アダム・マルコビッチ先生   作:ウエストモール

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メトロイドOtherMのアダム・マルコビッチ司令官がシャーレの先生となる話です。基本的にメインストーリーはやらないか回想程度に済ませ、生徒との関わりを重点的に書いていく予定です

※メトロイドシリーズのネタバレを含む可能性があります


アダムとアロナ

システム接続パスワードをご入力ください。

 

……我々は望む、七つの嘆きを。

 

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

 それは、唐突に脳裏に浮かんできた文章。まるで、それを植え付けられたかのように。アダム・マルコビッチはそれを迷わず入力していた。

 

接続パスワード承認。

 

現在の接続者情報はアダム・マルコビッチ、確認できました。「シッテムの箱」へようこそ、アダム・マルコビッチ先生。

 

生体認証及び認証書作成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。

 

 

 

 銀河連邦軍の優秀な司令官、アダム・マルコビッチは銀河の未来を元部下に託し、凍結しないメトロイドの殲滅と引き換えに自らの命を散らしたはずだった。

 

 しかし、目を覚ませば学園都市キヴォトスなる場所へと飛ばされていた。そこで彼は先生をすることになり、フィクサーとして問題解決のために四人の生徒を率いて暴徒の大軍相手に戦いを繰り広げた。

 

 行方不明となった連邦生徒会長の残したという遺産が置かれている建物を奪還した彼は、遺産である〈シッテムの箱〉というアイテムを手にすることになった。

 

 アダムがパスワードを入力すると、シッテムの箱が輝いて周囲の景色が一瞬で変わる。そこは、半壊して水浸しとなった教室だった。そして、水色の髪の女の子が机の上にうつ伏せで居眠りしていた。

 

「むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうが……」

 

 状況は不明だ。重要参考人は目の前の少女であり、寝言を言いながら起きる様子はないため、近付くと彼女を揺らして起こそうと試みた。

 

「君、起きたまえ。いつまで寝ているつもりかね?」

 

「あぅん、でもぉ……うぅぅぅんっ」

 

 やがて、声を掛けながら揺らし続けていると少女は目を覚ました。

 

「むにゃ……んもう……ありゃ?……ありゃ、ありゃりゃ?……え?あれ?あれれ?……せ、先生!?」

 

 アダムの姿を見て驚愕の表情となる少女。どうやら、彼女はアダムのことを知っているらしい。

 

「この空間に入ってきたということは、ま、ま、まさかアダム先生……?!」

 

「いかにも、私がアダムだが……君は誰かね?」

 

「う、うあああ!?そ、そうですね!?もうこんな時間!?」

 

 本当に居眠りしていたらしく、少女は大慌てだ。年相応の子供のように思えた。

 

「落ち着きたまえ。これでは話もできやしないだろう」

 

「……すいません、アダム先生!ま、まずは自己紹介から!私はアロナ、この〈シッテムの箱〉に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そして先生をアシストする秘書です!」

 

「アロナといったな。ちなみに何ができるのかね?」

 

「はい!例えばハッキングを行ったり、先生を守るバリアを貼ったり、服装を戦闘用スーツと瞬時に入れ替えることが可能になります!」

 

「ほう、それは便利だ」

 

「やっと会うことができました!私はここで、先生のサポートができる時をずっと、ずーっと待っていました!」

 

「それはすまなかったな。居眠りをしてしまうほどに君を待たせてしまったようだ。よろしく頼む、アロナ」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 おそらく、彼女はAIのようなものだろう。銀河連邦のある世界に存在する人工知能と比べるとかなり人間臭く、本当の子供のような情緒を備えていた。

 

「早速ですが、先生のサポートを行うためにも生体認証が必要となります。アダム先生、こちらの方に来てください」

 

「あぁ」

 

 アロナへと更に接近すると、彼女は人差し指をこちらに向けてくる。

 

「さあ、この私の指に、先生の指を当ててください」

 

 アダムは指示に従い、まるで大昔の映画のようだと思いつつも指の先端を接触させる。指紋を目視でじっくりと確認していたようだが、取り敢えず認証は終わった。

 

「……なるほど、連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなってしまったと……」

 

「アロナ、連邦生徒会長について知っていることはあるかね?」

 

 連邦生徒会長は行方不明になる直前、アダムを先生として指名したという人物だ。それに至るまでの経緯は分かっておらず、連邦生徒会の生徒達も彼が指名されていることしか知らないらしい。

 

 その人物といい、状況といい不可解な部分が多く、アダムは彼女が後を自分に託すために意図的に行方不明になったのではないかと考えていた。

 

「私はキヴォトスの情報の多くを知っていますが……連邦生徒会長についてはほとんど知りません。彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも……お役に立てず、すみません」

 

「構わない。ところで、サンクトゥムタワーの問題については解決できるかね?」

 

「そちらは可能です!では、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!少々お待ちください!」

 

 アロナが目を瞑り、何十秒が経過した頃だろうか。彼女は再び開眼すると、アダムに告げた。

 

「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了……先生、制御権は無事に回収できました。現在、サンクトゥムタワーは私の統制下にあります。今のキヴォトスは先生の支配下にあるも同然です!」

 

 アロナは目を輝かせてそう言う。この秘書とやらは、アダムを独裁者にでもするつもりなのだろうか?

 

「なら、制御権を連邦生徒会に移管したまえ」

 

「よろしいのですか?制御権さえあれば、このキヴォトスの支配者にすらなれますよ?」

 

「私はただの人間だ。広大な学園都市を統べることなど、私にはできやしない。そもそも、私は政治屋などではないのだ。分かったかね?」

 

「分かりました!これより、制御権を連邦生徒会に移管します!」

 

 この日、サンクトゥムタワーの制御権は連邦生徒会に戻された。これにより一部の混乱は抑制され、アダムは連邦生徒会長が設立した超法規的組織、連邦捜査部シャーレにて働くこととなる。

 

 それは、彼の新たな戦いの始まりだった。

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