超人酒寄彩葉と借金貧乏男子が運命的な出会いをする話   作:陸結

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第二十三話 君をおきて あだし心を わが持たば

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ヤチヨは何を隠してるのか...」

 

俺は帰りの車の中で兄貴にそう尋ねた。

兄貴はスマホを一瞥すると、穏やかに話し始めた。

 

兄貴がいうには、ヤチヨは月に帰ったかぐやちゃんで、月は時間の流れが地球と違う。そのせいで、地球に向かおうとしたその時には彩葉ちゃんたちも80歳近くなってた。だから月のオーバーテクノロジーでタイムスリップしたんだけど...隕石に当たったとかで8000年前に行っちゃった....

 ここまでは俺が予想していた通り。

 しかし問題はこっからで、ヤチヨとなったかぐやちゃんは親父とツクヨミを作って、その後兄貴とと出会った。しかし、ヤチヨ目線兄貴に知らない弟がいると...

 

「いやどういうことだってばよ??」

 

予想もしてなかった事実に俺は頭を捻る。

 

「世界が違ってたってイメージかな?ヤチヨの知ってる俺と彩葉ちゃんは別の関係ってこと。ヤチヨの世界では幼馴染的関係ではなかったっぽいし、そもそも同い年だったみたいだし」

 

「それって...歴史が変わったってこと??」

 

兄貴は少し黙った後、再び話し始めた。

 

「俺の仮説は2つ。一つ目は、ヤチヨのタイムスリップは世界線移動だったて説。それなら泉がいない世界線でも不思議はないからね。2つ目はヤチヨが俺らの親父と関わったことで輪廻が変わったか...」

 

「まあ詳しい話は直接ヤチヨから聴きな、今彩葉ちゃんも俺たちが向かってるところにいるっぽいしね」

 

兄貴は高速を降りて下道を進む。

 

「兄貴はヤチヨからどこまで聞いてたの?」

「かぐやちゃんのことはほぼ全部かな?ライバーになって一緒にライブすることも知ってたし、月人がかぐやちゃん迎えに来るのも知ってた」

「つまりほぼ全部ってわけだ...」

 

実質兄貴は未来を知ってる状態で極論歴史(暫定)を変えないように動いてたわけだ...

 

「でもこっからの展開は俺もヤチヨも知らないからね...まあ泉次第だよ」

 

そうか...少なくともヤチヨが今いるということはヤチヨのいた世界の彩葉たちはかぐやを連れ戻せなかったわけだ...

 

兄貴はメモの住所のマンションに車を停めて、サーバールームへ向かった。

 てっきりサーバールームというくらいだからデータセンターみたいなのを想像してたが違うようだ。

 

俺はその部屋へ入ると目の前にはメカメカしい配線に繋がれまくったサーバーと、水槽に入った大きなタケノコがあった。

 

 

 

 

そしてその目の前にはぐったり倒れてる彩葉の姿があった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『彩葉...泉...ありがとね。かぐやのために...』

 

そんな...置いてかないで...かぐや...

 

『彩葉...泉...

 

______________ 大好きっ』

 

 

「かぐや!!!」

 

私はあたりを見まわし、自分が悪い夢を見ていたと自覚する。

 家は静かで、少し前まで3人で住んでいたにもかかわらず、物音一つしなかった。

 

っ!泉までいなくなっちゃった...?

 

私はパジャマのまま慌てて部屋を飛び出し、泉の部屋、かぐやの部屋、配信部屋、と一つずつ部屋を確認していった。

 するとリビングの机の上に一枚のメモが置かれていることに気がついた。

 

『彩葉へ

 

かぐやを連れ戻すために兄貴と用事を片付けてきます。兄貴曰く1日は帰れないみたいなので、1人ゆっくり休んでおいてください。

 冷蔵庫のタッパーにご飯が入れてあります。温めて食べてください。

 

泉』

 

 そのメモを読んで私は安心する。どうやらこの数ヶ月の間に私は1人で生きていけないタイプになっているようだ。

 朝早くに家を出た泉もかぐやのために何かしようとしてる。

 それなら私もできることをやろう。だったら....

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「彩葉こっちきてるんだ...そっかぁ......雪平もいないしなぁ......」

 

私は天守閣で1人黄昏ていた。

毎日やっていた配信も昔のアーカイブを流してここ数日はお休み状態。

 かぐやの卒業ライブから私は引きこもりのお姫様だったのだ。

 

「彩葉にどんな顔で会えばいいのかなぁ...」

 

そんなことを考えてると目の前に彩葉が現れた。どうやらサーバールームからログインしたようだ。

 

「かぐや......?ヤチヨは...かぐやなの??」

 

ああ、やっぱすぐ気づいちゃうんだ...彩葉は変わらないなぁ......

 

 

「_______今は昔、月に帰ってバリバリ社畜してたエラエラかぐや姫のところに……歌が届きました。

 それで、もっかい地球に行こ〜ってお仕事爆速ですっかり片付けて引き継ぎも完了。

 ただ、地球の時間では大遅刻。でも安心! 月の超テクノロジーは時間も超えられます。……時を超えて、地球に向かうかぐや姫。でも、もう少しのところで、でっか〜い石に当たっちゃったの」

 

「っ!」

 

彩葉は息を呑み、悲しそうな目で私を見つめてくる。

 

「やっとの思いで辿り着いたのは……ざっと8000年も前の地球でした。壊れた船の僅かな力で、同行していた『犬DOGE』だけが身体を得ました。──かぐやはウミウシの身体を通してだけ、世界と交流を持てたのです。

 時は経ち、人々は見えないものを形にして多くの人と繋がる力を手に入れた。……それは月の世界と少し似ていて、かぐやは初めて、魂だけの自分が世界と関われる可能性を知りました」

 

彩葉は体を震わせ、手を力強く握りしめ、私の言葉に耳を傾ける。

 

「でも、世界は......かぐやとして生きたはずの世界は私が知っているものと少し違いました。かぐやは困惑しましたが、いろんな人の助けを経て──仮想世界【ツクヨミ】の歌姫として、再び彩葉に出会うことが出来たのです。……ってぇ〜〜っ、これじゃあ手放しでめでたしめでたしとはならないか〜っ!! やっぱ♪」

 

彩葉の目から大粒の涙がこれでもかと言うほど流れ出る。

 ツクヨミは電子の世界___泣きたいという感情を我慢することはできないのだ。

 

泣かないで彩葉......私は大丈夫だから......

 

私は彩葉をバルコニーへ連れ出し、一緒にツクヨミの夜景を眺める。

 

「ここからの眺めがヤチヨは本当に大好きなの」

「どうして...?どうしてヤチヨはずっと笑ってるの??」

「それがヤチヨだから...」

 

この答えは用意してた物だ...絶対彩葉なら聴くと思ってた...

 でも、なんでかなぁ......私との思い出がある彩葉じゃないのに......どうしてこんなに懐かしいんだろう......どうしてこんなに胸が締め付けられるんだろう......

 

欄干を掴む指が震える。それに呼応するように私は声を振るわせながら、この場で想いを言葉にした。

 

「彩葉の歌を聴いて戻ってきたのに...ハッピーエンドに連れてくって言ったのに...」

 

「ごめん...ドジっちゃった......」

 

彩葉が悲しい顔をする。

 

今私、ひどい顔してるんだろうなぁ。

 

「キラキラのかぐや姫はもうおばあちゃんです...」

 

私は精一杯の笑顔を彩葉へ向けた。

 

「ヤチヨ!聞かせてよ!八千年あったこと全部!私...寝ないから」

 

そう言う彩葉は私と過ごした彩葉そのものだった。

 

___ああ彩葉は彩葉のままなんだ...変わんないんだぁ......そっかぁ......

 

「無茶言うねぇ!!」

 

嬉しかった......私を受け入れてくれること...私は彩葉と思い出を共にしたかぐやではないけど...同じように大切に思ってくれていること...全部が嬉しかった。

 

私は涙をその場に残して彩葉の元へ駆け寄る。

 

私の涙は、8000年を経て本物の涙を流さなくなった私が流した初めての涙だった...

 

 

 




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ヤチヨ....一生頭撫でて幸せになってほしい....
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