超人酒寄彩葉と借金貧乏男子が運命的な出会いをする話 作:陸結
私と泉とかぐや、それとお兄ちゃんと雪平さん...みんなでとあるデザイナーズマンションを訪ねた。
そう新居の内見だ。
「こちらがリビングですね〜」
「すごーい!!超綺麗!!!」
「「...」」
「ほーん。中々ええ部屋やん」
「こんな4LDKで月35万は破格じゃない?」
「築15年ですのでね。それに5年前は2倍ほどの家賃でしたよ」
「なるほどなぁ〜それにしても暴落しすぎとちゃうん?」
「それはですね。不動産バブルが.....」
私たちが唖然とする中、雪平さんとお兄ちゃんは不動産屋の人と色々お話ししている。
「なぁ彩葉...本気でここに住む気か?こんなとこ住んだらおかしくなるぞ?」
「どうしよう。すごい怖くなってきた」
今までボロアパート暮らしだった私たちはあまりの煌びやかさに気圧されていた。
「バルコニーもいい眺めなんですよ」
「えっ外出れるの?!」
「じゃあちょっくら見てみるか!」
かぐやは持ち前の好奇心のせいかこの状況でも普段通り天真爛漫だった。そんなかぐやにお兄ちゃんも続く。
「うおおおおお、最強になった気分…」
「ちょっとかぐや!あんま身乗り出すと危ないぞ」
そして泉もバルコニーへ向かい、部屋で私は雪平さんと2人っきりになる。
言い出すなら今しかない。
「あのー雪平さん、一個お願いがあるんですが...」
「珍しいね、彩葉ちゃんが僕にお願いなんて。どうしたの?」
雪平さんはカバンからペットボトルの水を取り出しながら私に返事する。
「泉のあの部屋を解約してほしくて!!」
「ごふっ!!解約?!それは出来るけど...また急に...どうして?」
雪平さんは少し笑いながら平静さを取り戻して、私にそう尋ねる。この人は適当そうに見えて泉のことをよく考えてる。だから...こんなこと許してくれないかもだけど...
「引越しするって言ったら泉すぐに賛成してくれて、でも『いつまでもこんなボロアパートにいたらセキュリティ的に危ないもんな、ついにお隣さんじゃなくなるのか〜』って...」
「それで?」
雪平さんは私に次の言葉を催促した。どうやら、うやむやにして進めるのは許されないらしい。
「私は...泉に一緒にきて欲しいんです。でも多分泉はそんなこと毛頭考えてないし、多分遠慮して絶対断るだろうし。だから!泉の住むところ取っ払って、家無くせば、泉も私たちと一緒に住むの許してくれるんじゃ!...って雪平さん?」
雪平さんは呆気に取られ、普段からは考えつかないような顔をしていた。そして...
「あはははははは!!」
爆笑し始めた。
「いや〜彩葉ちゃん、不器用だとは思ってたけど、ここまでとはね。そりゃ朝日も心配するよ」
「えっおかしいこと言いました?!私!」
「そりゃ、お隣の女の子が!泉と一緒に住みたいからって!家無くせってお願いしてくるなんておかしいでしょw泉も罪な男だねぇ」
雪平さんは壁にもたれかかりながら爆笑している。普段のクールな彼からは想像もつかないような笑い様だった。
「あのアパートを解約するのは全然いいし、僕も大歓迎。でもちゃんと泉には話な。アパートを解約するのはその後」
「でも、何話したらいいんですかね?」
「ただ一緒に来て欲しいってのと彩葉ちゃんが泉のことどう思ってるかでしょ?」
「私が...どう思ってるか?」
泉は、私にとって...頼りになる大切な人で...大切な...なんだ?
「嘘。まさかの無自覚?揃いも揃って無自覚なんて...かぐやちゃんよく胃もたれしないね」
無自覚?私が?何に?
「まあいいや。とにかく泉には彩葉ちゃんからしっかり切り出すこと。良いね」
そう言って雪平さんは私の頭を少し撫でた後、みんなのいるバルコニーの方へ向かっていった。
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内見の後、私たちはその場で契約を済ませ、あの家が新居と相成った。
そしてお兄ちゃんたちと別れ、ボロアパートへ帰った私たちは引越しに向けて荷造りをしていた。
「まさかこんなに物が多いとは...これ新居の一部屋だけじゃ収まらなくないか?」
「多分リビングにも置くことになりそう...かぐや〜ちょっとは捨てれない?」
「無理!!全部平等に使うから!!」
おもちゃ捨てれない子供かよ...
「じゃあ泉の部屋のやつも荷造りしてきて」
「ラジャー!!」
かぐやは私たちに敬礼すると段ボールを持って隣の部屋へ向かった。
話すなら...今しかないか...
「泉。ちょっと話があって」
「ん?どうした」
泉が真っ直ぐこちらを見つめてくる。泉はずっと隣で、ずっと私のことを見ていてくれた。泉にとって私はただのお隣さんで、友達だろうけど...
「彩葉?」
「泉」
「はっはい!」
泉は落ち着かない様子でこちらを見つめる。
いつもはふざけてるけど、いざって言う時は1番頼りになって、でも肝心なとこで変に頼りにならなくて、お兄ちゃんみたいで、素直じゃなくて、友達のこと大好きで、私のために暴走してお兄ちゃんにまで喧嘩売って。
嬉しかったなぁ。
「私...泉に言わなきゃいけないことがあって...」
言え。今伝えるんだ。
「私が...泉のことが...」
好き。一緒に来て。
「っ?!」
私は自分の頭に浮かんだ言葉に思わず息を詰まらせる。
気づいてしまった。いや、ずっと気づかない様にしていたのかもしれない。泉への想いを自覚すると、自分の言おうとしている言葉の異常さに気がつく。
私は好きな人と一緒に住みたがってたってこと?!それで一緒に住んでってお願いしようとしてて...それって...!それって...!
まるで私が泉に告白してるみたいじゃん!!
「彩葉?大丈夫か?さっきから様子がおかし...って顔赤いぞ?!また体調崩して...」
「いやっ!!体調は全く問題なくて!」
「ちょっとじっとしてろよ」
泉は私の目の前まで来て泉の額と私の額をくっつける。
「ちょっ!!泉?!近いぃぃ!」
「静かに...」
至近距離に泉の顔がある。あまりの近さに泉のまつ毛や髪先のキューティクルまで鮮明に見える。泉の整った顔が目の前にある。さっき好きだと気づいた異性の顔が目の前にある。心臓の鼓動ははかつてない音量で頭に響きわたる。
ちょ!!もう限界っ!!
「泉!!」
「うおぉ!!」
私はつい泉のことを突き飛ばしてしまった。
「...あっごめん!!大丈夫?!」
「全然平気...ってすまん急に!!違うんだ!また熱でもあるんじゃないかって心配で!つい!!」
「いや!!全然平気!!ちょっとびっくりしちゃって...」
「そりゃ急に顔近づけられたら嫌だよな...すまん。気が回ってなかった」
「いや!!全然嫌じゃないよ!!むしろ嬉し...あー違くて!!ただ!ただ!泉の顔にドキド...あああ!!!」
あまりにもな出来事の連続で私は失言を繰り返す。
「ははっ」
「ちょっと泉?!何笑ってんの??!!」
「いやあまりに彩葉が動揺してるから面白くって...あははは!」
泉は壁にもたれかかりながら、大笑いしている。その姿は今日の雪平さんとそっくりだった。その時雪平さんの言葉を思い出す。
『嘘。まさかの無自覚?揃いも揃って無自覚なんて...』
無自覚...?っ?!雪平さんにもバレてる?!
もう!この兄弟は本当に!!
私はこの怒りを泉にぶつける。
「痛!!笑って悪かったって!!」
「もう笑わない?」
「笑いません!...そういえばさっき何言おうとしてたんだ?」
ちょっと想定と違うけど、今がチャンスだ。
「泉も一緒に引越ししてくれないかなって...って...」
「えっと...それは俺もあの家に一緒に住むってこと?」
「そう。お願い」
「えっと...流石にそれはまずいんじゃ...」
「そもそも!今までこの壁もあってなかった様な物だし!互いの家もよく出入りしてたし!今更じゃない?!」
私はいつも以上のスピードで言葉を紡ぎ続ける。
「でもなぁ。今住んでる部屋のこともあるし...」
「雪平さんがあの部屋は解約するって言ってたからちょうど良いんじゃない?!」
「ちょっと待って?!外堀ほとんど埋まってて俺に選択肢なくない?!」
ごめん泉。ずるい女でごめん。
「泉は私たちと暮らすの嫌??」
「嫌じゃあないけど...」
「じゃあ決まりだね!泉も自分の準備してきて良いよ!こっちはやっとくから!」
「えっちょっ彩葉?!」
これ以上顔合わせてると私の心がもたない。
私は泉の腕を引き無理矢理外に追いやった。
静かな部屋に心臓の鼓動だけが響きわたる。
一応言えた。うん。よく頑張った。私。
ちゃんと告白するのは...泉が、私のこと好きになってくれたらで良いよね..!
これからの生活に不安を覚えながらも、それ以上のワクワクに私は少し頬を緩めた。
ここまで読んで頂きありがとうございます!!
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彩葉回でした。こう言う回の方がみんな好きなんですかね?
やっぱ恋する女の子は超可愛い。