色々な何某から影響を受け、完全な思い付きで始めました。書き始めてちょっと後悔しています。
ナギサ様のキャラエミュがだいぶ甘い上分も適当ですが、ギャグという事でここは一つ大目に見てください。
トリニティ総合学園3年ティーパーティーの臨時ホストにしてフィリウス分派首長、桐藤ナギサは、ティーパーティー専用施設のテラスにて、深い溜息をつきながら一枚の書類を手に取る。
(はぁ・・・またこれですか。)
ティーパーティー。トリニティの生徒会に当たる組織であり、学園運営にあたるあらゆる政治を執り行う組織。ホストとはティーパーティーのトップ、生徒会長にあたる立場だ。
古き良きお嬢様学校をそのまま持ち出した様なトリニティにおいて、ティーパーティー、ないしはそのホストが持つ権力は絶大な力を持つ。
しかし、その一方でティーパーティーのホストともなれば受け持つ業務の量は尋常ではなく、振るえる権力もあらゆる校則や法令によって雁字搦めとなっている以上、法案一つ通すにしても何回もの会議と協議を重ねる必要があるという超ハードワーク。連日の激務により、ナギサの心労はゲヘナ風紀委員長と肩を並べつつあった。
(クーデター疑惑というよりは、暴動といった方が近いでしょうか。暴動発生の理由はミカさんの弾劾。・・・まだ事後処理だって終わっていないというのに。)
そんな中でも責務を果たさんと机に向かうナギサの手にあるのはパテル分派の生徒達がクーデターを企てている可能性があるという報告書。
クーデター疑惑。権力闘争とまではいかないものの、多数の派閥が偏在し、千差万別の思想が絡み合うトリニティにおいては割とよく聞く話。
だが、この手の話や疑惑は殆どが嘘やデマであり、実際に探りを入れたとしても全くの無関係だったり組織内の内ゲバの噂が人の口によって変遷しただけという事がザラ。
(これも名目上はクーデター疑惑とはありますが、恐らく聴聞会で下されたミカさんへの判決に納得できない方達の騒動を鬱陶しく思った者達が大袈裟に通報しただけというのが実際でしょう。)
強いて例外を挙げるとするならゲヘナとトリニティ間で締結された不可侵条約ことエデン条約において、ナギサの幼馴染にしてパテル分派首長である聖園ミカがアリウス分校と手を組んで引き起こした軍事クーデターから始まるエデン条約調印式までの一連の騒動。
今回の様に明確な疑惑として報告に挙がらなかった事に加え、調査を提案するよりも先にティーパーティーの一角にして現ホストの席に座っていた百合園セイアが暗殺されてしまった事で次は自分、ないしは
(とはいえ、ここまで上がってきている以上何も手を打たないというのもまた口撃の機会を与えてしまう・・・)
それと比べ、今回のクーデター疑惑もとい暴動はなんて事はない。エデン条約における騒動から続いているミカへの断罪気取り兼嫌がらせといじめがヒートアップした結果だ。ミカのメンタルケアに意識を向けて相手にしないのが一番ではあるのだが、
(パテル分派の騒動なので、騒動外のパテル分派の方達に解決を依頼する?いえ、逆に燃え広がるリスクが大き過ぎますね・・・)
トリニティの内外を守護する正義実現委員会はあくまでも治安維持組織。幾ら悪質な校則違反や度し難い外敵と言えど、規則や校則に則り過度な攻撃や無用な威圧行為は出来ない。・・・後者は兎も角として、前者が守られているかどうかは些か議論の余地があるが。
相手が半ば暴徒と化している以上対等な交渉での解決は却って油を注ぐ事になりかねない。だが、武力で制圧するのもまた相手に武力闘争の口実を与えてしまう可能性がある。うんうんとこの面倒極まりない問題の対処に頭を捻るナギサだったが、ふと思いつく。
(あそこなら・・・ティーパーティーの属しつつも、独自で保有する戦力は一線級。示威行為としても戦闘としても大分派を十分に相手できる・・・)
トリニティ内に幾つも存在する分派の中から一つ。パテル分派という大分派を相手に真っ向から対峙でき、好戦的なパテル分派も抗争を躊躇う程の勢力と力を持ち、かつ今回の事件において、ティーパーティー側の立場を取った派閥。
「・・・フォルティス。」
ぼそり。黙りに黙ったナギサが漸く口を開く。テラスの出入り口で待機していた側近の生徒は、その小さい一言を聞き漏らす事無く、指示を聞き入れる体勢を作る。
(あそこもあそこで色々と内部が不透明。元々何を目的として動いているのかもはっきりしていませんが、少なくとも今回の事件でこちら側の立場を取っている以上無下にはしない筈です。余り・・・いえかなり気は進みませんが、直接話をしにいきましょう。)
側近の生徒達が自分からの指示を待っている事を視界の端で認識したナギサは、数秒の思考の後、小さい決意と共に口を開く。
「少し、外に出ます。」
「かしこまりました。どちらへ?」
ナギサの声に側近の生徒達が即座に反応し、行き先を尋ねると共にティーセットを片付ける。ナギサもまた数瞬の躊躇の後、行先を告げる。
「・・・フォルティス分派首長、天橋ミエルさんの所へ。」
「・・・かしこまりました。何か必要な物はございますか。」
「大丈夫です。」
側近の生徒とのやり取りを行い、ナギサは報告書を手にテラスから室内に入る。手近な部屋に入り、見鏡の前に立って軽く身だしなみを整えて、再度廊下から玄関へと向かう。
「お気を付けて。」
そして玄関で見送りの声に背を押されたナギサは、やや重い足を意識して動かし、目的地へと向かうよう手配された専用車の後部座席へと歩を進める。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・それで、鎮圧を我々に頼みに来た、と。」
「はい。パテル分派相手でも十分な示威能力を持ち、いざという時の鎮圧能力にも優れ、かつ先の審問会が下した判決に賛成の立場を取ったあなた達こそ適任だと判断しました。」
薄暗い謁見の間――ではなくトリニティの校舎の基本装備であるごく普通の客間にて、ナギサは机一つ挟んで相対する生徒を感情の乗らない目付きで見据える。
「今回の暴動鎮圧に、お力を貸していただけないでしょうか。」
「ふぅーむ・・・まぁ木端を握り潰す程度の戦力ならある。今更弱体化したパテルなど怖くもない・・・が、うーん・・・」
対して、机を挟んでナギサと相対する生徒は何か思う事があるかの様に顎に手を当て、口を隠してはうんうんと唸るばかりで返答を返さない。
「何か、話に不備がありましたでしょうか。勿論ただでとは言いません。ティーパーティーの名において相応の報酬を―――」
「違う。違うんだよ、桐藤ナギサ。」
ここは交渉の場。返答をしない相手に対し、ナギサは謝礼の話を忘れていたと切り出すが、それを遮る様にして彼女は言葉を被せる。
(何を、誤ってしまったのでしょうか。)
違う。目の前の生徒がそう切り返した時、何とも言えぬ嫌な予感がナギサの背筋を這う。
「違う・・・というのは?」
トリニティの生徒会長であるナギサと机一つ挟んで交渉の席に座る生徒はナギサと同じ3年生。更に言うのであるなら、彼女はトリニティに入学してすぐに政治の世界に足を踏み入れ、その辣腕を振るい続けた政治の天才。ティーパーティーのホストの一角にして、数々の腹の探り合いを制してきたナギサを以てしても、この対面は不利と言わざるを得ない。
「報酬云々の話ではないんだよ。分かるか?君・・・というか君達は、我々にお願いをする前に一つ為さねばならない事があるんじゃないか?」
「為さねばならない事・・・ですか?」
言葉を受け、ナギサはすぐに自らの記憶を攫う。それを尻目に、彼女はテーブルの上に置かれたティーカップを礼儀作法を完璧に満たした所作で手に取り、注がれていた紅茶をそっと口に含む。傍から見れば優雅そのものといった一連の動作だが、見る者が見れば不利状況に居るナギサを嘲笑と共に見下しているとも取れる動作。
「・・・申し訳ありません、私には心当たりが――」
「エデン条約調印式で起きたあの混乱の中、我々フォルティス分派が君達に対して如何な献身をしたのかを忘れたか?」
「っ!」
その言葉で思い出す。同時に、今の状況における自分の立場がどれだけ弱く脆いのかを理解する。
(あの時、私はミサイルによって意識不明の状態でした。明確な契約の元で動いたという訳ではないのですが・・・それでもトリニティ、ひいては私の為に動いてくれた事は事実・・・)
あの時の事は彼女達が勝手にやった事。しかし、それでも混乱の渦中にあったトリニティを破滅から逃がす為、更なる混乱を呼ばない為の偉大なる献身である事に変わりはない。
「ここ数年で類を見ない程には大きな事件なんだが、忘れるなどという事があり得るか?というかそもそも、あれは君が紡ぎ直した物語だろうに。」
思い当たった様子のナギサを見、相対する彼女は再度話し始める。
「ここ連日に留まらない君の激務は私も十分理解している。が、それでも履行すべき約束というものはあるだろう?困るんだよ、トリニティを治めるホストがそんな有様では。」
「申し訳ありません。」
厄介で悪質なクレーマーの如く苦言を呈する彼女だが、相手は大勢力パテル分派ですら真っ向からの対峙は避ける程の勢力。パテル分派と同規模のフィリウス分派に属するナギサもまた、反論できず謝罪を返す事が精一杯だ。
(そう言うなら私に代わってやってくださいよと言ってやりたいのですが・・・彼女なら本当に完璧にやりかねないのがまた・・・)
謝罪の傍らで、この地獄のオーバーワーク、やれるもんならやってみろ。と内心苛立ちが波を打つナギサだが、それを言った時点で彼女に弱みを握られるも同然な上、目の前の生徒なら本当に完璧にあの激務をこなしかねないという負の信頼がある以上口が裂けてもそんな事は言えない。
「故にだ。君のお願いの前にまずは調印式の一件における我々の献身に対する対価を支払ってもらいたい・・・のだが、その様子だと支払うべき対価の用意など碌に出来ていないな?」
「はい・・・ですが要望があれば、今からでも謝礼の用意を――」
「確か今回の依頼は暴徒と化したパテルの差別主義者共を威圧ないしは鎮圧すればいいのだろう?なら謝礼分は今回の依頼の報酬に上乗せする形で払って貰おう。手間が省ける。」
「・・・わかりました。では、どのようなご要望を所望しますか?」
運が良かった。
ナギサとて政治の世界に入ってそれなりに経つ。その中で彼女の機嫌を崩した挙句火に油を注ぎ、報復の謀略によって有り得ない速度で失脚していった先輩や同級生を数多く見てきた。今回、為すべき事が中途半端のままティーパーティーホストの席から叩き落とされなかった事に事に胸を撫で下ろしつつも、金など腐るほど持っているであろう彼女の求める報酬について問う。
「ちょうど2週間後、ミレニアムに依頼したあれが納品される予定でね。ふふ、同日から数日間、それの試運転がてら色々と
的当て。
もう嫌な予感しかしない。胸を撫で下ろしたのも束の間、ナギサの背中を嫌な冷や汗が伝う。そんなナギサを知って知らずか、彼女は嬉しそうに目を細め、胸の前で両手の指先を合わせる。
「的を用意しろだなんて非人道的な事は言わないさ。ナギサ、君には2週間後の試運転兼運用試験において行う的当ての際、
あぁもう最悪だ。
日々の激務で疲れ果てたナギサの心に、少々の愉悦が入り混じった彼女の声が深々と突き刺さる。こうやって彼女が愉悦に笑う時、大抵碌な事にならないのはティーパーティーホスト一同身に染みて理解している。
「・・・分かりました。2週間後の演習における不慮の事故の後始末を・・・私達ティーパーティーが・・・受け持ち・・・ましょう。」
「では交渉成立だ。確か、暴徒の所在は聖園ミカの寮近くだったな?すぐに向かわせよう。示威が目的で鎮圧は相手次第だから、一先ずはchallenger 1を5、6台程で問題ないかな?」
「・・・はい。もうさっさと終わらせてください。」
「・・・依頼投げてきたのそっちだよね?仮面脱ぎ捨てるの早くない?」
ハイライトの死んだ目で契約の成立を確認し、ナギサはゆらりと席を立つ。そして、ふらふらとした歩みで校舎の玄関へと歩き出す。
「おい誰か!日々の激務のせいかナギサ様がお疲れの様子だ。付き添い2名、車まで丁重に見送って差し上げろ。」
「「かしこまりました。」」
誰のせいだと思ってやがる(意訳)という内心を搾り粕となった気力でどうにか隠し通し、ナギサは校舎の玄関から外に出る。
「お見送りいただきありがとうございます。ここまでで大丈夫ですので・・・」
「承知いたしました。ナギサ様、どうぞご自愛ください。」
玄関前の道路の邪魔にならない所で待機させていた専用車に乗り込む。そして―――
「はぁ・・・茶葉になりたい・・・」
口の堅い運転手以外居ない専用車の後部座席で、疲れ果てた声でそう零すのであった。
え?暴動を起こしてたパテル分派の生徒達?一人残らず戦車に轢き潰されたよ。
1話目で主人公の主の字しか出てないってマ?