【架空コミュ】極月Pが白草月花をプロデュースさせられる話   作:ミーティオル

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第七話

 場所は極月学園廊下。

 月花がプロデューサーのいるレッスン室へと向かう。

 

月花「――ほう」

 

 廊下の先の影、それを見つけて月花は立ち止まる。

 

四音「なっ、月花……姉さま……!」

 

 月花を見つけ、月花の妹――白草四音が息を呑む。

 

月花「………………」

四音「………………」

 

 しばし、二人が無言で見つめ合う。

 やがて。

 

月花「私は急ぐ」

 

 月花が四音を通り抜けようとする。

 

四音「――プロデューサーをつけたそうですね」

 

 その声に月花が立ち止まる。

 

月花「あぁ」

 

四音「……いったい、なんのつもりです。

   今までセルフプロデュースを徹底してきたのに」

 

月花「さらなる高みを目指すためだ」

 

四音「さらなる高み――ッ!?

 

   ……は。はははっ、お笑い草ですね。聞いています。

   その『プロデューサー』とやらがついてから、成績は大暴落したと。

 

   さらなる高みどころか、実際はこれ以上どう落ちないかの瀬戸際にいる。

   ずいぶんと惨めになりましたね、あの『白草月花』ともあろうものが」   

   

月花「……言いたいことはそれだけか?」

 

四音「な、何……!?」

 

月花「無駄な時間を使わせるな。……私にはやるべきことがある」

 

四音「――ッ!!

 

   バカにするな……!!

   そういやっていつまでも、ボクより上でいられると思うなよ!

   

   ……今のボクには強力なバックアップがある。

   昔までのボクとは違う。

 

   プロデューサーだかなんだか知りませんが――。

   そのみっともない新スタイルごとこの『白草四音』が叩き潰して差し上げます。

 

   ふふっ。

   わざわざ『CRESCENT』に出場して、優勝のために練習を重ねているようですが……。

   本当に練習すべきは、這いつくばって惨めに床を舐める事だったと気づくことでしょう」

 

 四音が去っていく。

 

月花「…………」

 

 月花が小さくため息をついた。

 

 

 ――ビジュアルレッスン室。

 

月花「……珍しいな。今日は、ビジュアルレッスン室か」

 

*「えぇ……。

  急遽ダンスレッスン室と、ボーカルレッスン室は設備入れ替えとなりまして。

  今後しばらく、ビジュアルレッスン室を使ってレッスンすることになるかもしれません」

 

月花「……再開はいつ頃になりそうだ?」

 

*「それなのですが――。

  設備入れ替え後は、レッスン室の利用はしばらく一年生を優先すると。

  また、これはトレーナーの皆さんも同様のようです。

 

  ……先ほど、僕の方で極月学園側に意見書を提出してきました。

  いくらなんでも、この時期では。影響は計り知れません」

 

月花(――なるほど)

 

月花「理事長が『そう』と決めたのであれば、それは動かん。

   その件について食い下がるのはやめておけ。

   時間の無駄だ」

 

*「……しかし」

 

月花「それで、レッスン室が使えなくなったというが。

   今後の私のレッスンスケジュールは完全ブランク化するか?」

 

*「いえ――。

  ボイスレッスンについてはカラオケ店の利用。

  ダンスレッスンについては公民館を。

 

  幸い、新生『白草月花』において肝要であるポーズにいてはこのビジュアルレッスン室でも機能します。

  なので、完全な機能停止だけはなんとか避けた、という感じではありますが⋯⋯」

 

月花「ふっ、上出来だ。ならば、問題はあるまい。

   アイドルは決してレッスン室でのみ呼吸をするものではない。

 

   トレーナーがいなくとも――。

   プロデューサーとアイドル、その二つがあれば単位として機能しうる。

   そうだろう?」

 

*「……そうですね、仰るとおりです」

 

月花「なら、始めるとしよう。――私たちの時間の価値を高めるために」

 

 

 ビジュアルレッスン室で、影を見ながらポーズを決める月花。

 

 

月花(――止まるとは、単に動きを止めるわけではない。

  その本質は、状態を保つこと。

 

  筋肉を伸ばし、そして縮める。

  その方向の違うエネルギーを相殺し、ゼロとする。

 

  そして、必要な伸ばす力と、縮める力をできるだけ引いていく。

  無理なく、しかし脈動的なまま――力を抜いていく)

 

*「おぉ、止まっている――!」

 

月花(――30秒)

 

*「……もう動いて大丈夫です、月花さん。

  ずいぶん、長く止まれるようになりましたね。

  一時期はどうなることかとは思いましたが」

 

月花「とはいえ、歌やダンスと合わせれば、依然粗はある。

   結局、私という激流を、凪いだ水面にするというのはなかなかに難儀だ」

 

*「普通の人間であれば、それだけ苦手なことであれば逃げたくなると思いますが。

  よくここまで続けてこられましたね。

 

  特に月花さんは堪え性が一般人と比較しても皆無に近いと思いますし……」

 

月花「言ってくれるな。これでも赤ん坊よりは高いと自認しているが?」

 

*「レベルが低い回答を堂々と言わないでくださいね」

 

月花「――私は私の道を選び続けているだけだ」

 

*「道……」

 

月花「アイドルへの道。さらに己を磨く道。

 

   その道を進む時、私の心は何よりも自由でいられる」

 

月花「――ステージの上に立つ時、騒音の現実は音楽に変わる。

   私の目の前に広がる世界は、混沌から虹彩へと変わる。

   そして、激動の中にある私もまた――世界の一つとなる。

 

   その瞬間こそが何より私にとっての安らぎ、そして歓喜の時。

   『白草月花』は世界であり、世界は『白草月花』となる――。

 

   その時間を、私はこの上なく好ましいと思っている」

 

*「つまり――アイドルとしてステージに立つ時間が何よりも好きだと?」

 

月花「……柄にもなく言葉を尽くし過ぎたな。

 

   確かに、私にとってこの挑戦は苦痛を伴いはするが――。

   その先にステージに立ち、新たな景色が見られると思えば。

 

   ――むしろ、この苦痛でさえ楽しい。ただそれだけのことだ」

 

*「なるほど。

  それが人間ジェットエンジン『白草月花』なんですね。

  道理で、止まられないわけです」

 

月花「――だが。

   今は、それだけではない」

 

 月花がプロデューサーを見つめる。

 

*「え……?」

 

月花「……いや。お前はお前であればいい。

   変わらず、ずっとな」

 

*「はい……? なぜ、急に僕の話に?」

 

月花「さてな。さぁ、練習を続けよう。

 

   力を貸せ、プロデューサー。

   ――『CRESCENT』は近い」

 

 

 

 学年 3年生 

 ランク-「S」

 

 姓名 白草 月花(しらくさ げっか)

 

 歌唱力-S

 表現力-S

 ダンス力-S

 忍耐力-B  ←止まれるようになってきた!!

 求道心-SS  

 

学内で唯一のSランクを保有するアイドル。

トップの称号である「オーバートップ」を二度にわたり獲得。

アイドルとしてステージに立つことをこよなく愛する。

現在は新たな境地へ進むべく、研鑽を重ねる。

 

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息つく暇もないと考えていたものだが。

気がつけば、『CRESCENT』もすぐそこまで差し迫っている。

――僕は僕にできることをしなければ。

 

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