それではどうぞ!!
「おはよ~、お兄さん」
目が覚めたら
「おぉ、おはよう空、今は……夕方か?」
「も~、お空って呼んでっていったじゃん~!!うん、夕方だよ~、結構長く寝てたね?」
そう、本人にはお空と呼べと言われていたのだが、俺はことごとく無視を決め込んでいる訳だ。
特に理由は無い、俺が単に呼びづらいってだけ。
「それにしても俺はどうしてこんなに寝たんだ? いつ寝たのかすらいまいち覚えてない…」
「お兄さんは昨日みんなでお話してる時に突然寝ちゃったんだよ~」
「そうだったのか…誰がここまで運んでくれたんだ? 初めて見る場所だが……」
お約束を考えれば起きたときに見慣れない天井がどうのこうのと繋がるだろうが、目が覚めたときに俺の目の前には空の笑顔しかなかったのでここがどこだかの判断が遅れてしまった。
「今まで使ってなかった空き部屋だよ~、こいし様が掃除してたからご覧の通り綺麗だけどね~。ちなみに私がお兄さんを運んじゃいました!!えらい?えらい?」
可愛い顔して力持ちなんだな…何ていうか意外だ。
「ありがとうな、えらいえらい。」
頭を撫でてやると空は目を細めて嬉しそうに微笑んだ、うん、いい笑顔だ。
撫でつつも俺の知らない人物の名を聞き逃しはしなかった。
「そのこいしって言うのは?この館の住人なのか?」
「住人どころかさとり様の妹様だよ~!お話してなかったっけ~?」
あのちびっこ妖怪、妹いたのか…というかあいついくつなのだろうか、妖怪ってのが周りに溢れ始めてるからかどうにも人間の妖怪の差がわからなくなりつつある。
「話は出てなかったな、それにしても腹が減ったな……何か食べるものあるか?」
今は夕方、つまり寝ていたとは言っても十五時間ほど食事をとっていないのだ、腹が減って胃が痛い。
「もう夕飯だよ~、食堂一緒に行こっか~」
そういうので空に誘われつつ食堂に向かって歩いているといい匂いが漂って来た。
これだけ大きな館だ、メイドとかいるのだろうかと思いながらリビングのドアを開け放つとハーブと肉の焼ける匂いがして空腹の胃を直に刺激してくる。
「あら、起きたのですね、おはようございます。といってももう大分遅い時間ですが。」
声がした方に目を向けてみるとエプロン姿のさとりが厨房に立って首だけをこちらに向けていた。
極々自然に心の底からいいなと思ってしまったが、いかんいかんと頭の中で首を振りなんとか平常心を保つ。
俺はそっちの気はないのだ、本当だよ?
「貴方は本当に面白い人ですね。」
くすくすっと笑うさとり。そうだった、心の機微は余すところなく伝わってしまうんだった……
自分で言うのもなんだが高校生の中でも俺は煩悩の多い方の部類だと思う、しかしそれを表に出してしまうのはどうにもプライドが許さないのでどうにか誠実であろうと頑張っているのだが、さとりにだけはその頑張りがさとられてしまう……本当に恥ずかしいことである……。
「面白いところはそこだけじゃないですけどね、一度聞いておきたいと思ったんですけど貴方はどうして私たちを怖がったりないのですか?貴方の常識をちょっと覗かせていただきましたが貴方の世界では弾幕なんてものは存在しないのでしょう? 」
それを言われて納得してしまう俺は自分でも自分がわかっていなかったのだと知る。
改めて言われると難しいな……どうして…か……。
「上手くは言えないけどさ、妖怪だ人間だっていうけど見た目に大した差がないのは事実だし、弾幕出せるのはかっこいいし……ってまぁそれくらいだけど俺からすればみんな可愛い一人の女の子だからかな。」
我ながらまとめる力ないなぁ…自省していると予想外の返答が返ってきた。
「知ってます。」
笑顔でさらっと言うもんだから目を丸くする以上の行動が出来ずに固まってしまっていたが、一泊遅れて叫んだ
「はああぁぁぁ?!?!」
「心を読めるんですからある程度普通に会話していてもその人の余分なところまでわかりますよそりゃ。」
「じゃあ…じゃあ何で言わせたんだよ!?」
「どうしても貴方の口から聞かせて欲しくて。」
さとりの考えることはわからん……心で読んだほうが信頼度高いだろうに…
「お待たせしました、出来ましたよ。」
出てきた料理はとても美味そうだった。香りの良さといい肉の美味さといい申し分無かった。
でもさとりに心を読ませまいと必死に心をシャットダウンしていた、夕飯を食べている間にさとりに拗ねないでくださいよ…とか機嫌直してくださいよ…とか言われたが俺は断固としてつーんとしていた。
ちなみに空だけは嬉しそうに肉を口いっぱいに頬張ってこちらのことは意にも介さず食事に夢中だった。
食事が終わり、しばらくすると風呂を勧められたので彼女らよりも先にいただいている今現在だがこの風呂場…
「広すぎだろう……」
声を出せば広く反響し、静かにすれば壁際にあるお湯の流れてくる小さな滝の音が絶えず聞こえ、天井から落ちてくる水滴による水音もよく響く。
お湯もため息が出るほどに丁度いい温度で思わず寝落ちしてしまいそうだ……。
「長風呂するわけにもいかないしな、体洗ってさくっと上がりますか。」
そう思って立ち上がった矢先、脱衣場の人影に気づいた。あれ…この屋敷って俺意外女じゃ…
扉がガラッと開け放たれるのと俺が腰に持ち込んでいたタオルを巻き終わるのは同タイミングだった。
「あっぶねぇ……」
「ちっ……遅かったか……」
ほっと安堵している場合ではない、脅威は
「何しに来たさとり………」
扉を開け放った張本人に半眼でこぼす。
「裸の付き合いをしに来ました。」
「こっちにもその文句あるのか…?」
「貴方の心から抜粋して取り入れてみました。ですが…そうですか…間違いでしたか…」
一応言っておく、裸の付き合いは別に物理的な裸の付き合いではなく、相手に自分を精神的に包み隠さず見せるという意味での裸だ、断じて脱げとか言われているわけではない。
「でも、まぁいいです。」
「割り切るの早いな!?」
多少のミスで揺らぐさとりさんではございませんでしたとさ……
「正気かよ……それにしても…さ、お前タオルとか体に巻かなくてもいいわけ?」
俺は扉が開け放たれて以降後ろを向き続けていた理由を問いただす。
「ギリギリのラインではあるが俺の精神衛生上巻いてくれると助かる……」
いくら風呂であろうと流石に湯気も光も仕事をしてくれなかったが、サードアイがとてもいい仕事ぶりで、まずいところは触手で完璧な防御を施していた。欲望に負けチラっと薄目で振り返ると、サードアイは清々しい程のドヤ顔をしていた、球体に眼のみという表情のないはずのサードアイなのだが、器用にドヤ顔をしていた。
大胆にも俺の入っている風呂場に突撃してきたさとりだったのだが、さとりが入ってきた後も特に大事な話をしたわけでもなければ俺にちょっかいを出してきたりもせずに取り留めのない話をしたりとひたすらに雑談をして過ごすという普通の風呂だった。何もなかったのが残念と言えば嘘になるがさとりが単に無表情ではないのだと知れたので良しとする。
この日の夜、後もうちょっとで寝られそうになっていた時に空と一緒にさとりが布団に潜り込んで来たのだがそれはまた別のお話。
やや短めに出来上がってしまったことを少し悔やんでおります……もっとドキドキするような展開を作りたかったなぁ…とか思いつつ。
次回はどうやら波乱の予感がしますよ、さとり様の妹君の登場です!!
それではまた次回~( `・ω・)ノシ