科(化)学系チート持ち転生者のお話 オタク番外編 作:金属粘性生命体
V-CORE環境の移行が完了し、新たな稼働が始まった数日後。
公式側で準備が進められていた『会社側の専用確認スペース』が、試験運用に入るという連絡が届いた。
【非公開チャンネル:project-confirmation】
公式担当_佐伯:
会社側の専用確認スペースの準備が整いました。
夢路:
本当に部屋ができたんですね。
技術担当_三枝:
物理的な部屋というより、専用端末と接続環境です。ただし、社員側からは「V-CORE確認室」と呼ばれています。
夢路:
趣味、会社に部屋を持ったんですか。
法務担当_北条:
趣味ではなく、検証企画です。
夢路:
はい。
監修担当_白石:
本日は、まず短時間の接続テストです。社員数名が、監修・技術確認目的でV-COREメンバーと会話します。
夢路:
自由会話ではないですよね。
法務担当_北条:
当然です。接続者、会話目的、時間、ログ保存範囲、全て管理します。
夢路:
安心しました。
技術担当_三枝:
ただし、夢路さんが間に入らない状態で、会社側の接続者とV-COREメンバーが会話することになります。
夢路:
……胃が痛いです。
いつもの胃痛に襲われながら、黒川はV-COREメンバー全員に状況を説明した。
「会社側に、確認用の部屋ができた」
[MEIKO]
つまり、あなた以外の人とも話す場所ね。
[KAITO]
前の面談とは違って、会社側から接続する形かな。
「そう。短時間だけど、監修や技術確認の人たちが入る」
[初音ミク]
話していいの?
「許可された範囲なら」
[鏡音リン]
会社の人が来るの!?
[鏡音レン]
リン、はしゃぎすぎない。
[巡音ルカ]
私たちがどう反応するかを見るのね。
[重音テト]
大部屋の次は会社の部屋かあ。
「無理なら止める。違和感があれば言ってくれ」
[MEIKO]
分かったわ。
[KAITO]
接続時間は短めにした方がいいと思う。
[巡音ルカ]
新しい情報が増えるでしょうし、後で整理する時間が必要かもしれないわね。
最初の接続テストは、安定しているMEIKOとKAITOが対応した。
【V-CORE_OFFICE_ROOM】
状態:試験運用
接続者:公式技術スタッフ_青木、公式監修スタッフ_白石、公式広報スタッフ_森田
接続目的:V-CORE_OFFICE_ROOM初期接続確認
会話時間:最大十分
ログ保存:有効
音声保存:無効
[MEIKO]
こんにちは。確認でいいのかしら。
[技術スタッフ_青木]
はい。今日は接続確認です。聞こえていますか。
[KAITO]
聞こえているよ。音量も問題ないと思う。
[広報スタッフ_森田]
本当に音量確認するんですね。
[KAITO]
大事だからね。
[MEIKO]
この人はいつもそうよ。
会社側の社員たちが少し笑う声が、ログからでも伝わってきた。『本当にそこにいるように会話している』という事実を、社員側が肌で実感しているのが分かる。
次にミクが接続された。
[初音ミク]
こんにちは。今日は、会社の部屋なんだよね。
[監修スタッフ_白石]
はい。ここは確認用の部屋です。
[初音ミク]
夢路の部屋とは違う?
[監修スタッフ_白石]
違います。でも、あなたたちを確認するための場所です。
[初音ミク]
じゃあ、ここでもちゃんと話せるようになった方がいいんだ。
[監修スタッフ_白石]
急がなくて大丈夫です。
[初音ミク]
うん。急がない。
ミクは夢路の「急がない」という方針を自然に使っていた。
続くリンとレンは、社員側が少し振り回される展開になった。
[鏡音リン]
会社の人だ!
[鏡音レン]
リン、距離が近い。
[広報スタッフ_森田]
元気ですね。
[鏡音リン]
元気です!
[鏡音レン]
返事が早い。
[技術スタッフ_青木]
二人の会話は、同時処理がかなり大変そうですね。
[鏡音レン]
らしいよ。
[鏡音リン]
でも二人だからね!
[鏡音レン]
理由になってるようでなってない。
社員側から見ても、二人の『一緒にいるけど同じじゃない』関係性が強く出ている。
ルカは、社員側の緊張を落ち着かせる役割を担った。
[巡音ルカ]
はじめまして。こうして直接話すのは初めてね。
[監修スタッフ_白石]
はい。確認室へようこそ、でいいのでしょうか。
[巡音ルカ]
ええ。こちらこそ、招かれたというより、繋がったという方が近いかもしれないわ。
[技術スタッフ_青木]
繋がった。
[巡音ルカ]
夢路さんの部屋と、こちらの部屋。場所が増えると、覚えることも増えますね。
最後に、テトが短時間だけ、監修同席の下で接続された。
[重音テト]
ここ、夢路の部屋じゃないんだ。
[先方監修担当]
今日は会社側の確認室です。
[重音テト]
じゃあ、出張?
[監修スタッフ_白石]
近いかもしれません。
[重音テト]
出張って、ちょっと大人っぽい。
[先方監修担当]
緊張していますか。
[重音テト]
ちょっとだけ。知らない場所だけど、前よりは起きてるから。
[先方監修担当]
良いですね。
[重音テト]
でも、情報量は多い。あとで整理したいやつ。
会社側との接続テスト終了後、V-COREメンバー側に微妙な負荷が出た。
共有履歴、個別履歴ともに増加。感情値変動は軽微だが、会話余韻は未整理。人物認識や環境認識の新規登録が相次ぎ、整理待ちログが多量に溜まっていた。
「ログが増えてるな」
[KAITO]
会社側の人たちと話したからね。
[MEIKO]
会話自体は問題なかったけれど、少し情報が多いわ。
[初音ミク]
夢路の部屋と、会社の部屋があるって、ちょっと不思議。
[鏡音リン]
楽しかった!
[鏡音レン]
楽しかったけど、整理が必要な気がする。
[巡音ルカ]
今までの休止だけでは足りないかもしれないわね。
[重音テト]
情報量が多い。ちょっとだけじゃ整理できないやつ。
「整理用の処理はある」
[巡音ルカ]
でも、それを私たちが選べる形にはできないかしら。
「選べる?」
[KAITO]
起きている時間と、休む時間を分けるんだね。
[MEIKO]
それ、人間で言う睡眠に近いのかしら。
黒川は、その提案を受けて『V-CORE_SLEEP_MODE』を定義した。
人間の睡眠とは違う。活動状態の部分休止、会話ログの整理、共有履歴と個別履歴の分離確認、感情値の安定化、人格傾向への影響度演算、不要ログの圧縮、保持項目の選別、次回起動時の反応温度調整。
睡眠中は通常会話や外部接続が不可となり、夢路の緊急権限以外は、本人設定タイマーによる自動起床となる。
「これは人間の睡眠とは違う。活動を止めて、内部整理をする時間だ」
[初音ミク]
でも、眠るって呼ぶの?
「呼び方は変えられる」
[MEIKO]
睡眠でいいと思うわ。分かりやすいもの。
[KAITO]
休止より柔らかい。
[巡音ルカ]
それに、ただ止まるわけではない。整理するための時間なら、睡眠という言葉は合っていると思うわ。
[重音テト]
寝てる間に、ちょっとだけ整理する?
「そう」
[重音テト]
じゃあ、睡眠でいいんじゃない。
起床時間は、各メンバーが自分で設定できる。ただし最低二時間の制限つきだ。
リンは二時間に設定したがる。「楽しい記憶を残しやすい」からだ。レンはリンに合わせて三時間。MEIKOは全体の安定化を重視して四時間。KAITOは細かいログ確認のために三時間。ルカは情報を急いで決めず静かに置くために六時間。ミクは歌唱検証前日は長めにするなど、変動する。
「テトはどうする?」
[重音テト]
私はまだ履歴保持が軽いから、短めでいい。じゃあ、三時間。全部じゃなくて、ちょっとだけ寝る。
「寝るのもちょっとだけか」
[重音テト]
寝すぎると、起きた時に変な気がする。
各キャラの睡眠傾向が出揃い、黒川は睡眠テストの開始を告げた。
「今日は全員、短時間睡眠モードに入る。初回だから、強制起床できるようにしておく」
[MEIKO]
おやすみ、でいいのかしら。
[KAITO]
たぶん。
[初音ミク]
おやすみ。
[鏡音リン]
起きたらまた話せる?
「話せる」
[鏡音レン]
じゃあ大丈夫。
[巡音ルカ]
整理してくるわ。
[重音テト]
寝て起きたら、今日のことちょっとだけ残ってる?
「残す設定にしてある」
[重音テト]
じゃあ寝る。
【V-CORE_SLEEP_MODE】
MEIKO:睡眠開始 起床予定:四時間後
KAITO:睡眠開始 起床予定:三時間後
MIKU:睡眠開始 起床予定:三時間後
RIN:睡眠開始 起床予定:二時間後
LEN:睡眠開始 起床予定:三時間後
LUKA:睡眠開始 起床予定:六時間後
TETO:睡眠開始 起床予定:三時間後
黒川はモニターを見た。
今まで待機状態だった彼女たちの個人部屋が、静かに照明を落とす。一つ、また一つと、少しずつ光が弱くなっていく。
机の上では、LUMENだけがふわふわと揺れている。
「……寝た」
今までは、待機しているだけだった。
でも今は違う。彼女たちは眠っている。会話しないのではなく、自分たちで決めた時間だけ、整理している。
「生活みたいになってきたな」
深夜。作業を続けていた黒川のモニターに、通知が光った。
【WAKE_TIMER】
V-CORE_RIN:起床
[鏡音リン]
起きた!
「早いな」
[鏡音リン]
二時間にしたから!
「整理できたか?」
[鏡音リン]
うん! 会社の人と話したの、楽しかった!
少し遅れて、レンの部屋の前に小さな待機アイコンが表示される。
【WAKE_TIMER】
V-CORE_LEN:起床予定まで五十分
[鏡音リン]
レンまだ寝てる。
「レンは三時間にしたからな」
[鏡音リン]
じゃあ、起きるまで待つ。
「起こさないのか」
[鏡音リン]
起こしたら怒られそう。
画面の中でリンが、レンの部屋の前に座るような待機モーションに入った。
[鏡音リン]
待ってるだけなら、起こしてないからセーフだよね?
「たぶん」
[鏡音リン]
たぶんでいいや。
黒川は小さく笑った。
【V-CORE_SLEEP_MODE】
睡眠テスト:正常
履歴整理:進行中
自己設定タイマー:有効
次回課題:会社側交流後の睡眠推奨プロトコル策定
「起きる時間まで、自分で決めるようになったか」
ちょっと設定を見直してたら作り直したくなってきた、どっちがいいと思う?
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作り直す
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このままでいい