我ら砲手、巨砲を以て貫徹せん   作:回り針

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我々フォルティス分派一同は、ミエル様とシャーレの先制の逢瀬を心の底から期待しております。



当たるだの当たらないだの、そんな低次元な事言ってるから躱されるんだ。良いから何も考えず突っ込んでみろ!!(前編)

 

 

 

今日は日曜日。カレンダー上では週の始まりに当たる日であり、余程アレのアレのアレ(ルールだったり社会の制度だったり)がブラックか特殊でない限り、殆どの人間が休暇休息という安寧を享受できる太陽の日。それはキヴォトスとて同じ事であり、学び舎に通う生徒達にも適応される。

 

「常識的なサボりの範疇でなら個人の自由だ。過ぎたるは啓発するが。」という活動方針のフォルティス分派には関係ない話な上、授業形態がBDによる自学習が常識なキヴォトスにも関係が薄そうではあるが、とにかく今日は日曜日、休日なのである。少なくともミエルにとっては。

 

「・・・誰だ、私の眠りを妨げる者は・・・?」

 

それ故昼まで寮の自室で惰眠を決め込み、怠惰を極めるつもりでいたミエルだったが、そのしょーもなくささやかな野望は一人の来客によって敢え無く打ち砕かれる事となった。

 

「本当に申し訳ありませんミエル様。ミエル様はお会い出来ないと何度も伝えたのですが、どうしてもミエル様でないといけないと言って聞かず・・・」

 

側近の生徒曰くミエルに用があるとの事で、最初は対応の生徒がミエルは休みだと伝えたが、一切聞き入れる様子が無く騒いでいるとの事で止むを得ずとの事らしい。

 

「普段の啓蒙活動では足らぬと見える。もっとだ、もっとこのトリニティを巨砲に染め上げ、私の安息をより絶対のものにせねば・・・」

 

感情の一切が殺意に統一された真顔のまま、ミエルは寝間着姿からトリニティの制服に着替え、上にサングイニャ(超暗い赤紫色)の軍服を羽織る。軍服の下から己が背に生える翼を出しながら側近から仔細を軽く聞き、最低限の身支度をしたミエルは寮の玄関の扉を蹴り開け、来客の顔面にやたらでかいリボルバーの銃口を突き付ける。

 

 

「貴官か、こんな早朝から人を叩き起こす蛮族は―――」

 

 

キラキラと陽光を反射するピンク髪にお姫様を彷彿とさせる可憐な童顔と出で立ち。

 

 

「あ・・・えっと・・・今、11時だよ?」

 

 

パテル分派元首長、聖園ミカその人が、いきなり突き付けられたリボルバーの銃口に困惑しながら、スマホの待ち受け画面に映るデジタル時計を見せる。

 

 

 

 

「・・・蛮族じゃなくてゴリラだったか。」

 

「ねぇ今なんて言った?」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「それで、パテル分派の大首長様ともあろう者が、こんな弱小分派に一体何の御入用で?」

 

一先ず来客という事で一応客室にミカを案内したミエルだったが、ミカの座ったソファに対面に腰を据えた瞬間、がっつり足を組んで背凭れに両手を乗せ、来客である筈のミカを不倶戴天の仇を見る様な目付きで睨みながら、強烈な皮肉塗れの挨拶を投げ込む。

 

「え、えっと・・・その・・・お、起こしちゃってごめんね?」

 

「ほぉ?我らへの復讐に燃える連中を下らん浅慮の為だけにトリニティ内に連れ込む馬鹿阿保間抜けの人殺し風情が、謝罪の言葉だけはスラスラと出てくるものだなぁ?誰の入れ知恵なんだ?」

 

そんじょそこらの陰湿なイジメが戯れに見える程のトンデモブラックジョークを、ミエルは一切の躊躇なく叩き込む。本来ならここで胸糞展開にでもなるのだろうが、安心してほしい。ここはギャグ時空だ。

 

「で、でも、流石に11時まで寝てるのはちょっと・・・」

 

「自筆の恋愛小説。砂糖も苦く感じるレベルの先生とイチャイチャラブラブな―――」

 

「ごほッ!?ち、ちょっと待って!なんでそれ知ってるの!?」

 

「いいから早く本題に入れ。私は惰眠を邪魔されて機嫌が悪いんだ。」

 

ギャグ時空故かブラックジョークの発言者がミエルだった故か、自罰的にならずに食い下がるミカを黒歴史で強引に黙らせ・・・られずに別の所に引火する。

 

「無理だよ!なんでミエルちゃんがそれ知ってるの!?誰にも分からない様にちゃんと鍵付きの机の奥に仕舞ったのに!!」

 

「だってこないだ食堂でそれ見て顔赤くしてじゃないか。そんな面白そう――揶揄い甲斐のありそうなネタ、覗かない訳にはいかないだろう。」

 

「プライバシーの侵害だよ!ねぇどうしてくれるの!?もう私生きていけないよ!!」

 

「エデン条約絡みであれだけやっておいて今更それを言うか?良いから早く用件を言え。何しにここに来たんだ。会話を引き延ばすつもりなら叩き出すぞ。」

 

顔を真っ赤にして喚くミカに再度用件を聞くミエル。良くも悪くも直情的で表情がコロコロ変わるミカはとても弄り甲斐のある相手ではあるのだが、生憎今はそのミカに崇高なる惰眠の時間を潰されている状態。揶揄っても溜飲が0.01mm下がるだけで楽しいとは感じない。

 

故にミエルは「用件を喋らないならこっちも話す事はない」という態度を決め込み、無用な体力の消耗を抑える作戦を取る。それを見たミカもまたこれ以上は何を言っても無意味と渋々講義を諦め、本題を切り出す。

 

「えっとね、明日・・・その、せ、先生とデート・・・に、行くんだけど。」

 

どうやら明日、ミカは先生とのデートに行くらしい。思考の8割がベッドに戻って寝たいに囚われているミエルは心底どうでもいいと言わんばかりのトーンで頷く。

 

「はぁ、それで?」

 

「それで・・・その、あの・・・えっと・・・その・・・」

 

「・・・一昨日の当番に着ていったスケスケ黒レースの下着。」

 

「わー!わー!ちゃんと話すから!これ以上はやめて!!」

 

途中もごもごと気まずそうに言葉を詰まらせるミカを再度脅し、ミエルはミカの来客の目的を聞く。

 

 

「その、先生の好みとかどういうタイプが好きかとか、そういうのを教えて欲しいの!!」

 

 

――ミエルの思考が止まる。

 

 

決して言葉の意味が理解出来なかったとか、到底受け入れ難いものだったとかではない。ミエルが理解出来なかったのはその質問の解を何故自分に求めに来たのかだ。

 

ミカの周りには桐藤ナギサや百合園セイアなど、気が合うか否かはさておき話をちゃんと聞いてくれる人が居る筈だ。それを差し置いてなぜ自分なのか。ミエルにはそれが理解出来ない。というかそもそもの話、ミエルはシャーレの先生の事をよく知らない。

 

 

「・・・話をする相手を間違えていないか?聖園ミカ。」

 

 

故に、数秒のフリーズの後にどうにか絞り出せる返答はこれしかなかった。

 

「だってミエルちゃんって色々な事知ってるじゃん!だから先生の好みだって――」

 

「こないだの審問会で見たのが初めてなんだが。なので喋った事もないし好みなど以ての外だ。」

 

「えぇぇっ!?」

 

外見や大まかな特徴に功績こそはメディアやネット、人伝で聞く事はあったが、実際に喋った事もなければ実物を見たのもミカの審問会の時が初。先生の人となりや趣味嗜好など知る筈もない。

 

なので恥を忍んで暴露してくれたミカには申し訳ないと思わないが、今のミエルに出来る事は何もない。というかむしろ先生がどういう人なのかを教えてもらいたいくらいである。

 

「まぁ砲の改造と設計の時間を取られたくないからってシャーレの当番にも応募していないしな。あの倍率で当選はほぼ運ゲーなんだろう?はっきり言って応募する気すら湧かないな。」

 

「そんな・・・」

 

先生の事は遠巻きから眺めているだけで良いと平坦な声で付け加えるミエルに対し、一途の望みが敢え無く失敗に終わったミカは、がっくりと肩を落とす。

 

「そういう訳で私よりもナギサやセイア、後は補習授業部の面々の方が役に立つ筈だ。私の惰眠が潰されているので悪いとは思わないが、今後の健闘を祈っておくよ。」

 

かなり無駄な時間だった。時間的にベッドで二度寝の幸福を享受する事は出来ないが、校内のベンチや河川敷にシートでも敷けば十分に心地良い昼寝が可能だ。そんな事を考えながら、ミエルはソファに合う様膝の高さほどの机に器用な体勢で突っ伏すミカを一瞥した後に席を立つ。

 

しかし、そのまま自由時間に・・・とは問屋が卸さなかった。既に理不尽を喰らわされた後でありながら。

 

「・・・でも、ミエルちゃんって頭良いでしょ・・・?」

 

「互いの勉強法や学問に対するスタンスが違うから何とも言えないな。そもそも一夜漬けで試験がどうにかなる時点で十分君は賢いよ。」

 

「ノー勉でいつも学内1位を競ってるあなたに言われたくはないかなぁ・・・あ。」

 

ミカがぼそっと零した言葉に足を止めてしまったのがミエルの運の尽きだった。思考の8割が寝たいに集約されていなければ、ここから想定される可能性を予測する事が出来ただろう。

 

先に動いたのはミカ。ミエルの返答に何かを閃いたのか、ばっと突っ伏していた上半身を起こし、こちらを向く。そしてミエルにとって最低最悪な事を口走る。

 

 

「そうだ!先生の特徴とか教えて、ミエルちゃんに考えてもらえばいいじゃん!」

 

 

コンマ1秒以下の即答で返す。

 

 

「自分の事なんだから自分で考えろ。」

 

 

この世に生を受けて今年で17年目。その17年間一度も恋をした事がないミエルでも分かる。恋愛を人任せにした者が辿るであろう末路を。絶対碌な事にならない結末を。

 

「恋愛を他人に任せるとどうなるかなんて馬鹿でも分かると思うが?」

 

なので警告も兼ねて呆れた目線をミカに送るが、返ってきたのは受けて次第では微妙な上巻き込まれる側からすれば一番嫌な返答。

 

「違うよ!ミエルちゃんには先生の好みを探って欲しいの!先生については私が教えるから!後ついでに明日の為のショッピングにも――」

 

「・・・おやすみ。あと3日は起こさないでね。」

 

「あー!ちょっと待ってぇーッ!?」

 

 

もうだめだ こいつをおいて わたしはねる  

 

                            天橋ミエル心の一句

 

心の中で俳句を詠み、ミエルは自室のある階に続く階段へ走り出す。これ以上メンヘラお姫様(笑)に構っていては私の安息が無くなる。そう判断したが故の逃走だったが、ここでも悪運がミエルに牙を剥く。

 

トリニティに敵なしと言われ、時に【底なしの奈落】という表現さえ使われた辣腕の政治家兼戦略家のミエルだが、個における純粋な戦闘能力はそうでもない。

 

勿論二次創作におけるオリジナル生徒とは言えネームドなので模擬戦で正義実現委員会の仲正イチカと互角にぶつかれる程度には上澄みだが、ハイパーフィジカルモンスター(素手で校舎を吹き飛ばせる)聖園ミカを相手するには余りにも分が悪過ぎる。

 

Bloody hell(くそったれが)!!興味もない他人の恋慕の為だけにこれ以上安息を潰されて堪るか!離せ!く、稼働中の総員、寮前に集合!あらゆる砲を以て私ごとこのメンヘラを撃てッ!!」

 

「メンヘラじゃないもん!良いでしょどうせ寝てるだけなんだし!お願いだから力を貸してってばー!!」

 

結果、階段に辿り着く前にミカに追い付かれ、がっしりと胸から腰に掛けてホールドされる。ミカの手が胸の双丘をがっつりと揉んでいる事などどうでもいい程の締め付けがミエルを襲う。

 

 

「ぐぉぉああっ!?肋骨が軋んでいるッ!?ミシミシと音がするぅぅーッ!!?」

 

 

「ミエルちゃんがうんって言うまで絶対離さないからね!!絶対に!!!」

 

 

「頼むアビドスッ!!シェマタの照準をここに向けて撃ってくれぇぇーーッッ!!」

 

 

残念。シェマタは未完成のまま放置されてるんだよなぁ。

 

 

 

そして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・最悪だ。今日に限って稼働中の者が皆紛争解決に出ているなど・・・いや、あやつらがこれに巻き込まれなかった事をまずは安堵すべきか・・・もう何も考えたくない・・・」

 

 

「ありがとねミエルちゃん。今日はよろしくっ☆」

 

 

天橋ミエルの休息は、他人の恋愛の為に潰されることと相成った。

 

 

 





天橋ミエル
先生に対して恋愛感情はない。というよりは先生と先生に恋愛感情を持つ生徒達での修羅場を見て笑い転げたいタイプ。


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