俺は桜井景和。普通のフリーター。女神からこの世界に飛ばされて理想の世界を叶えるために日々奮迅している。
「ひぃっ!?た、頼む見逃しくれぇ!」
「死ね」
「かひゅっ」
俺は月明かりの下、女の子を後ろから殴り襲っていた男を斬り捨て刀についた血を払う。女の子は衣服の乱れはあるものの、それ以外は無事だ。俺は変身を解除して彼女の顔を覗き込む。
「よりによってリコリスか。どうしよう……」
そう、俺が助けた女の子はセカンドの制服を着たリコリス。原作でたきながリコリコに左遷されることになった事件の原因である蛇ノ目 エリカだった。
とりあえず、彼女の処遇について決めないと。でも、どうしようか。警察を呼ぶと面倒なことになるしかと言って俺の部屋に連れ込むのもまずいし。俺が悩んでいると彼女の懐から電話が鳴った。
俺はごめんと心の中で謝りつつ彼女のスマホを服のポケットから取り出す。スマホに表示された相手はヒバナと映し出されていた。エリカのパートナーであるリコリスだ。
でも、勝手に出たら面倒なことにならないだろうか。下手したら俺が襲ったと誤解されるかも。俺がギリギリまで悩んでいるとスマホを後ろから何者かにひったくられた。
「あー、しもしも?エリカちゃんならお外でぐっすりすよー。早く迎えにくるっすー」
「ちょ!あなただ」ツーツー
「これでよしっと」
俺が振り返るとそこにはエリカの電話に勝手に出た上にスマホをエリカの側に投げ捨てた奴がいた。
「君は志真コノカ!どうしてここに?」
「ちょ、景和さーん。2人の時はケケラって呼ぶ約束じゃないっすかー」
アロハシャツと顎元にかけたマスクがトレードマークの彼女は志真コノカ。彼女も女神の力によりこの世界にエントリーした人物だ。普段は神出鬼没で滅多に姿すら見せない気分屋だがどうしてここにいるのだろう?
「あ、私っすかー?コンビニにアイス買いに来ただけっすよー」
「本当にそれだけ?」
「本当の本当にっすよー。それよりこのゴミの始末しないとダメじゃないっすかー。今、クリーナー呼ぶんでちょいとお待ちを」
コノカもといケケラは自分のスマホ(だいぶデコルテされてる)を素早く操作するとクリーナーを手配した。
「じゃあ、行きましょっか」
「行くってどこに?」
「アイス買いそびれたんで景和さん家っすよ。今日はご馳走になるっす」
「えぇ……」
俺は笑顔でピースをしてくる彼女の言葉に頭を悩ませつつも今夜のお礼もあるので家に招くことにした。
「そうこなくっちゃ!今夜は寝かせないっすよー!」
「はぁ、またマ○オでボコされるのか……」
俺はブーストライカーにケケラを乗せて家へと帰った。
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「うぅ、眠い……」
「ずがー、ぐごご……」
「う、うるさい……」
俺は隣でイビキをかいて勝手に俺の布団に忍び込んだ下手人ケケラを押し退け洗面台に向かう。徹夜でマ○オパーティーをしていた俺は目のクマが酷く顔が引き攣っていた。軽くシャワーを浴びて朝ごはんの用意を済ませてからケケラを起こす。
「おーい、朝だよー」
「うぅん、あと5分……いや、1時間……ぐぅう」
「いいから起きて」
「ふぁーい、はわわ。ちょーねむいっす」
俺はケケラをなんとか起こすことに成功し、朝ごはんを食べさせる。ちなみに彼女は一切手を動かさない。俺が全自動マシーンとなり彼女にあーんして食べさせてるからだ。
「にしても景和さんのご飯はうまいっすね。フリーター辞めてその道の職人目指せばいいのに」
「あいにく、俺はフリーターが好きなんでね。ほら、口汚れてるよ」
「うぅん、楽ちん楽ちん」
俺はケケラの口元をティッシュで拭き箸を置く。
「ケケラ、あの件調べてくれた?」
「あの件てどの件すかー?ありすぎて覚えてないっす」
「サードリコリス殺害未遂の黒幕のことだよ」
「あぁ、あれね。裏で操ってるのは吉松シンジで間違いないっす。てか、真島を消したのに歴史の矯正力がこんなところで働くなんてびっくりすね」
俺は2週間前に起きたサードリコリス殺害未遂の事件について思考を巡らす。本来であればDAを潰すために真島が始めたリコリス狩り。
真島を消せばどうにかなると踏んでいたがそうはならなかった。単独行動をしていたリコリスを中心に複数で犯行を行いそれを繰り返す。そんな事件が多発している。
ちなみに未遂に終わったのはたまたま現場に居合わせた俺が犯行を未然に防いだからである。それ以降はケケラの情報を元に犯行グループを斬って回り、黒幕の正体を掴もうとしていた。
「このままだと延空木の事件は確実に起きるっすね。千束ちゃんの人工心臓のこともあるし大丈夫っすか?」
「それはなんとかしてみせるよ。必ず女神の願う理想の世界を叶えるんだ」
「女神様ねー……私には胡散臭いおばさんに見えたっすけど……」
「おばさんって……そうだ、閉じまり頼んだよ」
「了解っす〜」
俺はアパートの合鍵をケケラに渡してリコリコに向かう。いつ吉松シンジの秘書が千束に接触してくるかわからない状況で監視を放ったらかしにする理由はない。
俺はリコリコに着くと店の開店準備を黙々とする。すると、ミカさんやミズキさんたちが続々と来てみんなで準備を終わらせた。
「くんくん、景和くんさー。なんか他の女の匂いがするんだけど気のせい?」
「ははは、気のせいですよミズキさん……」
「うーん、私の思い違いかぁ。なんか引っかかるなぁ」
俺は変なところで鋭いミズキさんに誤魔化し笑いをしてモップで床を拭く。途中、からんからんと音がして戸が開くと千束ちゃんとたきなちゃんが入ってきた。
「おはようー」
「おはようございます」
「2人ともおはよう」
軽く挨拶をして彼女たちは更衣室に向かった。数分後、着替えが終わった彼女たちが更衣室から出てくる。
「あれ?景和さん、香水でもした?すごいいい匂いがするけど」
「本当ですね……はっ!も、もしかして私たち以外に女の人と会ってたんですか?!」
「えーと、知り合いの子と遊んでててさ。それでかなって」
「景和さんが知り合いの子と……私たち以外に女の子と遊んでたなんて……」
「嘘です嘘です嘘に決まってます……景和さんに限ってそんなことは……」
やばい。変なスイッチが入ってる。彼女たちからドス黒いオーラが漂ってくるのが見える。寒気もしてきた。
「景和さん」
「は、はい!」
「今度、その知り合いの子私たちに紹介してくださいね?しっかりおしゃべりしたいので」
「わ、わかりました……」
有無を言わさない圧倒的な迫力の前に俺は屈した。ケケラ、お前の骨は拾っておくよ。
「よし、それじゃあ喫茶リコリコ開店だ。景和くん、表の看板をOpenにしてきてくれ」
「わかりました、ミカさん」
俺は気を利かせてくれたミカさんに従って店の外に出る。外は快晴で暖かい日差しが心地よい。あ、お客さんが来た。いつもの常連さんだ。
「いらっしゃいませ、喫茶リコリコへようこそ」
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「ふふーん、これがデザイアドライバーとブジンソードバックルっすか。なかなかカッコいいすねー」
景和の自室。コノカはデザイアドライバーとバックルを片手に持ち遊んでいた。
「でも、これだけだと足りないっすよねえ。女神様に言われてきて良かったっす」
コノカはバックからブジンソードバックルとは違う、別のバックルを取り出すと景和の枕元へと置いていく。
「さぁ、景和さん。楽しみにしてるっすよ。貴方が願う理想の世界の実現を」
コノカは窓から部屋を出ていく。そして、景和のアパートの合鍵をくるくると手で回しながら鼻歌を歌った。