姉様、姉様、ごめんなさい   作:イエスアマゾネス

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難産でした。展開上挟まないといけない部分の話なので短めです。

※誤字報告ありがとうございます。




仕事

 

 

 

無事、人理修復を果たしたカルデア。少なくない犠牲を払いながらも、監査が来るまでに発生した特異点の修復に奔走していた。

 

カルデアは国連機関である。故にこういう監査は避けては通れない。世界を救う大仕事の後に仕事、機関としての基本作業。

こういうのはマスターである藤丸立香は出来ない。業務スタッフは個別に居て、レイシフトの調整や監視をするスタッフも該当する。

 

現行所長代理をしているダ・ヴィンチも例外ではない。サーヴァントなのに例外では無いという不思議な立ち位置だが、万能の天才故に多忙を極めていた。

 

 

 

「人理が戻っても、やはり世界は空のままだな」

 

2017年12月31日、カルデアに監査が本格的に入った時に彼女は居た。

アガルタで姉が大暴れしてた事は知っているし、これからも暴れる事は知っている。それを止めず、会いに行かないのは理由がある。

 

下手な介入をすると、これからの脅威に対応できないのが確定する、という事。

魔神柱の残りはカルデアが対処し、経験を積ませる必要があるからだ。似たような存在と再度戦う運命である以上、忘れずに居させるのに調度良い。

それに、会うべき時が来るのが確定している。天球の掌で踊る事になるが、それでもやるべき時にやらねばならないのだから。

 

未だ死せず、人の身である彼女──────は、カルデアがある場面を超えた時、初めて姿を表すつもりでいた。

 

「──計算外だが、お前という存在がいるならマシか」

 

フードを被った男が、彼女に話しかける。彼女は振り返らずに言う。

 

「よく言う。お前こそ天球の想定外になろうとしてるだろうに」

「答えを知っているなら、わかるだろう?いくら中身を好き放題解析できても、完全に外側のお前を認識すら出来ない。クリプターがどれだけ繰り返しても、お前という存在が介在してないからどこかしらで詰み、そのまま1人で走る奴がいたと言う事だ」

 

何も映してない空からいくつか光が降りてきて、白紙となった大地に刺さる。

視線の先には、降りてきた光と同時にカルデアの基地からシャドウボーダーが爆炎に塗れたコンテナから出てきて南極の山を降りていく。

それを追いかける存在が、シャドウボーダーが虚数空間に潜った事で足を止めた。

 

「さて、私も行くとしよう」

 

フードを被る彼女は、同じく顔を隠す男を放置してその場を去る。

 

「お前の仕事、終わる事を願う」

「問題ない、終わらせるさ」

 

 

 

 

 

 

無間氷焔世紀ゲッテルデメルング。

 

 

凡そドイツ周辺──の異聞帯。

かつてラグナロクが正常に終わらなかったが故に停滞した、幸福な地獄。

そこに小さな、小さな少女が侵入()た。

 

この世界の王には何れバレるだろうが、それでも受け入れてくれるだろう。神の血は引いていても人間の子供でしかないのだから。──表面上は、だが。

 

現に数日経っても王所か天使達も来ない。泳がせているのか、それとも受け入れたか。

完全に部外者だが、それでも子であるならと赦したのだろうか。

 

いや──それは無かった。

天使が無言で少女を囲う。まるで赤子の様に、同族と看做して優しく抱き上げ、氷の城まで連れていく。

 

異様、氷の中で炎が燃えている様子はまさに神の技術──魔術だろう。内側に文字を刻めば理論上可能だとか、ヘカテー神が言っていたと少女は思い出した。

 

「異邦より来た我が子よ、何故にこの世界に来た?」

 

威厳がある、閻魔亭で聞いたスカサハと同じ声であった。

異聞帯の王、スカディ。要素としてスカサハが強いのであって、中身はスカディである。

地母神であるスカディは、近いとは言え別神話の血を引いた人の子を「我が子」として数日は集落に放置した。

良き変化で、良き関わりで──だが、それを受け入れるかどうかは私が決める、と言った。

強さだけなら同格以上。この世界を戦場にすればスルトが復活しかねない、ラグナロクが再度起きかねない──と思い、対話を最優先したのである。

 

「小さき強者、我は対話を望む」

「良い、が余計な情報は渡さない」

 

結界術で、クリプター含めた周囲の存在には会話、姿、状況がわからなくなる阻害を掛ける。

 

「そこまでしなければならないのか」

「完全遮断もしよう。概念は知っても認知も認識もできない様にする。そうしなければならない存在を相手にしてる」

 

擬似的な冥界化。結界の範囲内であれば中身を魔眼だろうが魔術だろうが、冥界に関わりが無いと呪われる上に結局認識も出来ないという状態にする。

 

「冥界には規則があり、それは神の規則であり、星の規則である」

「お前を語るな、話すな、漏らすな、か。成程理解した。ルーンが刻んでも発動しない時点で私は何もできん。好きにしろ」

 

死までも覚悟したスカディ。子供達には手を出さないのはわかっていた為そこまで言う事はしなかった。

 

「なんて事はない。私の事を言わないだけで良い。なんならすぐ出ても構わない」

「……何か起きる、か。お主が来た時点で何かがあるんだな、と」

 

大きな変化。それはスカディが1番恐れている事。そして、それが原因で剪定された事を1番理解している。

閉ざされた世界に可能性は無い。それでも、と愛したのは──間違いでは無い、と主張したい。

 

だが目の前に居る少女相手にそれは通じない。異聞では無い明確な証明である為、閉じた世界では相手が出来ない。存在規格の問題で、この世界そのものをぶつけるレベルで漸く通じるかどうか。ルーンがあれば幾分かは拮抗、戦乙女達を総動員して拮抗、最悪奴をぶつけてやっと一撃か──

それだけ、隔絶した「差」がある。

対話するだけで済んだのは僥倖だ。戦いに来たら、この世界は文字通りラグナロクの再演で消滅だ。

 

スカディの思案は少女がその場から消えるように集落の外に転移し結界が解除された事で途切れる。

心配事は「手を出さない、語らない、漏らさない」で放置が効く。侵入者としての排除を優先しないでいただけ良かったと独りごちる。

 

「……変化か」

 

何事も無かったように戦乙女達が城内を動き、何があったかを認識してないオフェリアを横目に、何かがあった時に備える事を注視するようになった。

 

文字通り、地下に軟禁している存在にも、連れてきた筈の戦乙女も、誰も少女を連れてきた事実を忘れていた。

スカディ自身も、何の契約をさせられたかの内容を曇らされてしまっていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──大西洋異聞帯。

星間都市山脈オリュンポス。

 

 

干渉されない空間──冥界に当たる地下空間にて、少女は必要な資材を集めていた。

テオス・クリロノミアの残滓や供給源になる機神のクローニングされたコアを魔術的措置で、ヘカテー神にコンタクトを取ろうとしていた。

あくまで最低限のコンタクトだが、それでもできるかもと想い、冥府式魔術と杖──かつて、ヘカテー神がクリュティオスを殴った松明の子機──を利用して、繋がりを辿って交信してみる。

 

……既に真体が落ちたか、機能停止したかは不明だが、反応が無い。

現代まで神の支配が続いた世界である以上、不要な要素は排斥されたか、それとも──

 

(そもそも私はこの異聞帯では存在していない)

 

──だろう、と。

 

なら、ラベルが貼られていない存在であるが故に観測されない。魔術による結界で更に観測回避を補強し、テオス・クリロノミアの自力生成ができる物を加工して杖を強化していくことにした。

 

 

 

 




例の男:枠外の同士。なんならそういう意味では少女の方がカルデア以上の例外として期待している。

ダ・ヴィンチ:解析出来ず終い。

スカディ:ヤベー奴。黙っとこ……なんだっけ?

戦乙女:何してたか忘れたけど気にしないで通常業務。

ゼウス:冥界なんぞ見てられるか。

鍛治神:なんか物が無くなっていくんだけど、何が起きてる?


※ある感想に対する回答を話に入れました。
具体的に言うと「可能性があると断定されている世界にしか存在しないので、ユニバース時空では存在してないor名前が出てない姉妹達の誰かで終わるから」です。感想で答えられないので申し訳ありません。
存在の唯一性が担保されてるから存在規模が「既に閉じた世界」では釣り合わない、も答えです。
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