最強さんに拾われたら呪術師になった話 作:サーナイト大好きっ子
もろもろの説明を受けてます。
五条と家入さんのテンポを楽しめていただけたら幸いです。
[呪術師になったりこ]
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私が目を覚ますと、まず感じたのは鼻をくすぐるアルコールの匂いだった。
見知らぬ天井。
保健室のような清潔そうで、綺麗な場所。
(ここ…どこだろう…?)
身体を起こそうとしたその時。
シャッ、とカーテンが開く音がした。
その音に振り向くと、あの時の白髪の人が顔を出していた。
「あーまだ起きちゃダメだよ」
「あ……っ」
思わず息を呑む。
室内だと言うのにあの人は黒い目隠しをつけたままだ。
「あなたは誰ですか…?」
私は絞り出すように聞き返すと、彼は少し意外そうな顔をして口角を上げた。
「僕は五条悟。ここ東京都立呪術高等専門学校で教師をしている。あ、ちなみに階級は特級術師で〜す。」
「じゅじゅつ…こうせん……?」
耳慣れしない単語の羅列に、思考が停止する。
困惑している私をよそに、五条さんはベットの端に腰を下ろした。
「体の調子は?」
「あ、え…その……」
なんて答えようか考えていると五条さんの後ろのカーテンがシャッと開き、白衣を着た茶髪のロングの女性が入ってきた。
微かに煙草の匂いがする。
「五条、お前がいっぺんに説明したところでこの子の頭が追いつくはずないだろう」
「あっ!硝子遅いよ〜」
近くで見ると少しクマがあって眠たそうな目をしている。
そしてとても美人だ。
(また人が増えちゃった……!?)
「私は家入硝子だ。ここで医師として所属している。…気を失う前のことを、覚えているか?」
家入さんの静かな問いかけに私の記憶がフラッシュバックする。
放課後の廊下。
吹き飛ばされる友達。
ドス黒い怪物。
そして何よりこの世のものではない自分の手から溢れた力。
「…友達は…友達は無事なんですか!?それにあの怪物……私のこの力は…!?」
手を握りしめ、震える声で質問を重ねる私に五条さんは目隠しの奥で目を細めたような顔をした。
「君のお友達ちゃんは頭を強打してたけど命に別状はない。あの怪物は呪霊といってね。人間の負の感情から生まれるんだ。その呪霊に対抗できるのはおんなじ呪術しかない。その呪術を駆使して呪霊を祓うのが僕ら呪術師ってわけ。君のその力も呪術の一つだね」
「よかった…呪霊、呪術師…。私はこれから、どうなるんですか…?」
友達の無事に安心はしたもののこれから先、どうなるのか…私の不安が伝わったのか五条さんは申し訳なさそうな顔をして
「君の手に入れた力は特別なものだ。…残念だけど前までの生活に戻ることはできない。それは君が一番よくわかってるんじゃない?」
突きつけられた現実に胸が痛む。
もう今までのように友達と笑えない。
大好きだった学校へ図書室に通えない。
くだらない事で笑ったり、部活に励んだり。
放課後にアイスを食べる。
そんな" 当たり前 "の日常が消える。
緊張で心なしかお腹がキリキリ痛み始める。
思わず私は顔をしかめた。
「そこでなんだけど!君にはここ、呪術高専に通ってもらいま〜す」
「えっ…で、でもっ…」
私が困惑して五条さんの顔を見上げる。
彼は、私の思っていることが全て分かっているかのような、諭すような優しい顔をしていた。
「とりあえずは体を休めて」
と言いながら大きな手で、そっと私の額に触れた。
不思議な感覚とその温かさに包まれて、急速に意識が遠のいていく。
「今はまだ休んでおきな。起きたらもっと騒がしくなるだろうから。…おやすみ」
最後に聞こえた家入さんの優しい低い声を遠くに聞きながら、私は再び深い眠りへと落ちていった。