本日は4月17日金曜日だ。今日を乗り越えれば初の週末へとたどり着く。
ここまでの平日、常に何かしらの出会い等があったために今日も何かあるのではないかと思うが、
なにが起きようがなんとかしてみせるぜ。
週末はせっかくの休みだ、何をしようかなど考えながら家を出た。
「本日の講義はここまで、各自復習しておくように」
朝の懸念が嘘のように、朝から知り合いには誰とも出会わなかったし、
新たな出会いもなかった。
そういう日もあるのかと思いながら、帰宅準備をする。
「神様も時には休息をくれるってか」
なんて考えながら大学の玄関に着くと、ちょうどそこには桜さんがいた。
「あれっ桜さん」
「先輩!?」
知り合いを見かけたからつい声をかけたがどうやら思った以上に驚かれたようだ。
「桜さんも今帰り?」
「はい、私も今日はこれで終わりです」
「じゃあさ、途中まで一緒に帰らない?」
「いいんですか!?」
「うん、せっかくだし話でもしようか」
桜さんと仲良くなるために、一緒に帰宅することを提案する。
「えへへ、先輩と一緒・・・やった」
なにか小さく呟いたが聞こえなかった。
「じゃあ行こうか」
「はい!」
そうして二人並んで大学から出た。
「あの、先輩?」
「どした?」
「実は今日、本屋さんに寄ろうと思っていまして少しだけ寄っても良いですか?」
「おお、いいぞ」
どうやら元々予定があったみたいだ、久しぶりに本屋もいいかなと思い許諾する。
「好きな作家の新刊が出たんですよね」
「じゃあそれを買いに?」
「はい!ずっと楽しみにしてて」
「ちなみにどんな系?」
「ミステリーですね」
「ほう」
「この作家は話の作り方がすごく上手くて最後までドキドキしながら読めるんです」
最初にあったとき、勝手に文学少女っぽいと思ったから聞いたが本当に桜さんは本が好きみたいだ。
本のことを話している時の表情は生き生きしている。
「っと、ついたな」
「私は目的の本を探してきますね」
「俺は適当にぶらぶらしてるよ」
大学近くの本屋に入り、適当に雑誌コーナや漫画コーナーをうろつく。
この世界では女性が多いために、基本的には置いてある本も女性向けのものが大半だった。
所謂萌え系とかミリタリー系とかは殆ど無かった。
男向けのものはあんまりないなーと少しだけ残念に思う。
そんなことを考えながら中を巡っていると、一冊の本を抱えた桜さんがこちらに寄ってきた。
「先輩、ありました!」
「おぉよかったね」
ハードカバーのなかなかの厚さがある本をこちらに見せてくる。
「じゃあ私買ってきますね!」
「入口のところで待ってるよ」
特に欲しい本もなかったために俺は入口の所で桜さんを待つ。
少しした後に購入を終えた彼女がやってきた。
「おまたせしました、先輩」
「よし、じゃあ行こうか」
目的を達成したことで本屋を後にする。
「そう言えば桜さんの家ってどの辺?」
どこまで一緒なのか気になって聞いてみる。
「私はあそこですね、大学の最寄り駅から電車で帰ります」
「そうなんだ!俺はこの近くに住んでいるんだ」
どうやら桜さんは電車通学であったらしい。
ちなみに俺は大学近くのマンションに住んでいる。
「俺の家、もう少ししたら駅の方向とは別だから、そこまで一緒に行こうか」
「わかりました!」
「桜さんは帰ったらその本読むの?」
「はい、明日から休みなのでこの土日で読もうかと!」
「いいね」
「先輩は土日の予定とかあるんですか?」
「いや、今のところは何もないかな」
「・・・」
「まぁごろごろしてるかな」
そんな感じで話をしていると急に空模様がおかしくなってきた。
さっきまでは晴天だったのに、空には雨雲が発生しついには土砂降りの雨が降ってきた。
「やば、今日傘持っていない!」
「私もないです!」
天気予報では一日快晴だったのでお互い傘など持ってはいなかった。
「あぁくそ・・・!!」
あたりを見渡すが雨宿り出来るような場所はなかった。
その間も二人の体はどんどんと雨に濡れていく。
駅まではまだ結構距離があるし、途中にコンビニなどもなく傘も買えない。
一時的な雨かも知れないことを考えると俺は一つのことが頭に過った。
「桜さん、俺の家に来ないか?」
「えっ、先輩の家にですか!?」
「この雨がやむまでの雨宿りとして使ってくれ!」
「・・・・・・いきます!!」
雨も土砂降りで、悩んでいる時間はなさそうなのでこの提案をした。
本来女子を家に上げる事は考える必要があるが、今は四の五の言っていられる状況ではないだろう。
「俺の家もうすぐだから!!」
「はい!!」
「ふぅー到着・・・」
「お邪魔します・・・」
お互い頭から靴下の先までびっしょりになりながらなんとか家まで到着。
「タオル取ってくる」
風呂場にあるタオルを取ってきて一枚を桜さんに渡す。
「とりあえずこれで拭いて」
濡れた体で部屋の中に入るのはあれなので、玄関で簡単にだが水分を取る。
「ごめん、ちょっと待ってて」
そのまま風呂場に行き、濡れた服を脱ぎ体を拭き部屋着に着替えて戻る。
「桜さんもそのままじゃ、風邪引いちゃうよね。俺の洋服でよければ着替えない?」
「・・・あの、でしたらシャワーをお借りしてもいいですか??」
「えっ!!あ、いや」
「ダメ、でしょうか?」
「どうぞ!」
「シャンプーとは好きに使って貰っていいし、タオルと着替えは風呂場に置いてあるから!後濡れた服は洗濯機に入れておいて」
「わかりました、ではお借りします」
俺の部屋なのに他人のシャワーの音が聞こえる。
今まで経験したことなかったその体験に不思議な気分になった。
「これはしょうがない、しょうがないんだ・・・」
本来女性を部屋にあげてシャワーを浴びさせるなど、これから"そう言うこと"をしますよって意味があるとは思う。
なるべくそう言う状況を避けようとしていた俺からすればこの展開は望んだことではないが、あの状況ではこうするしかなかった。見捨てることは出来なかったのだ。
部屋にあげることまではいいとしたが、まさかシャワーまで浴びるなんて・・・
「・・・いかん、嫌でも緊張してしまう。大丈夫何も起こらない、何も起こらない」
この世界が貞操観念逆転世界でも、全ての女子が安藤みたいなわけではないはず。
それに桜さんみたいなタイプは大丈夫だろうと勝手に思ってしまった。
「よし!何事もなくこの展開を終えるぞ!!」
そうこう決意を固めたところでシャワーの音が止まり、風呂場から桜さんが出てきた。
「お風呂ありがとうございました」
その姿を見たときには目玉が飛び出そうであった。
シャワーを浴びた後なので頬がほんのりと染まり、髪は少しだけ湿気を含んでいた。
洋服は俺の寝間着のスエットを貸したので、小柄な桜さんには大分ダボダボであり萌え袖ちっくになっていた。
(なんだこれ・・・破壊力ありすぎだろ!!)
普段の学校などでは絶対に見られない姿に胸がドキドキした。
「・・・おう、暖まったか?」
「はい・・・」
なんとか平静を装うが、彼女の姿を長く直視は出来なかった。
「服、乾かしてくるよ」
逃げるように風呂場へと向かう。
(大丈夫大丈夫平常心平常心・・・)
部屋に戻ると桜さんは物珍しそうに部屋の中を見ていた。
「なにか面白い物でもあったか?」
「いえ、あの私・・・男の人の部屋に入るのって初めてなので・・・」
「俺も・・・女の子を部屋にあげたのはこれが初めてかな」
「え!?そうなんですか」
「そんなに驚く?」
「だって先輩カッコいいですし、女性との付き合いも多いのかなって」
「いやいやそんなことないって!彼女いたこととかもないし!」
「それは・・・意外でした」
「悲しくなるから言わないでくれ・・・」
「ふふっ、ごめんなさい」
その情報を聞いた桜さんは何故だが嬉しそうに笑った。
「とりあえず、服が乾くまでは待っててね」
「わかりました」
「それにしても急に土砂降りだなんてついてないな」
「天気予報は晴れって言ってましたのに」
「スコール的な奴だったのか?」
自分で言ってみた物の、あの神様の仕業な気もするからなんとも言えない。
「まぁ何も無い部屋だが、くつろいでくれ」
「はい!」
桜さんは部屋の真ん中にあるソファに座り、俺はベッドに腰掛ける。
その距離1m。
「・・・」
くつろいでくれと言った物の流石に緊張するよな。
桜さんは辺りをキョロキョロしては下を向いて、またキョロキョロしては下を向いてを繰り返していた。
下手に声をかけるのもあれかと思い、その姿を遠目で眺めるだけでそっとしておいた。
「あの!」
しばらくした頃に桜さんが声をあげた。
「どうした?」
「時間があるので、さっき買った本一緒に読みませんか?」
「へ?本を?」
「はい、どうでしょうか?」
まぁ時間つぶしにはなるかなと思う。
「いいけど、どうやって一緒に読む?」
「それはこうして・・・」
自分の鞄から先ほど買った本を取り出すと桜さんはベッドに腰掛ける俺の隣に肩がふれ合うかどうかの距離に座った。
その距離3cm。
「っ!!」
いきなりの接近にビックリしたが振りはらうことなど出来なかった。
近い近い、同じシャンプー使ってるはずなのに良い匂いするし、彼女の体温が伝わってくるようだった。
「じゃあ、最初からいきますね」
「おう・・・」
「多分私の方が読むの早いと思うので、今のページ読み終わったら教えてください」
「わかった」
彼女が本を持つ形で二人で最初から読み始めた。
「・・・」
「・・・はい」
「・・・」
「・・・はい」
(やっべぇ・・・本の内容全く入ってこない)
隣にお風呂上がりの美少女がいるんだぞ、緊張してそれどころじゃないに決まってるだろ!!
なるべくそれを悟られないように真面目に本を読んでいるふりをするがそれどころではなかった。
「・・・」
「・・・はい」
「・・・」
「・・・はい」
俺の返事だけが部屋の中に響いた。
「・・・」
「・・・はい」
「・・・」
「・・・はい!?」
目が疲れたので少しだけ彼女の方を向いてしまった時だ、見えてしまったのだ。
(なんでノーブラなの!?!?!???)
貸したスエットがダボダボだったせいで首回りの鎖骨らへんが大分隙間が出来てしまってした。
そしてその隙間から桜さんのさくらんぼが見えてしまったのだ。
(えっ、あれって、え、なんで!?)
一瞬で頭がパニクった。いくら濡れてても下着は外さないだろうと思っていた。
ましてやこの格好なら見えてしまう危険性があるのに。
思わず彼女の顔を見てしまった、そこには
「///////」
顔を真っ赤にしている女の子がいた。
(これって指摘した方が良いのか?スルーした方が良いのか?)
俺の頭ではどうするのがいいのか分からない。
「・・・///」
「・・・」
「・・・///」
「・・・はい」
結局スルーした方が良いのかと思い、次のページを催促した。
「・・・私って、魅力ないですか・・・?」
「えっ」
「こうやって、男の人の部屋にあがってこんな姿を見せても何もしてくれないですし」
「・・・」
「私の体、貧相だからですか?」
いきなりの告白に頭が混乱した。魅力がない?そんな訳ないだろう!
今だって内心ではめっちゃドキドキしてるし、あのルールがなければ押し倒していたかもしれない。
「そんなことはない!桜さんはすっごく魅力的だ」
「なら手をだしてくれても良いんですよ?」
「それは・・・」
「・・・やっぱり私じゃ先輩には釣り合わないんですね」
「・・・」
「私、先輩と出会ったとき、こんなカッコいい人がいるんだって一目惚れしちゃいました。
それで仲良くなれて、今日も偶然会って、成り行きですけど先輩の家にお邪魔することが出来て」
「・・・」
「こんなチャンス、もうないかもしれないって、私なりのアピールをして」
「・・・」
「でも結局相手にされなくて、すごく悲しいんです」
そう言うと彼女の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「先輩はモテるだろうから私じゃなくてもいいかもしれません」
「・・・」
「彼女にしてくれとは言いません、便利な存在でいいんです」
「・・・」
「私には先輩しかいないんです!!」
「桜さん・・・」
どうやら俺は勘違いをしていたようだ。
彼女もまた、貞操観念逆転世界の女子であった。
本当ならここで突っぱねればいい、俺の目標のためには受け入れてはいけない。
頭では分かっている。だが目の前の泣きじゃくる女の子を放ってはおけない。
理性と本能の狭間で揺れる。
「・・・私、勇気出しました」
「・・・後悔しない?」
「絶対にしません」
「・・・」
「先輩・・・抱いてください」
二人の影が重なった。
その距離0cm。
「あれは断れないって・・・」
目が覚めると部屋には自分一人、当然桜さんの姿などない。
「また、初めからか」
時計を見ると日付は4月13日を示していた。
「情に訴えかけてくるタイプには俺弱いな・・・」
結果的に断り切れずに致してしまった。
「金曜は傘を持っていく、絶対に忘れないようにしよう」
金曜までの出来事をおさらいしながら次回は無事に切り抜けるための算段をつける。
「それにしても桜さんがねぇ・・・」
大丈夫だと思っていた人としてしまったことにより、
この世界で出会う女子はもれなく性欲つよつよなんじゃないかと思えてきた。
隙あらば狙われるなんて事も頭には入れておいた方が良いかもしれない。
「やっちまったことはしゃーない!再スタートだ!」
最近は上手くいっていた童貞ライフもリスタート、また1から始めよう。