シン・ワカメライダー。   作:ひつまぶし太郎

7 / 8
実質タイトル回収会かもしれません。
どうか皆さんめっちゃかっこいい戦闘用BGMを流してください。
それはもう聞いてるだけで駄文が名作に見えてくるほどのものを。
ワンオクとかいいんじゃないですかね。

あと、今回はちょっと伏線のために多少濁してるところはありますが次回ちゃんと説明します。
今回はコスプレおねショタプレイのための前振りです。


⑦うちゅうじん

 

 

その人は、不思議な人だった。

 

優しいけど捻くれていて、捻くれてる割に素直で。

お兄ちゃんの友達で、喋ったことはなくて。

お兄ちゃんのいつもとは違う表情を引き出していて、本人も他の人といるよりも楽しそうで。

 

私はそんな2人を、友だちの友だちの距離感と言うか、少し遠巻きに眺める程度の距離感だった。

 

名前も好みも、年も知らない。

 

───だけどなぜか懐かしい。

 

私を見るときの目もやけに優しいというか、遠い過去を懐かしむような視線なのもよくわからない。

 

私じゃない誰かを見るような、青い瞳。

 

妙に気になるその人の名前は、間桐慎二というのだと最近知った。

 

お喋りステッキのルビーに騙され、唆され、気が付けば魔法少女になっていて。

そのまま流されるままに戦いに巻き込まれた。

 

そんな魔術という別世界の入り口に、その人はいた。

 

『うわぁ…』

 

私の格好を見て心底居た堪れないという表情をしていた現実は、私の脳裏に深く刻まれている。

 

おかげで転身して気にしないように振る舞っていても、時折羞恥を思い出して身悶えするようになってしまったのだから、普通に責任を取ってほしい。

 

「───久しぶりじゃん、イリヤ」

 

倒さなきゃ。

目の前の敵を倒さなきゃ。

 

「元気してた?」

 

倒さなきゃ。

私たちを逃がすために命懸けで立ち向かってくれたあの人に報いるためにも。

 

「震えてるじゃん。無理すんなよ」

 

倒さなきゃ。

ただ震えて見てるしか出来なかったから、あの人は今死にかけているのだから。

 

「そこまででいいよ。やり方も教えてくれたし」

 

(たお)さなきゃ。

大切な()()()を助けるために。

 

「あとは、僕がやるから」

 

途切れた意識の向こうで何度も同じ言葉を繰り返す心に反して、私はその懐かしさに安堵していた。

 

無理をしなくていい、なんて。

誰よりも無理を通しながら笑うその人の力強い鼓動が、とても綺麗で偉大な歌に聞こえたから。

 

胸元に引き寄せるように抱き締められたことで、自分の中で荒れ狂う魔力も心も、全てが不思議なくらい落ち着きを取り戻す。

 

「…なぁ、イリヤ。君の言う通り、僕は結構いい兄をやってるぜ」

 

雪を踏みしめる足音がした。

 

それは、ひどく懐かしい、遠い雪の地の───

 

 

 

 

 

魔法少女2人が空を舞いキャスターの喉元まで迫ったはいいものの、転移され手痛い反撃をもらったときはヒヤリとしたが。

 

2人の連携を前に、地面へと叩き落とされたキャスターを転移させずに首をはねたことでめでたしめでたし、となれば良かった。

 

「よりによってあんたかよ───!」

 

二人に振り下ろされた剣の直撃は僕が防いだ。

だが、同時に放たれたただ高密度なだけの魔力による斬撃が遠坂とお嬢を吹き飛ばした。

 

魔力は感じるし、死んではいないはずだ。

優秀な魔術師の2人のことだ。

即死でさえなければ魔術刻印が2人の傷を癒し、命を繋ぐだろう。 

 

なら、僕は僕の仕事を全力でしよう。

はなっから、誰かを気にしながら勝てるような相手ではないのだから。

 

「っ゙ァ───負け、る…かぁ!!!」

 

僕の木刀が軋みをあげ、受け止める僕の身体がその圧倒的な力の差に屈しそうになるところを必死に繋ぎ止める。

 

あり得ない事が起こっていた。

同じ空間に、2枚のカードがあるという理不尽。

キャスターという難敵の後に、連続して連続しての戦闘など想定していない。

 

「───!!」

 

受け止められたままだと埒が明かないと踏んだのか振り下ろされた剣が引き戻され、直後瞬きの間に横っ腹を薙ぎ払われる。

 

それを咄嗟に盾にした木刀で受け止め、しかし抜けてき衝撃が僕の身体に大きな罅と亀裂をいれた。

 

「ぐぅあ゛あ゛…!!」

 

一太刀で理解する。

 

圧倒的だ。

 

致命的だ。

 

だからなんだ。

 

止まるな、動け。

 

「…あんたには、負けられないんだよねぇ!!」

 

罅割れ、浮いた身体に向けて容赦なく剣が振り下ろされて、その全てを既のところで受け止めて、命を繋いでいく。

 

だが、心意気だけではその実力さは埋まらない。

無謀なのだ。

出力が違う。

 

ただの英霊を相手にするのとは違う。

 

───ゴミのように吹き飛ばされ、地面に叩き伏せられてもすぐに起き上がるが、返す刀であっさりと斬り払われ、もう一度崩れ落ちる。

 

彼女を相手に殺し合うということは、竜と殺し合うのと等しい。

 

凡百の英霊が霞む、彼女の名こそが。

 

「アルトリア・ペンドラゴン…!!」

 

その冷徹なまでの容赦のなさに、僕は口から全身から血を噴き出しながら笑う。

 

本当に懐かしい。

鎧も表情も違うけれど。

顔も、きっと声も。

僕を間桐の屋敷に不時着させた宇宙人と瓜二つなのだから。

 

『ふぅ、やれやれ。あなたはやはり傲慢ですね』

 

『傲慢?』

 

そもそも、高密度の魔力の霧が一番効果を発揮しない超ド至近距離の殺し合い。

これが成立している時点で、おかしな話だ。

 

「ハァ゙…!やっぱすげえな…!」

 

───死に体で何度も立ち上がり、喰らいついて、その女の意識を釘付けにする。時間を稼げ。彼女たちが、逃げる時間を作れ。

 

勝手に師匠を名乗って、ひたすら僕をボコボコにするのを修行だと思い込んでる猪みたいなあの宇宙人のような嫌らしいフェイントも使ってこない。

宇宙船についていた小型のシミュレーターを使ったときみたいにひたすら聖剣ブッパしてくるようなイカれた理不尽さもない。

1本取られた後にノーカンにして、試合前に設けた縛りすら破り捨てて勝ちに来る負けず嫌いさもない。

 

つまるところ、目の前の彼女はただそのポテンシャルを発揮するだけで圧倒的で最強な機械なのだ。

 

「ほんとすげえよ…けどっ、僕は知ってんだよ。その太刀筋を!その聖剣の輝きを!!」

 

真っ直ぐで、見惚れるほど完璧な太刀筋に合わせて木刀を振るって、弾き返す。

 

「…師匠(あの人)に比べたらやっぱちょっと浅すぎるぜ、英霊擬き!!」

 

全力で彼女の剣を迎撃した僕と、不意打ちで両手ごと剣を弾き返されたセイバー。

 

互いの身体が無防備になり、しかし彼女にとってその程度は隙になり得ない。

 

『自分は人ではないという後ろめたさは、同時にあなたにとって覆し難い自尊心にも繋がっている、という話です。いっそ残酷なまでの優しさとも言いますが』

 

『…勿体ぶらずに教えてろよ、バカ師匠』

 

…師匠なら、ここで食いつくようなヘマはしなかったろう。

 

だが、意志のない機械人形は、その致命的な隙を見逃さない。

否、見逃せない。

 

僕よりも圧倒的に優れた反応速度と身体能力を持ってして振るわれた本来の彼女のそれではない、未だ本領を発揮しない黒い聖剣がついに僕の無防備な土手っ腹に直撃する。

 

「っ゙ゥ゙……!!!…ゥ゙ルルルルルルァ゙ァ゙アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ゙!!!」

 

だが、切断はされない。

 

そんな可愛い脆さは、持ち合わせていない。

 

意志のない、思考のない聖剣に砕かれてやるほど、僕は優しくない。

 

『ようは手加減とか考えず全力でやれって話ですよ。罠も外道も何でも使いなさい。卑怯上等です。私たち竜は、勝つことこそが至上命題なんですから。真正面から敵の喉笛どころか頭を丸ごと食い破ってやりなさい。それがセンパイの私から教えられる一番大切なことです』

 

腸で僕が真正面から受け止めた聖剣が抜けないことに、機械じみた現象でしかないはずのその人形が驚愕に目を見開いた…ような気がした。

 

「なんだ、相討ち覚悟だったのにビビって損した」

 

僕は無理矢理捕まえたセイバーに向かって、見せつけるように盛大に笑った。 

 

「僕の勝ちだぜセンパイ」

 

木刀が彼女の頭蓋を真芯で捉えて、鎧を砕きながら大きく吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

どれほど知略を巡らせても。

 

 

どれほど力で圧倒しても。

 

 

どれだけたった一人の太刀筋を理想に据えて追い求めた剣士が、偽物を打ち破ろうとも。

 

 

全てをひっくり返す絶対的な力こそが、その聖剣だ。

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

 

誇るような声音も、歌い上げる福音もなく。

 

黒い黒い星の息吹は僕を飲み込んだ。

 

 

希望と共に鏡面界を両断した黒い聖剣を前にかつてない絶望を覚えた一人の少女の中で、かちりと、一つの鍵が外れる音がした。

 

 

ただ怖くて。

 

悲しくて。

 

どうしようもなくて。

 

「うっ…あ…ぁ…」

 

「な、なに…何が起きてるの…イリヤスフィール!!」

 

一人の人間が保有できる限界を超えた魔力が噴出し、吹き荒れる。

 

何が起きたのかも、これから何が起きようとしてるのかもわからないまま、奇跡に手を伸ばした少女を、僕は───

 

「…()()()()()()()、イリヤ。元気してた?」

 

静かに抱きしめた。

無理矢理死に体を再起動して意識を再構築したからか身体中から悲鳴が上がるが無視だ無視。

 

「…震えてるじゃん。無理すんなよ」

 

血がドボドボと零れ落ち、地面もその白い少女も汚すけれど、それに構う余裕もない。

砕け散った五感をなんとか再接続して、彼女の温もりを確かめる。

 

「そこまででいいよ。やり方も教えてくれたし」

 

僕の腕の中で震える彼女に罪悪感を覚え、同時に大切な()()()を助けるために僕ができることを理解する。

 

「あとは、僕がやるから」

 

懐から、そのカードを取り出す。

 

クラスはライダー。

 

僕にとっては、既に本物の英霊を引き出した時点で用済みになったはずのそのカードを改めて天に掲げる。

 

…まさかそんな使い方があったなんてなぁ。

割と都合の良い召喚触媒くらいに思ってたぜ。

クラス確定ガチャチケットみたいな。

 

「…なぁ、イリヤ。君の言う通り、僕は結構いい兄をやってるぜ」

 

詠唱は要らない。

僕と彼女のパスは、もうとっくの昔に繋がっている。

 

だから、たった一言僕は告げた。

 

 

「───夢幻召喚(インストール)

 

 

さぁ、いい加減。

 

 

長すぎるこの戦いに決着をつけよう。

 

 

 




今回も最後まで読んでくださってありがとうございます。
なんて独自設定とご都合展開のオンパレードなんでしょう。
次回はちゃんとおねショタしますので許して下さい。

もしちょっとでもいいと思ってもらえたなら、あるいはしょうがねえなあ応援してやるよと思ってくださる神様みたいな人がいらっしゃいましたら感想や評価、ここすきを頂けるととても嬉しいです。
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