超人酒寄彩葉と借金貧乏男子が運命的な出会いをする話 作:陸結
それでも投稿は続けていきますので、日々の密かな楽しみにしてくださると幸いです。
追伸
予約設定ミスってて投稿遅れてごめんなさい!!
「「お疲れ様でした〜」」
YACHIYOCUPの開催とかぐやのライバー宣言から数日後、私と有原はバイトから帰宅していた。
「明日から夏休みだな」
「ねっ一日たりとも無駄にできないから頑張らないと!」
「でもそれ絶対かぐやの邪魔が入るやつだな」
そうなんだよ。かぐやがきてから私の勉強時間は減った。かぐやと言い争ったりするのもあるが、何よりも食事の時間である。我が家の料理番となったかぐやは『泉が1人でご飯食べるのはハッピーじゃない!!』と言い放ち、有原の料理番にも就任。それによって、かぐやの手料理を有原も含めて3人で食べるようになってから、食事の時間はかなり増えた。しかし、今まで賄いを1人でちびちび食べていた時間は、ちょっとした楽しみになっていた。
「まあでも、かぐやがきてから酒寄元気になったからな。俺としてはかぐやに頭上がらないよ」
「元気になったっていうか、穏やかに過ごせないの方が正しいでしょ」
「まあな。ただかぐやマジで料理のセンスあるんだよ。こないだ俺、食べられるけどクソ不味い道草教えたのよ。そしたら次の日美味しい天ぷらになって出て来たからな」
「待って、あれその辺の雑草だったの?!」
「雑草って言っても毒とかないしむしろ栄養満点だ」
「もーかぐやに余計なこと教えないでよ...」
「はは悪い悪い」
こいつ...かぐやに碌なこと教えてないのではないだろうか。かぐやが無茶苦茶なのはこの男のせいだろう。しかし、有原なしではもう生活できなかったりする。有原は私が勉強してる時、かぐや連れて外に出かけることが多い。正直彼がいなかったら私はかぐやの妨害を受け、やつれていたかもしれない。いつもはふざけてばかりいる有原だけど,私が本当に大変な時はいつもそっと隣で助けてくれる。かぐやを拾った時も彼は私のことを助けてくれた。
なんかお兄ちゃんみたいだな
そんなことを考えながら話しているとアパートに到着した。私たちが家に帰ると玄関ではかぐやが出迎えてくれていた。
「彩葉〜泉〜おかえり〜ご飯できてるよ〜」
「今日のメニューはなんですか?かぐやシェフ?」
「今日のメニューは賄いのガパオライスをアレンジしまして、具沢山トマトパスタとなっております!」
「シェフ...今回一食...何円ですか!」
「なんと...今日は...業務用スーパーのパスタと賄いのデミグラスソースで作ったので...一人当たりなんと...38円になります!」
「素晴らしい!かぐやシェフまたもやチャレンジ成功です!」
「「Fooo〜」」
有原が手でマイクを作りかぐやへインタビューをする。この平和的で俗人的なやり取りが、ここ最近は夕ご飯前の通過儀礼になっていた。
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夜ご飯を酒寄たちと食べた後、酒寄は机の向かい、俺とかぐやは洗い物をしていた。
「よし!できた!」
そういうと酒寄は壁にA3の紙を貼った。
「これは...夏休みの予定表?ってなんだこれギチギチすぎるだろ」
「一日も無駄にできないって言ったでしょ。有言実行!」
「やだ〜かぐやとも遊んで〜」
詰め詰めの予定に案の定かぐやが反発する
「追い出すよ。てかあれなんなの?」
酒寄は部屋の隅に置かれているたくさんのぬいぐるみや前衛的な小物たちを指差す。何あれトーテムポール?
「配信用の小物たち!大丈夫ちゃんと全部百均製!」
「配信って何?ほんとにライバーになるつもりなの?」
「当然!もう初配信もしたんだよ〜」
そう言ってかぐやはあの初配信を見せた。まずいなぁ...。俺はこの先起きるであろう事実を予見すると気が滅入ってしまった。
『「かぐやっほー!かぐやだよ!今日はやること思いつかないからこれでおしまい!ばいばーい!....ん?これ切れてるのか?ねー泉?これ切れてるー?」
「ん?バカバカ!切れててねーよ!!!!」』
そこでアーカイブは終わっていた。
コメントには、
『伝説の初配信』
『ネタが思いつかないからってまさかの配信終了』
『何故かこの配信笑いが止まらない。』
『朗報かぐやちゃん。超美人』
『悲報かぐやちゃん。男持ち』
『いやーあれはかぐや兄と予想』
『悲報お兄ちゃん。妹の配信で顔晒される』
『不憫な兄貴概念助かる』
などなど大盛り上がりであった。
「...」
酒寄が笑顔でこちらを見てくる。そしてゆっくり近づいてくる。
「あの、酒寄さん?」
「なんで有原は黙ってたのかな〜?てかなんで止めなかったのかなっ!!」
酒寄はそう言いながら俺の小指を踏みつける
「痛っ!!!!待って待って!黙ってたのは悪かったって!でもこのままかぐやを幽閉するのも可哀想だろ?だったら配信ぐらいさせとくのもいいのかな〜って思って...」
「それでなんで初っ端から素顔晒してんのよ!後この不協和音なに?!」
かぐやの初配信の裏では絶妙に人を不安にさせるbgmが鳴り響いていた。まずいなぁ...
「ジングルだよ!泉と作ったの!」
「ジングル?これが?!てかあんたらはなんでこれでいいと思った!」
酒寄のツッコミは止まるところを知らない。
「泉がどうせ作るなら相手の頭に残る物がいいって!」
まずい。俺はかぐやと爆笑しながら不協和音ジングルを作ったのだ。
酒寄が笑顔でこちらを見てくる。そしてゆっくり近づいてくる。そして俺の小指を踏みつける。
「痛っ!!」
酒寄さん。さっきから酷いっすよ。ちょっとかぐやとふざけただけじゃん!!
「ねえ!彩葉ピアノ弾ける??!!」
「まあ人並みには弾けるよ」
「いや、全然プロでも通用するレベルだろ」
酒寄のピアノは素人レベルでなければ、アマチュアレベルですらないと思う。そういえばちょっと前綾紬が『昔酒寄はピアノのコンクールで2位だった』とか言ってたっけ。
「ねえ彩葉...かぐやのために作曲して...?」
「げっ」
「いろはぁ...ダメ...?」
かぐやが酒寄に上目遣いで詰め寄る。そして酒寄の強張った顔がどんどんほぐれて行く。
「新しいのは無理だけど...昔作ったやつアレンジし直すぐらいなら...」
かぐやの勝利!酒寄はこの手の上目遣いにどうやら弱いらしい。俺もいつかやろっかな?そして酒寄はノートパソコンからオリジナル曲を引っ張ってきた。こいつどれだけ多彩なんだ。
「よっしゃ!!じゃあ彩葉!弾いてみてよ!」
「今?もう、しょうがな...」
キーボードに手をかけた時、急に酒寄の体が強張った。まるで苦しい思い出がフラッシュバックしたようだった。かぐやはキーボードを眺めて酒寄が弾き始めるのを心待ちにしている。どうやら酒寄の変化にはまだ気づいてないらしい。
「酒寄」
俺は一言そう発して彼女の肩に手を置く。それが彼女の心が楽になるかどうかはわからない。彼女の心にあるトラウマも俺はよく知らない。ただ...俺は彼女の心に踏み込むことはできないが...この手の温もりを分けてあげたかった。
♪〜♪〜
酒寄はキーボードに力を加え演奏を始めた。そしてその演奏に魅入っているかぐや。ボロアパートは澄んだ音楽で溢れた。その空気に押され、かぐやは演奏に合わせて鼻歌を歌っている。この曲をかぐやが歌うのか...どんな曲なんだろうな...もっと明るい感じにアレンジするんだろうか?そんな妄想をしているとかぐやがこの曲を歌う姿が頭にふと...思い浮かんだ。
「カチコチは...だるいしまじ無理...」
俺が演奏に合わせて呟いた時、酒寄も演奏を止めてかぐやと2人でこちらを見つめる。
「有原...今の...」
「あっ!いやあまりにもいい曲だし...それにかぐやがこれを歌うんだって思ったら...自然に...」
「泉!!」
かぐやが俺の手を掴んで俺を見つめてくる。
なになに?!めっちゃドキドキするんですけど?!
「彩葉の曲作詞して!!さっきの超〜かぐやぽかった!」
「え?!まあ俺なんかでよければ...」
「すごいね。あんな即興で,それもリズム縛られてるのに...」
「なんでだろう。普段から和歌とか読んでたからかな?」
俺の何気ない趣味がここで生きるとは思わなかった...
「よっしゃ!じゃあ彩葉は作曲で泉が作詞でかぐやが歌う!!これで1番は確定だー!!」
「アレンジ頑張ってね。いろP」
「いろP??って私は別に配信には出ないから!作曲だけだよ?!」
「いろはぁ、かぐや一緒に配信したいなぁ...ハッピーエンドにしたいなぁ…」
そんなもの知らんとばかりに、かぐやのおねだり攻撃が炸裂。
「ぐぬぬ、ねぇそれずるくない?」
酒寄には効果が抜群だ!完全に敗北宣言である。
「はあぁぁ…いいよ。でもちょっとだからね!」
「いやったー!いえーい!」
そう言ってかぐやは俺と酒寄に抱きついて来た。
かくして、俺とかぐや、いろPのライバー活動が開始した。
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【裏話】
有原の作詞能力が光る回でした。そんなわけで今日の題名は古今和歌集の序詞からきています。人の心から歌が生まれるのは今も昔も同じことのようです。