アダム・マルコビッチ先生   作:ウエストモール

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今回はユウカ編も兼ねていたりします


エンジニア部への依頼

「アダム先生!ようこそいらっしゃいました、ミレニアムサイエンススクールへ!」

 

 モノレールから降り、近未来的な建物の立ち並ぶミレニアム自治区に足を踏み入れたアダムを出迎えたのは、菫色の髪をツーサイドアップにした生徒だった。

 

「久しぶりだな、ユウカ。あの時の弾薬代だが、きちんと振り込まれていたかね?」

 

 彼女の名は早瀬ユウカ。シャーレビルの奪還作戦に参加した生徒の一人だ。彼女はミレニアムの生徒会に相当する組織、セミナーで会計を務めており、高い計算能力を持つ才女でもある。

 

「はい。問題はありませんでしたよ」

 

 当時、彼女達が使用した弾薬代は連邦生徒会持ちということになっている。アダムは請求書を作成して連邦生徒会に請求し、それを生徒の口座に振り込んでいた。

 

「そういえば、先生は請求書の作成でお困りになったことはありませんでしたか?」

「書類の作成には慣れている。前職では上層部に対して予算申請や報告書を提出することも多かった」

 

 アダムは人の上に立つ立場だったこともあり、戦闘や指揮だけではなく事務作業をすることもあった。着任した当初は使用する機器の違いから少しだけ戸惑っていたが、すぐに適応していた。

 

「もしも困ったことがあれば相談に乗れますからね」

「あぁ、その時は頼む。ところで、セミナーの会長はやはり多忙かね?」

「はい。会長はまた姿を消していまして、何処にいるのかもいつ戻ってくるのかも分からない状態です。一応、連絡はしてくるのですが、何も教えてくれないんですよね……」

 

 セミナーの会長、調月リオは秘密主義である。最近は執務室にいないことも多く、セミナーのメンバーにすら秘密のプロジェクトを進めているらしい。

 

 アダムはミレニアムを訪問するに当たり、学園のトップである彼女にも挨拶すべきだと考えていたのだが、今日に至るまでユウカを通してもアポを取ることができていなかった。

 

「もしかすると、何処からか先生のことを見ているかもしれませんね。ミレニアムは警備ロボも多いですし、会長の権限で操っている可能性もあります」

「そうか。とりあえず、こちらからは接触を求めないでおこう。もしも呼ばれたら、こちらから向かうということだけ伝えておいてくれたまえ」

 

 シャーレという存在は特に有力な学園から警戒されている。自治区の枠を超えた活動が可能なため、自分達の自治区を荒らされるのではないかと考えているのだ。

 

 無論アダムもそれは理解しているため、各学園の上層部への挨拶は欠かさないし、相手方の様子によっては無理に接触しないようにしていた。

 

「先生、今回はエンジニア部に依頼を出すということでよろしいでしょうか?」

「あぁ。設計図は直接渡すことになっている」

 

 エンジニア部はマイスターというモノづくりの天才が集まる部活だ。様々な工学に通じており、高い技術力を持っている。アダムは彼女達にとある依頼を出そうとしていた。

 

「先生、エンジニア部は常に最新技術に飢えています。色々と食いついてくる可能性がありますので、そこだけはご了承ください」

「分かっている。少なくともパワードスーツをエンジニア部の前で使うことはない」

 

 そして、ユウカの案内でエンジニア部の部室へと移動する。そこは巨大なガレージとなっており、セミナーからかなりの予算が与えられていることは一目瞭然だ。

 

「ウタハ先輩、入りますよ」

 

 ユウカの後に続き、アダムはエンジニア部のガレージへと入る。内部には様々な発明品が置いてあり、作業台には工具の数々が確認できた。

 

「やあ、ユウカ。そちらは……話にあったシャーレの先生かい?」

 

 ガレージの奥から現れたのは、制服の上に白衣を羽織り、スパナを手にした紫色ロングヘアの生徒だ。

 

「いかにも。私はシャーレのアダム・マルコビッチだ。君たちエンジニア部に依頼がある」

「それは腕が鳴るね。あぁ、私はエンジニア部の部長をしている白石ウタハ。よろしくね、アダム先生」

「早速だが、設計図を見てもらいたい」

 

 アダムはウタハにUSBを手渡す。この中に入っているのは連邦軍のとある装備の設計図であり、何故かクラフトチェンバーから出てきたものだ。

 

「これは、武器と……宇宙船かい?」

 

 USBを挿したパソコンに映し出されたのは拳銃の形をした武器と、ヘリや爆撃機を彷彿とさせる船のような何らかの設計図だった。

 

「そうだ。いずれも銀河連邦軍……私の所属していた組織で運用されていた装備品だ」

「設計図を見ればある程度は分かるけれど、念のため説明してもらっても構わないかい?」

「いいだろう」

 

 アダムは説明を開始する。

 

「まず、こちらの武器はフリーズガンと言う。下部のパックに充填された冷却ガスを圧縮して発射し、対象を一瞬にして凍結させる。これを受けた対象は防御力が著しく低下し、集中砲火を受けることになるだろう」

 

 フリーズガンは連邦軍の特殊兵装だ。サムス・アランの使用するアイスビームを参考にしており、それに匹敵する凍結性能を備えている。

 

「私はこれを制圧用装備として運用することを考えている。銃弾を受けるよりも苦痛は少なく済むだろう。風邪を引く可能性はあるがね」

「その武器、いいですね。うちで預かっている問題児が脱走した時に使えそうです」

「ならば、後で一挺だけ渡そう。所持はシャーレに所属している者だけに限定しているから、問題はない」

 

 フリーズガンをキヴォトスにばら撒くつもりはない。様々な犯罪に使われる可能性もあるため、所持する人間はシャーレの部員の中でも信頼の置ける生徒だけに限定するつもりだ。

 

「そして、こちらの宇宙船は連邦軍の多目的船だ。兵員及び貨物の輸送がメインなのだが、ここではシャーレの移動式拠点として運用する」

「先生、この開発を私達に任せてくれるのかい!?私達、エンジニア部の夢は宇宙に行くことなんだ。将来、宇宙戦艦を作るために参考にさせてもらうよ」

 

 ウタハは目を輝かせ、掴みかかるような勢いで迫る。なお、多目的船の全長は三十六メートルであり、ウタハの想定している宇宙戦艦のサイズよりも遥かに小さいのだが、宇宙船なら何でもいいらしい。

 

「それと、開発に当たって色々とこの船について聞きたいことがある。一人のエンジニアとして気になることばかりだからね」

「いいだろう」

 

 優秀な司令官であるアダムは連邦軍の兵器に対する豊富な知識を備えている。その知識は指揮を執り、戦術を組み立てる上で大いに役立っていた。

 

 ウタハの質問は長く続き、アダムが真摯に答えること数時間。ユウカは用事があるので途中から消えており、気付けばウタハの後輩達が帰ってきていた。

 

「先輩、お客さんが来てるの?もしかして、あの有名なシャーレの先生?」

「おお!!シャーレの先生ですね!!超法規的権限を持つ連邦捜査部シャーレの顧問として連邦生徒会長によって任命された大人の人であり、今やSNSで話題となっているという、あの!!」

 

 ガレージに入ってきたのは、二人の生徒だ。犬耳でダウナーな雰囲気の生徒が猫塚ヒビキ、小柄な眼鏡っ娘で声が大きい生徒が豊見コトリだ。それぞれ、ミレニアムの一年生である。

 

「私は猫塚ヒビキ。よろしく、先生」

「豊見コトリです!説明や解説なら私にお任せください!!!」

 

 実に対照的な二人だ。彼女達を含めた三人こそ、ミレニアムサイエンススクールの誇るマイスター達である。

 

「先生、私達エンジニア部は貴方の依頼に応えよう。ミレニアムのマイスターとして全力で取り組んでみせるよ」

「報酬はきっちりと支払わせてもらう。頼んだぞ、エンジニア部の諸君。君達の技術力、見せてくれたまえ」

 

 アダムはウタハと握手を交わす。後に彼女は後輩達と共にシャーレに所属し、メカニック担当として活躍することになる。




どちらもメトロイドOtherMに出てきた装備になります
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