最強さんに拾われたら呪術師になった話 作:サーナイト大好きっ子
野薔薇の頼れる姉貴感、五条の気まぐれ、りこのパニックをお楽しみください!
[可愛いの魔法とクレープ事件]
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人混みを抜けると、街角に一際目を引く、可愛らしい外観のセレクトショップが見えてきた。
近づいてみると、見るからに機嫌が悪そうなオーラを放った野薔薇がスマホをいじって待っていた。
(どうしよう……!!絶対に怒ってるよあれ!まず謝るべき?待たせたこと?迷子になったこと?どうしようお腹痛くなってきた……)
震えながら第一声を絞り出そうと手を握りしめたその時、隣で軽やかな声が降ってきた。
「お待たせ〜」
(先生、ナイスです……!)
先に声をかけてもらえたのであればハードルはかなり下がる。
心の中で先生に感謝しつつ、私も五条先生に続けて声をかけた。
「ごめんね野薔薇。お待たせしまし……」
「アンタねぇ!!」
____ビクッ!!
私の言葉を遮るように、野薔薇が話し出した。
「スマホに連絡一つぐらいよこしなさい!!迷子になったのは仕方ないけど、スマホに連絡できるぐらいにはなっときなさいよね。心配したんだから……」
私に被せ気味で話し始めた野薔薇だったけど、全部私への真っ直ぐな"心配"だった。
(てっきり怒られると思ってた……)
申し訳なさと、胸じんわり広がっていく温なっていくような嬉しさで、視界が少し滲む。
「わかった。次からは連絡するようにするね。あ……でも私、野薔薇の連絡先わからないんだけど……」
私が視線を落として呟くと、野薔薇は迷いのない足でカツカツと五条先生の方へ歩み寄った。
えっ……と思ったその瞬間。
「先生!!りこに呪術師のグルラ教えてあげてないの!?一年同士のグルラ、先生が入れるって言ってたわよね!?」
「あ〜そんな話もあったね」
(え?そうなの?)
私がなんの話だろうとポカンとしてしまう。
「何よ、その悪びれもなさそうな態度は!?アンタが見つけなかったら、今頃りこがどうなってたかわからなかったじゃない!!」
ひとしきり先生を激しく問い詰めた後、野薔薇はくるりと私の方を見た。
「今すぐ交換するわよ。また迷子になられても困るしね。はい」
私は差し出されたコードを震える手で読み込んで、「友達追加」のボタンをタップする。
___ピコンッ、ピコンピコン!
「わっ!もうこんなにメッセージが……!!」
「一年のグルラ追加しといたわ。任務の連絡とか、遊びの誘いも全部ここで済ませるわよ」
(遊びの誘い……!こんな私を誘ってくれるんだ……)
私はスマホを両手で大事に握りしめて野薔薇の顔を真っ直ぐ見る。
「ありがとう野薔薇っ!」
「まぁ、悪い気はしないわね」
野薔薇はふいっとそっぽを向きながそう言ったが、
私は耳が赤くなっていくのを見逃さなかった。
「ほら!早く試着してちゃっちゃと買い物終わらせるわよ!!」
「うん!」
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店内に入ると、そこは宝石箱をひっくり返したみたいな、華やかな空間が広がっていた。
野薔薇はテキパキと迷いのない手で服を選び、試着室へと運んでくる。
その仕草はあまりにも無駄がなくて、とても綺麗だ。
野薔薇の性格の良さが表れてると思う。
「はい次これね。これ終わったら次このスカートとズボン合わせるから」
(……これほんとに今日で買い物終わるのかな?)
不安になるけれど、試着室の壁にかけられた洋服たちを見るとその不安は消えていく。
野薔薇の選んでくれた洋服たちがあまりにも可愛かったから。
それと同時に別の不安が湧き出てくる。
(私には可愛すぎる気がする……似合うのかな?)
肩の出るふんわりとした白のブラウス。
パステルピンクのプリーツスカート。
それに焦茶色の細めのベルトに、ちょっとヒールのあるおしゃれな大人っぽい靴。
それらに手を伸ばし、おそるおそる着替えを済ませ私が試着室のカーテンの隙間からヒョコッと顔を出す。
すると近くにいた五条先生が気づいて野薔薇を呼んできてくれた。
「……あの、着替え、終わりました……」
「顔だけ出さないで全身見せなさいよ!私のチェックができないじゃない!」
「はっ、はい!」
____シャッ!
野薔薇の手で強引にカーテンを開けられ、私の全身がさらけ出される。
「「……」」
二人は、黙り込んだ。
(え?何も言わない!?どうしよう……そんなに似合ってなかったんだ!)
「やっぱり、へ、変でしょうか……」
消え入りそうな声で尋ねると、野薔薇は私の言葉を無視して先生に振り返った。
「先生。これ、買いよね。あとこのセットアップと、こっちの色違いのスカートもいいと思わない?カードの上限とか気にしなくていいのよね」
「もち。なんなら予備とかも買っといた方がいいんじゃない?その方が着回ししやすいでしょ」
(……??)
変、とも似合っているとも言われない。
これはどちらの反応なのだろうか。
困惑して、手の袖をちまちまいじりながら次の言葉を待った。
「アンタ素材がいいんだからもっと堂々としてなさい。アタシの隣に立つんだから」
「そうそう。そんな下向いてたら可愛い顔とせっかくのお洋服が台無しだよ?」
(かっ、かわいい……!?)
「可愛い」なんて今まで言われたことがなかった。
家族や友達には「動物見たい」とか、「反応が面白い」とか、「天然」とかそんなのばっかりだったのに。
鏡の中の私は、いつもよりも背筋が伸びていて、魔法にかかったように見える。
野薔薇の隣で胸を張っていたい。
いつか、五条先生の隣にだって。
(猫背、直そう。視線を下にする癖も。)
そう決意しながら、私は少しだけ、鏡の中の自分に笑いかけてみた。
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____チリンチリンッ
「ありがとうございました〜」
あれから野薔薇と五条先生のタッグであっという間に試着室はパンパン。
料金が想像つくような、つかないような数の洋服たちを買ってもらった。
私たちは野薔薇のオススメのクレープ屋さんに行くことになった。
荷物を快く?引き受けてくれた伊地知さんには後でお礼を言わなければ。
(雑用を押し付けちゃったみたいで申し訳なかったけど……先生も当たり前っ!みたいな顔してたし、当たり前なのかな?)
野薔薇と先生の後ろを置いていかれないようにトコトコついていくと甘い香りが漂ってきた。
生地の焼ける香りに、生クリームやチョコ、フルーツの甘酸っぱい香りもする。
鼻をくんくんさせて他にどんな香りがするのか確かめようとすると、野薔薇が呆れたように笑う。
「今の、すごく犬みたいだったわよ」
「あーわかる。ポメラニアンとか、トイプードルとか小型犬っぽいよね」
(やっぱり私は動物にしかみられないのか……)
「よく言われるんです。食べ方とか、反応とかが動物みたいで面白いって。私は何が面白いのかわからないんですけど……」
「あーなるほど。無自覚タイプね。気をつけなさい。アンタみたいなのがい、ち、ば、ん!怪しい大人に引っかかりやすいんだから」
野薔薇が五条先生を指差す。
(先生は私を助けてくれたし、悪い大人じゃないと思うんだけど……あ、でも忘れっぽいところはあるかも)
「心外だな〜野薔薇。このグレートティーチャー五条が怪しい大人だなんて」
「いやグレートだかなんだか知らないけど、怪しいことには変わりないでしょ」
(会話のテンポ早い!!えでも何言えばいいの?先生は悪くないです〜とか言ってもつまんないだろうし、そうですねって肯定するのも先生が可哀想だし……)
うーんと私が悩んでいるとクレープの味に悩んでると思ったのか
「あそこのクレープは断然いちごがオススメよ。あの甘酸っぱさと生クリームの相性がマジで抜群」
「いちご……!!」
思わず顔がニマニマしてしまう。
フルーツの中でもいちごはかなり……いや、一番好きだ。
「僕はトッピング全乗せかな〜」
(絶対くどくなりそう……)
「絶対くどくなりそう……っ、あ」
思わず口から本音がこぼれてしまった。
(あ……!!今の絶対声に出てた!!ど、どうしよう……)
慌てて先生の方を見ると、彼は親指を立てて笑う。
「大丈夫、僕最強だから」
(大丈夫なのかな、この人……)
「ついたわよ!一緒のお会計でいいわよね、先生?」
「うーんいいよ〜」
野薔薇の声に導かれ、列に並ぶ。
壁に貼ってあるメニューの写真をスマホで撮る。
視力が悪くてこうでもしないと値段どころか写真もぼやけて見えないのだ。
「いちごいちご……あ、このいちごチョコ美味しそう……アイスもつけられるんだ!こっちのカスタードのやつもいいなぁ……!!」
優柔不断な私は、いつも選ぶのが遅い。
家族や友達とごはんを食べに行ったり、何かを選ぶ時は必ず決まるのが一番最後だった。
「私季節のフレーバー」
「僕はトッピング全乗せ。りこは?」
私がうーんと悩んでいると、それをみかねた五条先生が覗き込みながら聞いてきた。
「まだ迷ってるの?僕とおんなじトッピング全乗せにする?」
「それは遠慮しときます……でも本当にどれにしよう?全部美味しそうで選べなさそうです……」
「じゃあ僕が決めてあげる。そうだねぇ〜じゃあこのいちごとチョコアイスのやつにすれば?最初に目つけてたでしょ?」
(見ててくれてたんだ……)
最初はよく分かんない人だなって思ってたけど、やっぱり先生なんだな、と少し驚いた。
「じゃ、じゃあそれにします!」
「ん、店員さーん!季節のフレーバー1つと、トッピング全乗せ1つといちごとチョコアイス1つ下さ〜い!」
「はい、お会計は_____」
先生の隣に立っていると野薔薇が私の腕をちょっと引っ張って
「神念、アタシ達はあっちで待ってましょ」
とテーブル席のほうに誘導してくれた。
席を確保して五条先生を待ってると両手に3つクレープを持った先生が現れた。
(……うん。あの身長にあの目隠しにクレープ3つはどこからどう見ても怪しすぎる。怪しすぎて逆に面白いかも……!!)
「はい!これが野薔薇ので、こっちがりこのね。で、これが僕の」
「ありがとうございますっ!!」
「んー!!見た目も華やかでインスタ映え確定ね!」
「ささっ!アイスが溶けないうちに食べちゃいな」
(このクレープ……クリームもりもりだし、食べたらいちご落ちちゃいそう……絶対に落とさないようにしなきゃ!あと前友達と食べた時、口の端についちゃって笑われちゃったから絶対つけないように、慎重に……!!)
覚悟を決めてクレープと向き合う。
「い、いただきますっ!」
私はこれなら完璧だろうと、チビチビ食べ始める。
いちごとクリームを堪能してると
「「ぐふっ!」」
と笑いを抑える声が両隣から聞こえてきた。
ビクッ!と肩を震わせ、急いで顔を上げると
「クックック……いやぁ、こんな食べ方してる子、初めて見たよ」
「しっ、神念……アンタ本当に見てて飽きないわね」
「ふぇ?」
___パシャッ!
シャッター音がした時には、すでに野薔薇はスマホを構えていた。
「神念鼻!は、な、付いてるわよクリーム」
「ええぇ!!あっ、あの!どこ、どこについてますか!?ここですか!?」
「あーもう、全然取れてない。仕方ないな〜ほら、動かないで」
先生にそう言われ、手を下ろす。
すると、熱を帯びた長い指が、そっと私の鼻に触れた。
五条先生の目隠しが視界いっぱいに広がり、クレープの甘い香りだけでなく、清潔な石鹸の香りが鼻をくすぐる。
「はい!これで取れたよ……うん。これも美味しいね」
そう言うや否や、先生は取ったクリームをごく自然に、ペロッと舐めた。
(え!?今……私の鼻についてたのを……?)
「ちょっと先生!!純粋なりこにそれは毒よ!?顔がいいからって調子乗んないで!!」
野薔薇が私を抱き寄せ、先生を睨みつける。
私は顔に火がついたように熱くなって、クレープを落とさないようにするので精一杯だった。
「ホント小動物みたいだね、りこは。見てて飽きないよ」
(……そういう問題じゃないです〜!!)
私は熱くなった顔を隠すように、勢いよくクレープに齧り付いた。