アダム・マルコビッチ先生   作:ウエストモール

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アダムとスズミ

 ある日、シャーレに銀髪で凛々しい雰囲気の生徒が訪れていた。その制服には、三つの円と十字架、逆三角形が重なった紋章が存在しており、トリニティ総合学園の生徒なのは一目瞭然だった。

 

「お待たせいたしました、アダム先生」

 

「よく来たな、スズミ」

 

 彼女の名は守月スズミ。非公認の部活であるトリニティ自警団に所属している彼女がここに来るのは、実に二度目のことである。

 

 一度目はシャーレの部員としてであり、初めての当番だった。今回は当番でもなく完全なる非番なのだが、アダムの元を訪れたのには理由があった。

 

「早速だが、巡回に向かうとしよう」

 

 最初の当番の日、スズミはアダムとの会話の中で彼がシャーレ周辺のパトロールを定期的に実施していることを知った。

 

 自警団として日々パトロールをしている彼女は、持ち前の正義感もそうだが、シンパシーを感じたこともあって同行を申し出た。相談の結果、週に一回の同行が決まった。今回が初回である。

 

「あなた様、行ってらっしゃいませ!」

 

 そして、ワカモがパトロールへと出発するアダムを見送ってくれる。アダムが外出する際の恒例の光景だったりする。

 

「あのワカモに見送られるなんて、複雑な気分ですね」

「まあ、いつかは慣れるだろう」

 

 スズミは以前、シャーレビル奪還のために戦った生徒達の一人だ。そんな彼女としてはワカモに見送られるなんて、複雑以外の何者でもなかった。

 

 二人はシャーレから出発し、パトロールを開始する。連邦生徒会が行政権を取り戻したとはいえ、一度悪化した治安がすぐに良くなることはない。アダムは治安維持と近所との交流を兼ね、パトロールをしているのだ。

 

「そういえば、先生が使っている銃は見たことのないものですね」

「これは銀河連邦軍……私の所属していた組織で採用されているサブマシンガンだ」

 

 アダムが手にしているサブマシンガンは銀河連邦軍のものだ。最後に彼が指揮していた銀河連邦軍第07小隊もメンバー全員が装備していた。

 

「弾薬の補給は大丈夫なんですか?」

「問題ない。シャーレの地下には特殊な設備があるのだが、それで作り出している」

 

 その名はクラフトチェンバーという。シッテムの箱を使って起動させることができ、原理は不明だが様々な物質や物体を精製する機能を備えている、まさしくオーパーツと言える機械だ。対応する弾薬がキヴォトスに無かったため、それを利用していた。

 

「先生は元軍人でしたよね。キヴォトスに治安維持組織やPMCはあっても軍隊はないのでイメージしづらいのですが、どのようなことを?」

「私は、スペースパイレーツという武装集団と戦っていた。司令官として地上部隊だけではなく宇宙戦艦を指揮していた時代もあったな」

「宇宙戦艦……ですか。ミレニアムの生徒達が聞いたら飛びついてきそうですね」

「ユウカも言っていたな……ミレニアムの生徒には気をつけろと。特に、エンジニア部には……」

 

 ミレニアムサイエンススクールは最先端技術の生まれる場所だ。最も技術レベルの高い学園で、将来的には宇宙開発も見据えているらしい。

 

 しばらくの間、アダムとスズミは会話しながらパトロールを続けていた。D.U.にあるコンビニの一つに差し掛かるのだが、二人の耳に銃声が飛び込んできた。

 

ダダダダダッ!ダダダダダッ!ダンッ!

 

 アダムがシッテムの箱を触ると、彼の姿が一瞬で銀河連邦軍のアーマースーツに早変わりする。シッテムの箱本体はスーツと融合し、戦闘支援に最適化されている状態だ。

 

「動くな!!あんたたち、全員手を頭の上に組んでうつ伏せになれ!ここはあたしらが占拠した!」

「無駄な抵抗なんて考えるなよ!痛い目に遭いたくなかったら大人しくしな!」

 

 駆けつけてみると、そこには二人のスケバンがいて店員達に銃を突きつけていた。あろうことか連邦生徒会のお膝元での強盗であり、世も末だ。この光景を見た二人の動きは速かった。

 

「動くな!連邦捜査部シャーレだ!」

「動かないでください!」

 

 アダムとスズミの銃口がスケバン達に向けられる。なお、このまま大人しく彼女達がお縄につくはずもなく……

 

「うるせえ!」

「シャーレだか何だか知らねえが、くたばりやがれ!」

 

 結局、返ってきたのは銃弾の雨である。二人は咄嗟にそれぞれ別の遮蔽物に転がり込み、安全を確保した。

 

「スズミ、閃光弾を使用せよ!」

「閃光弾、投擲します!」

 

 アダムの指示を受け、スズミは鞄から閃光弾を取り出す。彼女の十八番とも言えるお手製の閃光弾であり、市販品よりも性能が高い優れものだ。

 

 スズミは自警団としてのパトロール中に、あまり傷つけたくないという思いから閃光弾を多用しており、〈走る閃光弾〉という異名まで持っていた。

 

 投擲された閃光弾は、スケバン達の目前で炸裂して強烈な閃光と爆音を撒き散らし、平衡感覚と視界を奪う。

 

「ムーブ!」

 

 その隙に二人は遮蔽物から飛び出し、スケバンに銃撃を浴びせて制圧した。

 

 

 

「ご協力に感謝します、アダム先生」

 

 コンビニの周囲でパトカーのサイレンが鳴り響き、ヴァルキューレ警察学校の生徒達によってスケバンが連行されていく中、階級が上だと思われるヴァルキューレ生徒が近付いてきた。

 

「D.U.でこんなことを許してしまうなど、我々としては痛恨の極みであります。本当に申し訳ありません」

「いや、君たちはよくやっている。ただ、手が回っていないだけのことだろう。シャーレとしては、これからも治安維持に協力する構えだ」

「ありがとうございます、先生」

 

 その生徒はアダムに敬礼した後、パトカーに乗り込んでいく。アダムとスズミはスケバンを連行するパトカーの車列を見送るのであった。

 

「先生、私はお役に立てましたか?」

「勿論だ。君の閃光弾がなければ、こちらも無傷とはいかなかっただろう。スズミ、今後ともよろしく頼む」

「はい、お任せください!」

 

 その後、特に事件が起こることもなく本日のパトロールは終了した。

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