最強さんに拾われたら呪術師になった話 作:サーナイト大好きっ子
五条や野薔薇に振り回されるりこを温かい目で見ていただけると幸いです。
私が自己紹介をし終えて窓側から二番目…右に恵、左に野薔薇がいる席に着くと
「あっそーだった!りこ、君にまだ寮の部屋、案内してなかったよね?」
(えっ……高専って寮制なの!?ど、どうしよう…服とか、歯ブラシとか、何にも持ってきてないんだけど!!)
「え、えーと…高専って寮、あるんですね…」
と何とか動揺を抑えてそう言うと五条先生は心底不思議そうな顔をして
「あれっ?僕言ってなかったけ?」
と悪気もなさそうなトーンで首を傾げた。
「えっ、マジ?先生何にも説明してないの?」
「五条先生こう言うところよくあるからな…慣れておいた方がいいぞ」
「さすがに何も説明しないのはないわぁ〜神念、こいつからなんか説明あった?」
(まったく!まったくですよ!!寮のりの字も発してませんでしたけど!?)
「今初めて聞きました……服とか何も持ってきてないんですけど____」
私の顔がそんなに困った顔をしていたのか
「そんな顔しないでさ〜大丈夫、ご両親から生活に必要なあれこれはもう届いてるから。安心して✨」
(全然安心できる要素がないんですけど!?でも……そっか、お母さんたちが送ってくれたんだ。バタバタしてて連絡できてなかったから後でLINE送らなきゃ)
「ってことで!りこちゃんはこれから寮の部屋の片付けをやってもらいます!!他の三人は自習だなんだかやっといてね〜じゃありこ、行こっか」
私は椅子をガタッと音を鳴らして立ち上がった。
今まで妹たちと三人で一つの部屋を使っていた身としては、一人部屋が手に入るのがたまらなく嬉しい。
「は、はいっ!」
嬉しいのが顔にも出ていたのか
「アンタ、そんなに嬉しそうな顔して……分かりやすいのね」
「いいよなぁ、一人部屋!!俺もテンション上がったな〜」
「片付け、頑張れよ」
「じゃありこ、僕についてきて」
________________________
スタスタ歩いて行くと大きな宿舎が見えてきた。
(ってか五条先生歩くの早っ!!あの人普通に歩いてる感じなのに、こっちは小走りしないと置いてかれそうになる…!身長何センチあるんだろう?190ぐらいありそう…)
ボフッ__
「ふぇ!?」
考え事をしていたから立ち止まった五条先生にぶつかってしまった。
いや、正確には触れてはない……と言うか何かの壁にぶつかったような……
まるで、そこの空間だけ世界の法則が書き換えられているようで、背筋がゾクッとする。
「あっごめん。大丈夫?」
「は、はいっ。すみません、ぶつかってしまって……」
私が申し訳なさそうにしていると、五条先生は手を振って
「ぶつかってないから全然平気。僕と君には" 無限 "って言う壁によって触れられないから」
(なんかサラッとすごいこと言ってる気がする、この人……ていうか説明が致命的に下手すぎる!!言葉が少なすぎてエスパーで思考読めって言われてる気分になるよ。でも……なんだか、誰も触れられないって孤独みたいで少し寂しそう……?)
分からないことはなんでもかんでも流してしまうタチなので
「へー、そうなんですね」
と適当に相槌を打っておく。
今までの対人関係だってこうやって乗り越えてきたんだ。
コミ症5年目のベテラン返しだからバレないはず……!!
そう思っていたはずなのに
「全然わかってなさそうだね。そんなに棒読みのへー初めて聞いたよw」
___まさかのバレバレだった。
「な……!!何でわかったんですか!?」
「なんでって……あんなに分かりやすい棒読みのへー初めてだし。そ、れ、に!僕には六眼があるからね。コイツが教えてくれるんだ」
そう言って五条先生は目隠しの上から右目の当たりを人差し指でトントンしながら言った。
(六眼……術式とはちょっと違うのかな?よく分かんないけど、五条先生が強い理由なのかもしれないな)
「で、着いたよ。りこの部屋。鍵渡しておくね。無くさないでよ〜」
鍵をチャラチャラ回しながら私の目の前に差し出した。
差し出された鍵を手に取る。
(これが私の城の鍵……!!本当に無くさないようにしなきゃ。前の学校のロッカーの鍵、一週間で無くしちゃったもんなぁ。よし。絶対無くさない。絶対。)
私はドアと向き合い震える手で鍵をさす。
ガチャ_____
目の前に広がったのは日当たりの良い窓際と、シンプルなベット、そして勉強机だ。
一人で過ごすには十分すぎる広さである。
「わぁぁぁ〜!!すごい!すごいです、五条先生っ!とっても広いです!!」
自分の部屋を初めて手に入れた感動と喜びでテンションが上がる。
私が部屋の中を手を伸ばしてくるくる回りながら言うと
「そんなに喜んでくれるなら掃除した甲斐があったかな〜。あっ、ベッドの横に置いてある段ボールがご両親から送られてきた君の荷物ね。ちなみに隣は僕の部屋だから✨何かあったら0.1秒で駆けつけてあげるね!」
(……ん?今何かサラッと聞き逃せないワードが聞こえたような……?隣、僕の部屋……えっ?先生が隣ってこと!?)
「せ、先生が隣……えっ、お隣さんってことですか!?そんなの恐縮すぎです!!まだ未熟者の私が隣なんて……!!」
(最強?らしい五条先生が隣だなんて絶対夜寝れない!恐縮とか言ってるけど本音は夜寝れなそうだからです!なんて口が裂けても言えない……!!)
私が両手をこれでもかと振りながら言うと
「未熟者だから僕が隣なんでしょ?君はまだ術式が目覚めたばかりだ。まだ完全に扱えるわけじゃない。君を止められる人が隣にいないと、でしょ?」
そう先生は言ってウインクらしきものをした。
目隠しをしているので確証はないけど……
「それじゃ!片付けがんばってね〜」
バタンっ
「え、あ……行っちゃった。まだお礼言ってなかったのに」
(後で会ったときに言えば良いか。多分忘れるけど……)
私は改めて自分の部屋を見渡す。
まだ何も置かれていない机。
ピシッとしわ一つないベッド。
何もかけられていないクローゼット。
「よしっ!やるか!」
そうやる気を入れると私はまず一番上のダンボールを手に取った。
持ち上げてみると見た目よりも軽かった。
ビリビリッ
「あっこれ!」
段ボールの中から現れたのは小さい時から一緒に寝ていたルカリオのぬいぐるみとサーナイトのぬいぐるみ、そしてジンベエザメのぬいぐるみだった。
「お母さん、入れておいてくれてたんだ……」
ぬいぐるみたちとの再会に思わず抱きしめてしまう。
ルカリオのフワフワとした感触と、サーナイトのサラサラとした質感。
ふわりと微かに香る家の柔軟剤の香り。
今まで張り詰めていた糸が少しだけ緩んだ。
周りを見渡すと無意識のうちに術式を使ってしまっていたのか、ダンボールがフワフワ浮いてしまっていた。
「あっ!抑えなきゃ……」
グーっと体に力を入れてなんとか元の位置にダンボールを戻す。
再びダンボールに目を向けると、ぬいぐるみの下には私の買ったキーホルダーやお土産にもらったマスコット等も入っていた。
「次はっと」
二段目のダンボールを手に取る。
開けてみると春秋用のパジャマが一つと夏用のパジャマが一つ、そして冬用のパジャマが一つ。
あとは前の学校のジャージ一セットだ。
1番下に何やらメッセージらしきものがある。
開けてみると
『りこへ。お洋服についてですが妹たちが着たいと言っているので新しいものを自分で購入してください。お金はPayPayで送ってあるからね。お母さんと妹たちより。』
「えっ!?洋服ないの!?まだ東京きたばっかりでお店とか分かんないのに……」
私がこれからの洋服について頭を抱えていると、トントントンとドアを叩く音がした。
急いで顔をあげると
「神念、今いる〜」
と野薔薇の声がした。
「は、はい!どうぞ」
私が声をかけるとガチャと野薔薇が入ってきた。
彼女は部屋を見渡して、私の周りに置いてある服(主にパジャマだが……)に目を止めた。
「ちょっと待って。アンタ服それしか無いの!?パジャマしかないじゃない。服は?服はどうしたのよ!?」
「は、はいぃ!洋服は妹たちが着るからって段ボールに入ってなくて……これしか服がないんです」
怒鳴られた勢いで正直に答えてしまった。
馬鹿正直とはこう言うことを言うのかもしれない。
野薔薇は大袈裟気味にため息をついてこう言った。
「じゃあ原宿行くわよ、原宿。可愛い新入生のためなら五条先生だってカード出してくれるわよ、多分。アタシに任せて!!✨完璧にコーディネートしてあげるわ。アンタこの後もどうせ片付けでしょ?午後から行くわよ。五条先生にはアタシから言っとくから。じゃあまた後でね」
(会話のテンポが早すぎて何も言えない……今のJKってみんなこうなの!?もう私の思考回路、フリーズした。も、もしかして、私が遅いのかな……)
「は、はいっ……って、もういない……野薔薇、実行力凄すぎ……!!」
私は展開が早すぎて頭を抱える。
(野薔薇のコーディネート力はかなりのものだと思う。そこの心配はいらないだろう。問題は……お金!!野薔薇、五条先生のカード使うって言ってたよね!?先生に買ってもらうなんてそんな恐れ多いことできない!!)
「とっ、とりあえず支度しなきゃ!」
私はスマホがポケットに入っているのを確認してダンボールから出した服たちを元に戻す。
急いで戻したのでグチャグチャだが、まぁ仕方ない。
服たちを戻し終えて外に出ると、すでに野薔薇と五条先生が立っていた。
「支度は済んだみたいね。それじゃ、行くわよ。安心して!五条先生のカード、上限まで使って良いって言質取ったから✨」
「可愛い教え子のためだもの。その代わりちょーぜつ可愛いの選んでよ」
「誰に向かって言ってんのよ?」
(ど、どうしよう……本当に行くの!?お腹痛くなってきた……)
つい癖で手を握りしめて俯いてしまう。
お腹もキリキリ痛み始めてくる。
私の不安そうな顔が目に入ったのか
「そんな不安そうな顔しないの!アンタはアタシについてくれば良いだけなんだから」
野薔薇の自信に溢れた笑顔を見ると、不思議と先ほどまで感じていたお腹の痛みがスーッと消えていく感じがした。
「はいっ!野薔薇について行けるように、頑張りますっ」
「だから敬語じゃなくて良いわよ。よしっ!じゃあ伊地知さんの車まで行くわよ」
「はいっ。あ、じゃなくてうん!」
私は野薔薇に笑顔を向けて歩き出した。