姉様、姉様、ごめんなさい   作:イエスアマゾネス

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コラボでヒッポリュテさんに脳を焼かれました


後悔

 

 

 

女だけしかいない部族、アマゾネス

狩猟民族ではあるが、各地で屈強な戦士としてのビジネスで稼ぐ部族でもある。かつての女王がヘラクレスに軍神の帯を奪われた事もあり、ギリシャ神話における神の被害者である部族とも言える。

 

女絶対優勢部族

これはなぜかは不明である。アレスの子であるニンフのハルモニアを祖とする民族であるが故、女神か妖精としての神秘性の維持か、それともアレスからの啓示かもしれない。

 

そんな中で、ヒッポリュテとペンテシレイアの妹として生まれた私は、斧を持たずひたすら木槍を弓で放つバカをやっていた。

姉の1人であるペンテシレイアをFGOで見た事あるからだ。つまり、ヘラクレスの十二の試練かトロイア戦争でほぼほぼ死が確定している部族なのだ。

 

齢8の現在、軍神の血が濃いのかは不明だが、姉のヒッポリュテが持つ斧で正確に木を切り倒せる筋力と、ほぼ丸太のような木槍を片手で投げれる筋力、裸足のつま先で丸太を蹴り上げられる筋力があった。膂力の塊が備わった自分は、まだ早いと言われた家屋作りの木の伐採や狩猟に連日連れ出された。

 

矢を撃てば鹿の頭部を破壊するので、血抜きが楽で良い──と、祭壇に祈りを捧げた時にアルテミス神から褒め言葉を頂くのと同時に、狩りの手助けになる加護を頂いた。

月の女神による加護。処女である限り有効とされる力であり、人だろうと獣だろうと、狙った獲物はなんであれ狙い落とす、狩人の祝福であった。

 

 

だが、それだけの力があっても、英雄には勝てなかったのだ。

 

 

 

齢15になる直前だ。とうとう来たヘラクレスが交渉によって軍神の帯を求めに来た。

ヒッポリュテはヘラクレスとの閨を共にする事を約束し、客人用の小屋を作った私がヘラクレス達を案内する。

「……君は、あの人の妹か?」

「──姉様があなたと閨に入る事を約束した以上、我々が口を挟む事はありません。ただ祝福と、戦争にならない事を喜ぶべきですね」

 

おそらくテセウスと思わしき人物からの質問を返し、ヒッポリュテとペンテシレイア、さらにほぼ同じ産まれの妹のアンティオペと食事をし、私は夜警に戻った。

 

夜警から戻った時、変装したであろうヘラに唆されて戦っているヘラクレス達とアマゾネスを見て、全てが手遅れだった事を理解した。

 

 

閨の部屋で左腕を捥がれたヒッポリュテを見た時、怒りより悲しみが込み上げた。

応急処置で着ていた布全部で腕や傷を塞ぐも、虫の息であった姉から顔を撫でられてしまい、間に合わなかった事を悟ってしまった。

 

そして、どさくさに紛れアンティオペも攫われてしまっており、幾ら神の悪戯でも許容できないと怒りが込み上げた。

 

姉の血で赤く染まった衣を纏い、狙った獲物としてヘラクレス達を見て、高台から狙って吹っ飛んで行く。

 

船に乗る前の砂浜に着地し、月の女神の加護を受けて鍛え上げた肉体で構えた弓で、丸太を発射してヘラクレスを襲う。

 

剛腕で破壊されるも構わず2射、3射4射5射と連続で放つも、守りに入ったヘラクレスの迎撃により即席で作ったのも含めて防がれて破壊される。

 

時間が経ったからか落ち着き出してるヘラクレス達。だが、私はテセウスが抱えている妹を返せと怒鳴りながらテセウスを殴り飛ばす。

ヘラクレスに蹴られたのか、木を何本もへし折って止まる。

痛い、が──まだ戦える。

折れた木を投げつけ、仲間のアマゾネスが持っていたであろう斧を掴んでヘラクレスに飛びかかる。

 

斧が腕の肉に沈むも、容易く受け止められる。

投げた丸太より早く飛び込んだが、それでも防がれたのだから。

 

──絶望。勝てないなら勝つ方法を変えるとは良く言ったものだ。

だがそれは現代人の価値観だろう。選択肢がある時代と、それしか選べない時代の人間では価値観は違う。

 

斧の柄が腕力に耐えきれずに壊れる。船に乗っていたヘラクレス達が手を伸ばしてくれるも、プライドか、恨みか。

それを蹴って拒否。

 

アンティオペ──助けられなくてすまない。

 

姉様──弱くてごめんなさい。わかってても、変えられなかった。

 

 

体から力が抜けたまま、海へと落ちた。

 

 

 

──ある島で、目が覚めた。

血で染まった布は色落ちせず、綺麗なまま畳まれていた。

衣を纏い、家屋から出ると鷹の翼を持つ女性に出迎えられた。

 

キルケー、メディアの姉弟子である魔女だった。

 

あの後、海に投げ出された私は漂流の末にアイアイエー島に流れ着いたとの事。

経緯を話すと、それを憂いた神ヘカテーが魔術の手ほどきをしてやると言ってくれた。

曰く、無意識に自己強化をしているらしく、素質は充分にあるとの事。

 

妹を取り返せず、ましてやヘラの策謀でほぼほぼ半壊した部族の立て直しには魔術が必要だと思った私は、遠くに言葉を飛ばす魔術を習ってアマゾネス達に伝える事で、修行の日々を過ごすのであった。

 

 

アルテミスの加護か、それともアレスの血か。

12を超えてから肉体が成長してない私は、なんどもキルケーになじられるもデコピンで反撃し、ヘカテー神のアドバイスの下で研鑽していた。

その場で武器を作る魔術。分類的には錬金術だが、パーツを分解して持ち、それをその場で自動で組み立てる魔術、という具合だ。

弓から槍、剣、斧と切り替えを高速で出来るようになった。

だが、ヘカテー神からはこれをアマゾネスに伝える事はしないようにと言われてしまった。

理由は簡単、樹木を武器に変えても樹木が持たないし、こういった技術より鍛治があるなら必要が無いと言うことだそう。

 

未来を見ているからこその言葉だろうけど、それでも良いとして研鑽する事にした。

 

 

 

年月が経ち、適性があった魔術を修め、魔術で作り上げた船で集落に戻ったが、そこは既にアンティオペが戻り女王となっていた。

再会を喜び抱き合う。アンティオペは私が死する前に伝言を残したのだと部族間で伝えられていたようだ。

誰が伝えたかは、おそらくヘラだろう。ヘラであるなら出来ると確信した私は、そのままアルテミスの巫女としての椅子に座った。

 

アンティオペは結婚すると言った約束を破ったテセウスとパイドラの結婚式を破壊する為に襲撃に行ってしまった。既に子を産んでいたとは思わなかったが、アマゾネスとしては良いにしろ、1人の女としては筆舌に尽くしがたい苦痛であったのだろう。

 

 

だが、戻ってきた生き残りが遺体となったアンティオペを抱えて来たのを見て、丁寧に埋葬したのだった。

 

狩りから戻ってきた姉のペンテシレイアが私との再会を喜ぶ。だが、それ以上に妹のアンティオペが死した事を一緒に悲しんだ。

 

 

 

月日が経ち、女王となったペンテシレイアが周辺部族との融和や取引、護衛としてアマゾネスを派遣したりと財政や部族の立て直しに奔走する。魔術や矢で狩りをし、アルテミス神に祈りを捧げる日々。

 

だが、トロイア戦争が勃発。ペンテシレイアも参加することとなる。

部族内での屈強な戦士12人を連れて行った。私も参加しようと言ったが、ペンテシレイアから巫女としてそのままいて欲しいと言われてしまった。そう言われては従う他ない。女王が離れている間の代理で融和を維持しよう。

 

そして、英雄アキレウスとの一騎打ちを行うと言ったのであった。

立会人として私が抜擢された。ヘカテー神やアルテミス神からの推薦もあったらしい。部族を代理に任せて戦場で向き合う2人を見て、開始の合図をする。

 

 

撃ち合いの末、姉ペンテシレイアの胸に槍が穿たれ、死が確定してしまう。

戦場であれば一緒に戦えはしたはずなのにという後悔は、決闘を選んだ姉を侮辱するだけであろう。

 

姉の兜を取ったアキレウスが美しいと言った事が、その後悔を上回る侮辱だという事を知るのは当分先であった。

 

アマゾネスは撤退すると宣言し、ペンテシレイアの遺体を持ち帰る。

 

立て直しの最中に起きた戦争によって部族の人数は激減し、アマゾネスは事実上の崩落となった。

女王無きアマゾネスは、代理である私には付いて来るものは数人しか居らず、付いてきた数人が旅の途中で引っ掛けた男と付き合ったりして人数がいなくなり、付いてこなかったアマゾネス達は蛮族に身を落とすなり、トロイア側に付いた事を理由に処刑されたり、蛮族内で内乱を起こしてそのまま処刑されたりしていた。

 

アマゾネスは崩壊し、それを生きたまま経験してしまった。

 

史実から何一つ変えられず、何一つ成し遂げられず、ただただ魔術を学んで帰ってきて崩壊するのを見てただけに等しい。

 

後悔しても、何をしてももう遅い。修めた魔術は運命によって無為と化したのだったのだから。

 

 

 

 

──nnn年、どれだけ年月が経ったか

数十年だろうか、数百年だろうか

転生して、どれだけ長く永く歩いたか

 

アルテミス神への祈りは、いつからか途絶えてしまった。祈っても何も返ってこなくなり、寄った街での話では神とはなんぞと言われる程であった。

 

 

集落跡地にまで戻る。何もない、ただ比較的大きな墓石に名前だけ刻んだ、安っぽい墓石だ。

ヒッポリュテ、ペンテシレイア、アンティオペ

他姉妹達。全員がこの墓に入ってしまった。

 

私は、まだ──老いてすらいないのに、なぜ生きているのか。

神の加護とは残酷だ。文字通り、処女を捨てれば老いるのだろう。

だが、私──俺は捨てられなかったのだから。

 

死にたくない

もう、死にたくない

 

 

 

 

──これは、死を恐れたアマゾネスの魔女の成れの果てだ。

それぞれで物語は終わり、英雄は華々しい終焉を迎えたのに、彼女はそれが訪れない。

自棄になる事が出来ず、死を恐れて捨てられず、ましてや強いから戦でも早々死ねず

 

そして、理想郷(ここ)まで来てしまったんだから、空恐ろしいよ

 

「……そうか」

 

そうかってねぇ……君の物語は僕らが居る時代でも語られてるんだよ?

 

「それでも、私は後悔しかしてない。お前みたいな奴でも介入できているのに」

 

酷い言い草だね?否定できないけど

正直、魔術でも剣術でも君に手も足も出ないんだから、こっち側に来れば良いのに

 

「モルガン殿の土壇場に踏み入れる気は無い。勝てても成り代わりが起きて終わるだけだ。なら、介入すべきではない」

 

特異点ができない様にしてるのは褒められるべき事なんだけどね

 

「星の内海に流されるがまま旅を続けて理想郷まで来たんだ。その内、お前が執心なカルデアとやらに行くこともあるかもしれないな」

 

言ってない事まで読み込むの勘弁してくれないかなぁ!?千里眼無しでそこまで出来るんだから名を上げる事なんて容易いだろうに

 

「それをしてしまっては、私はなんの為に後悔をしている?これは、私なりの贖罪だ。苦しみ、もがき、ただいつかは……謝罪出来ることを願って、旅をするんだ」

 

──君の道行は、もう無いはずだよ。君もわかっているだろうに、ゴールを超えてどこに行くんだい?

 

「どこまでも。……ああ、どこまでも」

 

……行ってしまった。ああもう居ない、どこに行ったんだい、全く

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