我ら砲手、巨砲を以て貫徹せん   作:回り針

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当作品は、場の流れとか話の合理性や繋がりの一切を考えずに書いています。

ぎゃ、ギャグ作品という事で許してください(土下座)



当たるだの当たらないだの、そんな低次元な事言ってるから躱されるんだ。良いから何も考えず突っ込んでみろ!!(後編)

 

 

 

前回のあらすじ!

 

一週間、学生としての本分を完璧に果たし、政治家兼大艦巨砲主義者としての啓発活動に精を出したミエル。そして休息日と定めた日曜日、いつも通り思いっ切り力を抜くべく昼までの惰眠を貪ろうという彼女の野望は、トリニティピンクゴリ――聖園ミカの駄々によってバットスイングの余波を受けたシャーレのガラスの様に叩き割られた!

 

ブラックジョークやミカの赤裸々な秘密を用い、早急に用を済ませて昼寝の時間だけでも確保しようと画策するミエルだったが、サーモバリック弾すらも熱いで済んでしまうピンクゴリラにそんなちゃちな謀略が通用する筈もなく、ミエルは先生とのデートを控えるミカのショッピングに連行されてしまうのであった――――

 

 

 

 

 

 

・・・そういう訳で天橋ミエルは現在、トリニティ学園から歩いて数分の巨大なショッピングモールのとあるファッションブランド店に居る。

 

「・・・今だけ巡航ミサイルが降ってきてくれないものだろうか。アリウススクワッド・・・」

 

「確かに無理やり連れて来ちゃった私が悪いけどさぁ、流石にそれを願うのはどうかと思うな。」

 

「大体私服などある程度の実用性と場におけるTPO、後はそれなりに場に溶け込める物であればなんだっていいだろうに。月に数度使うか否か程度の物に一体どれだけの無駄遣いを・・・」

 

「うー、だって今持ってる服、どれもなんかピンと来ないんだもん。」

 

値札に~万という記載のある服達をあれこれ物色するミカに腕を引かれながら、抜け殻の様にかなり不謹慎な事をぼやき続ける。

 

「そもそも道中で君に聞かされた先生はあくまでも君から見た先生像ばかりだ。一人称から見た人物像がそのままその人の人となりに繋がるのなら誰だって恋愛で苦労しないし、世界はもっと平らで平和になる筈だ。」

 

「そんな難しい事言われても、セイアちゃんじゃないんだから分かんないよ。恋愛と世界平和がどう関係してるの。」

 

ミエルの長ったらしい文句に定型文じみた返答を返すミカ。頭を使う事が苦手なミカにとって、遠回しな言い方や比喩を用いた表現というのは苦手以外の何物でもない。だからこそ、「難しい事は分からない」でその全てをぶった切るのだが、

 

「要するに、あの程度の情報量では先生の好みの特定など到底不可能という事だ。」

 

返ってきたのはセイアの様な揶揄を用いた皮肉ではなく"無理"という超分かり易い2文字。小難しい言い回しのまま皮肉を投げ返してくるセイアと比べ端的な表現に直してくれる分まだミエルの方がマシではあるのだが、ド直球に不可能と言われるのもそれはそれで辛い。

 

「えぇー!?そんなぁ!」

 

白のひらひらとした服を持ったまま、声を上げるミカ。幸いな事にここはショッピングモール、基本的にうるさくならざるを得ないので悪目立ちする事はない。

 

「いいからそれっぽいのを早く選べ。生徒大好きな先生の事だ、何を着ていっても常識の範疇なら褒めてくれるだろうさ。」

 

「それじゃ駄目なの!ちゃんと先生の記憶に残る様なやつじゃないと!ああ見えて先生が好きな子は結構多いから、早くしないと先を越されちゃう!」

 

「親友間ですら碌に本心を明かせず、結局ああも拗らせた君が急ぐ?くく、どうせ上手く行かずに焦って変な事して説教喰らうのが関の山だろうに、笑わせる。」

 

「うぐ・・・!」

 

明日のデートに向け随分と気合が入っているミカだが、ミエルには当日無様に空回るミカの姿がありありと脳裏に浮かぶ。

 

(どいつもこいつも、何故こう誘い受けという択を取ろうとするのか。先生からすれば私達まだほんの子供なんだぞ。子供がいくらそれっぽくした所で、微笑ましいねで終わるだけだろうに。)

 

フォルティス分派、ひいてはミエルの持つ独自の情報網から先生に好意を抱いている生徒が多い事は既に知っており、同時に先生に対するアプローチの殆どが妙に回りくどい事もまた知っている。

 

勿論、誘い受けのスタンスで先生を魅了できる生徒が居ない訳ではないのだろう。だが、少なくとも今の聖園ミカに誘い受けのスタンスはどう足掻いても相性が悪いと言わざるを得ない。というか他人の恋愛事情など正直どうでもいい。

 

「じゃ、じゃあミエルちゃんはどうなの!?もし仮に先生が好きだとして、先生に振り向いてもらいたいってなったらどうするの!」

 

「面と向かって好きだと伝える。・・・というか早く決めてくれ。デートの予定が明日なら、私の恋愛事情に構い続けるなど時間の無駄でしかない。・・・私の時間も潰してる訳だしな。」

 

「えぇ~?なんか想像できないなぁ。」

 

元よりミエルはファッションにそこまで興味がなく、知識も並程度。その為、先生の好みが分からない時点で既にミエルができることは何もない。

 

「これとかどう?ちょっと大胆かな?」

 

「肩が出るタイプの服は触った事もないからYesもNoも言えないなぁ。まぁ明日は昼夜の寒暖差が大きいから、寒くないと思うならいいんしゃないか?」

 

「似合うかどうかとか言って欲しかったんだけど。」

 

「・・・明日は快晴の予報だから問題ないとは思う。似合うかどうかは知らない。」

 

だが、既に賽は投げられた。用済みになって等しいが、今更逃げる意味もないので付き合うだけ付き合う事にする。

 

「わぁ・・・!ミエルちゃん、コレ見てー!?どう?ちょっと大人っぽくない?」

 

「来てもないのに顔を赤くする時点で今の君には無理だ。スケスケレースの奴を来て行った時も気が気じゃなかったろう?」

 

「う・・・」

 

政治闘争で培った相手の僅かな表情の動きから内情を推察する観察眼が思いもよらぬ所で効果を発揮したり、

 

「何故ゲームセンターに行く必要がある?今日の用事とは無関係じゃないか。」

 

「だってあのぬいぐるみすっごく可愛いじゃん!!」

 

「どうせまた燃やされるだけだろうに。火炎放射器でも買った方が私物を燃やしに来た馬鹿共を炙れる分まだ有用だ。」

 

「ダメに決まってるじゃん!!寮長に没収されちゃうよ!?」

 

服を買いに来たはずなのに何故かクレーンゲームに没頭し始めるミカに呆れ果てたり、

 

「・・・そんなに頼んで、ちゃんと全部食べ切れるんだろうな?」

 

「ミエルちゃんの分も入ってるに決まってるじゃんね!お昼にスープだけってミエルちゃんの方こそ死んじゃうよ。」

 

「ッ!本来なら寝てるんだよこの時間はなァ!一体全体誰のせいで・・・ッ!・・・決めた、貴官の寮に機甲分隊を突っ込ませよう。斬首作戦だ、パテル分派を終わらせる。」

 

「わー!私が悪かったから銃を口に捩じ込もうとしないで!!あともう私首長じゃないってー!あーッ!?」

 

疲弊の原因(ミカ)に精神を逆撫でされてパラノイアを発症したりしながら、まったくもって望みもしないショッピングを楽し――める訳もなく虚無で過ごす。なるほど、これがアリウスか(錯乱)

 

 

 

 

 

「はぁ、まだ買うのか?明日着ていく服の為だけに10着も買って・・・」

 

「まだアクセサリーとか買ってないもん。」

 

「アクセサリー・・・えっと、追加装甲とかそういう奴か?わざわざ買った高い服の上にあんなデザインもクソもない金属板を・・・?」

 

「ねぇそんな所で頭おかしくならないでよー!なんだかんだここまで付き合ってくれたじゃん!」

 

「圧倒的なフィジカル差で物理的に逃げられないからな。出来るなら疾うに逃げ出しているとも。」

 

満足いくまで寝れず食欲のないミエルの分まで無理矢理頼みやがったミカの口に注文分の料理をねじ込み、最低限の精神安定にありついたミエル。

 

だが、その僅かに回復したメンタルは昼食後のショッピング続行の宣言により吹き飛び、既にマイナスの域に突入しつつあった。汝、jkのショッピングを味わい給えよ。

 

「こんな金属片が20万?何の冗談だ、今すぐにでも砲塔制御のコンピューターチップに作り変えねば。何の為の希少金属だ。」

 

「・・・お客様、店舗のド真ん中でその様な事を言うのはお控えください。」

 

そんな訳で入った高級アクセサリーショップ。早速穴を空けないタイプのピアスを見繕ったり、購入した服に合う装飾を探すミカに対し、ミエルはどうにも様子がおかしかった。

 

「おい、この店にある貴金属品は総額で幾らだ?全て買い取って砲塔用コンピュータチップの材料にする。」

 

「話聞いてましたお客様?」

 

パラノイアというか最早発狂・錯乱の領域に入り始めたミエル。いよいよ完全に様子のおかしい人だが、ミカはミカでアクセサリー選びに没頭している為止められる者がいない。

 

「はっ、1億ちょっとか。カードで支払えるな。今手の者を呼ぶ、貴官は商品を全て集めてこい。どうせ全て溶かすんだ、梱包など不要。まとめて袋に入れろ。」

 

「こいつもう客じゃなくてテロリストだろ。店長、頭のおかしい人がいるんですけど、ヴァルキューレ呼んだ方がいいですかー?」

 

「わぁー待って待ってその人私の連れだから!!」

 

こうして、トリニティ某所のショッピングモールに店を出す高級品アクセサリー店にて起きかけた高級品の買い占めテロは、連れの友人による英雄的行動によって阻止された。

 

「いきなりどうしちゃったの?さっきまで帰りたい帰りたいって言ってたのに。」

 

「ふ、生身で戦車砲を遥かに超える一撃を放てる君には分からないだろうがね、兵器は、常日頃あらゆる人智の努力によって作られているのだよ。」

 

「どうしよう症状が悪化してる気がする・・・」

 

ミカの我儘に振り回され続けたミエルは確かに被害者だ。だとしても、それが公共の場におけるマナーを破って良い理由にはならない。慌てて会計を済ませたミカは、推定錯乱状態にあるミエルを引き摺ってアクセサリー店を出る。

 

 

 

 

「・・・ふぅ、ようやっと終わったか。何度も言うが、たかだか月数度の付き合いの物に時間をかけ過ぎだ。幾ら色気を着飾った所で私達は子供。破廉恥なだけで情欲を煽る事など不可能だ。」

 

「でも、そんな事言ったらミエルちゃんだってまだ子供じゃん。真っ正面から好きって言っても相手にされないんじゃないの?」

 

アクセサリーショップから出て数分。ショッピングが始まってからほぼ常時だらだら文句を言われ続けてきたミカも流石にむっとなり、ジト目で言い返す。

 

「そうだとも。私とて先生から見れば四半世紀の生すら知らぬ無垢な小娘だ。今の段階で好きと言った所で、軽くいなされて終わるだろうさ。」

 

「ほらやっぱり!」

 

「でも君の様に先生にやたら回りくどいアプローチを続ける生徒達よりは先生に近付けると思うがね。幾ら平時の距離間は近くとも、いざという時にテンパって逃げている様ではね。」

 

「う・・・」

 

だが、返ってきたのはほぼ正論。恋愛経験0とは思えないミエルの分かり切った様な発言に、ミカも押し黙る。

 

 

「大体、先生と出会ってからまだ一ヶ月も経ってないのだろう?そんな段階で――」

 

 

此れ好機と畳み掛けるべく、ミエルは口を開こうとする。

 

 

「あら?あそこに居るの、魔女じゃありませんこと?」

 

 

が、その正論混じりの説教は第三者の闖入により半ばで遮られる事となる。何故が聞き覚えのある声にはっと振り向けば、そこに居たのは3人組のトリニティ生。

 

「本当ですね。忌々しいトリニティの裏切り者が、良くもまぁのうのうと陽の下を歩けるものですわ。相応しいのは檻の中ではなくて?」

 

「それを言うなら十字架でしょ?魔女なら魔女らしく、火刑場がお似合いよ。」

 

「あははっ、いかにもって感じじゃん!傑作〜。」

 

未だミカをトリニティの裏切り者と呼んで憚らず、ミカが無抵抗なのをいい事に陰湿なイジメを繰り返すパテル分派の一勢力の生徒。

 

「っ!」

 

最早ミカに寄生して勢力を保っているとすら言える余りにもウジ虫過ぎる彼女達は、ミカが居なくなればガンマ線バースト並の速度で潰される事実にすら気付けず、今日も元気一杯に宿主をいじめる。

 

「あら、今日は連れがいらっしゃるのね?周囲の目から逃げる為の囮かしら?」

 

「あんだけ目立つ髪色なんだから無理でしょ。あそうだ、私が全部剃ってあげるわよ!私ってばなんて親切なの!」

 

あはははははは・・・

 

耳が腐り落ちそうな暴言と嘲笑が彼我の距離数mを支配する。当然、近くにいた一般人や無関係の生徒達にもその大声が聞こえ、そそくさと人が離れていく。

 

「・・・行こう。」

 

ほぼ毎日の様にこの手の悪質なイジメに抵抗の一つもせずに耐えているミカだが、心の傷をほじくり返されている事には変わりない。

 

故に無視を決め込み、さっさと立ち去ろうとミエルに向き直るミカだったが、

 

 

ガギィン!!

 

 

向き直った先に居たミエルは、ハンドキャノンをぶっ放していた。

 

 

「へ?」

 

 

暴言にじくじくと痛み始めていたメンタルが真っ白になる。爆発じみた銃声が大勢の人の声で賑わうショッピングモールを一瞬で黙らせる。

 

はっとなって再度視線を横にずらせば、3人組の1人が頭から吹っ飛ばされていた。

 

「ははっ。」

 

静まり返ったフロアの一点、客の1人から注目のド真ん中へとなったミエルは、右手に握ったハンドキャノンの撃鉄を下げ、カタカタと笑い始める。

 

 

「只でさえ何処ぞのお転婆お馬鹿に安眠を潰され、挙句興味もない買い物に付き合わされているというのに貴官ら・・・」

 

 

浅くはあるが2年と少しの付き合いのあるミカはすぐに理解した。

 

 

――天橋ミエルが激怒している。

 

 

「まだトリニティには啓蒙が足りないらしいな!良いだろう、片鱗しか見せれずちと口惜しいが、今この場で、存分に大艦巨砲主義の真理を刻んでくれようッ!!」

 

 

違う。これ単に発狂してるだけだ。

 

 

滑らかに光を反射する大型リボルバー(S&W M500)のシリンダーを見せつける様に弾いて弾倉を回転させ、爛々とした眼で一人欠けた三人組を睥睨するミエル。

 

「ちょっと魔女!よりにもよって何故この狂人を連れているのです!?広すぎる人付き合いは程々にとあなたが首長の時から口酸っぱく言っていたではないですか!!!」

 

「いやそんな事一言も言われなかったけど。」

 

「ひぃぃぃっ!?砲弾にされるぅぅぅーーッ!!」

 

「くくく、砲弾がお望みか?ならばいくらでも砲弾にしてやろう!!さぁ早く、その貧相な体ごと命を私に差し出せ―――!!」

 

ガギィン!!再度見えるの手に握られたハンドキャノンが火を噴く。意図的に狙ったのか手元が狂ったのか、銃弾は抗戦を諦めて逃げようとする3人組の1人の足を穿つ。

 

「私をその気にさせてくれてどうもありがとう!!!誰一人として逃がさん!」

 

一方的に響き渡る銃声に周囲の人々の悲鳴。ここはゲヘナかな?

 

否、ここが本当のゲヘナならこのまま騒動の匂いに誘われたゲヘナ生が便乗を始めてショッピングモールが潰れる。トリニティだからこそ、ミエルの1人劇場で事が済んでいるのだ。

 

「ミエルちゃん!ミエルちゃんってば!無理に連れ出した私が悪かったから機嫌直してよぉ!!」

 

無関係の人まで巻き込みかねない勢いのミエルを我に返ったミカが大慌てで引き留める。が、これでも彼女は至って平常で・・・多分平常の筈である。

 

「安心しろ諸侯!私が今回の啓発対象に選んだこの3名は然るべき無知を晒しただけだ!他に用はないッ!!」

 

拳銃用に分類するには余りにも強装弾過ぎる.500S&Wマグナム弾をきっちり弾倉分ぶち込まれたいじめっ子3人組の意識は既になく、逆にそれ以外の何かが壊れたということもない。

 

ミエルは相も変わらず爛々とした眼で事の終結を宣言するが、普通に責任者に怒られる事には変わりないだろう。被害が当事者間でしか発生しなかった事が奇跡だ。

 

「・・・さて、聖園ミカ。君は普段、この手の嫌がらせに抗わず、ただ耐えているとの事だが。」

 

「何事も無かった様に話を進めないで欲しいかな。見てよこの人だかり。」

 

「金でも握らせておけば最低限の口封じくらいはできるだろう。」

 

「そういうこと言ってるんじゃないってば!!」

 

ミカに引っ張られ、ミエルはショッピングモールを後にする。後日ちゃんと責任者宛に謝罪文と騒動代を送った。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・しかし、あんな気色の悪い罵詈雑言を、あれからほぼ毎日の様に浴びているのか。」

 

日が暮れ出した学園にほど近くの住宅街で、帰路に着きながら交わす浅い会話の中、先程の3人組を思い出したミエルがふと零す。

 

「うん。でもこれは仕方の無い事、私がやった事の結果が返ってきただけ。私が受けるべき罰だから。」

 

「ふぅむ。気分屋の君が、よく耐えるものだな。」

 

エデン条約絡み以降、下手をすると首長の時よりも重い心労を背負わされているであろうミカ。だが、それでもナギサや先生の手回しにより刑罰が軽くなっている上にミカ自身も咎を受け入れるつもりでいる為、部外者でしかないミエルがしてやる事もない。

 

(裁判官の立ち位置から見るなら確かに刑が軽すぎるとは思ったが、そもそもはトリニティの在り方から始まった話。ミカ一人で変わる未来ではない。まぁ――)

 

今回の暴走はフラストレーションの限界突破によりミエルのSAN値が葬られた故の暴走であって、断じて作者がシリアス破壊展開を書きたかった訳ではない。断じて。

 

 

「自らの罪とは真っ向から向き合えるのに、どうして先生を相手にすると妙な搦手に走るのか。」

 

 

「ごほっ!?ミエルちゃん!?」

 

 

これが不思議でならない。と首を捻るミエルに本日何度目か、顔を赤く染めて咽る。その様を溜息と共に流したミエルは、今日一日、ミカのショッピングに振り回されている中で思った事をそのまま口に出す。

 

「・・・今日一日、君に振り回されて一つ分かった事がある。」

 

「え?いきなりどうしたの?」

 

いきなり畏まって口を開き始めたミエルに困惑するミカだが、気にせずに問いを投げ掛ける。

 

「今日、君が明日のデートの為に買った衣服の傾向は?」

 

「え、うーんと・・・色々?ミエルちゃんも見てたでしょ?」

 

「見てた。そしてミカ、普段平時の君と先生の距離はそこそこ近い。合っているか?」

 

「どこから見てたのって言いたいけど・・・合ってる、よ。」

 

唐突に始まった問い掛けに困惑を深めながらも、一応正直に答えるミカ。対して、それを聞くミエルの顔は見事なまでの真顔だ。

 

「・・・君、アプローチを掛ける時はどういう手段を取っている?」

 

「う、そ、それは・・・えーっと・・・ソファに座った時に、体をみ、密着・・・させてみたり・・・と、とか?」

 

「・・・はぁ。」

 

しかし、先生へのアプローチの手段の返答を聞いたその時、「あぁ、こいつもうだめだわ」と言わんばかりのクソでかい溜息をこれ見よがしにつく。そして――

 

 

「・・・そんなんだから先生に容易く躱されるのだこの敗北主義者がッ!!」

 

 

「えぇぇッ!!?」

 

 

酷い暴言と共にブチ切れる。傍からすれば何の前触れもなくいきなりブチ切れ始めたので、ミカにとっては陰湿なイジメを遥かに上回る理不尽以外の何物でもない。

 

「何がソファに座った時に体を密着させてみた、だ!ぬいぐるみ相手にやってる事と何一つ変わってないぞ聖園ミカァッ!!」

 

「ま、まだでも色々――」

 

「どうせ子供騙しの色仕掛け程度だろうが!抱き着いた拍子に胸を押し付けてみたとか、わざと際どい所を晒して隙を見せるだとか、躱されるに決まってんだろうが貴様ぁッ!!」

 

幸いな事に二人は既に住宅街から外れ、学園への近道である公園の遊歩道区間を歩いていた為この会話が聞かれる心配はない。・・・他に心配すべき事なら幾らでもあるが。

 

「異性として先生が好きなんだろう!?恋仲を望んでいるんだろうっ!?なら何故そうはっきりと奴の前で言わないのだ!」

 

「でも、前にそうやって好きですって言った子は受け流されちゃってたし・・・」

 

「貴官はその好きを伝えた奴よりも遅れているんだぞ!さも失敗談であるかの様に抜かすな!」

 

はい読者の皆様、タイトル回収()ですよ。お見逃しなく。

 

 

「当たるだの当たらないだの、そんな低次元な事言ってるから躱されるんだ!良いから何も考えず突っ込んでみろ!!」

 

 

名言いただきました、こーれは勝ちです()

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ミエルちゃんの嘘つき~!!真っ正面から好きって言ったら先生にミカが大人になったらねって言われたー!!これじゃあただ恥ずかしい重いしただけじゃんか~!!」

 

「まぁ恋愛に必勝法なんてものは存在しないからね。地獄のセイアもきっと、泣いて喜んでいるだろうさ。」

 

「・・・勝手に死んだ事にしないでくれるかい?それとも、予知の力を失った私など居ないのと同義だとでも言いたいのかい?天橋ミエル。」

 

「・・・事実では?普段から何があっても最後には偉そうに諦観達観。それが予知を失ったとあらばもはや何の利用価値もないじゃないか。」

 

数日後、ティーパーティー専用テラスにて、不調から復帰したサンクトゥス分派首長こと百合園セイアとバチバチにやり合うミエル。

 

「はは、まさかその死に体で私とやり合うと?小鹿の様に震える足で?くくくっ、これでは白洲アズサも報われんなぁ?」

 

「ミエルさん!この場で争いを招く発言は止めてください!セイアさん!あなたもまだ体の調子が万全ではないのですから!」

 

「止めるなナギサ・・・!私は成し遂げなければならないんだ、私という存在意義を新たに定める為に。私に希望を教えてくれた者達に報いる為に・・・!」

 

エデン条約。ゲヘナとトリニティを結ぶ不可侵条約。この一連の()()()は良くも悪くもゲヘナトリニティ両者のみならず、あらゆる者を大きく変える事となった。双方が互いに一歩を踏み出し、影から蘇った過去の骸達もまたあるべき殻へと落ち、憑き物は祓われた。

 

それでも、変わらなかった事だってある。

 

 

「何よりこのトリニティを大艦巨砲主義などという狂人の戯言で染め上げかけたこの偽善者を、これ以上野放しに出来るか・・・!規模こそ違えど、ミカよりも悪質な陰謀を・・・ッ!!」

 

 

「ほうほうほう!?真理すらも貫徹できるこの崇高を、狂人の戯言とな?面白いではないか百合園セイア。だが君の言う狂人の戯言は、君達に追い付きつつあるぞ?これこそ真であろう?」

 

 

・・・これとか。

 

お茶会の場で互いにウェブリーピストルとS&W M500を向け合うというトリニティ生の理解を超えたこの状況。トリニティの枠組みでは理解できないが、キヴォトスの括りで見れば十二分に日常茶飯事。

 

「ならばまずは首からだろう。天橋ミエル、君を倒し、その幻覚からトリニティを解放する・・・!」

 

「ではこちらも首からだ!百合園セイア、貴官を撃ち貫き、墓を巨砲で飾ってやろう!!」

 

ミエルはともかく、病み上がりにも関わらず普通に銃撃戦を始めるセイア。

 

 

 

 

「・・・ミカさん。そこの書類を持ってください。私達は別の所に行きましょう。」

 

「うん。正義実現委員会には連絡しておくね。」

 

 

トリニティは今日も平和です。

 





モブ紹介
・モブA
第2話でミエルに相席していた生徒。2年生。ガチガチの理系で元々はミレニアム志望だったが、学力不足により後一歩の所で断念。毒舌。
常識人に見えるが、実はかなりの火力偏重主義者。

・モブB
第2話の演習でミエルの傍に居たですわ口調の側近。3年生。フォルティス分派に所属後初の演習で戦車の操作を誤り、後方で演習を見てたミエルにHEAT弾を直撃させた。
本人は「人生初の戦車操縦だった」との事だが、ミエル曰く「あやつの致命的な運転センスは天性のものだ。一生擦れる」と事ある度に弄られている。

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