死ぬわアイツ
”
太陽系第三惑星『ソラリス』を過去に襲い、その後”海蝕現象”という癒えぬ傷を惑星に刻み込んだ、忌々しき災い。
その災いは、これまで人類が積み上げてきた常識という基盤をまるごとひっくり返してしまった。
ある災いは……世界のソラを覆い尽くし、宙へと向かう人々の夢を閉ざした。
ある災いは……世を構成していた周波数を歪め、満たし、異形の怪物を生み出した。
ある災いは……地面から空に降る歪な雨を発端として、怪物の波を引き起こした。
次から次へと起こり続ける常軌を逸した災害に、人類は敗北し、涙を流し、慟哭した。
しかしそれでも、次世代へと命を繋いで。
そしてそれは、ソラリスに浮かぶ小さな島国────『葦ノ原』でも同じ。
”悲鳴”は海に囲まれ逃げ場のない島国であっても、酷く平等に、そして無情に襲い掛かり、最悪の被害を齎した。
そして他国と同じように、それでも命を繋いだ人々により、文明は再興され、人類は霊長の座を手放さなかった。
……しかし、ここ葦ノ原が他国と少し違ったのは────その復興速度が、群を抜いて早かったこと。
理由として、葦ノ原という国が元来、”悲鳴”が襲う前から頻繁に災害に遭うほどの『災害大国』であったことや、そうした災害に見舞われ甚大な被害が起こってもなお、決して滅びることなく復興してきた、不屈の国であったことが挙げられる。
とにかく、葦ノ原は一足早く他国よりも復興を果たした。
しかし、葦ノ原がいつものように他国へ支援をしようとした時────”悲鳴”というものが、想像以上に自分たちを嘲笑っていたことに気付かされた。
そう、葦ノ原は謎の結界のようなもので覆われてしまっていたのだ。
そのせいで他国との連絡すら行うことはできず、当然ながら支援をすることは叶わない。
しかし、葦ノ原の民たちが最も激昂したのはそこではない。
葦ノ原そのものを覆うように張られた結界。
それによる気候や海流の変化により────美味しいご飯が食べられなくなってしまっていたのである。
葦ノ原は元より、その土地の小ささ故に食料自給率が著しく低い国。
そのため海外からの輸入にも頼れない状況下で、まるで追い打ちかのように叩きつけられた現実に、葦ノ原の民は怒りを通り越して呆然としてしまった。
されど、”悲鳴”は嘲笑を止めない。
弱って弱って弱り切った葦ノ原を、”
────だが。
葦ノ原は滅びなかった。
不屈の精神?
それもあるが、否。
かつて世界に誇った、葦ノ原の『創作』の極意が、葦ノ原の命脈を保っていたのだ。
綴られる物語の数々。
それらを見て、人々は笑い、涙し、楽しみ、手に汗握り、潰れそうだった心を癒していった。
完全に癒えるまでの年月は確かに長い。
途中、”鳴式”の邪魔も何度も入った。
だが────葦ノ原は結果的に、遂に完全復活を果たしたのだ。
……さて。
これを読んでいる皆々は、当然葦ノ原に伝わる『とある心構え』を知っていることだろう。
遥か古代────時に血みどろでありながら、時に美しき作法を持ち、聳え立つ竹のように、穏やかな渓流のように。
確かに時代の流れの中に存在していた────侍の心。
長い時間とともに薄れていき、それでも根深く葦ノ原の民のDNAに刻み込まれたその本懐を、鳴式は知らぬままに何度も何度も、飽きることなく不用心に踏み抜いた。
その行いは、例えば出された食事を床にぶちまけるかのよう。
可愛く性格の良い女の子をいじめ、殴り、汚すかのよう。
神社に落書きをしたり、物を壊したりするかのよう。
……とっくのとうに、葦ノ原の堪忍袋の緒は切れていた。
武士の本懐────即ち、『ナメられたら殺す』。
この瞬間より、葦ノ原の民たちは残らず『修羅』と化した。
そしてそこに、どういうわけか葦ノ原の命脈を保っていた『創作の心』が悪魔合体を果たすこととなり。
葦ノ原は、憎悪と希望という、マジな闇と光の力でもって急────否、異常成長。
そしてある時、結界が壊され、様変わりした葦ノ原の様子を見た外国人は、彼らを畏敬の念を込めてこう呼んだ。
────『HENTAI』と。
悲鳴「うわぁ~ちっせぇ島国wwwwなに細々やってんのwwwwオラッ死ね!」
葦ノ原「まだだ……まだ終わらんよ……!」(不屈)
鳴式「うわうざwwでも関係ないよねwwww文明死ね!!」(食文化攻撃)
葦ノ原「まずお前から血祭りにあげてやる……!」(覚醒)
鳴式「ふおぉっ!?」