シン・ワカメライダー。   作:ひつまぶし太郎

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この作品にはご都合主義と独自設定とかとんちき設定が含まれます。
あと間桐桜救済と間桐桜脳破壊とおねショタが含まれます。

あ、仮面ライダーは特に関係ないです。



①ぷろろーぐ

 

「───兄さん?大丈夫ですか?」

 

扉の向こうで、妹の声がする。

だが、性悪女に弄ばれている僕は、自分の今の情けない姿を見られたくなくて、震える声で遠ざける。

 

「…!いま、はっ…ちょっと…出れないか…ん…も…!部屋の片付け…してて!ちょっと…ほら!仕事の関係でぇ…!」

 

「ええっと…」

 

「夕食なら、あとでぇっ…食べるからぁ!…さきっ、…ひぅ…食べといて…!」

 

『ふふっ、可愛らしい声ですね。扉の向こうにいる大事な妹さんにバレないように必死じゃないですか…ええ、それでこそ嫐り甲斐もあるというもの…』

 

どうか早く、離れてほしい。

それが自分の尊厳のためなのか、誰かにバレる心配をせずに快楽に溺れるためなのか。

 

もう、わからない───

 

 

 

 

 

 

その少年は、空から落ちてきた。

 

 

 

「ふぅ…」

 

 

集中して、引き絞って、放つ。

自分を機械だと思える人物がいるのなら、もしかしたら百発百中になるかもしれない。

もしかすれば、バイトを理由に最近あまり来ないあの先輩なら…。

 

…脳裏によぎった赤錆色に集中が乱れたのだろう。

 

たん、という軽い音共に的へと突き刺さったその矢は中心から外側へと大きく外れたものとなっていた。

 

今日はここまでだなぁ、と汗ばむ道着の感触に少し顔をしかめながら姿勢を正す。

何度も繰り返してきた一礼は、気がそぞろでも乱れない。

 

下げた目線が元の高さを取り戻し、その場の静けさを壊さないようにその少女…間桐桜は弓道場を後にした。

 

 

季節は春。

朝晩はまだ少し冷え込むが、それでも穏やかな陽気が心地良い。

 

自分が名前を貰った春の象徴が咲き誇り、校舎裏の渡り廊下を彩っている。

 

春の日差しに釣られるように小さなあくびが浮かび、軽い足取りが校門の近くへとたどり着いた。

 

「お兄ちゃん!」

 

「お、奇遇だな…お前も今帰りかイリヤ」

 

「うん!一緒に帰ろお兄ちゃんっ」

 

知り合いの先輩がずいぶんと可愛いらしい女の子と合流をしているのを尻目に、自分も家に帰ろうと足を踏み出して、桜はその少年に目を留めた。

 

「あっ」

 

だぼついた白いジャージ。

ショートパンツがその長い丈のジャージの裾で隠れたせいで、細いながらもしなやかな脚が生脚のように見えて、心なしか扇情的な装いに見える。

竹刀袋を肩に担ぎ、真っ直ぐに伸びた背筋はまるで小柄な剣道少女と言った風貌だった。

…まぁ、男の子なのだが。

 

青色のゆるいくせっ毛を後ろで雑にくくり、何やら校庭を睨みつけながら、その端正な顔をしかめっ面で台無しにするその少年は、疲れたようにため息を吐き出すと校門へと背を向ける。

 

───桜は、今でもこの少年との衝撃の出会いを覚えている。

 

この少年は、空から落ちてきた。

ある日、唐突に。

桜が、間桐桜になったその日に。

 

忌まわしい蔵に転がり落とされた、あの瞬間に。

 

『……????なんだここ…?…とりあえずやくか』

 

あの日を境に、間桐桜は魔術師として死んだ。

正確には中学生に上がるまでは魔術師としての機能は残っていたが、魔術師としての務めは全て兄が引き受けてくれていた。

間桐家もその長い歴史に終止符を打つ目処が立った。

 

その少年は桜にとって、唐突に何もかもを終わらせたヒーローだった。 

彼を見ているだけで心は軽くなるし、彼を抱きしめるだけで胸が温かくなる。

 

中学生になり、自分の初めてを兄に捧げることができたあの日の思い出は…とても幸せな思い出として桜の中に残っている。

まぁ兄に言わせれば間桐桜を一般人にするために必要なただの儀式だったらしいが、乙女としてそんな無粋な言い換えは聞き入れるつもりはない。

あれは愛の営みだった。

誰が何と言おうとだ。

 

最近はあまり抱きしめさせてもらえないのが寂しいところだけれど、兄さんもそろそろ思春期ということなのだろう。

身長が一センチ伸びたと言っていたし。

 

そんな事を考えてストーカーのごとく盗み見ていたら、彼の背がどんどんと遠ざかっているのにようやく気付く。

行ってしまう。

そう思った桜は慌てて歩調を速めながら、声を上げた。

 

「ま、まってください!()()()!」

 

その声に足を止めたその少年は、深いため息とともに振り返り、ウンザリしたように口を開いた。

 

「桜、お前なぁ…兄さん呼びやめようって話前にしなかったっけ?見た目小学生のドチビを兄って呼ぶ女子高生とか通報ものだってマジ」

 

「うっ、すみません…」

 

「はぁーもー……まぁ気にしないならいいけどさぁ…」

 

がりがりと頭をかきむしり、むず痒そうな表情に変わった少年はもう一度深くため息をつく。

 

「……とりあえず今日は今から仕事だから。さき帰っといて」

 

「うう…はい」

 

しっかり戸締まりするよーに、と背中越しにひらひらと手を振る少年は最後にもう一度ため息をつくと、歩き出す。

 

「なぁんで偽物の兄にそこまで従順なのか…これがわからない」

 

単に虫を燃やしただけなんだけどなぁ、と不思議がる少年はその背に向けられるやけに湿度のこもった目線にはまったく気付けていなかった。

 

「もう…兄さんったら鈍いんですから…」

 

 

 

 

 

間桐慎二。

それが今の僕の名前。

 

本来の名前ではないし、本来の名前なんてものもそもそもない。

単なる本家の当主のスペア。

そういう風に産み落とされるために、五百年もかけて血を繋いできたのが我が一族なのだから。

 

もっとも、つい十年前まで当主だった男は、五百年間決して分家を使おうとはしなかったので無名無実もいいところな分家だったわけだけど、それをいいことに好き勝手していたうちの一族もどっこいどっこいな所はある。

 

名無しの権兵衛が兄など聞いて呆れる。

まさか暇つぶしに空飛んで遊んでたら、宇宙人と衝突事故を起こすとは。

僕史上一番の不覚と言えるだろう。

 

…まあそんなことはどうでも良くて。

 

「今日の仕事はハズレかぁ…空港に迎えに行って案内するだけの簡単な仕事って聞いてたんだけど」

 

「だあ──ッ!!」

 

僕が白けた目で見上げる夜空では、花火のような閃光が飛び交い、ついでに怒号も飛び交っている。

 

宝石翁から任務を受けた魔術学徒の姿か?あれが…。

冬木市に発生した虚数区域への穿孔…もとい、霊脈に大きな歪みを生む危険なカードの回収はどうしたんだろうか。

 

…実在した英雄の力を引き出せるカード。

そのカードを守護するように、あるいはただそういう存在であるというだけなのか、そのカードの回収には少なくない血生臭を伴うことになるので、こんな風にいがみ合ってる暇はないはずだが。

 

どうやら、虚数へアクセスする仕事ということで僕に仕事を回してくれたあのロン毛の言う通り、少々どころかかなりの問題児達のようだった。

話に聞いたときはいくら赤い悪魔とはいえそんなまさかと思っていたが、ずいぶんイギリスという国の空気と水はあの女にあっていたのだろう。

 

より凶暴になって帰ってきたわけだ。

空港で普通に取っ組み合ってた時点で察してはいたけど。

 

「なんで攻撃してくんのよコイツは!共同任務だってこと忘れてんじゃないの!?」

 

「まったく困ったちゃんですねー。結構な本気弾ですよアレ」

 

「ホ───ッホッホッホ!こんな任務私一人でどうとでもなりますわ!貴女さえいなくなればすべて丸く収まるんですのよ!」

 

「マスターは人でなしと評します」

 

「黙りなさいサファイア!!」

 

思えば、前の前の仕事相手は良かった。

自分の仕事には影響がないからと僕の秘密も黙認してくれたし、何より戦闘面での相性が割と悪くなかったのがいい。

僕が前線を張らなくても向こうが頑張ってくれたし、実にビジネスライクで凄くやりやすかった。

協会の上のほうでパワーゲームがあったとかで2回一緒に仕事をしたあとは日本から帰ってしまったが。

 

その後に来た連中も大概見下してきて煩わしかったり使い物にならずに撤退する羽目になったりと良い方ではなかったが、ここまで最悪ではなかった。

 

…とはいえ、この分なら一枚くらいただの案内人兼露払いの僕でもカードを手にする機会もありそうだから悪くはない。

むしろ都合はいいとさえ言えるかもしれない。

 

「やれやれですねー。もうお二人には付き合いきれません」

 

そんな風に取らぬ狸の皮算用をしていたら、喋るステッキとかいう意味不明な無機物に『共同任務のために渡されたの私闘で使うなんて本末転倒』という至極真っ当な正論を建前に、たぶんおもんねーからっていう理由で魔法少女コスをした女子高生2人の手からステッキがひらりと身?を翻した。

 

「あーあー…まぁそうなるな」

 

そもそも意志を持った魔法の道具など、厄ネタが過ぎる。

魔力を無限に供給するとんでも礼装を魔法使いが生み出すのはいいが、悪用を防ぐためにその人格を持った人工天然精霊とかいう意味不明な代物をオプションとして追加するのはどう考えてもミスとしか思えない。

気でも狂ったか?みたいな。

 

そして、そんな愉快型魔術礼装(危険物)を管理するのが未熟な魔術師ともなればこうもなろう。

見えていたオチだ。

 

バカ2人は文字通り物理的に落ちてるけど。

 

「あ、ちなみに私としてはあなたがマスターになってくれてもいいんですが…どうでしょうー?」

 

「嫌だね。成人男性魔法少女とか誰得すぎる。僕は遠坂みたいな道化になる気はないよ」

 

「あはー!ま、そこまで期待はしてなかったですけど。もし街に面白い方がいなかったらよろしくお願いしますねー!」

 

「しねーよ、ねえって…しないからね?つーかそもそもお前女性限定礼装だろうがっ!」

 

横を通り抜けるステッキがなにやら戯言をほざいていたが、無視だ無視。

 

僕は魔法少女コスが解除されてごく普通の魔術師へと戻った少女二人を受け止めるべく手を掲げる。

その際、傘をさすのも忘れない。

 

「だぁぁぁーッ!落ちるーッ!?」

 

「おのれ許しませんわよサファイアーッ!!」

 

イメージは薄く、広く。

一度で受け止めようとしなくていい。

 

ぶっちゃけ空を飛んで受け止めるのが一番早いのだけど、秘密を気軽にバラすほど僕は迂闊な人間ではない。

間桐本家が盲目的にワンマン経営してるのを良いことに、五百年かけて株分けしてもらった魔術刻印を魔改造してきたうちの一族の秘密が明るみに出ようものなら、僕は時計塔の地下行き待ったなしである。

 

せっかく封印指定執行者様々が直々に見逃してくれたのに、あえて目立つなんてポカをやらかした日にはげんこつ一発じゃ済まない。

普通にボコボコにされる。

あと人生の墓場にぶち込まれる。

 

『───もし、私が黙していたあなたの秘密が明るみに出て、封印指定が執行されるようなら…私と結婚してもらいます。わかりましたね?』

 

『いや…わかんないかな。意味が』

 

『鈍い人だ…』

 

『鈍いとかじゃなくて絶対結論が意味わかんないからだと思うんですけど…(名推理)』

 

別れ際の会話が強烈すぎたので、元からバラす気のない秘密を完全に守ろうと思えたのはある意味幸運だったかもしれない。

 

…本当にそうか?

本当の本当に?

 

「くっ、重力軽減魔術でなんとか…きゃぁ!?」

 

「あーッ加速が止まらなゴボゴボゴボゴボ!?」

 

ほんの1週間前の恐怖を思い出して震えながらも、魔術の行使に淀みはない。

『水』で、運動エネルギーを『吸収』する。

そんな間桐お得意の組み合わせで空中の水分へと働きかけ水膜を幾重にも生み出した僕は、二人の落下の勢いを殺していく。

 

「ぶわぁ!?ちょ、なんですの!?」

 

「…ぷはっ、これあいつの…!?」

 

ついでにうら若き乙女たちがどんどんびしょびしょになっていくが、まぁ死ぬよりはマシだろう。

こんな手助けがなくても遠坂もお嬢も気合いで生き残るんだろうけれど、そこはそれ。

恩は売れる時に売っとけってどっかの神父も言ってたし。

 

やがて、いくつもの水膜を破って落下の勢いが完全になくなった2人がべちゃりと地面に無事落ちたところで、僕は空中に浮かべていた水膜を解除。

 

世の中にはバケツを引っくり返してような雨、というのがあるが多分こんな感じなんだろう。

空中から滝行に放り込まれたような勢いで大量の水が降り注ぎ、びしょ濡れの2人が睨みつけてくるが、傘をさしていたおかげで1人だけ濡れていない僕は鼻で笑った。

 

「ははっ。大師父に預けられたステッキには裏切られ、天から落ちて最後はビショ揺れか。踏んだり蹴ったりってやつじゃん」

 

「くっ、感謝と怒りがここまで釣り合う助けられ方もなかなかないわね…!」

 

「くしゅん!ええ…本当に!感謝はしてますけども!紳士的とは言えませんわよ!」

 

「感謝しか聞こえないなぁ。わはは!落ちたね遠坂も!文字通り!あの優等生様の無様な姿を見れるとは思ってなかったし、それを思えばこの仕事を受けたのもまぁ悪くはなかったかな」

 

「ム、ムカつく…!ちょっと、一発殴らせなさい!」

 

「…空港の時から思ってましたけど、お二人はお知り合いですの?」

 

「まーそんなとこかなぁ」

 

そんなとこだ、そんなとこ。

幼馴染のような、そうでもないような。

彼女目線だと養子に出された元妹の兄を名乗る不審者というか。

 

「私が冬木にいない間のセカンドオーナー代理みたいなもんよ。名義状はね!まともに管理してるのか怪しいもんだけど」

 

「まーそこは適当に神父に押し付けつつ…渡された書類にぽんぽんハンコを押してる日々ですよ。なんだっけ。遠坂邸がめっちゃ高く売れたのは覚えてるけど」

 

「嘘でしょ!?」

 

「嘘だよ」

 

「あんたの嘘は分かりにくいのよ表情全然変わんないから!!!」

 

「なんなんですのこの可愛げのかけらもない子どもは…」

 

「僕はどこをどう見ても可愛いだろうが」

 

このまま楽しくからかっていてもいいが、風邪をひかれても困るので、二人の身体についた水気を吸収して水の玉にする。

ナルトのザブザのやってた水牢みたいなのをイメージしてもらえばわかりやすいか。

それをぽいと道端の排水口に投げ捨てながら、僕は二人に背を向けた。

 

「それじゃ、僕は帰るから後は好きにしたら?仕事はまた明日改めてってことで」

 

風邪引くなよー、と告げてやれば二人が顔をしかめる。

 

「あんたねぇ…女子高生びしょびしょにしてその反応って…男としてどうなのよ」

 

「複雑ですわ乙女として。もちろん下卑た目を向けてきたらバックドロップの刑でしたけど」

 

「なんていうか…見た目はよくても中身で萎える。うん。見た目はいいけど…さっきまでこいつらいい年して魔法少女のコスプレしてたんだなって思うと普通にうわきつってなるワケ。わかる?」

 

「「ぬぁんですってぇ!?」」

 

やいのやいのと騒ぎながら、結局二人ともステッキのことを思い出して思い思いの方へと走り出すのを見送って、僕はその日帰路についた。

 

 

その翌日に、僕は喧嘩する前に二人を止めておけば、と後悔することになる。

 

 

「───兄さん?大丈夫ですか?」

 

「…!いま、はっ…ちょっと…出れないか…ん…も…!部屋の片付け…してて!ちょっと…ほら!仕事の関係でぇ…!」

 

「ええっと…」

 

「夕食なら、あとでぇっ…食べるからぁ!…さきっ、…ひぅ…食べといて…!」

 

『ふふっ、可愛らしい声ですね。扉の向こうにいる大事な妹さんにバレないように必死じゃないですか…ええ、それでこそ嫐り甲斐もあるというもの…』

 

 

僕は、次の日の夜。

紫の髪で、バイザーで目隠しをした長身の女幽霊に、取り憑かれる。

 

 

───その日から、僕の弄ばれる日々が始まった。

 

 





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シンジくんイメージ画像。

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