超人酒寄彩葉と借金貧乏男子が運命的な出会いをする話   作:陸結

13 / 19
ほんとは一話で書き切るつもりだったのですが...無理でした!!



第十三話 黒鬼一口 前編

 

 

 

VS黒鬼戦。スケジュール調整や広報はうちの兄貴がやってくれた。実体は俺とアキラさんの喧嘩だが、リスナーへの謳い文句は『勝ったら、帝アキラがかぐやへ求婚。負けたら、帝アキラが要求を一個聞く』

 

いやなんで求婚?とは思ったが、兄貴が『せっかく帝なんだから竹取物語っぽく行こう』とのことだった。こういう考え、俺は嫌いじゃない。

 

『な、な、なーんと!あの大人気グループBlackonyxのリーダー、帝アキラが今人気急上昇中のライバーであるかぐやに求婚!?一体どうなってしまうんだぁ!』

『帝のファンサイトは一時茫然としておりましたが、いつものノリで言っているだけでしょう。』

『なんと今回いつもは着ぐるみだったいろPがアバターを公開!!これは世紀の対戦になるぞ!!』

 

実況席では、乙事照琴と忠犬オタ公が何故今回のイベントが開催されたかの経緯を視聴者に説明していた。

 

「3vs3のKASSENバトル...これ勝ち目あるか??」

「あんたがこの戦いの発端だからね」

「でも火種は彩葉だよ?」

 

1週間弱あったので彩葉呼びでも動じなくなった。うん。俺ってば成長してる。

 

「もー!!かぐやを物みたいに扱って!!かぐや雪平に不満いっぱい!!」

 

俺たちはフィールド上で雑談しながら黒鬼を待っていた。でもいくらなんでも遅いな...

 

その時、会場上方の岸壁が爆発し、そこから虎を模したバイクに乗った黒鬼が現れた。

 

『黒鬼!ご来臨~~~~!!』

 

「どるぅらぁ!帝ぉ!」

 

品性のかけらもないかぐやの威嚇をするが、帝は...

 

「前傾姿勢可愛すぎ」

 

超大人の対応をしていた。かぐや...完全敗北..

 

「今日はよろしくねかぐやちゃん」

 

言葉はかぐや宛、しかし、視線と真意は俺と彩葉へ向かっていた。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

俺がも負けじと覇気を飛ばした。

 

SENGOKU

3vs3のPVPゲームでトップレーン、ミッド、ボトムレーンに別れる、一種のMOBAゲーである。こないだやった5vs5とは違うため、上下片方に2人、もう一方のもう1人が行くのが定石。

 

「彩葉。アキラさんとの兄弟喧嘩勝つぞ。かぐやを嫁に出すわけにもいかないしな」

「もちろん。頼んだよ泉」

 

第一ラウンド、俺らの作戦は彩葉とかぐやがトップ、俺がボトム。おそらく黒鬼はトライデントでくるから、彩葉たちが櫓を占拠してそのまま天守閣を落とす。

 

いやこれ勝てるのかぁ?

 

彩葉もかぐやも弱くはないし、むしろ強い方。ただ黒鬼、特に帝アキラは別格なのだ。

 

まあ対策と特訓はしてきた。あとは神頼みだ。

 

ヒュン ピキン

 

飛んできた弓矢を光剣で弾く。

 

「おい。どれだけ離れてると思ってるんだよ。てか、距離減衰でダメージほぼないだろ」

 

姿は見えない。ただ竹林のどこかから乃依が狙ってるのは明らかだった。

 この距離での攻撃、おそらくスタン弓だろう。エイム補正が乗らない代わりに連続で当て続ければ、ハメれるクソ技。

 乃依...相性自体は悪くない。ただネックなのはこの竹林だ。普段だったら相手に気づかれずに近づけるため、俺に有利なのだが...乃依相手では一生嵌められてしまう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ツクヨミ上のKASSEN訓練場。俺は滅多に来ないここに兄貴を呼び出していた。

 

「なぁ兄貴。どうやったら黒鬼に勝てる?」

「何?秘密の特訓?」

「茶化すなよ。せっかく可愛い弟が助けを求めてるんだ。協力してくれよ」

 

以前の俺だったら兄貴に頼ることだけはしなかっただろう。迷惑かけてきた相手だから、なるべく負担になりたくなかった。

 

「以前は俺に助けを求めるなんてしなかったのに、どういう心境の変化?」

「単純に、俺が彩葉とかぐやと一緒に黒鬼に勝ちたい」

 

俺の言葉はシンプルだった。でもその節々にはこないだ誓った覚悟と俺の思いが滲み出ていたと思う。兄貴ならそれをきっと汲んでくれる。

 

「そ...いいね!燃えてきた!俺こういう特訓シーン大好きなんだよ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺は竹林に向かって最速で駆け出した。

 

『前提として、お前の実力自体は悪くない。ステも素早さ(アジリティ)筋力(ストレングス)に振ってる上に軽量武器だから、動きもいい』

 

竹林に入る時、目の前から4本の曲射が飛んでくる。

 

同時に着弾か?いや...この順だな。

 

俺は高速な4本の矢を正確に落としていった。

 

『ただ、vs乃依に関しては作戦は一個しかない。ひたすら走って、矢を弾きながら近づく。乃依の姿を見つけたらお前の勝ちだ』

 

竹林は鬱蒼としてて、どこから弓矢が飛んでくるかわからない。でもそれは乃依も同じなはず。打てる射線は限られる。なら勝機はある。

 

『だから死んでも走り続けろ』

 

無数の斜線が俺へ襲いかかる。高速、中速、低速、曲射、さまざまな方法で、スタンやサイレント、ボム系、さまざまな種類の攻撃を繰り出してくる。

 

まず、ここ

 

1発。

 

次はここ

 

2発。

 

3発、4発、着々と俺は矢を弾き、竹を利用して躱し、竹林の中を疾走する。

 

その時、櫓の上にいる乃依を見つけた。

 

どうしてそこに入れる....

 

櫓の入り口は牛鬼が陣取っている。あいつを倒さない限り、櫓には入れない....

 

いや...誰かが牛鬼のタゲを取り続ければ...もしかしたら...

 

牛鬼のタゲはプレイヤーではなく、より高威力な攻撃の発生場所へ向き続ける。

 

そこまできて、俺は乃依の意図を理解した。

 

乃依は俺へ矢を送り続けた。そして俺は高火力が売りな光剣でそれを弾いていた。

 

それによって、牛鬼のタゲは常に俺のいる方向へ向け続けた。

 

だから牛鬼を倒さず、櫓に登ることができた。

 

光剣という武器種、それと俺の戦闘スタイルを逆手に取った作戦だったのだ...

 

牛鬼より先に乃依を倒す他ない。牛鬼のタゲを引きながら、門を潜り抜け、乃依の元に行く必要がある。

 

そして、止まったら乃依に射抜かれる。

 

この櫓を捨てて、天守閣へ向かう雷を追っても、おそらくもう間に合わない。

 

乃依を倒さなければ...負け。

 

「流石プロゲーマーってところか...」

 

次の瞬間俺は乃依のウルトで牛鬼と共にワンパンされた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『黒鬼が櫓両占拠でコールドです!!』

『帝アキラ!!流石に強い!!1vs2もしっかり制しました!!』

『泉さんも、しれっと矢弾いてましたけど、あれ常人の反応速度じゃ無理ですよ』

『しかし、乃依の作戦は異様でしたねぇ!!あれどういう原理なんですか?』

『おそらく、タゲ取りの仕様を逆手に取ったのでしょう。泉が矢を弾きけるって想定した上での作戦でしょう』

 

俺たちは第一ラウンドで敗北し、天守閣に戻ってきていた。いやー黒鬼パネェ〜。

 

「アキラさんどうだった?」

「強すぎ。でも、次は勝つ」

 

彩葉は悲観するでもなく、次を見据えていた。やはり、酒寄彩葉は強い。

 

「ねぇ彩葉、泉。帝ってさ.....」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

第一ラウンド同様、彩葉とかぐやがトップレーン、俺がボトムへ向かった。

相手に一勝されているため後がない。

だからこそ、俺たちは先程の雪辱を晴しにいく。

 

先程とは違い俺は一目散に牛鬼のところへ向かう。乃依が来る前に牛鬼を倒してしまえば先程の作戦は通用しない。

 

俺は竹林を一目散に走った。途中乃依の矢は何本か来たものの、先程の件があるため回避に徹する。その数秒後、視界の先に牛鬼を捉え、俺は光剣を手に取る。

 

距離十分。一撃でいける。

 

牛鬼が振るった太刀の鎬に足をかけ牛鬼の頭上へ回り、牛鬼を首元から真っ二つへ立ち切った。

 

「ずいぶん派手にやってるね。でもいいの?俺とタイマンで勝たなきゃいけないわけだけど」

 

後ろから乃依の声が聞こえる。竹の上に腰掛けこちらへ話している。

 

「今不意打ちしてれば楽に勝てたんじゃ?」

「前も言ったけど、俺たちは夢を見せなきゃだからね。じゃあ、始めよっか♡」

 

乃依はそういうと、同時に3本の矢を絶えず放ち続けた。矢は軌道を自由に変え、四方八方から襲ってくる。俺は光剣をまるで某宇宙映画のヒーローのように奮い続けた。

 

クソ。まるで機関銃の制圧射撃だな。

ただ...そろそろ....

 

その時左側で衝撃が起きた。

 

「かぐや!!登場!!」

「なっ?!」

 

黒鬼目線、マップを見ると2人もトップレーンに到着していたように見えてたのだろう。

 

かぐやの作戦はKASSENフィールドのはるか上空を飛んでいる飛龍?に乗ってかぐやがトップに向かう偽装(ふり)をして、急速に南下、その後乃依を倒し、ボトムレーンを制圧。

 

だからかぐやが来る前に牛鬼を討伐して、乃依を引きずり出す必要があった。

 

乃依の意識がかぐやへ向いた隙に俺は乃依へ急接近し、彼を両断した。

 

「なるほど...作戦だったわけね」

 

俺はポリゴンの破片となった乃依を一瞥した。

 

第二ラウンドはかぐやの奇策が刺さって俺たちの勝利となった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「「いぇーい!!」」

「「かぐやさん、流石っすわ!よっ天才軍師!!」

「いやぁ!それほどでもあるけどね〜」

 

俺とかぐやは勝利に湧いていた。

 

「彩葉もおつかれ。アキラさんと兄弟喧嘩できたか?」

「全然...全く敵わないよ...」

 

彩葉ぽしゃりとつぶやいた。

 

「大丈夫!!彩葉が勝てなくても!かぐやと泉と一緒に勝てばいいから!!」

 

かぐやが両手でピースを作る。それに反応して俺も彩葉も両手でピースを作る。

 

「ピースからの~ちょっきんからの~、こんっ!」

「ラスト!三人で勝つぞ!」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!!
励みになりますので評価、感想ぜひよろしくお願いします!!

【裏話】

伊勢物語に鬼一口と呼ばれる回があって、在原業平モチーフの主人公なんだからこれはあやかろう!っていう題名です。

彩葉vs帝戦は基本本家通りです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。