モブは見守りたい【マジエク二次】   作:taisa01

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第六話 原作開始)その二

 花邑(はなむら)ホテルは、周囲から頭一つとびぬけて大きな白銀の高層ビルをだった。磨き上げられたガラスと、白い外壁。ホテルを取り巻く自然豊かな庭園。車寄せに滑り込む黒塗りの車と、見ただけで格式を感じさせる所作のホテルマンたち。何もかもが一流と評するに足りるものだった。

 だが、刻乃には城に見えた。外からは清潔で、静かで、強固に守られているように見えるのだ。

 そして、城は攻められる。

 原作小説の記憶が正しければ、この花邑ホテルが堅牢ゆえ直接攻撃ではなく、近くの飲食店で爆破テロという陽動がなされ、その隙に侵入を許してしまうのだ。

 

 リュディヴィーヌ・マリー=アンジュ・ド・ラ・トレーフル。

 長い。

 名前が長い。

 その長さだけで格式と血筋と金と面倒事を積み上げてくるタイプの名前だ。

 

 刻乃は、ホテル向かいの喫茶店の窓際で、ノートの端にその名を書いていた。リュディヴィーヌ・マリー=アンジュ・ド・ラ・トレーフル。二回目を書こうとして、途中で止める。

 

「長いな」

 

 小さく呟き、後半に線を引いた。

 リュディヴィーヌさん。

 もうそれでいい。

 窓の外では、花邑ホテルの正面玄関が見える。旅行客らしい家族。商談に来たらしいスーツ姿の男たち。制服姿のホテルマン。その全てが、柔らかな春の午後の中に収まっている。白い柱。左右に配置された魔法警備用の柱状端末。行き交う客は、誰もここで何かが起こるなどとは思っていない顔をしていた。

 

 表向きは平穏だ。

 表向きは。

 刻乃は、その表向きを信じていなかった。

 

 原作小説で言えば、最初の大きな事件。

 

 リュディヴィーヌ・マリー=アンジュ・ド・ラ・トレーフルが、執事オーレリアンの裏切りによるテロに巻き込まれる。護衛のクラリスは不意を打たれ重傷を負い、リュディヴィーヌも酷い目に遭う。

 背後には邪神教の影。

 本来なら、原作主人公が憑依した瀧音幸助が関わる事件だ。

 

 だが、この世界の幸助は、幸助のままだ。

 攻略知識はない。

 正解を知らない。

 危機をイベントとして認識できない。

 

 そして困ったことに、人が倒れていれば走る。悲鳴が聞こえれば振り向く。危険だと分かっていても、誰かが助けを求めているなら足が前に出る。

 そういう馬鹿だ。

 だから刻乃は、幸助にこの件を話していなかった。

 

 話せば来る。

 絶対に来る。

 そして言うのだ。

 

ーー危ないなら行くだろ

 

 その言葉は正しい。

 正しいから厄介だ。

 刻乃は紅茶を飲んだ。

 冷めている。

 すこし渋い。

 ここ数日で、刻乃はこの喫茶店の紅茶が、熱い時より冷めた時の方がすこし渋いというどうでもいい知見を得ていた。なぜなら張り込みが長いからだ。

 朝は向かいのベーカリーの喫茶スペース。

 昼は花邑(はなむら)ホテルの別館にあるこの喫茶店。間の時間は庭園を散歩したり、併設されている施設を回ったり。

 夕方になって家に帰り修行する。

 

 探査符。

 隠蔽符。

 誘導符。

 治癒符。

 拘束符。

 

 右手の指輪には盾、拘束、持続光、念動、治癒。

 左手の指輪には火、水、風、土、無属性衝撃。

 

 懐には呪符剣。

 靴底には簡易加速用の刻印。

 鞄の中には複数の使い魔型魔道具。

 

 そしてこの喫茶店がテロ現場となる場合に備えて、熱や衝撃・物理的な破片の衝突を検知して近隣の人物に防御術式を自動でばら撒く使い捨ての刻印符。もしテロに合った場合、自分を含めて周辺にいる人物に魔法をかけるようなことができる存在は、それこそ卓越したスキルと豊富な戦闘経験をもった魔法使いだけであろう。無論、刻乃にそんな技量はない。それの何とかできるのが刻印魔法の真骨頂といえる。

 今回は状況が限定されているからできる準備だ。

 こんなことは普段はできない。たとえば、ありとあらゆる刻印符を用意できたとしよう。しかし大量の紙束から必要な一枚を、瞬時に取り出すことができるか? きっと某遊戯の闘争者たちぐらいの運命力があればできるかもしれない。つまり、そういうことである。

 

 とはいえ、できる準備はした。

 

 問題は、見えない情報が多すぎることだった。

 いつ起きる。

 どの階で起きる。

 原作小説で描写されている通り立食パーティかなにかの会場のようだったが、リュディヴィーヌとクラリス、そして襲撃した男たちしかいなかったのか。

 邪神教は何をしようとしたのか。内容から誘拐っぽいので、この場であの時のような儀式なんて話はなかったはずだが、実際爆破だけだったのか。

 刻乃の知っている原作知識は、こういう時に限って縮尺が荒い。

 物語なら一行で済む。

 

 ――ホテルの別館にある飲食店で爆破が起きた。

 

 だが現実では、一行の間に、人間が走り、転び、血を流す。

 どの扉から逃げるか。

 誰が煙を吸うか。

 どの階段が使えるか。

 どのガラスが割れるか。

 なにより本館の人たちまで混乱するほどの爆発。何が起きるのだろうか?

 

 原作知識は地図だった。

 だが、その地図は道順だけを書いた観光案内のようなもので、火災時の避難経路も、敵の侵入ルートも、床材の耐熱性も書いていない。

 

「地図が役に立たぬなら、足元を見るしかない、か」

 

 刻乃は祖父の言葉を思い出した。

 足元。

 

 ホテルの出入口。

 警備端末の配置。

 人の流れ。

 ホテル内の喫茶店を利用客を装って館内パンフレットを入手し、大まかな位置関係も確認している。

 刻乃はノートへ小さく書き加える。

 本格的な探査魔法を外部から打ち込もうものなら、途端にホテルの警備に引っかかる。そのための刻印が内装に組み込まれているのも確認している。せいぜいやるなら、中に入って、しかもプライバシー保護のための対策魔法をすり抜ける必要がある。せいぜい発動できて一回が限界だろう。

 

 西側通路、昼過ぎに警備員交代。一時間後に東側も交代。

 ホテル正面、午後三時台は客多。

 そして幸助、絶対に近づけない。

 

 最後の一行に、つい力が入った。

 ペン先が紙を少し削る。

 

「近づけない、ねえ」

 

 刻乃は自分で書いた文字を見て、微妙な顔をした。

 

 だから今回は、そもそも誰にも知らせていない。無論花邑毬乃にも話していない。未来知識を根拠に「ホテルでテロが起きます」と言えば、どれだけ花邑毬乃が優秀でも、刻乃を夢想家か危険人物扱いするだろう。

 そんなことを考えながらノート書いていると、端末が震えたので、刻乃は画面を見た。

 

 瀧音幸助。

 

 携帯嫌いの幸助が刻乃に電話をかけてくるだけで、嫌な予感がした。

 

「何だ」

『第一声が冷たい!』

「用件は」

『刻乃、今どこ?』

「喫茶店」

『また?』

「まただ」

『最近喫茶店多くね? 優雅か? 貴族か? 可愛い彼女探しか?』

「最後だけ否定しづらい」

『探してるのかよ!』

「今はいない」

『今は、って言った!』

 

 いつもの軽口が始まる。

 

「お前は何してる」

『毬乃さんとの待ち合わせで、ホテルの前にいる』

 

 刻乃の指が止まった。

 窓際のから外を見る。車寄せ。ホテル正面玄関付近。そこに灰色のマフラーが見えた。

 

 いた。

 

 当たり前みたいな顔で、瀧音幸助が花邑ホテル前に立っていた。首には灰色のマフラー。普通の少年らしい私服。高級ホテルの前では、少し浮いて見えるが本人は気にしていないようだ。

 刻乃は深く息を吸った。

 

「幸助」

『何だ』

「帰れ」

『何で!?』

「いいから帰れ」

『いや待ち合わせなんだって。時間はあるけど』

「帰って後でこい」

『刻乃、怖いぞ』

「怖くしている」

『何かあるのか?』

 

 幸助の声が少し低くなった。軽口の奥に、警戒が混ざる。馬鹿だが、こういうところは鈍くない。刻乃は舌打ちしたくなった。

 説明すれば来る。

 説明しなくても、すでに来ている。

 もう詰んでいる。

 

「嫌な予感がする」

『刻乃の嫌な予感は当たるから嫌だな』

「なら帰れ」

『でもさ』

 

 幸助の声が変わった。今度は軽さが薄れた。

 

『中、何か変じゃね?』

「何が」

『ホテルの上の方、妙にざわつく』

 

 刻乃は立ち上がった。

 椅子が小さく鳴る。

 隣の席の母娘がこちらを見た。

 刻乃は軽く会釈し、窓際に寄る。

 

「場所は」

『上の方。七階……いや、もう少し上かも。西側? 何か、黒いというか気持ち悪い塊みたいなのがある』

「色で分かるのか」

『色っていうか、感じだな。見えてるわけじゃない。でも嫌な感じがする』

 

 幸助の心眼スキルは、覗き目的で開花した最低な由来の索敵能力だ。しかし今の話は違う。どちらかといえば第六感といわれるスキルだ。すくなくとも、数日前はそんなスキルを身に着けていなかったはずだ。ということは、花邑に移り住んでから身に着けたことになる。

 可能性は鈴音先輩との修行だが正直わからない。ただし非常に有用なスキルだ。

 

「幸助、車寄せの外周まではなれろ。」

『刻乃は?』

「別館にいる、窓際だからそっちを見つけた」

『そっちにいけばいいのか?』

「説明は後」

『それは説明する気がない人の言葉だろ』

「正解だ。だからすこし離れろ」

『無理』

「幸助?」

『別館の反応が増えた』

「警備員に言え」

『何て? 俺の心眼がざわつきますって?』

「ただの不審者だな」

『だろ!?』

 

 幸助の声には焦りがある。言いようのない不安がもれている。だがほぼ確定だろう。

 刻乃は唇を噛んだ。

 今この瞬間、幸助を完全に遠ざける方法はあるか。

 

 ない。

 

 嘘をついても、幸助は残る。

 脅しても、たぶん残る。

 なら、役割を与えた方がいい。

 突っ込ませないために、外で必要な仕事を渡す。

 

「幸助」

『何だ』

「玄関には入るな。人が逃げる方向を塞ぐな。何か起きたら、まず一般客を外へ誘導しろ」

『何か起きる前提じゃねえか!』

「起きるかもしれない」

『刻乃』

「何だ」

『俺、役に立つ?』

 

 幸助は怖いのだ。でも、逃げたいとは言わない。だから役に立つかと聞く。

 そういう男だ。

 だから面倒で、だから刻乃は放っておけない。

 

「立つ。ただし、死ななければな」

『了解。死なない』

「絶対だ」

『おう』

 

 軽い返事。

 刻乃は通話を切らず、入口近くのレジで会計を済ませる。

 店員と会計のやり取りをしている間に、刻乃は鞄にしまった緊急用の刻印符へ魔力を通す。鞄の中で、外から見えない程度の光。喫茶店には一般客がいる。もし爆発が起きれば、それなりの被害がでる。なにより幸助の反応から、爆発の時間が近いと予想されるからだ。

 

 その時だった。

 厨房の奥から光が膨らんだ。

 

 白に近い閃光。

 一拍遅れて、爆発音。

 

 空気が殴られた。

 喫茶店の大きなガラスが一斉に震え、カップが跳ね、天井の照明が揺れる。店内で流れていたピアノ曲が途切れ、誰かの悲鳴が上がった。そして周囲を焼きながら黒煙が噴き出す。

 

『刻乃!』

 

 端末から幸助の声が聞こえる。

 その声で刻乃は冷静になれ、準備していた刻印符が発動して周囲の客と店員を保護することができた。一拍遅れて店に設置された消火システムが動き出す。

 人的被害はわからないし、確認したい。

 だが、店内には防御刻印が発動し、消火システムも動き出している。ここで刻乃が全員を確認していれば、本命に間に合わない。

 無事であることを祈りながら、刻乃は店の外へ出た。

 

「幸助、まず外へ誘導しろ!」

『分かった!』

 

 通話の向こうで、幸助が叫んだ。

 

『こっち! 玄関から離れろ! 道路側へ! 押すな! 走るな! 子供いるぞ、誰か手ぇ引け!』

 

 通る声というものは、こういう時に人を動かす。

 原作を読んでいてなぜ、別館で爆発がおこったとはいえ、本館側にも混乱がおきているのか? 驚き野次馬が生まれるのはわかる。しかし、まるでホテル内で爆発がおこったような騒ぎになってるかのか?

 

 ホテル側の非常警報が鳴り響く。赤い警告灯が点滅し、正面玄関から煙が漏れ始めた。

 車寄せではホテルマンが客を外へ誘導している。

 警備員たちも動いている。

 

 だが、逃げてくる人の流れは不規則で、ロビー付近に混乱が見えた。ヒステリーのように数名の人が暴れ逃げ出そうとしている。それらを必死な声掛けで誘導しようとするホテルマンがいる。

 刻乃は、それらを横目に見ながら本館に向かう。もはや爆発だけでなく、騒いでいる人や避難を呼びかけるホテルマンさえサクラのように疑心暗鬼なるが、問題の元凶へ足を向ける。

 

 そして、ホテルの上層階から、もう一度小さな衝撃が走った。

 爆発というより、術式の衝突。

 中で戦闘か、結界破壊が起きている。

 

 その中に、幸助がいた。

 両手で人の流れをさばいている。

 

「押すな! 前見ろ! そこの人、こっち! お姉さん、子供抱えてるなら端寄れ! 刻乃!」

 

 目が合った。幸助は無事だった。

 少なくとも今は。

 刻乃は駆け寄る。

 

「怪我は」

「ない」

「さっき変な人を見つけた。スーツ姿の人が人の流れに逆らって入っていった」

 

 刻乃は

 

「俺が行く」

「一人で!?」

「お前は外を見ろ」

「俺も行く!」

「駄目だ」

「何で!」

「お前は目立つ。魔力が大きすぎる。敵に気づかれる」

「う」

「それに、外の誘導が必要だ」

 

 それらしい理由で幸助を現場にとどめようとする。

 

「刻乃」

「何だ」

「中に、やばい人いるんだよな」

「いる」

「俺も行く」

 

 しかし、幸助はマフラーを右手で握りながらまっすぐ刻乃を見ながら一瞬だけ笑った。その顔に、恐怖が混じっている。

 でも、逃げない。

 もしここで何もしなければ、原作小説で描画されている通りリュディヴィーヌらはひどい目にあうのだろう。ホテルには警備員もいるが、この騒動で間に合わなかったことを意味する。

 

 なにより、原作より一拍おくれているのだ。

 

「いくぞ」

「おう」

 

 二人は走り出すのだった。

 

 

   ***

 

 

 混乱で自動扉は半分壊れ、片側のガラスにひびが入っている。高級ホテルらしい静かな照明は、警告灯の赤に塗り潰されたなか、一般客が逃げていく。

 刻乃と幸助はその流れに逆らわず、斜めにすり抜ける。

 肩が当たりそうになる寸前、念動で椅子を少し動かして道を作る。

 泣いている子供を抱えた女性が通る。

 刻乃はその足元に小さな誘導文字を残した。

 避。

 光が矢印になり、出口を示す。

 女性はそれに気づいたかどうか分からないが、迷わず外へ向かった。

 ロビー奥で、ホテル警備員が叫んでいる。

 

「五階付近で火災!」

「上層階へのエレベーターおよびエスカレーターは封鎖! 一方通行で誘導しろ!」

「通信が乱れています!」

「魔法警備端末、応答低下!」

 

 二人は、その声を聴きながら階段を駆け上がる。

 

 五階。幸助の第六感スキルで拾った気配よりも低い。ならそちらも陽動か?

 刻乃は探査符を取り出し、魔力を通す。ホテルの対抗魔法が乱れているのか、十秒にも満たない合間だが通った。

 

 五階には熱源。たぶん火災がおきており、その周囲で数名いるので消火しているだだろう。そのほかに人はいない。

 問題は七階。ほとんど人はいないが十名近くが固まっている。

 

「七階か?」

「そっち」

「顔を隠せ」

 

 他人が聞けば意味もわからないようなやり取り。

 二人とも幼少期からの鍛錬と身体強化魔法で底上げした体力で、息一つ乱さず瞬く間に非常階段を七階まで駆け上がる。

 そして幸助は予備のマフラーを取り出し覆面をし、刻乃も変装用刻印符をだし、髪長さ、髪色、瞳の色、耳の長さを変化させる。

 

 そして七階。

 不思議なほど煙が上がってきていない。何らかの魔法が発動している気配はあるが、二人は一気に突っ切る。

 

「あそこ」

 

 幸助は目の前の大広間につながる扉を指さす。

 

「幸助全力でいけ」

「壊して怒られるの俺なんだけど」

「俺もこのあとやる。謝るときは一緒だ」

 

 ひどい掛け合いをしながら幸助は一歩先行して第三の手を振り、扉にたたきつける。バタンと大きな音を立てながら開いたところに二人が駆け込んだ。

 そこには女性が一人血を流しながら倒れ伏し、もう一人の女の子に手を伸ばそうとする男とそれを取り巻く男たち。

 刻乃は、エルフの国のお姫様であるリュディヴィーヌと護衛の騎士であるクラリスが、窮地に陥っていることを原作知識で知っている。しっていなくても、自分たちが突入しなければナニが起こっていたか、いやでも想像できてしまうシチュエーションだ。

 

 だが間に合った。

 

 扉を割るほど強く開けた音で、男たちは振り向き動きがとまっている。

 

 それを見て幸助の行動は早かった。第三第四の手を伸ばし、近くのパーティー用に設置されていた丸テーブルを男たちに向かって、躊躇なく投げつける。

 そして刻乃は指輪の刻印に魔力を通し、リュディヴィーヌとクラリス前に盾魔法を出現させ、怯えるリュディヴィーヌに伸ばされていた手は盾魔法に阻む。

 

「なにもっ」

 

 哀れな男は、せっかくのセリフを言い切る前に飛んできたテーブルに、幾人か巻き込んで吹き飛ばされた。

 

「任せろ」

 

 刻乃の言葉に幸助は、迷わずリュディヴィーヌとクラリスの元に走り、リュディヴィーヌに手を伸ばしていた優男を第三の手で殴り飛ばし、第四の手に魔力を大量におくることで大きく広げ、巨大で強固な半円の盾を作り出し身を隠したのだった。

 

 しかし、男たちもプロだ。一時の動揺から立ち直り銃を構えるが、その時には襲撃者のもう一人が準備を完了していた。

 左手の指輪二つと右手の指輪一つに魔力を通し左手の指輪の刻印をつなぐ。

 

 パチンを小さな音が響く。

 

 しかしその音は増幅され衝撃となり、さらに風魔法の後押しして男たちに降り注ぎ吹き飛ばす。あえてイメージを不可視のダンプカーが薙ぎ払い壁にたたきつけた感じといえば、その被害もわかりやすいだろう。

 

 だが、その大規模破壊も幸助たちを射線から外したため、数名が生き残っていしまったのは不可抗力というよりも守る者がいるむずかしさだろう。そんな事情など通じるはずもなく、残った男たちは幸助の盾と刻乃に向かって銃を乱射し始めるのだった。

 

 くしくも原作小説と同じような展開となったわけだが、幸助は冷静だった。広げた第四の手の盾の向こう側を心眼スキルで見通し、ありったけの魔力を通して男たちの死角まで伸ばした第三の手で殴り飛ばしたのだ。

 逆に刻乃は少なくない銃弾にさらされ傷つくが、幸助たちが見えていないことをいいことに、空中刻印で光と衝撃の刻印をつなぎ、即席のスタングレネードの効果を魔法で生み出し、自分もろとも残りの敵を吹き飛ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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