ボクのヒーローアカデミア   作:たいん

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No.2 デクくんとお茶子ちゃん

お茶子ちゃん、5歳になりました。

原作通り雄英高校を目指すので、小学校に上がる前から勉強を始めています。

まあ、前世で医学部卒業しているくらいなので、中学校くらいまでの理系科目は余裕ですし、なんなら高校生レベルの問題も解けるんですけど。

 

個性も隠れて少しづつ使っています。

母ちゃんと買い物行った時の荷物を軽くしたり、最近だと冷蔵庫も持ち上げられるようになったので、お掃除の時に持ち上げたり。

もう少し大きくなったら、父ちゃんたちの仕事は絶対手伝わさせてもらうんだ。

2人は絶対断ると思うけど、個性伸ばしのためにもやらない手はないので。

それに2人ともいつも疲れた顔をしているのは見ていて少し辛い。

だから、というわけでじゃないけど、やっぱり2人には笑っててほしい。

原作でお茶子ちゃんが、両親のために楽をさせてあげたいって思ってたこともすごいわかる。

大人として、子供に夢を追いかけてほしい、心配をかけたくないって気持ちもすごく分かるから、ボクにとっては悩ましいのだけれども。

 

と、考えていたそんなある日。

「母ちゃん、お茶子。父ちゃん、仕事で一週間くらい静岡の折寺ってところ行ってくるわ。」

 

折寺って...緑谷出久くんと爆豪のかっちゃんが住んでた地域!?

子供の頃の2人なんてそんなの見たいにきまってる!

 

「父ちゃん!父ちゃん!ボクも行きたい!!絶対行く!」

 

「お茶子!?珍しいなぁ、お茶子がそんな駄々こねるなんて。でも父ちゃん仕事やし、お茶子を連れて行くのはキツイで。」

 

「そしたらあたしが見てるよ。今まで家族旅行とかもなかったことやし、ちょっと安いところとかあれば、なんとかなるやろ?」

 

「うーん...わかった!そしたら、みんなで行こか。でも折寺なんて、言い方悪いけど、なんもないで?どこか遊びに行くとかもないし...」

 

「お茶子、どこか行きたいところあるん?......って言っても分からんか。あたしも全く静岡は分からんしな...。」

 

「お散歩!あと三嶋大社!」

 

「渋っ!?父ちゃん達が思ってた以上に渋いところあげてきおったなあ...。散歩はお茶子が好きだから、よく分かるけど...なんでなん?」

 

「おもち。」

 

「おもちぃ.......?って福太郎か!?この子の餅への執念舐めとったぁ。御朱印とか集めても面白そうやね。古風やけどお茶子は好きそうだし、散歩とかで母ちゃんとお神社さま行こか。お、父ちゃん、パソコンで調べとったら、一泊4000円くらいでみんな泊まれる民泊あるよ。」

 

「おー、ええなそれ。食事も自分で材料買ってきて作るって感じか。悪くないんやないか?」

 

「んじゃここ予約しておくわ。そしたらお散歩して、食材買ったりして、道の駅とかお茶子と行っとるな。ほんで最終日に三嶋さんお参りして帰ろか!決まり!」

 

会えるかわかんないけど、緑谷出久くん達に会えたらいいなあ。

 

 

 

 

「お茶子!ついたで。高速降りたら折寺や。」

 

ここが緑谷出久くん達が過ごした街かあ...原作で彼らが育った地に降り立つ...ってこれ聖地巡礼じゃないかなあ!?

すごい!!そう考えたらテンション上がってきた!!

 

「母ちゃん、母ちゃん!ボク、多古場の海浜公園とか雄英高校見たい!!!」

 

「お茶子もよお調べとるなあ。ええで。そんなら父ちゃん、あたしら先に民泊に降ろしてくれん?仕事そのまま行けるやろ?」

 

「雄英かあ、ヒーロー科の偏差値が79やったか?すごいところやなあ。おっと、ここで降ろすから2人で荷解きしてお散歩してきい。」

 

「んー!母ちゃん!早く!早く!」

 

少しでも早く長く緑谷出久くん捜索(お散歩)に行きたいボクは母ちゃんを急かした。

とは言え、初日は荷解きと近くのスーパーでの買い物が精一杯で結局彼らと出会うことはなかった。

 

そして、運命の二日目。

 

────────────────────

「なあ。お茶子。今日はどこ行きたいん?」

 

「うーん、多古場海浜公園は行ってみたいなあ」

 

「そしたらそこメインにして回ってみよか。最寄りの駅まで行くから、電車の中では母ちゃんの手をちゃんと握っとくんよ。」

 

思えば、生まれ変わってから電車に乗るのは初めてかもしれない。

うちは車での運転で移動することがほとんどだった。

電車の窓から見える、静岡の海の景色もまた今世で初めて見る海の景色だった。

いくら精神が大人とはいえ、身体に引っ張られたのか、少し幼児のような行動をとっている自分がふとむず痒く思えるような気がしながら、ボクは静かに海を眺めていた。

 

なんて感慨に耽りながら、多古場海浜公園へ着き、ボクは浜辺を母ちゃんと手を繋ぎながら歩いていた。

浜辺を見ると、子供が親を振り回すようにはしゃいでいる。

 

「あはは、あの子砂まみれになって。お母さんも洗濯するのが大変そうやねぇ。お茶子は大人しい子で普段はしゃぎ回るってこともほとんどないし、ちっちゃいのに色々お手伝いしてくれて助かるわぁ」

 

母ちゃんが砂浜の子供達を眺めながらふと言った。

 

────大人しい子

ボクはその言葉を聞いて少し胸がズキリとした。確かにボクは生まれ変わってこの世界の麗日お茶子ちゃんに憑依したと言える。だったら本来の彼女の魂と言えるものはどこに行ったのだろうか。

ボクの中に眠っている...?それともボクの魂が割り込んだのか。

原作のお茶子ちゃんみたいに頑張ろう、もっと良い過程を経ようと考えることは罪悪感故の傲慢さなのだろうか。

 

「お茶子...?どしたん?顔暗いで....?体調悪いとか疲れたとかあればすぐ言うんよ?」

 

「んーん、大丈夫よ。ちょっと考え事してただけやn「あー!あぶなーい!!!」んげぇっ!?」

 

後頭部に何か柔らかいものが当たった。いや、飛んできた!?

 

「ご、ごめんなさい!怪我とかないですか!?ほら、かっちゃんも謝んないと...!」

 

「デクが取れねーのが悪いんだぞ!オレは悪くねえし!」

 

「かっちゃん!!」

 

デク...?かっちゃん....!?

 

「会えたあああああああああああああ!!?」

 

「うわあっ!?あ、会えた!?どう言うこと!?」

 

「なんだこいつ、いきなり叫んでうるせーやつだな。」

 

あ、やばい。つい口走っちゃった。お、落ち着かないと...!

「ごめん大丈夫気にしないで!さっきのボール当たったのも大丈夫だから気にしないで!?

ウッウン、それより2人のお名前教えて欲しいなあ。」

 

「僕はみどりやいずく、でこっちがかっちゃん」

 

「ばくごーかつきだ!あぁん!?

知らんやつの前でかっちゃん呼ぶなや!」

 

「あはは...ごめんごめんかっちゃん。それで君は...?」

ちなみに爆豪くんはこの時舌打ちしてた。

わあああホンモノぉ!いや当然本物っていうかこの世界に生きてるんだからホンモノも何も当たり前というか。でもボクはやっぱり原作を読んでたわけだし...

 

「なんだこいつ。ブツブツ言ってデクみてえ。キメエぞ!」

 

「かっちゃん!初対面の人にそれはまずいよぉ。」

 

「あぁん!?」

 

「なはは...ごめんごめん。気にせんといて。ボクは麗日お茶子。三重から来たんよ」

 

「みえってどこだ?聞いたことねえ!それに女の癖にボクって変なやつだな!」

 

「かっちゃん、ほんとよくないよ....」

 

「大丈夫大丈夫!よく言われるしね。それよりもデク...君と爆豪君だよね?ボクも一緒に遊びたいんだけど良いかな?」

 

「「いいぞ!」よ!」

 

「ありがとう!よろしくね、2人とも」

 

「それにしてもデクは初対面のやつからもデクって呼ばれてるな!やっぱむこせーのでくのぼうって分かるんだ!」

 

「や、やめてよぉ...」

ああ、デク君はこうやって10年間からかわれ続けてきたのか。本当は彼の成長にはよくないこと...なんだろうけど、ボクは気づいたらデク君に向かって口走っていた。

 

「なんで!?良いじゃんデクくん!なんか「がんばれ!!」って感じで、好きだボク。響きが好きだよ。」

 

「うららかさん...」

 

「いこうふたりとも!母ちゃん!ちょっと遊んでくるー!」

 

気をつけてね、と言う母ちゃんの声を背中に、ボクは2人の手を取って砂浜へ駆け出した。

 

────────────────────

ボールを使って遊んだり、波打ち際で水を蹴ったり、追いかけっこをしたり。ずっと遊び回ってたボクらを、気づけば雀色時のお日様が見守っていた。

 

「おーい出久ー!帰るよー!勝己くんも光己さん待ってるよー」

 

ボクらはデク君のお母さんの呼ぶ声で夕方に気がついた。

 

「あ、もう夕方か...楽しかったなあ...」

 

「ねえねえ!デクくん爆豪君!2人ともまだこのあとの日とかって空いてる!?ボクあと5日間折寺にいるんだ!もっと遊ぼうよ!!」

ボクは2人にもわかりやすいように手をパーにして見せながら言った。

 

「オレは明後日からかぞくりょこーに行くからあしたのおひるまでは遊べるぞ!デクは?」

 

「僕はぜんぶあいてるよ」

 

「そしたら明日はみんなで遊んで、残りはデク君と遊びたい!母ちゃん!!」

 

「ちょ、ちょっと...!緑谷さんにも迷惑やねん。流石にそれはやめときよ」

 

「あはは、うちは大丈夫ですよ。お茶子ちゃんが遊びたいならぜひ。」

そっか、この頃のデクくんのお母さん、まだ細くてスタイルがいいんだね。

この後出久くんがオールマイト、ヒーローに憧れながらも無個性ということに心を痛め続けるのだろう。

 

「じゃあまた明日!デクくん、爆豪くん!」

 

未来を知っているだけで、ボクにできることはない。そう考えながら母ちゃんに手を引かれて歩きながら、胸にうずきをまた感じた。

 

────────────────────

「父ちゃん、お茶子にお友達ができたみたいなんよ。いつもちょっと大人しくて、なんていうん?一歩引いてるみたいなあの子が本当に子供みたいに楽しそうにしとったわ。」

 

「そっかあ。なんか安心したわ。お茶子の子供らしい姿なんて数えるほどしかないもんな。あの子も頭のいい子や。多分あの歳でも、父ちゃんたちの仕事が大変だって理解しとる。なんとかしてやりたいんやけど...」

 

「まあまあ、それよりあの子の喜ぶ姿を見れただけ良しとしよ。あの子が行きたいって言った時はどうなることかと思ったんやけど、今日一日だけでも大正解やったと思うで、あたしは。」

 

「せやな。向こうの緑谷さんちもご贔屓にしてくれとるし...お茶子には全力で楽しんでもらおな。」

 

「ふふふ、お茶子嬉しそうに寝とるわ」

 

────────────────────

そして翌日、爆豪くんと遊んだ後はデクくんとお買い物に行ったり、ヒーローの動画を見たりしてのんびり過ごした。

同じように残りの2日間も過ごし、6日目。

ボクたちは国立雄英高校に足を運んでいた。

と言っても、学校は普通に授業をしているので入れないのだけれども。

それでも、外から見る雄英の姿はボクたちに夢を見せるには十分だった。

 

「ねえねえ、お茶子ちゃん。僕“無個性”なんだけど、やっぱりヒーローになりたいんだ。」

そう言ったデクくんの横顔を見ると泣きそうに、それでも泣いてはいけないと一生懸命に踏ん張る5歳とは思えない姿だった。

 

ああ、そうだよ。ボクは物語を見てる側じゃない。ここは架空じゃないんだ。原作がどうとか考えるのをやめた。

だから。

 

──────デクくんがコミックのヒーローになりたいのなら、ボク、君を、一人で架空から置いていかない。

 

「ねえ、デクくん」

ボクが自分で思うより震えた声が出た。

 

「デクくんはなんでヒーローになりたいの?」

デクくんがこっちを見る。

 

「別に人を助けたいなら警察官でいい。個性がないのにオールマイトみたいなパワーは出せないよ。」

母ちゃんが焦ったように声を上げる。

 

 

 

 

それでも。

 

「でもね、デクくん。1番前で、みんなを救うために立ち上がるのは、笑顔を守るために戦うのはヒーローだけなんよ。」

デクくんが戸惑うようにこちらを見る

 

「だって!憧れちゃったものはしょうがないやん!だからさ!!デクくんがただオールマイトになりたいっていうのじゃないのなら。なろうよ!!!ヒーローに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君はヒーローになれる。がんばろう!?」

デク君は大きな瞳から滝のように涙を流して

「う“ん”!!!な“る”よ”、ほ“く”!!ひ“ー”ろ“ー”に“!!」

ボク/私たちは泣きながら抱き合った。

それはボクにとっても、デク君にとっても救いのようで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うんうん!そうさ!君もなりたいものに、なんだってなれるさ!」

 

「「おおおわああああああああ!?」」

 

気がつくとボクたちの目の前に二足歩行のネズミが立っていた。

 

────────────────────

「君たちのお話は聞かせてもらったのさ!」

 

「ね、ネズミ...?立ってるし喋ってる...?」

 

「デクくん、デクくん。この人、人?雄英の校長先生やね」

 

「雄英のぉおおおおおお!?」

あ、尻餅ついた。カァイイねぇ、デクくん。

 

「盗み聞きするつもりはなかったんだけどね、君は無個性なんだってね。でも日々サポートアイテムは進化してる。それにヒーローだからと言ってみんながみんな増強系の個性じゃない。それに個性はどう人々を『守る』かの道具でしかないんだよ。

だから君は選択肢を増やすことから始めるといいのさ!」

あ、ボクと同じこと考えてる。

 

「選択肢...?」

 

「そうだよ!デクくん!君はただヒーローを夢見て眺めるだけでいいん?相手がどんな個性だったら自分はどう立ち回ろうって研究したり、そのために強い体を作ったり。できることはいっぱいと思うんよ!」

 

「うんうん!その通りなのさ!だからやれることをやれるだけやってみる。そしてさっきの彼女が言ってたようなヒーローを目指す心を忘れなければ、きっと夢は叶う。君たちがどんな未来を描くのであれ、ボク達雄英は君たち2人を待っているよ。」

 

────────────────────

 

予想外な根津校長との邂逅を終え。先生は学校へ戻り、夕食を食べ終えた後、ボクとデクくんの別れの時が来た。

 

「ねえ、デクくん。ボク、絶対雄英に行くよ。」

 

「ボクは...いやボクだって雄英に行く!お茶子ちゃんにかっこいいって思ってもらえる、最高のヒーローに!」

 

「10年後!一緒に会おうね!絶対。約束やからね。」

 

「うん、約束だよ。お茶子ちゃん、ありがとう。僕にとっての最高のヒーローはお茶子ちゃんだから。」

初めて見たデクくんの心の底からの笑顔。

 

 

ボクには眩しく。そうとてもまぶしくみえたんだ。

 

 

 

偶然に偶然を重ねた、この静岡旅行。ボクの人生で1番最初の最高の思い出。今まで悲しくて泣くなんてなかったのに。どうしてか、ボクの目は水中にいるような、視界だった。

ボクがボクらしく、デクくんがデクくんらしくスタートを切った、筋書きに逆らった一歩目だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

「福太郎餅うめええええええええ!!」

 

「あらまあ、お茶子さっきまでボロ泣きやったのに。この子は全く...もう15個目やで......。」

母ちゃんの苦笑いもなんか記憶に残った。




福太郎餅美味しいですよね。筆者も一度だけ、三嶋大社さんで食べました。
リーゼントのような(烏帽子)特徴的な形のこし餡でくるんだ草餅です。
食べたことのない人は是非調べてみてください。

ちなみに福太郎とはお田打の翁面のはずです。能とかでよくみるお面に似ていますね。

ちょっとでもいいなと思っていただけると幸いです。評価も励みになりますのでよろしくお願いします。
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