魂遣いは無自覚曇らせメイカー 〜世界救う代償でみんな僕のこと忘れるしと、最後に曇らせスピーチかました。記憶喪失になったのは僕でした〜   作:ガンバリミトメナイザー

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4話以降の描写大きく変えてます。ついでに1-3話も微妙に修正。


第4話

 

 場所は変わって。

 

 いま僕たちがいるのは、とある都市からしばらくのところにある森。鬱蒼と茂った緑とたまに聞こえる獣の声に、どこか非日常な空気を感じる。

 

 ……まあ、僕にはもはや日常の記憶もないんだけど。

 

 さて、それで――

 

「――まだ着かないの? メイ。エルフの隠れ里ってやつ」

 

『ごめん……たぶんそろそろ。けど道が……』

 

「……もしかして僕ら、道に迷ってるの?」

 

『! ぜ、ぜったいちゃんと案内するから……』

 

 でっかい森で迷うってけっこうやばくない? もうだいぶ奥まで来てるよ。遭難じゃん。

 

 まあ幸い、この森は食べるものに事欠かなそうだから、エルフの里を見つけるまで探し回ってもいいんだけど。

 

 なにしろ、今回エルフたちのところへ行く目的は――

 

「――メイのために、エルフの里の精霊に会いに行くんだから。自分のためにもしっかり案内頼むよ」

 

『……うん! せっかくカナタがわたしのこと考えてくれてるんだから。調子が良くなったらほんとの姿でカナタといられる……! そしたらそしたら……撫でてもらって……ぎゅーしてもらって……』

 

「ん、まあ……じゃあ頼むよ」

 

 我ながらなんとも煮え切らない返事。メイは浮かれて気づいてないみたいだけど。

 

 確かに、僕がメイに告げたエルフの里へ行く目的は「メイの不調を治すため」ってもの。僕が記憶を失った時、メイは僕を助けて深傷を負って、ずうっと僕の中にいなきゃいけなくなったから。

 

 でも。メイには言ってないけど、僕がメイを治す理由は実は――――借りを返して一人になるためだったりする。

 

 誰かに借りがある状態って良くないからさ。無茶を言われても断れない、利用される……そんなことになるのはまっぴらごめんだね。

 

『やっぱりカナタは――――記憶をなくしてもわたしを大事にしてくれる。わたしたちこそが、ごっこじゃなくてほんとの家族……っ』

 

 ふすふす鼻息荒くしてるのが伝わってくる。これやっぱり僕の目論見言ったら絶対また荒れるやつだね。

 

 そんなことを考えながら、メイのあやふやな案内に従って森を歩くことさらにしばらく。

 

 これほんとにエルフの里なんてあるの? と疑問に思い始めた時だった。

 

 ちり、とこめかみに走る違和感。今なにか……――なにかを分かつ境界を越えたみたいな感覚が。

 

 メイはなにも気づいてない? この子、精霊のくせに僕より感覚鈍いのか……。

 

 世話が焼けると、口を開こうとしたその直後。

 

 ――高速で接近してくる魔力の反応が。

 

 迎撃の体制を……!

 

「ッメイ、なにか来る……! 戦闘準備!」

 

『え? なにも感じな――あ。この魔力反応は……エルフ!』

 

「これが?」

 

 魔力が失われゆく人間社会とは裏腹に、そのほぼ全員が豊富な魔力を持つという種族。

 

 森と生き、森と死ぬ。植物の如く穏やかな気質に、老いない美貌。

 

 そんな高位種族が――――

 

 

 

「――――見つけたぞ、アレだ!」

 

「あのニンゲンが!? ッコロセぇ!!」

 

「バカ殺すな、ボコボコにせい、ボコボコに! その上で生け捕りじゃあ!」

 

 

 

 とんでもなく物騒な連中が迫ってくる。全員が剣を構えて、風のような速度で。

 

 植物みたいに穏やか? あれは……怒り狂ったオーガって言うんだよ!

 

「精霊様を救い出せえ!」

 

 そんなことを叫びながら、僕を取り囲む十人ほどの集団。テンションの割にすぐ襲いかかってはこない謎のクレバーさまで。

 

 うん。確かにみんな美形で、耳も尖ってて、強力な魔力を感じる。間違いなくエルフだ……。

 

 なんかちょっとショックだね。エルフって人間からは憧れの種族なのに、こんな蛮族みたいな登場かましてさ。

 

 でも。

 

 この蛮族エルフに言いたいことがあるのは僕だけじゃないみたいで。

 

 

 

『ただでさえ道に迷っちゃってるのに。これ以上……――――わたしの株、落とすな』

 

 

 

 ドスの効いた声。一瞬しーんと場が静まり返ったと思ったら。

 

「せ、精霊様!? いったいどこから……」

 

『見て、わかれ。カナタの中』

 

「ッな! そこなニンゲンの!?」

 

 イライラしてるメイに、急に怒りを鎮火させてビクビクしたり驚いたりしてるエルフたち。

 

「――っも、申し訳ありませんでした、精霊様ぁ!」

 

「そのニンゲンが、精霊様の乗り物とはつゆ知らず!」

 

「……羨ましいニンゲンじゃあ! 精霊様をその身に宿す光栄、一昼夜噛み締めてからでなおせい!」

 

 なんか一人だけまだおかしいけども。若い女の子にしか見えないエルフが、鋼の剣をぶんぶん振り回して周りに止められてる。

 

「……ん? 鋼の剣……。エルフって何するにも木を使うって話じゃなかったっけ。それこそ武器にも」

 

 思わずそうこぼした僕に、その女の子は言うのだ。

 

「――()()()()()()()じゃ! 鉄のが硬いんじゃからそっち使うわ! 伝統なんかクソじゃ……!」

 

 ええ。エルフってこんなんなの……?

 

 幻想をぶち壊されてさすがに困惑してると。

 

 メイがまるで、嫌な予感がするとばかりにこぼした。

 

『…………どこかで、聞いたようなことを』

 

 

 

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