魔法科高校の劣等生 ~隻腕の魔法使い~   作:なべを

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第六話

「風紀委員?」

 

魔法実習室で練習機にいつものグループで並んでる際に、昼休みの話題になった。

エリカ、俺、美月、達也、レオの順番で練習機の順番の列に並んでいる。

先程の言葉はレオから出た言葉だ。

 

「風紀委員って危ないんじゃ……」

 

美月が心配そうに言ってくれる。

それに、俺と達也が言い訳をする。

 

「美月の言う通りなんだけど、荒事は全部引き受けるって言われては、逃げられなくてね」

「ああ、しかも生徒会長までもタッグを組んでくるから、更に逃げ場がなくてな」

「そうそう、っと、エリカの番だぞ?」

「ああ、ごめんごめん」

 

エリカは練習機に向かって行った。

今回の練習機でやることは簡単だ。

練習機から魔法式を読み込み、練習機の前にある物体を加速・減速・停止させる。これを3往復する。これだけだ。

エリカは成功させたようで、出来ましたけど? とすました顔で列の後ろに並び直しに向かった。

 

次は俺の番だ。

右手で魔法式を展開して、魔法演算領域に送り込むのに時間が掛かる。まぁ、()()()()()()使()()ならこんなもんだよな。

やがて、物体は、加速・減速・停止を繰り返し俺の番は終了した。ふーっと一息ついて俺も列の後ろに回る。

疲れてもいない右手を軽く振る。それを見られたようで、エリカが聞いてくる。

 

「苦手なんだ?」

「ああ、なんというか、大雑把に魔法を使うのは良いんだが、決められた通り使うのが苦手でな」

「ふーん、まぁ、なんとなくわかるわ」

 

そうして、授業は過ぎていき放課後になった。

 

生徒会室に行くために、学生棟の4階にあがる事になるが、

物理的にも、心理的労力的にも足が重い。隣を見ると達也も同じようだ。

 

生徒会室前に着くと、前と同じ様に深雪が待っていた。

しかし、今回の主役は俺達だ。ノックも俺達がする必要がある。

俺は達也に目配せすると、達也は頷き生徒会室の重厚な扉をノックした。

前と同じ様に返事がったので入室する。

 

夕方の赤い色が生徒会室を埋めていた。

その窓際に一人の男子生徒が後ろ手に組んで立っていた。昼休みには見なかった人だ。

 

「司波 達也です」

「世羅 芥です」

「司波 深雪です」

 

入ってきた俺達に対して、七草会長、渡辺先輩は気さくに返してくれる。

 

「いらっしゃい」

「よっ」

 

しかし、窓際に立っていた男子生徒は、俺達の挨拶に振り向くと、険しい顔でこちらを見てきた。

こちらに歩み寄っていくると、「俺達」を無視して、深雪にだけ挨拶をした。おー、すげー胆力。

 

「生徒会副会長の服部刑部です。司波さん、生徒会にようこそ」

 

その明らかな悪意ある態度にムスッとしながらも、深雪は会釈を返した。

副会長は「俺達」には気にもとめず、目線すら合わせずにその場を去り同じ位置に戻った。

なるほど。一科生と二科生の差別ってこんなに分かりやすいんだなぁ、と感想をいだいていると、深雪は中条先輩から仕事の説明を受けるようだった。

で、俺達は、

 

「君たちはこっちだな」

 

そうって、渡辺先輩は生徒会室隅にある扉の前に移動した。

その行動に達也が質問する。

 

「こっちとは?」

「風紀委員室だ。説明もそっちの方がいいだろう?」

 

どうやら拒否権はないようだ。付いていこうと動き出した時。

それに待ったを掛けたのは俺達ではなく、先程、俺達を無視した服部副会長だった。

副会長はこちらを見ると

 

「その一年生達を風紀委員するのは反対です。過去、二科生(ウィード)を風紀委員に任命した前例はありません」

 

それに渡辺先輩が反論して、どんどんヒートアップしていく。

 

「風紀委員のわたしの前でその呼び方をするとはいい度胸だ」

「風紀委員は実力で取り締まる役職です。実力が劣る二科生(ウィード)には務まらないでしょう?」

「そんなことは無い。この2人は二科生の中でも特別に秀でたものを持っていると思っている」

 

渡辺先輩に舌戦で勝てないとみたのか、副会長は七草会長に泣きついた。

体を渡辺先輩から、七草会長に向きかえると、

 

「会長! 私は副会長として二科生の風紀委員就任を認めません!」

 

なんというか情けないワガママみたいなことを言った。だせー。

七草会長は困ったように、頬に手を当てて、

 

「そうねぇ……、じゃあこうしましょう!」

 

顔の前で手をぽんっと叩き、いいアイディアが浮かんだと言わんばかりに、

 

「模擬戦をすればいいのよ!」

 

所変わって、演習室。

七草会長の提案はしぶしぶながら受け入れられ、生徒会の面子と俺達は演習室に来ている。

達也はCADの所持許可を得て、既に手元に持っている。

 

「それじゃあ、先にはんぞーくんと達也くんで試合ね」

 

七草会長がそういって、対戦カードが決まった。

 

俺は生徒会の面子と一緒に、演習室の壁際に並んで待機している。

なんか今の俺は空気みたいだな。存在感がない。なんてぼんやり考える。

俺の隣にいる深雪は、何処か嬉しそうにも見えるが。

 

対戦のルール説明が行われている。

基本的には危ないことは駄目よってことだ。まぁ、高校生レベルのイチャつきで下手な事は起きないだろう。

 

そうして、対戦が始まると決着は一瞬だった。

開始直後に達也は相手の後ろをとると、魔法を発動。それをくらった服部副会長は気絶した。

 

渡辺先輩が服部副会長を介抱しながら、達也の戦闘の振り返りが行われている。

小難しい理論は置いておくが、まぁ達也が常識から外れた例外だということは証明された。

 

服部副会長は回復したが、まだふらつきはあるようだ。

なので、七草会長と渡辺先輩がこれからのことを話している。

 

「次は芥くんとも試合してもらおうと思ったけど、このままじゃ危ないわよね?」

「そうだな、念のため、試合は避けるべきだろう」

 

そのタイミングに乗っかってみた。

 

「じゃあ、俺の風紀委員入会も無しで…」

「「それはだめ」だ」

 

ガクンと肩を落す俺。逃げ切れなかったかー。

そんなとき、思わぬところから話が割り込んできた。

 

「それなんですが。俺と芥で試合というのはどうでしょうか?」

「達也?」

「服部副会長が動けない今、芥の実力を図るにはそれが一番わかりやすいと思いますが」

「おーい、達也くーん。聞いてるー?」

「たしかにそうね。それがいいわね!」

「ねぇー。俺の意見は無視ですかー?」

 

完全に俺の意見は無視だった。

達也は既に開始線に向かっている。

はーっと溜息を着きながら、俺も開始線に向かう。

 

ゆっくりとリズム良く体を動かしながら開始線に着く。

渡辺先輩が確認してくる。

 

「CADはいいのか?」

「俺は、CADがない方が、やりやすいので」

 

会話もリズムよく、テンポよく返す。

 

再度のルール確認をし、渡辺先輩が手を振り上げる。

そして、手が振り下ろされる。

 

「開始!」

 

達也は今度は後ろではなく、右、芥の左側へと体術で移動した。相手の弱点を攻めるのは常套だからだ。

しかし、そこで達也は芥を見失う。見当たらない。というか芥の存在を()()()()()()()()()

達也は慌てて、「眼」の「チャンネル」を切り替えようとした。

だが、その時には芥は達也の正面、懐に潜り込んでいた。だが、まだ達也は芥を知覚できていない。

達也が芥を知覚出来たのは心臓にサイオンの波を流された時だった。心臓に流されたサイオンの波は心臓の伸縮と共に末端に送られていく。

ついに末端に到達すると、達也の体は全身が痺れたように動けなくなり、膝を付いた。

 

今回の決着も数秒だった。

俺は膝を付いた達也を、その前で見下ろしている。

 

「大丈夫か、達也? ちゃんと抑えたつもりだけど」

「ああ、大丈夫だ」

 

そう言って、達也はすぐに立ち上がった。

 

「全身が痺れて動けなくなっただけだからな。手加減ありがとう」

「いえいえ」

 

軽く言い合いながら、俺達は生徒会の面々の方に歩いていく。

しかし、その試合を見ていた全員が、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。

審判をしてる渡辺先輩でさえ動けないでいる。

 

そんな中俺は、普通に質問してみた。

 

「どうかされましたか? というか決着あり、でいいですか?」

 

いち早く復帰した渡辺先輩が呆然として言う。

 

「あ、ああ……。決着は付いた。芥の勝ちだ」

 

そして、次に復帰した七草会長が、困惑をあらわにし、俺に向かって体を寄せながら声を上げた。

 

「ちょ、ちょっと待って! 芥君、今のは一体何!? 何があったか見えなかったんだけど!?」

 

七草会長のその内容に、達也が反応した。

 

「待って下さい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その場にいた、俺と達也以外の全員が頭を縦にぶんぶんと振った。

その光景を見た達也が俺の方を向いて、険しい顔をして聞いてくる。

 

「この混乱ぶり。お前、()()()()()を使ったのか?」

「そんなだいそれた魔法なんて使ってないよ。ただの手品だよ。手品」

 

と、軽い調子で返したが、その視線が緩むことは無かった。

ふっーと溜息を付いて、俺は手品のタネを明かす。

 

「まぁ、警戒してるのは解るけど。もう一度言うけど、系統外魔法は使っていない。

 ただの手品だ。

 いいか、まず俺はみんなの視線を集めるように、ゆっくりとリズム良く動き開始線に向かったな? それで皆を一種の催眠状態にするんだよ。

 この場にいる全員の心拍、呼吸、瞬きのリズムなどを一致させたんだ。つまり、ここにいる全員を一個の生命体に統合したんだ。

 そうすれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()からな。あとはそのタイミングで動けば知覚されないってことだ。

 だから、みんなには見えなかったし、気付いたら達也が膝を付いていた様に見えただけ。それだけだよ」

 

その俺の説明にその場に居た全員が絶句した。

それだけ、と言うがそれは無手の技でも最上位に入る奥義、絶技ではないだろうか。

そんな俺の説明を受けて、達也はようやく納得してくれたようだ。

 

「……ふーっ。なるほど、よく理解したよ。お前がとんでもない化物だってことが」

「やだなー、達也。……達也と同じでこんなのは学校で評価されないからな、評価されないなら意味ないよ」

 

なんか熱い視線を感じるなと思ってその方向を向くと、深雪が俺をとても熱い視線で見ていた。

なんなら紅潮さえしている。なんでだ?

 

こうして、模擬戦は終わった。

規格外の二科生が2人。それが表に現れた瞬間でもあった。

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