魂遣いは無自覚曇らせメイカー 〜世界救う代償でみんな僕のこと忘れるしと、最後に曇らせスピーチかました。記憶喪失になったのは僕でした〜   作:ガンバリミトメナイザー

3 / 4
第3話

 

 ――とある都市へ向かう途中、街道の外れにて。

 

 行商の馬車から敵を遠ざけるべく、多くの冒険者たちが奮闘していた。

 

「――そっち行ったぞおら!」

 

「おいおいおい、ちゃんと止めてくれ! こんなバケモノ、ちょ、ま、……ぐわあぁ!?」

 

 おぉ、めっちゃ飛んでった。適当に吹っ飛ばされただけだから死んでやいないでしょ。せいぜい骨折くらいかな。

 

 僕はあんまり心配もせずに、へっぴり腰の冒険者たちに囲まれるバケモノ――無形に視線を向ける。

 

 人二人縦に並べたくらいのデカさで、腕が鎌になったひょろっとした人型のやつ。

 

「出てくるのはせいぜい低位無形の群れって話だったのに、こんなの聞いてない……! 中位なんて倒せっこないよお!」

 

「ッくそ! おいお前、泣き言ほざいてる暇なんてねえんだよ! 黙って戦えや!」

 

「っおじさんだって、ぜんぜん自分からは向かってないのに! ……私を犠牲にしようだなんてその手には乗りません!」

 

「ッチ! ……おい、そこのガキ! てめえもさっきからまったく動いてねえぞ! もっと働けや!」

 

 僕? さっきの女の子の言葉、僕もそのまま言ってやろうか。自分を棚に上げる大人の醜いこと……。

 

 なんて思ってたら。

 

『あいつ、カナタにふざけたこと――。二度とその口きけなくしてやる……』

 

「気ぃ短……。ちょっとメイ、勝手なことしないでよ? 貴重な魔力そんなことに使っちゃ、僕たちここで終わりになるかもなんだから」

 

『! ご、ごめんなさいカナタ、わたしそんなつもりじゃ…………! ――ゆるしてぇ……っ』

 

「はいはい。許す許す」

 

 胸の内から聞こえる声の主――精霊メイルマリンはまた過剰に反応してくる。

 

 なんかこの子、重いんだよね。僕には記憶がないから、色々教えてくれたりサポートしてくれるのはありがたいんだけど、なんか隠してることもあるみたいだし。

 

 頼るものがないから一緒にいるけど、信用していいものやら。とりあえず今は「無形倒してたら記憶戻るかも」って言葉に従うしかない。

 

 そんなことを考えてる間にも、武器を持った冒険者たちはなんとか無形と渡り合ってる。

 

「ひぃぃ! も、もうムリだよ!」

 

「攻撃ッが! 重すぎる……! 足もはええし!」

 

 さっきの二人もそれ以外の冒険者も。ギャーギャー騒ぎつつ、なんとかギリギリもってるじゃん。

 

 ただこのメンバーじゃ決め手が――中位の無形の守りを抜ける攻撃力がないってわけだ。

 

 なら。

 

「――メイ。僕たちでやるしかないよ。力貸してね」

 

『っ! うん! まかせて、わたしカナタの役に立つよ……!』

 

「ん、期待してる」

 

 現状それしかないからね、敵の防御を抜く方法。

 

 それすなわち――

 

『魔力溜めるから! もうちょっと時間ちょうだい――』

 

 ――メイの魔力を利用した魔術行使、つまり精霊魔術というやつ。記憶もお金もない僕にある数少ない強み、人類が失いかけてる魔術の力。

 

 メイと一緒にいる理由の大部分がこの力の存在だからね。謎の精霊の怪しさを飲み込んでもお釣りが来る便利さだよ。

 

「発動までちょっと時間かかるのがネックだけど……っと、こっち来た……!」

 

「――――――」

 

 声にならない声みたいな音を出しながら、鎌の無形が俺に突っ込んでくる。

 

 確かに速いけど、これくらいなら素の身体能力でも。

 

「っよ、はっ」

 

『カナタ、だいじょうぶ!? ごめん、時間かかって……っ』

 

 角度を付けた剣で鎌を受け流す。

 

 記憶無くす前の技能みたいで、剣はそこそこ使えるんだよね。体に染み付いてるみたい。

 

 前から冒険者だったって記録はないんだけど、果たして何やってたのやら。

 

「お、お、おぉぉ!? ガキ、てめえなかなかやるじゃねえか! よし、そのまま抑えてろよ!」

 

「いまがチャンス!? ヤアアア!」

 

 あっバカ! 後ろから不意を突いたつもりかもだけど、この不定形生物に死角なんてないんだって!

 

「ぁ、え? 背中にも目……?」

 

「逃げッ……」

 

 僕が相手する鎌とは別に、もっとちっちゃい鎌を背中からも生やして。背後から迫る冒険者たちを薙ぎ払う。

 

「きゃああああ!」

 

 ああほら言わんこっちゃない、って、あっ!? この無形、僕を無視して? まっ――

 

「え……あ、ぇ?」

 

「嘘だろ? おいおいおい、俺、ここで……?」

 

 彼らの獲物は弾き飛ばされ、地面に叩きつけられた衝撃ですぐには起き上がれない。そこに、地面を滑るようにして向かう無形。

 

 ある程度手強いやつ()がいるって分かって頭数減らしにかかったのかな!?

 

「っメイ、魔力は……」

 

『まだもうちょっと……! でも、あいつ向こうに行ったからちょうどいいかも。この隙に準備できるっ』

 

 ……。

 

「い、いやっ! 私こんなところで、……やめてぇえ!」

 

「たのむ、誰か助けてくれ! ああ、あああ!」

 

 視線の先には、鎌を振り上げた無形。顔を歪めて終わりを拒絶する冒険者たちも。

 

 ったくもう、しょうがないなあ……!

 

 

 

「――【(こん)】!」

 

 

 

『……!? え、なんで!? カナタっ!』

 

「目の前で人がバケモノに殺されるの黙って見てられないでしょ。【根源強化(イクシード)】」

 

『ダメダメ、それダメ……っ!? この前も言ったのに!!』

 

 もうやっちゃったもんね。次から気をつけます。

 

 ほとんど魔力のない僕が唯一独力でできる切り札、魂を使った魔術。多用するとヤバいみたいだけど、これくらいの量なら――

 

「――大丈夫でしょ! ……たぶん!」

 

 さすが魂。強化した体は驚きの身体能力だ。

 

 地面に深い跡を残して高速移動して、矢みたいに流れる景色の終着点には。

 

 僕の接近にも気づかず、僕に比べたら極めてノロマに鎌を振るう無形。

 

 僕が体に強化した剣を振るえば、その直後。

 

 ――――無形の首が、スパッと呆気なく切れて落ちた。

 

 助けた冒険者たちは目を丸くして、ゆっくり倒れ伏す無形と僕を見比べる。

 

 はい。これで終わりね。

 

「――あっ、えっ? お兄さん、つよ……!?」

 

「――てめえ神かよおおお! マジで助かったぜ……ッ!!」

 

 現実に帰ってきた冒険者たちが口々に雄叫びを上げる中。

 

 

 

『――ぅうううう! もおお、わたしカナタのこと思って言ってるのに……! 言うこと、聞いてよぉ!』

 

 

 

 僕の中のメイだけは、思い通りにいかない現実に嘆く。

 

 より強力な無形を探して()()()()()辺境伯領へと向かう、その道中のことであった――

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。