綺麗な女生徒が。さらに右隣に昨日見た風紀委員長、そして、小柄な女生徒がいる。
俺達を代表して、深雪が挨拶をする。
「本日はお招き頂きありがとうございます」
「いいのよ、そんな固いことは。ささ、座って」
生徒会長が俺達に椅子を進めてきた。
俺達は上座から、深雪、達也、俺の順番ですわる。なんというかこの面子だと俺だけ場違いな感じが凄いな。
言い方が悪いかも知れないがネームドに囲まれて居心地が悪い。
生徒会室には備え付けのダイニングサーバーがあるので、そこから食事を取り出し机に並べる。
全員の前に食事が並ぶと、生徒会長は俺を見た。
「始めましての人もいるから、自己紹介していくわね。先ずは私から。七草 真由美<さえぐさ まゆみ>。生徒会長をしています」
そして、手を右側にいる女生徒にむける。
「こちらが、会計の市原 鈴音<いちはら すずね>、通称、りんちゃん」
そのりんちゃんは努めて冷静に七草会長に返す。
「そう呼ぶのは会長だけです」
それを無視して七草会長は話を進める。
「その隣はもう知っているわね。風紀委員長の渡辺 摩利。そして、書記の中条 あずさ<なかじょう あずさ>。通称、あーちゃん」
あーちゃんはそう呼ばれると抗議の声を上げた。
「会長! 後輩の前ではあーちゃん呼びは困ります! 私にも先輩としての意地が……!」
それすら、無視。
あーちゃんはがっくりを肩を落した。その姿が様になっているのは言われ慣れているせいか。
「あとは、副会長のはんぞーくんを加えたメンバーが今期の生徒会メンバーになります。そちらも自己紹介をしてもらってもいいかしら?」
七草会長は俺達に手を向けて、挨拶を促してきた。
俺と達也は素早く目配せをし、達也から自己紹介を始めた。
「初めまして。自分は司波 達也。深雪の兄になります、よろしくお願いします」
「初めまして、自分は世羅 芥といいます。よろしくお願いします」
揃って座礼をして、俺達2人の簡単な自己紹介をが終わる。
そうして、食事が始まった。
俺も右手でスプーンをとり、食事を開始していく。
その器用に食べる姿がめずらしかったのだろう。生徒会の面々の視線が俺に集まっているのがわかった。
食事の手を止めてスプーンを置いて、聞いてみる。
「どうかされましたか?」
その言葉にハッとなった全員が慌てて視線を戻したがもう遅い。
代表してか、一番こういうのが言える性格なのか、渡辺先輩が聞いてくる。
「いや、マナー違反だとは思っているのだが……、ずいぶん器用だなと思ってな」
「あー、他人から見ればそうみえますかね。でも、結構大変だったんですが」
「そうなのか?」
「ええ、俺は
その言葉に深雪の箸がびくっと固まるが、俺には達也が壁となって見えなかった。
「今は問題無いんで、気にしないで下さい」
「そうか」
ちょっと会話が重かったのもあり会話が途切れたので、俺は話題を変えた。
「渡辺先輩はお弁当なんですね。御自分で作っているんですか?」
その話題転換をちゃんと受け取ってくれた、渡辺先輩が返してくれる。
「……それは、私が料理をするのが以外に見える、ということか」
「まぁ、正直にいうと」
「正直すぎるな君は。私だって料理くらいは出来る」
「俺は基本サーバーしか使ってないので、料理できる人は羨ましいです」
そう言いながら食事を続けていると、以外な方向から話題に絡んでくる人物がいた。深雪だ。
「では、私がお弁当を作ってくる、というのはどうでしょうか!」
「心使いは嬉しいけど、そういうのは先に達也に……」
「俺は問題ないぞ」
こいつ、しれっと……!
「2人分も3人分も作るのは同じですから!」
机から身を乗り出して、眼を輝かせながらこちらを見ている。
あー、これは逃げられないやつだ。
「……じゃあ、お願いしようかな?」
「はい!」
嬉しさ全開で返事をすると、深雪も食事に戻っていった。
その嬉しさはまるで、周りに花でも咲いてそうな感じだった。
一応、恨みを込めた視線を達也に向けてみたが、ものの見事に無視された。こやつ。
食事が終わり、皆の前にコーヒーが置かれると七草会長が本題を口にした。
「通例では、新入生代表挨拶をした方は生徒会に入って頂くことになっています。深雪さん、あなたに生徒会に入ってもらいたのだけれど」
「私がですか……?」
「ええ、私たちはあなたがふさわしいと思っています」
「お兄様……」
少し不安そうに深雪は達也の方を見る。達也はそれを受けて頷きを返す。
深雪は意を決したように立ち上がると、深々と一礼をして、
「未熟者ではありますが、よろしくお願い致します」
「よかったわー。引き受けてくれて」
顔の横で両手を合わせて嬉そうにする七草会長。
そうして、その場は終わるかと思った矢先、渡辺先輩が手を上げて発言してきた。
それに視線が集まる。
「真由美、今期の風紀員の補充要員がまだ決まっていない」
「それは、次の委員会で決めるって話じゃ……」
「規則では、生徒会委員は一科生から選ばれることになっている。が、風紀委員の指名にその規約はない」
すると、我が事を得たりと言わんばかりに、七草会長はガタッと音がある勢いで立ち上がり渡辺先輩を指さした。
「それよ! 摩利! 風紀委員なら問題ないじゃない!」
そして、次の指差しの標的になったのは達也だった。
「生徒会は司波 達也くんを風紀委員に指名します!」
それに反発して、次に立ち上がったのは達也だった。
「ちょっと待ってください! なせ俺なんですか? それに俺は二科生ですよ?」
「二科生であることは問題ない。荒事になれば私がいるからな」
「あなたを指名するのは、入学試験の筆記が学年一位であったことから、魔法に精通していると思われるためです」
渡辺先輩ニヤリと笑い、七草会長は冷静に返し、達也の退路を潰す。
そして、渡辺先輩は、次になぜか俺の方をみる。はて?
「そして、だ。風紀委員には毎年、補欠枠が一つある。今までは使われていなかったのだが……」
まさか。
「その補欠要員として、世羅くん。君を指名したい」
その言葉に驚いたが、達也が反発してくれたお陰か、俺は幾分か冷静に受け答えることが出来た。
「なぜ、俺なのでしょうか? 俺も二科生ですし、こんなんですよ」
と、無い左腕を動かす仕草をする。
「さっきも言っただろう、荒事は私がいるから問題ない。昨日の君の胆力を買いたいのだ」
そう返されると、こちらは反論できそうにもない。昨日の俺、バカ!
そうして、膠着状態が続いていると、予鈴が鳴った。
「続きは放課後にしたいんだが、かまわないか?」
俺と達也は視線を合わせると、
「「わかりました」」
一緒に同じ言葉で返答した。
なぜか、深雪が俺を見る目が熱っぽく潤んでいたのは気のせいだろうか。