『HENTAI』の国、葦ノ原   作:名無しのサイボーグ

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げ……元気(創作意欲)……イッパイ…………だぜ……ヘッ……(多忙により短め投稿)


(このネタ)まだやるかい

 緋雪が諦念の笑みを浮かべ始めた頃と同時刻。

 場所は変わり、TOKYO。

 

 葦ノ原の中心都市であるTOKYOの中核を担うSHINJUKU……その中でも『最大の歓楽街』と呼ばれている地区、KABUKITYO。

 『眠らない街』の異名を持つほど何時いかなる時でさえ喧噪が止むことのないこの街にて、今この時ばかりは、普段とベクトルの違う喧噪が街を支配していた。

 

 その喧噪の正体とは、当然────戦いの喧噪。

 残像たちの唸り声と、それに対峙する者たちが発する怒声や咆哮がこだましている。

 葦ノ原を挙げた鳴式との決戦。その舞台となるのに、この街もまた例外ではなかった。

 

 ────ただし、この街での戦いでは……一つだけ違うところがあった。

 

 

「────オルァ何見とんじゃァ!?」

 

「いてまうぞコラァ!!」

 

「ブチ殺したれやァ!!」

 

「このボケェェ!!」

 

 

 飛び交う物騒極まりない罵詈雑言の嵐。

 その声のもとを辿れば、数千はくだらないであろう『非日常』を体現する、裏の人間────侠客(おとこ)たちの威容こそが、今この瞬間のKABUKITYOの街を揺らしていた。

 

 

「ザケんなやコラァ!!」

 

「人の言葉話さんかい!?!?」

 

「カタギの皆さんに迷惑かけとんちゃうぞオラァ!?!?」

 

 

 鉄パイプ釘バットに始まり、ドス(チャカ)、果てにはロケットランチャーブルドーザー

 ありとあらゆるヤクザの武器が勢揃いし、反社会勢力は今、他ならぬ社会のために命を張る。

 

 お手製の火炎瓶や手榴弾などが当然のように空を飛ぶ一方、投手たちの背後では、逃げ遅れた一般人たちが震える足を必死に動かし脱出をはかる。

 逃げる彼らの脳内を巡る疑問はたった一つ────何故、彼らのようなやくざ者たちが、こうまで自分たちを守ってくれているのか?

 

 

「……! おうお前らァ! 巫女様は無事らしいでェ!!」

 

「「「う……うおおおおぉぉ!!!!」」」

 

「よ、よかったよかったァ……」

 

「これで心置きなく、暴れられるってもんじゃい!!」

 

 

 理由は単純明快。

 『恩返し』。

 

 今まで、命を懸けて葦ノ原を守って来てくれた桜灼(さくや)の巫女。

 歴代の彼女たちに感謝し、そして力になれなかった己らを恥じていたのは、日陰者たちも同様。

 私腹を肥やすためではなく、ただただ恩を返すためだけに力を蓄える。

 混乱に乗じようとする組織は徹底的に潰され、今や葦ノ原の『裏』は一丸となった。

 

 そしてやってきた今日のこの日。

 憎き鳴式への復讐を果たすため、彼らは本来相容れぬ政府への協力を願い出る。

 たとえこれまでの罪で捕まろうとも構わない。鳴式に『ケジメ』を付けられるなら、それに越したことはない。

 彼らの胸中にあるのは、まさしく喪われたはずの『義理人情』そのもの。

 受けた恩を死んでも返す、『義侠』の覚悟であった。

 

 

「ひっ……ひぃぃぃ!!」

 

 

 ふと、道の脇にて上がる悲鳴。

 逃げ遅れた一般人の目の前には、今にも腕の鎌を振り下ろさんとする残像の姿があった。

 その残像は大きく、死神の持つ鎌のように巨大なそれを振り上げれば、まるで岩山が聳え立っているかのような迫力がある。

 そんな殺意ある迫力に、一般人が耐えられるわけもない。

 事実、罪なき青年は腰が抜けて立つことすらままならぬようであった。

 

 

「や、ヤベェ!!」

 

「間に合わねぇぞ!?」

 

 

 気づいたヤクザたちが走るが、その距離はおよそ十数メートル。とてもではないが、間に合わない。

 残像の凶刃が、青年の顔面に喰い込む瞬間────、

 

 

「────待ちな」

 

 

 ────その刃は、巨大な掌で受け止められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、あれはもう驚きましたよ」

 

 

 当時のことを、この時助けられた青年────増崎勉(18)はこう振り返る。

 

 

「あの時、僕は単純に逃げ遅れてしまったんですよ。そのせいで残像に目を付けられて……でも、間一髪で助かったんです。驚いたっていうのは、まさにその助けてくれた人のことですよ」

 

『正義のヤクザ』っていうんですかね? 眉唾ものだと思っていましたが、少なくともあの人のことだけは、そういう存在なんだと思ってます」

 

「見た目ですか? そりゃあもう厳ついなんてもんじゃなかったですよ。真っ白のパリッとしたスーツに、ドデカい体、顔面の疵……加えてシャツ脱ぐみたいにして破り捨てたスーツの下から出てきたあの入れ墨────もう()()()でしたね」

 

「でももっともっと驚いたのは……これ。パンチですよ

 

「ただでさえデカいその人よりも、もっと大きい残像相手に……一発。一発です。信じられます? たった一発でそいつを倒してしまったんです」

 

こう、グググゥ〜と体全体を引き絞るような……そう、まるで砲丸投げ! というより投擲ですね。何かを投げるかのような姿勢で、残像に思いっきり背を向けながら体を引き絞っていたんですよ」

 

「え? その間残像は攻撃してなかったのかって? いやあ、流石にムリでしょう。何せ、背を向けたってことはその間、相手に向いてるのはあの入れ墨ですから。……ちょっとこれは口頭で説明はできないでしょうね。できたとして、あの迫力をあなたに正しく理解させられる自信がない。あれを見たら、どんな残像もビビって攻撃なんてできやしない

 

「んでもって、パンチですよ。……あれをただ()()()と表現してしまっていいのかは、甚だ疑問ではありますが」

 

「だって、ズドンと揺れたんです。打撃の瞬間、世界そのものが揺れたかのような!

 

「音も凄かった……多分、この世で一番固い物質をデカくして思いっきりそれでぶん殴ったら、きっとあんな音がするんでしょうねぇ

 

「結局残像はどうなったかって? だから言ったでしょ? 一撃ですよ、一撃。殴られた部分から、潰れた空き缶みたいに、こう、ぐしゃりと

 

「……実は僕、警察官を目指していまして。そういう関係上、ああいう界隈の人をむやみに褒められないじゃないですか」

 

「でもあの人だけは……そういうの関係ナシに……チョット憧れちゃいますね……男として」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「二代目ェ!!」」」

 

「オウ、どうだい。調子は」

 

 

 ペシャンコになった残像を横目に青年を逃がした漢に、部下とみられるヤクザたちが駆け寄る。

 声を掛けられた本人はといえば、たった今成した人外の所業などどこへやら、平然とした様子で応えた。

 

 

「すンませン、俺たちが抜けてたせいで、二代目のお手を煩わせちまって……」

 

「……さあな……必死に残像退治に精ェ出してたんで、何が何やら……」

 

「「「……にッ、二代目ェ……!!」」」

 

 

 漢の気遣いに涙する部下たちに、漢は「ところで」とタバコを咥えながら話を切り替えるかのようにして問いかけた。

 

 

「他のトコの状況はどうなってる? もしマズそうなら、ウチからいくらでも人出せ。ここは俺一人でも護り切る」

 

「いいえ、その心配はないみたいです」

 

「ホウ」

 

 

 自然な動きで漢のタバコに火を点け、そう答えるのは漢の右腕ともいえる部下────木崎。

 タバコをふかしながら続きを促され、彼はなめらかに他所の状況を説明し始めた。

 

 

「今現在展開されてる戦闘地区……その全部で優勢な戦況を維持してます。『SATUMA』は言わずもがな、『GUNMA』じゃ出現した残像が片っ端から喰われていってますね。『SENDAI』なんかは、例のお笑い芸人がいるおかげか一番安定してるみたいです。唯一さっきまで『OOSAKA』が危なかったらしいんですが……」

 

「……」

 

「……二代目も知ってる、あの男たちが到着してからはかなり安定したみたいです。ホラ、この暴れっぷり」

 

「……フッ、流石だな」

 

 

 木崎の差し出したタブレットの映像を見ながら、漢は得心がいったというかのように薄い笑みを浮かべる。

 そのタブレットはどうやら、葦ノ原各地戦場のリアルタイム映像が流れているようで、鮮明な映像がしっかりと情報を伝達している。

 そして木崎が拡大した、多数の画面の内の一つ……『OOSAKA』と題されたその映像には、圧巻の光景が映し出されていた。

 

 

『手加減はしねえ……死にてぇ奴だけ、かかってこい!!』

 

 

 例えるならば────『龍』

 

 筋骨隆々の肉体を惜しげもなく晒し、迫りくる残像の軍隊相手に一歩も退くことのない大立ち回り。

 例え背を向けていても、その背に彫られた『応龍』の入れ墨が、守護者か守り神のように残像どもを威嚇する。

 

 そして戦っているのは、彼一人ではなかった。

 

 

『ヒィーッハッハッハァッ!! いくでぇ~っ!!』

 

 

 ギラリと光る刃。力強い瞳。

 そしてその背には『白蛇と般若』の入れ墨が。

 熾烈な激闘の中でなお、楽しそうに笑う姿はまるで狂犬だ。

 

 両者ともに、鬼神のような強さだ。

 OOSAKAに現れた残像の軍隊は、少なく見積もっても数百を優に超えている。

 しかし、OOSAKAに集結した有志たちの数倍という数的不利を、たった二人の漢たちが瞬く間に塗り替えていっているのだ。

 

 そんな光景を見る者たちは驚愕し、そして疑問を浮かべる。

 あのとんでもない強さを持つ二人は、一体誰なのだろうか。

 

 『表』の人間たちが知らないのも無理はない。

 彼らは裏の世界で『伝説』と呼ばれた漢たち。その腕っぷしと生きざまだけで数多の伝説を作った彼らを知らないヤクザはいない。

 

 彼らの強さはまさに天下無双。

 二人の伝説を前に、たかだか数倍の数的有利など、あってないようなものだった。

 

 

「……まさに、龍が如くか」

 

 

 これなら心配いらねぇな、と微笑む漢。

 会ったことはなかったが、漢も彼らの伝説はよく聞いている。

 だからこそ安心して、彼らにOOSAKAを任せることができた。

 

 ────ふと、漢はタバコを揉み消す。

 見れば、目前にはじりじりと迫る残像の群れ。

 その数は先ほどよりも増しており、明らかにここで自分たちをいよいよ潰しに掛かっていることが見て取れた。

 

 しかしそれに対峙する者たちの目には、毛ほどの恐れも存在していない。

 

 

「……さ、いくぜ」

 

「「「「「押ォォ忍ッッッ!!!!」」」」」

 

 

 恐れられるべきやくざ者。

 されどその道を極めた者たちは、今や『葦ノ原』そのものを代紋として背負った。

 

 SHINJUKU、KABUKITYO。

 そしてOOSAKA、DOUTONBORI。

 汚れた路地と濁ったドブ川が見守る中、史上最大の喧嘩が幕を開けた。

 




〇疵面の漢
 ……とある極道組織の二代目を張る漢。常人を優に越すような巨体を持つが、義理人情に溢れる人格者であるという。
 彼が治めるシマ内の住人からも親しまれているが、トランプを五十二枚重ねて引き裂いただとか、アルミ缶をピンポン玉より小さな球に圧縮しただとかいう噂が流れているんだとか。

〇伝説の漢たち
 ……龍が如き漢たち。かつて裏社会にて数多の伝説を打ち立ててきた彼らが、葦ノ原そのものの危機に立ち上がらないはずがなかった。
 本来はKABUKITYOを中心に活動しているのだが、葦ノ原の危機に際し、政府からの恥も外聞もかなぐり捨てた頼みを聞き入れ、戦況が悪化していたSOUTENBORIへと参戦。その勝利に大きく貢献した。
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