ボクのヒーローアカデミア   作:たいん

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今回はお母さん目線。


No.2.5 母ちゃん

お茶子はほとんど泣かない子やった。

んや、ほとんど泣かない、赤ちゃんやった。

ある程度大きくなってくると大人しい、いわば感情をあまり出さない子と言うのはいるのはわかる。

でもあの子が泣くのはお腹が空いた時と、トイレに行きたい時だけやった。

夜泣きもなかった。親としては本当にありがたい限りではあったんやけど。

でも極めつけは。あの子、多分私たちの言葉を分かってたんやと思う。

お腹すいたんか、と声をかけてお腹が空いていれば泣き止む。うんちしたいんか、と声をかけると泣き止む。

少し大きくなっても駄々をこねると言うことも、泣き喚くと言うこともない。

一度だけ、ヒーローがボロボロになっとる現場に遭遇した時に、子供相応にはしゃいでいたのを見たくらいやった。

そんな感じやから保育園に行っても、周りと比べてはるかに大人びたようやった。保母さんに聞いた話でも、本を読んでるか寝とるらしい。それに本も絵本とかやなくて、普通の本。ヒーローごっこにたまに参加するくらいで、大人しいけど浮いてる子。いや文字通り個性でよく浮いてるんやけども。そんで吐いてるらしい。

みんなでかくれんぼしている最中に、屋根の上でゲロして寝とった、と言うんは流石にびっくりしたんやけど。

そんな感じやから、友達らしい友達もおらんかった。子供達はあたし達が感じる以上にお茶子を異質に感じ取ったんやと思う。

そう、得体のしれなさと言うのは、恐怖に感じる。それは大人だって同じや。でもあたし達にとっては大事な一人娘、それでも悩ましいものなんやけど。

 

 

────────だから

あの子が父ちゃんが仕事で静岡に行く言うた時に、自分も連れてけ言うた時は驚いた。

そして、緑谷出久くんや爆豪勝己くんと子供相応に楽しんでいる時は安心すら覚えた。

ふとした時に子供っぽくないところを見えるんやけど、それでもあの子が見せるには十分すぎるものやった。

だからか父ちゃんにもついつい喋ってもうた。

 

 

 

 

「父ちゃん、お茶子にお友達ができたみたいなんよ。いつもちょっと大人しくて、なんていうん?一歩引いてるみたいなあの子が本当に子供みたいに楽しそうにしとったわ。」

 

「そっかあ。なんか安心したわ。お茶子の子供らしい姿なんて数えるほどしかないもんな。あの子も頭のいい子や。多分あの歳でも、父ちゃんたちの仕事が大変だって理解しとる。なんとかしてやりたいんやけど...」

 

「まあまあ、それよりあの子の喜ぶ姿を見れただけ良しとしよ。あの子が行きたいって言った時はどうなることかと思ったんやけど、今日一日だけでも大正解やったと思うで、あたしは。」

 

「せやな。向こうの緑谷さんちもご贔屓にしてくれとるし...お茶子には全力で楽しんでもらおな。」

 

「ふふふ、お茶子嬉しそうに寝とるわ」

 

『普通』の子供のように遊んで、笑って、はしゃいで。残りの旅程もそんな風に過ごしていた。

そして6日目。雄英高校をどうしても見たいと言うお茶子の希望ということで、緑谷出久くんと引子さんの4人で校門まで見に来た。

 

 

 

 

それまで、あたしが緑谷出久くんに抱いていた印象は『優しい子』。

引子さんから聞くところによれば、緑谷出久くんには『個性』がないらしい。それでも5歳ながらに気をつかえて、声を荒げたりもしない良い子やった。

そこで彼の『ヒーローになりたい』と言う願望を聞いた。あたしは思わず、難しいんやないか、無理やないかって思ってしまった。

ヒーローになりたい、と言った時の彼の目を見て、あたしはこの子は『強い子』だ、って思ってしまった。

この子は5歳で現実を理解しとる。でも絶対に諦めない強い意志を感じた。

だからお茶子が個性がなければって言ってしもうた時は心底焦った。

でも、お茶子は違った。無理じゃない、ヒーローになれる。彼に諦めなければ夢は叶うと言った。

多分緑谷出久くんはみんなから無理だ、と言われても諦めずに目指し続けるんやと思う。

でも、「ヒーローになれる」って誰かに断言してもらうことは彼にとって何より欲しかった言葉なんやと思う。

だって『無個性』のヒーローなんておらん。きっと彼に待っているのは茨の道やと思う。それでもお茶子の言った「君はヒーローになれる」、この言葉をロードスターにして、彼は走り続けるんやろうなあとあたしは直感で感じた。

そして、緑谷出久くんを抱きしめるお茶子を見て、どこかお茶子自身が救われたような顔をしていたのが鮮明に記憶に残った。

 

ああ、多分お茶子は。『普通』の子やなかったんやな。それがなんなのかは母ちゃんにはわからんけど、この子は生まれた時から何か違うものが見えとったんやろうな。

それでもあたしの、あたしと父ちゃんの娘なんや。『普通』の娘であることには変わりない。

少しでもこの子の背中を押してあげるのがあたし達親の使命なんやな。

多分この子は1人でも羽ばたいて行ける子。でも、この子がずっと笑顔でいれるようにあたし達は。

 

その後、ずっと聞いていたと言う雄英高校の校長先生に挨拶をし、夕食をみんなで食べて、緑谷くんと引子さんとは別れた。

手紙でやり取りをしよう、雄英高校で会おう。そう約束して。

私は泣きじゃくるお茶子を初めて見た。

 

 

 

 

やっぱりこの子は『普通』の子。『普通』の優しい子。

どこか『普通』じゃなくて、『普通』のあたし達の子。だからあなただけは。『普通』に囚われなんといてね、お茶子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ結局福太郎餅バカ食いして腹壊したんやけど。

 

そこからやろか。どこかあの子は吹っ切れたように見えた。

今まで一歩引いていたように見えた。

何かが、あの緑谷出久君との出会いが何かを変えたんやろうか。たまにニマニマしながら手紙を書くようにもなった。

 

「お茶子に男が....!?ダメや!!!まだ早い!!!父ちゃんは絶対許さへんで!!!!」

 

....うっさいわ父ちゃん。まだ早いんはあんたや。

まあ、将来緑谷出久くんに娘さんをください、って言われたらはいどーぞやろうなあ。なんも心配は...いやどっちも、なんと言うか根っこがヒーローすぎるんよなあ。まあ、無事でいてくれるのならなんでも、って感じやな。

 




関西方面に住んだことないので、いまいち関西弁がわからないですね
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