【架空コミュ】極月Pが白草月花をプロデュースさせられる話   作:ミーティオル

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第九話

 ――ステージ上に靴音が響く。

 

 それは、これまでの人生に何度となく行われてきた行為。

 そう。ただ、歩く。

 

(――呼吸が聞こえる)

 

 それは、自分自身の呼吸か。あるいは、この観客の呼吸か。

 腕を振り、足を進める。腕は風を切り、地面は足を跳ね返す。

 自分の身体の重さは、こんなものだったのか――そんな不思議な感想になる。

 

 ――ライトが当たる。

 

 私の身体が、止まる。

 世界が広がった。歩く、という瞬間にあった世界が網膜の中に広がる。

 ライトの温かみ、酸素の心地よさが、頭によぎった。

 

(あぁ、なるほど――)

 

 光は、激動の中にしか掴めないと思っていた。

 心は、止まった世界には存在出来ないと思っていた。

 

 ――ライトが当たる。

 

 そこにはないカップを手に取る。

 喉を鳴らす、温かさを感じるような気がする。身体の芯に潤いが伝っていく、そんな気がする。そして、それを――心地よいと思う、自分がいつもいたのだと思う。

 

(……そうか、悪くない)

 

 振り向く。

 

 ――ライトが当たる。

 

 誰かと語らう。

 

 ――ライトが当たる。

 

(――私が見てきた『世界』も、この世界から続くものだった)

 

 彩りに満ちた世界に、私は手を伸ばす。

 

 ――ライトが当たる。

 

 暗闇のステージの中、ペンライトと観客の煌めく瞳が揺れる。

 私と、観客同じものを見ている。観客と私、同じことを感じている。

 

 今日は、何をしようか? 

 何を見ようか? 

 何を感じようか?

 

 高鳴る鼓動のまま、私は歩みを進める。

 

 ――もっと、共にしよう。この輝く時間を。

 

 

 

 

 控室に続く廊下――。

 

*(よし! よし、よし、よし――!

 会心の出来だった――!

 

 月花さんは……!?)

 

 プロデューサーが月花を探そうとするが。

 

四音「……ぅ、ぐ、ぐぐ」

 

 顔を手で覆い、一人うめく四音。

 指の隙間からは、激情に震える瞳が見える。

 

*(白草、四音……)

 

 奥から月花が現れる。

 

月花「………………」

 

 四音をじっと眺める月花。

 

四音「し……白草……げ……っか……!!」

 

 四音が、月花を睨みつける。

 そのまま月花は、四音に近づき。

 

 

月花「――いい勝負だった。四音」

 

 

 一言だけ添えて四音を通り過ぎる。

 

四音「……ッ! はぁ……ッ!

   うわああああぁぁ――ッ!!!!」

 

 四音が叫びながら走り去る。

 

*(――白草四音。強敵だった。

 いずれまた、彼女は月花さんの前に現れるはず)

 

 

 月花がプロデューサーのところへたどり着き。

 

月花「プロデューサー」

 

 少しだけ、月花が表情を緩ませる。

 

月花「――帰ったぞ」

 

*「はい、月花さん」

 

 プロデューサーが手を上げる。

 

月花「ん……?」

 

*「ハイタッチです」

 

月花「――あぁ。そうだったな。

   『プロデューサーとやるのは』、初めてか」

 

 ――廊下に快音が響き渡った。

 

*「おかえりなさい、月花さん」

 

月花「……あぁ。ただいま」

 

 

 そして、控室。

 その中にはなんと。

 

黒井「――やってくれたではないか、プロデューサー」

 

*「く、黒井理事長……!?」

 

*(なぜ、ここに……?)

 

黒井「ふん。

   月花が突然新たなスタイルが実践するなど言い出した時は肝を冷やしたが……。

   だが、さすがは我が極月学園生徒!

 

   『CRESCENT』を制し、この暴れ馬を新たな境地に立たせるとはな。

   その無謀極まる勇気についてだけは、褒めてやる」

 

*「……あ、ありがとうございます?」

 

黒井「だが、この勝利は決して『完成』を意味するものではない。

   そのことは忘れ――」

 

月花「……コホン」

 

黒井「ぐっ、わかっている!

   まったく……。

 

   ――賭けは貴様の勝ちだ、白草月花!」

   

月花「あぁ。その言葉が聞きたかった」

 

黒井「約束通りプロデューサーの在籍取り消しについては、白紙にしてやる」

 

 

*「………………えっ?」

 

 

黒井「どうした、プロデューサー。その間抜けな顔――。

 

   い、いやっ、まさか!? 月花、貴様!!

   言っていなかったのか!?」

 

*「え、えっと? 話が見えてこないのですが……」

 

月花「……在籍取り消しとは。

   ずいぶんと大げさな事を考えていたものだな」

 

黒井「道理で妙に落ち着き払っていると思ったが――。

   なんと言うやつだ……」

 

*「あの、月花さん。これは――」

 

 プロデューサーが月花を見るが。

 すぐに月花は黒井理事長に向き直る。

 

月花「それで理事長。

   ペナルティをここまで大きく設定していたということは。

 

   ――当然、借り(リワード)も大きい、そう考えて良いわけだな?」

 

黒井「なっ、何……?」

 

*「えっ? あ、あの月花さん……?」

 

月花「それとも、極月学園は苦境を勝ち上がった勝者に、何も送らない。

   ただ、気持ちだけで我慢しろなどと。

   ――そんなケチでさもしい学園だったか?」

 

黒井「ぐ、むむ……!」

 

 理事長の携帯が鳴る。

 

黒井「おーっと、失敬! 先方から電話がかかってきたようだ!

   ハッハッハ! ここで内容を深められないのが残念だが、致し方なし!

   私は、行かせもらうことにしよう!」

 

月花「……まったく、悪運が強い」

 

黒井「――ぐっ、十王龍正!?

   設備とトレーナーの件を嗅ぎつけたか……!

   えぇい、いちいち細かいやつめ!」

 

*(十王龍正というと――あの100プロの社長の……?)

 

黒井「……それでは、私は行くが。

   プロデューサー!」

 

*「は、はい」

 

 

黒井「――くれぐれもその暴れ馬から目を離すんじゃあないぞ」

 

 

 そう言って、理事長は控室の外へと消えていく。

 

月花「……だ、そうだぞ。プロデューサー?」

 

*「……月花さんのプロデュースは、当分退屈することはなさそう何よりです」

 

*(改めて、とんでもないアイドルを担当することになってしまったな)

 

 

 

 学年 3年生 

 ランク-「S」

 

 姓名 白草 月花(しらくさ げっか)

 

 歌唱力-S

 表現力-S

 ダンス力-S

 忍耐力-B++ 新たなるステージへ!

 求道心-SS  

        素晴らしいライブだった!

 

 学内で唯一のSランクを保有するアイドル。

 トップの称号である「オーバートップ」を二度にわたり獲得。

 新たなスタイルを得て、ますますアイドルとしては止まらない存在に。

 

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ひょんなことから始まってしまった白草月花プロデュースだが。

――なんとか、僕は僕なりにやることができただろうか。

 

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