超人酒寄彩葉と借金貧乏男子が運命的な出会いをする話   作:陸結

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第十四話 黒鬼一口 後編 / この世をば 我が世と思ふ 望月の

 

 

 

 

 

 

ツクヨミにある天守閣。一般プレーヤーは入れないツクヨミで最も高い場所。そこに彼女はいる。

 

「おつかれ〜調子どう?」

「おっ雪平だ〜。おつかれ!!」

 

彼女とはツクヨミを作り管理するAI、月見ヤチヨ。

 

彼女は最上階の自分の部屋からあのKASSENを眺めているようだ。

 

「雪平〜彩葉は勝てそう?黒鬼超強いからね。どうしても心配になっちゃうよ...」

「確か、ヤチヨは泉のこと知らないんだよな」

「そう。()()()()知らない。だから超ドキドキだよ〜」

 

彼女はそう戯けて見せた。

 

「ヤチヨ。大丈夫。俺の弟はちゃんと強いから」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最終ラウンド。

 

俺までに俺たちは残機が一つずつ、黒鬼は雷、乃依が一つ失った状況。

 

ゾンビアタックで来たら負けだなぁ...でも黒鬼はそんなことしないか

 

俺はあれこれ考えながらボトムレーンに向かっていた。

結局俺はずっとボトム担当なのだが、これは深いわけがある。

ステージの関係上、俺は見晴らしの悪いボトムじゃないと、雷乃依相手に勝ち目がない。情けないけど、マイナー武器使いの宿命だね〜

 

しかし最終ラウンド、俺と対峙したのは、酒寄彩葉の兄でブラックオニキスのリーダー、帝アキラだった。

 

っ!!目があった!来るっ!!

 

帝アキラは急速にこちらへ接近し、金棒を俺へ振り下ろす。そして、俺も光剣を抜き、下から突き上げた。

 

KASSENで武器同士が衝突したらどうなるのか。それはそれが命中してたら相手に与えるはずだったダメージによって決まる。そのダメージが大きいほど相手はノックバックと一時的なスタンが付与される。俺の光剣が相手へ強烈なノックバックを与えるのはそのためだ。

 

では...その威力が拮抗していたらどうなるのか?こうなるのである。

 

強烈な衝撃波が俺とアキラさんを爆心地として周囲を襲う。竹は衝撃で根本から折れ、あたり一面バキバキに折れた竹が散らばっていた。

 

「おいおい。なんていう火力してるんだ。こんなこと初めてだぜ」

「アキラさんこそ、会話もせずにワンパンで決めるつもりですか?」

「ハッ、なんだ?俺と話したかったのか!じゃあ思う存分語り合おうか!」

 

『アキラとは好きにやったらいいよ。あいつ不器用なやつだから、小手先のテクニックとかはないし、真っ向からぶつかっていけ!』

 

ありがとう。兄貴。心置きなく思う存分やれる!

 

帝アキラは再びこちらへ向かう。彼が振る攻撃は素早く、正確で、重かった。一方俺の攻撃も今まで以上に早く鋭かった。

 

一撃のたびに俺たちは言葉をぶつけ続ける。ただそれはこないだの様に感情を押し付けたものではない。純粋な俺の思いとアキラさんの思い。

 

「この前の考えはどうなったんだ?その顔見るに何か変わったようだけど?」

「そうですね。俺も、アキラさんもどっちも間違ってましたよ」

 

武器同士がぶつかるたびに、強烈な衝撃波を発し続ける。

 

「なんだそれ。言ってることおかしいぞ?」

「彩葉は強い。でも、俺は彩葉を置いてったあなたを許さない」

 

俺らの会話をもみ消してくれて衝撃波によって、いつのまにか俺たちのHPは半分ほどにまで落ち込んでいた。

 

「彩葉が強いね〜。まだまだ半端もんぽかったけど?」

「じゃあ後で確かめてくださいよ。あいつの強さを」

 

その時、彩葉とかぐやからVCが入った。

 

よくやった。2人とも。

 

かぐやと酒寄が雷と乃依を撃破。そして、櫓を占拠した様だ。ただ相打ちのようで2人ともリスポーン中だった。

 

「ありゃっ雷たちやられてる...こりゃまずいな」

「これで俺たちが王手って感じですか?」

 

実際は全くもって王手じゃないのだが、そう煽る。効くかわからないけど。

 

「いや。ここで俺がお前を倒して俺たちが王手だっ!」

 

帝が再び向かってくる。それも先程までとは比べものにならない速度で...

 

クソっ大技でキメにきやがった!!

 

帝アキラのウルト。超加速して相手に突撃する。全てを薙ぎ払い、吹き飛ばす。その姿はまさに力の権化たる鬼そのものだった。

 

俺は咄嗟に防御姿勢を取るも、帝アキラの突進をもろに食らい、吹き飛ばされた俺は牛鬼を貫きそのまま櫓の向こうへ飛ばされてしまった。

HPは刻一刻と目減りし、俺の敗北は必至だった。

 

帝アキラ...規格外すぎる....ただ...

 

 

このままやられっぱなしでいられるか!

 

 

『泉さ、光剣ってさ遠距離攻撃ないって思ってるけど、多分できるよ』

 

兄貴の助言で編み出した新技。光剣の使用人口が皆無だから、おそらく俺だけの技。

 

光剣は刀身を出せる時間に制限がある。そしてそれは刀身の長さに反比例している。

 

ならば、刀身をほんの一瞬、限りなく伸ばし、遠距離技は無いと思い込んでいる相手の虚を突く。

 

体は刻一刻とバラバラで、桃色のポリゴンの破片となる。猶予は、もうない。俺は残りの力を振り絞り、居合の構えをとる。

 

『奥義 絶桜(たえざくら)‼︎』

 

藤色の刃が櫓の金を鳴らしていた帝アキラに届く。

 

俺たちの体は、桜の花弁のように風にのって流れていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『面白くなって参りました!!最終ラウンド!!』

『互いに櫓を取得し、残るは天守を落とすのみぃ!!』

 

「彩葉!!泉が帝倒したって!!大金星!!」

「ね。私たちも頑張ろう」

 

私だけ...まだ活躍してない。

 

自分の無力感。お兄ちゃんの言葉...私は焦りを募らせていた。

 

『そうやって、まだ俺やあいつに助けられるつもりか?』

『そのまんまじゃ、母さんは認めてくれんで?』

 

強い...やっぱ捨て身の突撃で相打ちにするしかないか...

 

「もー!!遠くからペチペチ卑怯だよ!!」

 

私とかぐやは雷と乃依のコンビに手を焼いていた。雷が地面を揺らして足を奪い、その隙に乃依が矢を打ち込む。泉みたいに矢を弾けけばいいんだけど、私にはできない。

 

岩陰で乃依と雷の攻撃をやり過ごしながらかぐやが私に声をかける。

 

「彩葉!!どうする??!!やっぱさっきみたいにかぐやがグルグル突撃する??」

「いや、かぐやは天守閣落とすのに必要だから...」

 

やっぱり私がどうにかするしかない。

 

「かぐやはここにいて、私が2人とも道連れにする」

 

岩陰を飛び出して、私は走る。右は雷鳴が轟き、左では乃依の矢が爆ぜている。

 

木にワイヤーを括りつけ、勢いよく巻き、その勢いで超加速する。

私と雷、乃依との距離はみるみる縮まる。

 

行ける...私も役に立てる...早く...

 

そんな焦りが私のミスを誘った。踏み込みすぎたのだ。体の重心が足のはるか先を行き、体が地面に近づく。私は地面に顔から激突してしまった。

 

「終わりだよ♡」

 

体勢を崩した私の隙を突いて乃依は矢を放つ。おそらく、渾身の一撃。

 

まずい...避けれないっ!!

 

私が死を意識したその時、乃依の弓が藤色の刃はで防がれた。そして、刃が飛んできた方向から黒い人影が現れる。

 

「悪いな。ここは....」

 

その人影は土煙の中で紫色の刃を地面に突き立てる。

 

「通行止めだ」

 

泉だ。どうしてここに...お兄ちゃんを止めないと。私じゃ....お兄ちゃんに勝てないから...

 

「カッコいい登場♡ でも、手加減しないよ?」

「その通りだ。ここに来たこと、後悔させる」

 

2人の声は低く。本気(マジ)だった。

雷と乃依は互いの武器を握り直し、泉の攻撃を繰り出す。

 

「彩葉!!!」

 

泉は光剣を構える。そして、飛んでくる攻撃を見据えながらこう言った。

 

「1人で戦うな!お前は俺たちがついてる!」

「そうだよ!彩葉!」

 

泉は雷と乃依の攻撃を捌いている。私たちが苦戦していた攻撃を容易く。かぐやは言いつけを無視して私の側へ駆け寄る。

 

「ここは俺に任せろ。だから、帝アキラはお前に任せる!」

 

「ぶつかって、お前の強さを示してこい!」

 

泉はこちら向いて微笑んだ。

 

ありがとう。泉。また1人で戦おうとしてた。

 

「泉!ここはお願い!かぐや!!行くよ!!」

「合点!!レッツゴー鬼退治!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さあ、啖呵切ったものの、どうしたものか。

 

「お前1人で俺たちを止められるのか?」

「どうかな?やったことないからわからないな」

「じゃっ。試してみよっか♡」

 

2人はそれぞれ攻撃を放つ。雷が地面を震わし、乃依が俺に向かって矢を放つ。

 

『雷はお前と相性最悪だからね。広範囲の魔法で押し切られる上に、タンクだから攻撃も当てづらい。正直避けた方がいいよ』

 

フィールドは開けていて、その上武器相性も最悪。正直勝ち目なんて万に一つもない。

ただ、彩葉に...好きな人に任せられたんだ。彩葉がアキラさんへぶつかって行く時間は...彩葉が思いを伝える時間だけは...

 

死ぬ気で稼ぐ!!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私とかぐやはお兄ちゃんと激突する。

一戦目の時より連携が取れるようになってきたが、あと一歩届かない…

お父さんが死んでからお兄ちゃんは変わった、サッカー少年だったのに家でゲームばかりするようになったし、私がお母さんに怒られているときはサッと助けてくれた。

 

あー、くっそ…強いなあ…ずーっとこれやってたもんなぁ…勝てんわ…

 

正直もう諦めたかった。でも

 

「くっそ~鬼つえ~!!!!でも....勝つ!!!」

 

かぐやの瞳が輝いていた。泉もかぐやも私を信じて、私のために戦ってくれてる。そう思うとなんだって出来る気がしてくる。

 

「もし、私たちが勝ったらそっちもお願い、聞いてくれるんだよね?」

「そりゃもちろん」

 

お兄ちゃんが頷くのを確認してから二手に分かれて攻撃を開始しる。

しかし、その手にはお互いの武器が握られていた。

 

「武器の入れ替え!はっ!」

 

ワイヤーを駆使しながら、足場を崩し、追い詰めていく。

かぐやはハンマーを空振りし抜けないふりをしている。

 

かぐやの考えてることくらい…

 

「ゲームセットだ!」

 

お兄ちゃんがかぐやにとどめを刺そうとした瞬間、ワイヤーを一気に巻き取り、拘束する。

 

「ワイヤー!?かぐやちゃんは囮っ!?」

「かぐやの考えてることくらい!わかるっつうのーーー!!」

 

私が振りかぶった剣は、お兄ちゃんを体を貫いた。

 

「なるほど....やりゃあ、できんじゃん」

 

これでいい。私は1人じゃない。お母さんみたいに1人でこなす強さはなくても、これが私の強さ。頼って、頼られて、一緒に強くなる。かぐやや泉と一緒に。お兄ちゃんにも私の答えが伝わったのか、お兄ちゃんは満足そうに笑って消えていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『決まったぁぁぁあっ!! 勝者──ブラックオニキスッ!! 最強の黒鬼達がその実力を見せつけたぁぁあっ!!』

 

天守閣で勝者の特権であるウイニングポーズを決める帝を讃え、試合を観戦していた多くの者達が拍手喝采の嵐に包まれた。

 

「あんなのアリ?!超ー悔しい!!!」

「お土産地雷か...ちょっとしょうがない気もするなぁ」

「でも、超〜楽しかった!!」

 

かぐやは満面の笑みでそういった。

 

『いと大儀~☆!』

 

気付けばいつもの服装に身を包んだヤチヨが遥か上空に浮かびあがっている。

 

ヤっヤチヨ?!

 

『見ててもとーっても楽しいKASSENNでした。そして、たった今!ヤチヨカップの投票を締め切ったよぉ~。FUSHI、集計お願い!』

 

そうだ。今日が最終日だったんだ。泉とかぐやを拾ってから長かったヤチヨカップもこれでおしまい。

 

かぐや...勝ってるといいなぁ

 

いつのまにか心からかぐやの勝利を望んでる私がいた。こないだまで、ちょっと鬱陶しく思ってた私が...

 

『それでは、ヤッチョとコラボる人を発表ー!』

 

夜空に巨大なスクリーンが出てきて、棒グラフが伸びていく。

かぐやのイラストがお兄ちゃんに追いついてそれを追い抜いていった。

 

「「「勝った...」」」

「えっ?!?!勝ってる!!負けたのに!!」

 

「そりゃあんな試合見せられればね〜」

 

落ち着きのある低い声が聞こえてくる。声の元を見ると雪平さんがいた。

 

「兄貴?!どうしてここに?!」

「そりゃ可愛い弟の晴れ舞台だもの!特等席で見てたよ。いや〜弟の成長にお兄ちゃん号泣だったよ。ヨヨヨ...」

「あっ!!雪平!!勝手にかぐや結婚させようとしないでよ!!」

 

かぐやが雪平さんの胸元を殴りつける。

 

「ごめんね〜かぐやちゃん。でもアキラも本気で結婚する気はないでしょ?

「まあな〜それに、この状況で勝ったって顔できねーよ」

 

雪平さんの目線の先にはお兄ちゃんを先頭に黒鬼の面々がいた。

 

「で、お願いってなんだ?」

「新しく部屋借りたくて、その保証人になって欲しい」

「なんだ?一棟買いしなくていいのか?」

 

この成金が...

 

「まぁじゃあその件はまた今度ってことで、俺はファンのところ行くから。あっそうだ。泉」

 

お兄ちゃんは踵を返して泉の方へ向かう。

 

「ありがとう。お前のおかげでいい兄弟喧嘩ができたわ。彩葉とも、()()()()()!」

 

ん?泉と兄弟喧嘩??

 

「これからはお義兄さんって呼んでいいぞ」

「ちょっ!!お兄ちゃん?!」

「べっ別に俺と彩葉はそんな関係じゃ...!」

 

お兄ちゃんはそんな弁解を華麗にスルーして去っていった。

 

大丈夫だよね?顔赤くなってないよね?

 

「「彩葉!!」」

「有原ぁぁ!!」

「今度は誰ぇ?!」

 

声がする方を向くと私へ飛びつく芦花と真実、そして泉に飛びつく童山くんがいた。

 

案の定そんな不意打ちに私も泉も倒れ込んでしまった。

 

「彩葉ぁ〜よかったよ〜」

「頑張ったね。彩葉。はなまるあげちゃう」

「ちょっと2人とも?!」

「有原ぁぁ!!俺は...今...猛烈に感動してぇ....」

「おい!離れろバカ!!こんな状況むさ苦しいだけで需要ないだろ!!って頭撫でんな!!」

 

私と泉は号泣している3人にひとしきり甘やかされていた。口では嫌がってる泉もちょっと照れている。うん。ちょっと可愛い。

 

「泉も彩葉ちゃんもいい友達もったねぇ〜」

「いいなぁ〜2人とも...かぐやも頑張ったのに」

「じゃあかぐやはヤッチョと雪平が撫でてあげよう!」

「オーケー!!よーしよーし。かぐやちゃんも頑張ったね〜」

「わーい!!ってヤチヨと雪平って友達同士なの?」

 

かぐやもヤチヨと雪平さんに可愛がってもらってるらしいってヤチヨ?!

 

「やるじゃねーかお前ら。マグレに頼る天才だな」

「コラっそう言うこと言わないの」

 

ヤチヨはかぐやを撫でながら、FUSHIにお灸を据える。

 

「かぐやはねぇ〜かぐやだから強いんだなぁって思ったよ〜」

「うへーゼロ解答」

 

ねぇ敬語とか使いな...

 

「さーて、ここからはクライマックスに向けてハードな展開が待ってるかも!このお話を最後まで見届けてね♪運命の荒波に揉まれる覚悟はいいかぁ〜い??」

 

「「「「「「「おー!!」」」」」」」

 

確かにこれで終わりじゃない。むしろここから始まるんだ。ヤチヨとのコラボライブに向けてやらなきゃいけないことはたくさんある。それは楽しいことばかりじゃなくて、辛いこともいっぱいあるだろう。それでも、精一杯頑張ろう。かぐやと泉...みんなと一緒に...

 

私たちの無邪気な拳がツクヨミの夜空に満月のように突き立てられた。

 

 

 

 




打ち切り漫画みたいな終わり方ですがまだまだ続きます!!
励みになりますので感想や評価よろしくお願いします!!
本当は泉vs雷乃依戦も書きたかったのですが、これ以上長くなると...って感じなので、いつか番外編として描きたいと思います!!

【裏話】

絶桜(たえざくら)
やってることはワールドトリガーの旋空弧月ですね。
名前は
世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
がモチーフです。


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