最強さんに拾われたら呪術師になった話 作:サーナイト大好きっ子
呪霊に襲われた今日がフラッシュバックしたりこと、彼女の呪力の乱れを察して部屋にやってきた五条のお話。
「言ったでしょ?0.1秒で駆けつけるって」
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お風呂から上がって乾かしたばかりの髪を一つに束ねる。
にこと、なことお揃いのくまさんが散りばめられたパジャマは、私が一人じゃないと背中を押してくれるみたい。
トコトコ歩いて五条先生の部屋を通り過ぎ、自分の部屋の前に立つ。
_____ガチャ
まだ段ボール以外置かれていない、殺風景な部屋。
昼間はあんなに魔法がかかっているみたいにキラキラして見えたけど、今の自分の部屋はそんなふうにはとても見えない。
ベットに転がって天井を見つめる。
目を閉じれば今日の出来事が鮮明に思い出される。
学長のぬいぐるみ。
悠仁や野薔薇、恵との会話。
原宿での喧騒。
(先生が変なことしてきたのは忘れよう……)
ただ楽しかった分だけ、嫌なことがぶり返してくる。
友達の叫び。
壁に叩きつけられた痛み。
目の前で振り上げられた腕。
ここは高専だ。
呪霊なんで出ない。
襲われない。
そう思えば思うほど、グルグルとどん底へ落ちていく感覚。
胃が逆流したみたいに気持ち悪くなり、視界が滲む。
(……怖い。気持ち悪い。嫌だ。助けてっ……)
_____コンコンコン
「!?」
「りこ、入るよ」
ガチャ_____
そう言って入ってきたのは五条先生だった。
目隠しはしていなくてサングラスをかけている。
服もラフなものだ。
先生は私に近づくと視線を合わせるかのようにしゃがんだ。
「せんせ何で……」
私が震える声で尋ねると、頭に熱を感じる。
遅れて先生の手が頭に乗っていることに気づく。
私は驚いて思わず顔を上げてしまった。
視線がぶつかり合う。
「君の呪力が乱れてたからね。言ったでしょ?0.1秒で駆けつけるって」
「あれ、本当だったんですね……」
「僕最強だからね」
先生はそう言って目を細める。
「ごっ、ごめんなさい……目を閉じたら、またっ、殺されちゃうかもって思ったら、止まらなくてっ……」
先生が来てくれた安心感で我慢していた涙が溢れてしまった。
袖で拭うが、ポタポタと布団に水玉模様ができていく。
(早く止めなきゃ。先生に迷惑かけちゃう……)
ヒグッヒグッと声を押し殺して涙を止めようとしていると温かいものが私を包み込んだ。
「え……」
「りこ」
耳元で囁かられ、涙が止まる。
「そうなるのは当たり前でしょ。特に、君みたいに死の淵に立ったことのある人間は。自分を責めないで。君は、何も悪くない」
「あっ……うっ、ヒグッ」
朝とは違う確かに感じる体温に、守られていると言う自覚。
私は今まで溜め込んでいたものが溢れ出し、子供ように泣いた。
先生はずっとそばにいてくれて、安心させてくれた。
「ヒグッ、すみませんっ、あの、もう大丈夫ですから……」
さすがにこんな時間まで先生を拘束するわけにはいかないので、五条先生から離れようと後ろに下がる。
すると逃げられないぐらいの強さで、ガチっと手首を掴まれた。
「君みたいなのが『大丈夫』って言うの、一番信用できないんだけど?」
サングラスから覗いた蒼い瞳に閉じ込められたかのように体が動かない。
サイコキネシスが勝手にダンボールがガタガタと揺らす。
早く離れなきゃと思えば思うほど、私の口から出るのは意味のない掠れた声だけだ。
「あ……」
「ねぇ……りこが本当に思ってること、教えて?」
嘘をつけばどうなるか。
本能的に嘘を吐いてはいけないと警告がなる。
私は掠れた声を振り絞って言った。
「……まだ、いてほしいです……」
先生はよく言えました、という笑顔で手首を離す。
そのままベットの端の方に座って言う。
「じゃあ僕はここにいるから。もう寝な」
「はい……」
私はもう一度布団に入って目を閉じる。
今感じるのは先生の呼吸と布団が掠れる音。
(あぁ、もう大丈夫だ)
私は泣き疲れたまま、夜の海へと沈んでいった。