超人酒寄彩葉と借金貧乏男子が運命的な出会いをする話 作:陸結
歌を歌い終わった彩葉はそのあとすぐに電池切れとなり、そのままソファーで寝てしまった。そんな彼女を俺は抱きかかえて、布団で寝かせる。美しく整った彼女の顔も連日の徹夜でやつれてしまっている。
「お疲れ様彩葉...あとは任せてくれ...」
俺は彼女の頭を少し撫でてから、支度をし、兄貴へ連絡を入れた。
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早朝5時頃、あたりがやや明るくなり始め、秋の様相を感じる時間帯。俺は都内のある待ち合わせ場所で兄貴と対峙した。
「どう?ちゃんと曲できた?」
「......一旦質問は飲み込むけど...まあちゃんと届けられたよ。うちの彩葉はすごいんだ」
「そう。随分信頼しあってるわけだ。羨ましいね〜」
「こっからは俺たちの出番。違う?」
「いいや!違わない。それじゃあ行こっか!」
そう言って兄貴は後ろの軽自動車に乗り込んだ。
「えっ行くってどこに?!」
「ん?京都」
「ん???????!!!!!!!」
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「とりあえず。これ読んで」
兄貴から渡されたのはある紙束でそこには...
『遺言、有原阿保』そう書かれていた。
有原阿保(ありはらあぼう)...親父の名前...そしてこれが俺らに残された遺書...
俺は意を決して遺言書を開き、文字を追った。
『これを読んでいるということは、私はすでに死んでいるのだろう。雪平、泉お前らに後始末をなすりつけて行く俺を許してほしい』
いかにも遺言書らし書き始めだ。
『遺言の内容の前に、こうなった経緯を説明させてほしい。俺は昔人間の脳の情報をコンピューターに入力する研究を行っていた。簡単にいうならナーヴギアの作成だな』
なんだろう。平然とアニメで例えてくるの釈に触る......それにそのアニメ俺も兄貴も世代じゃないって。
そういえばかぐやにアニメのネタで会話するなって言われてたっけ...?最近真面目な回が多くてふざけてなかったから忘れてた。つまり、この癖は血筋ってこと?!
寝不足のせいか、そんなふざけたことを考えながらも俺は先を読み進めた。
『お父さん天才だったから、コンタクト型のデバイスの開発成功して、起業までしちゃって、おまけに可愛い妻(お前らのお母さん。ちなみにガチで美人)までゲットしてほんとに人生の絶頂だった。どうだ〜羨ましいか〜?』
ん?これ遺言だよな?なんでこんなにフランクなんだ?後サラッと親父はスマコン発明してるし...
『その時、俺はその人(ウミウシ)と運命的な出会いをした。』
ウミウシ??いや...それって.....
『その人は8000年生きた月の人間で、未来に会いたい人がいるようだった。未来でその人と再会するために自分が生きれるヴァーチャル空間を作りたがっていた。』
『その人の名前自分をヤチヨって言っていた。』
ヤチ...ヨ...やはりそう言うことだったか...でもなんで...?
初めは驚きと困惑しかなかった。しかしそれを見て俺は今まで心の中での幾つかの疑問同士が繋がって行く。
作曲の途中彩葉言っていた。
お父さんと一緒に作った曲とヤチヨの『remember』のメロディが同じだって...
そして兄貴の発言
『それがかぐやちゃんの支えになるから...』
穿った見方をすればそうなることを知っているような発言とも思える。
何より、ヤチヨが月の人間っていう文言。ここから導ける結論は一つしかない。
ヤチヨはかぐやだ。
おそらく月に帰ったかぐやが再び地球に来たのだろう。ただそこでなんらかの事故があって8000年も前の地球に降り立った。そこでたった1人。たった1人で8000年生きてきたのだ。
つまり...今頃かぐやは...
俺は無意識に遺言状を持つ手の力を強め、遺言状を潰してしまう。
『ヤチヨはまたお母さんみたいな子でね。天真爛漫でいつも笑っていた、でもどこかで何かを我慢して1人で泣いているような子でもあった。彼女と出会いで私の生活は一変したねぇ。彼女のために私は私の技術と彼女のいた月の技術を統合させて仮想空間の創造に尽力した。』
その仮想空間が今のツクヨミ何だろう。なんだ?この親父彩葉並みにハイスペックじゃないか??つい最近まで父親を借金残して消えたクソ野郎だと思っていたのが申し訳なく思えてくる。
『余談だがその時月の技術っていうのはな、ヤチヨが地球にきた時の宇宙船で、正倉院に保管されてたやつを俺と元CIA職員のやつと一緒にパクってきたんだ^_^』
前言撤回。多分クソ野郎なのは間違いない。ってこれ結構やばいことだよな?文化財の窃盗って...それに何気に元CIAの知り合いがいる事実が怖い。
『そしてついに俺の会社は仮想空間を完成させた。その空間はまさに現実と一緒で五感の再現も完璧な出来栄えだった。いやー自分の才能が怖い!』
五感の再現...今のツクヨミには触覚も味覚も嗅覚もないが...
『そんな時事件は起きた。ヤチヨがいた月の世界は言うなれば地球とは文明レベルが桁違いで、実体のない電子の世界だった。それだからかは分からないが、俺の仮想世界はその世界に酷似してしまった。ある日、仮想空間は月人から攻撃を受けた。いうならばサイバー攻撃。それで仮想空間は崩壊。それだけだったらまだよかったんだが、各国の証券会社にハッキングしてうちの株価が暴落、ついでに関連IT起業まで全部暴落。その時俺の会社新型デバイスの発明と仮想空間の開発で莫大な株式を発行していたから、暴落によって莫大な借金を抱えた。家を売って、可能な限り借金を減らそうとしたんだけど...IT企業の株価暴落に呼応して不動産バブルが崩壊して地価が半減以下になって......もう借金は50億近くは残っちゃったよ^_^。
サラッと歴史的な大事件の引き金になってるじゃねぇか......
そういえば新居買った時不動産屋の人がそんなこと言ってたっけ?
『そしてその頃だったな。母さんは重度の肺炎になってそのまま他界した。正直この世の終わりだったよ(別に今でもこの世の終わりだけどな!)。』
クソ!泣きそうだったのに親父の謎テンションで涙引っ込みやがった。
『ヤチヨにはとても謝られたな。迷惑かけてごめんって。実際ヤチヨと関わらなければ俺は今頃お前たちともしかしたら母さんも一緒に幸せで暮らせていたかもしれない。でもすまない。俺はヤチヨと関わったこと、仮想空間”ツクヨミ“を作り出したことを後悔していない。何故かそれが俺がこの世界でやるべきことのように思えたんだ。でも運命は残酷だよな。母さんを奪った肺炎は俺の命も奪おうとしていた。余命は約一年で、日に日に俺は弱って行った。だけど俺はギリギリまで開発を続けたよ。俺は俺の責務を全うしようと最後まで足掻いて、月人のソースコードとは言語の異なる形で仮想空間を完成させた。月人にバレないようにするために味覚と触覚と嗅覚はなくなったけど、まあ及第点だろう。』
親父は必死で戦ったのだろう。ただ1人の少女の願いのために、1人で8000年生きてきた少女のために...
『ここからはお前たちへのお願いだ。俺が作り出したツクヨミは管理自体はヤチヨと俺が作り出したシステムによって自動で世界を構築し続ける。だけど、その権利自体は依然、俺つまりお前らにある。
それをどうか守り続けてほしい。そして、ヤチヨを1人にしないでやってほしい。細かい権利関係はうちの会社の顧問弁護士をやっていた人に任せてある。先に、無責任に、この世を去る父親をどうにか許してほしい。』
昔兄貴に聞いたことがあった。なぜ自己破産しないのか、なぜ相続放棄しなかったのか......おそらくこのためだったのだ。
そして兄貴はこの事実を1人で抱えて生きてきた。多分俺が俺がこの業を背負うことを拒めるように。拒んで自分の人生を歩めるように...。親父を、離婚して借金を作ったという嘘をついてまで、兄貴は俺を守ろうとしたのだ。
もっと周囲を頼るべきだろ...いや、俺が言える話じゃないな。血筋なんだろう...俺も兄貴も親父も...普段は適当に生きてるのに、大事なことを黙って...1人で暴走する....
「読み終わった?」
兄貴はそう優しく声をかけてくる。
「うん」
「どうする?今ならまだ引き返せるけど?」
「まさか。余計覚悟が決まったよ」
「そう。さすが俺の弟だ」
「で、今どこに向かってるの?」
「ある人のところ」
「ある人?」
わざわざ京都まで行って会う人とは誰なのだろうか...
「その遺言状の凄腕弁護士でお前がちょっと嫌ってる人のところ」
そう言って兄貴は車を止めてある家に向かった。そしてそこの表札にはこう書いてあった。
『酒寄』
その名前を見た時、彩葉のお母さんが京大法学部出身で凄腕弁護士であることを思い出した。
『君とは遠くない未来直接会うことになりそうだから、』
彩葉のお母さん...こんなに早く会うとは思いませんって...
ここまで読んで頂きありがとうございます!
励みになりますので感想、評価是非よろしくお願いします!!
実はこの話は七話の頃辺りにはできてた話なのですが...ちょっとずつ設定が変わってるせいで修正に苦しんでたりしました...