今回は一話丸ごと戦闘回でございますー、戦闘描写の練習に手間取りまして……何とか形になりましたのでどうぞ最後までお付き合いくださいー。
それでは本編どうぞー
―――――――――――道中
「しかし流石は妖怪の山なんて呼ばれるだけあるな……」
この山がそう呼ばれている理由を今まさに身を持って思い知らされていた。
目の前にいるのは目測5m近い蛇、神話や
チロチロと見え隠れする赤よりも紅い舌、俺の身長の半分ほどはありそうな琥珀色をした瞳、光を反射して自ら発光しているかと見紛う様な
出会って数秒、先に動いたのは大蛇の方だった。
その巨躯がそんな速度で動くのかと思うほどの俊敏な動きで正面にいる俺に噛み付くべく顔を横に傾け突っ込んでくる。
「人間相手じゃないからやりづらいことこの上ない……っ!」
跳躍して大蛇の頭部に降り立ち、速度を殺すことなくそのまま白い躰を駆け抜ける。
「……はっ!?」
目の前に迫るはしなり、唸りをあげた尾。
再度大蛇の姿を見たのは吹き飛ばされ木の幹に激突した後だった。
「くっ……化物ってこう言う奴のことを言うんだな……」
あくまでも『狼化』している状態なのにも関わらず視認が遅れ、尚且つ吹き飛ばされた。
文を追いかけたいのに簡単にはいかないようだ……
大蛇はこちらを向き直すと身体の半分以上を浮かせ、暴れるようにして身体を振り回した。
「何だ……? 」
するとどうだろうか、大蛇は口から滞空する弾幕を吐き出し始めた。
白い体には似つかない白光紫色をした弾幕はバスケットボールほどあり、それらは全てこちらに向かってきた。
「滅茶苦茶だな……だが弾幕なら……」
そう思い背中の刀に手をかけ…たのだが瞬間的に刀を抜くのを辞めて徒手空拳に切り替える。
爪が長すぎて瞬間的に柄が握れなかったのだ。
「はっ!」
正拳突き、打ち払い、肘、受け、防御、上半身の全てを使って弾幕を弾き切る。
全弾防ぎ切った後は思わず安堵し、溜息が漏れる。
幾分か悔しそうな貌をしている大蛇を見据え、この程度では傷一つつけられないと知らせる。
―――――――――第二ラウンドと行こうじゃないか
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「キツいな…はぁっ……はぁっ……」
大蛇が弾けとんだ後、森は元の静けさを取り戻した。
アドレナリンの大量分泌が原因なのかまだ少し時間が遅く感じる。
我ながら徐々に人間を辞めつつあると自覚せざるを得ない。
弾幕を生産できるのならそれ専用の器官があると仮定し、『狼化』で
そんな事を思いつきで実践してしまったわけだから。
度々人間なんて辞められたら面白いだなんて思っていたが実際に辞めそうになると少しばかり恐怖感が出る……
「って言ってる場合じゃないか。」
筋肉痛を訴える身体に鞭を打ってもう一度『狼化』する。
幸いにも周りに大きな気配は無いようでこれ以上時間を奪われる心配はないだろう。
俺は駆け出した。
数分後、俺は飛行中の文を発見することになったのだが少し様子がおかしい。
ある程度の速度はあるのだが進路が定まっていない、まるでなにかから逃げるようにして飛んでいるようだ。
理由はすぐに知れた、複数の天狗と妖怪に包囲網を展開され、集中砲火を受け、動くに動けない状態になっていた。
どうりで戦闘を挟んだのに距離が大して変わっていなかったのか。
「何してんだよ全く……っ!」
俺はとことん甘いのだろう、助けて意味もない天狗をただ女の子だからという理由だけで助けようとしているのだから。
暫く足で追いかけていると、文は今まで避けられていた弾の十字砲火を受け鮮やかな閃光に包まれた。
十字砲火の直撃で飛ぶ力を失ったのか物理法則に則って落ちていく。
「間に合うっ!!」
駆けるため動かしていた足を更に加速させ、落下位置が最高点になるようにして跳躍して空中で文を抱き止める。
反転して着地、後ろに滑り加速した分を含めた速度を全て殺しきった。
「おい!なんでこんなことになってる!? 」
俺は腕の中の文に向かって必死に声を飛ばす。すると文は参った様な表情を浮かべ、話しだした。
「あや? 助けが来てくれるなんて珍しいこともあるもんですね……ってむしろこの状況は捕まっていると解釈したほうがいいですかね? 」
「質問に答えろ……返答次第で助けてやる……」
そう言うと文は力なく少し驚いた顔をした。
「あは……実は今まで恨みを買っていた連中に奇襲を掛けられまして……少し油断したせいで大分痛めつけられました……」
「そうか……自業自得だな。」
「あはは……ですよね……」
「助けてやる。」
「へっ……? 」
「今回限りだ」
俺はそれ以上文の言葉に耳を傾ける事なく限界間近の烏天狗から距離を取り、空から降りてくる一団と対峙した。
一団の構成は狼の式2体と鷹の式1体の計3体、天狗2人の計四人。
そのうちの黒服の天狗が話し始める。
「何が理由で俺たちの前に立つ…? その天狗を助ける利は無いはずだが……」
確かにこの天狗の言う通りだ、射命丸 文を助けることにメリットなどどこにもない。
むしろこいつらを放っておけばご丁寧にも俺の後ろに倒れて今にも気絶しそうなほどに弱っている烏天狗を倒してくれるという。
願ったり叶ったりだ。
だけど助けたいって思っちまった。
「こうして立ちはだかってる時点で理由なんているのか? 」
わざと悪いように書いてる訳じゃないって知ってしまった。
白い服の天狗が語る。
「語る気はない…か……いいだろう貴様を片付けた上でゆっくりと天狗を片付ける。」
『守れるなら守りたいものを守れ』……じっちゃんがよく言ってたな…やっとわかった気がするよ。
「
「楯突いたことを後悔させてみせよう。」
「用意はいいか白狼の少年」
生まれて初めての守るための戦いが始まった。
「戻っていいぞ、水天。」
開戦と同時に黒天狗は自分の式を片方下げてしまう。
「不思議そうな表情をしておるな、実を言えば私は二体操るより一体だけ操る方が強いのだ。」
求めてもいない説明をされたがそれは間違いなく勝利宣言で、さり気ない最後の警告だった。
「来いよ、白黒天狗。」
「「行け銀、黒!!」」
二人の号令と共に飛び出してきたのは天狗の左右に待機していた二匹の狼。
動きは洗練されており、飛び跳ねながら交差して位置を掴ませないように動き回る。
視界の中で三回交差した後着地と同時に滑走、俺の背後の死角で停止して食いちぎらんと飛びかかってくる。
だろ?
「馬鹿な……」
「なんと……」
驚くのも無理ないだろう、俺は今一切後ろを振り向かず二匹の狼を刃のない刀で一太刀の下に切り捨てたのだから。
狼が居たはずの場所には空へと登る光塵だけが残っていた。
「悪いね、後ろって死角じゃないんだわ」
余裕しゃくしゃくといった様子で柄を構える。
「たかが白狼と油断したわ……私らも行こうか白。」
黒天狗は目の前の敵を再度認識し、白天狗に話しかける。
「式がやられて出ぬ訳には行くまいて、行こうぞ黒。」
言うが早いか二人は正面に跳びだして数mあった距離を一瞬で詰めてくる。
天狗両名はそれぞれ懐から両刃の短刀を抜き、刺突を繰り出してきた。
白天狗の短刀だけを弾き、宙に浮いている白天狗の速度を利用して背中だけを使って背負い投げる。
姿勢を崩した白天狗に浴びせようと柄を振るうが目の前で白天狗が消える。
その初動の後両足で着地したのは黒天狗だけで、白天狗は受身は取っていたものの背中からの着地だった。
「今のは危なかった……黒に投げて貰わなければ斬られていた…」
なるほど、目の前から消えたのは黒天狗が白天狗を引き寄せたからか……
先の式神程この二人は甘くないようだ。
「白、弐式だ行くぞ。」
弐式……フォーメーションもしくは作戦の名称だろうか、言葉を向けられた白天狗は起き上がり再度臨戦態勢を整えた。
先ほどと同じように跳びながら前進してきたが、先ほどとは異なっていた。
縦横無尽な軌道、とてもじゃないが二人の位置を終始視認しながらの把握は不可能で、『狼化』の恩恵の一つの五感強化に頼る他なかった。
「なるほど……これが弐式……何式まであるか知らんが早いとこ何とかしないと競り負ける……」
一人が短刀による無駄の少ない斬撃を繰り出し、俺の動きを止めているうちにもう一人が背後に回り込み大振りの一撃を繰り出す。
細かい斬撃を避けようとしてももう一人が背後にいる、という存在感が『狼化』している俺の頭に警鐘を鳴らすため大きくは避けられない。
今のところ無傷で済んでいるがいつまで続くかはわからない。
「その不可視の刃は厄介だな…小太刀程度の大きさのようだが……攻防一体の武器を選ぶ辺り知識はあるようだ」
これだけ切り結んだだけで視えない武器を判断するのか……鋭い観察眼に舌を巻くが俺からすればその認識はむしろ嬉しい誤算というやつだった。
「そりゃどうも、『夜桜剣』ってのが銘だ。少しばかり余裕が無くなってきたんで本気で行くぜ…?」
連携の隙を突いて黒天狗に向かって突撃、そして俺は何の芸もなく縦に回転斬りを繰り出した。
黒天狗は不審に思いつつも剣で受けようと構える、が、俺の剣はすり抜ける。
「なっ!?」
回転斬りの慣性を損なわぬようにして踏み込みながらもう一度回転斬りを繰り出した。
鮮血が剣の軌跡を追うようにして宙を舞う。
様々な事を試して分かったことは『夜桜剣』は不可視の刀ではなく、強い固定概念によって刃の種類が変わる柄だという事。
今まで一貫して小太刀を使っていたが、今この瞬間、俺は刃先をアーミーナイフに変えた。
何をされたのかわからないと言うように眼を見開く黒天狗、でもそれだけじゃ終わらない。
小太刀、ツヴァイハンダー、ククリナイフ、大剣、忍者刀、エストック、ブロードソード、フランベルジュ―――――――――
アドレナリンの分泌により加速する世界の中、思いつく限りの剣を想像し、振るう。
流石に変幻自在だとは察したのか、黒天狗は完全な防御態勢をとる。が、貫通する衝撃だけはどうにもなりはしない。
最後に蹴りを叩き込み距離を開けた。
「ぐっ……!が……っ! 」
黒天狗は腕に蓄積された衝撃に悶え苦しみながらも何とか立ち上がっていた。
「黒!!」
俺の背後にいた白天狗は警戒したのか俺の上空を跳んで黒天狗の元へと向かった。
黒天狗に肩を貸しつつ俺に瞳を向けてくる。
「中々出来る……白狼の少年よここは退こう、私だけで貴様は倒せないからな……」
「へぇ、逆上して襲いかかってくるとかしないんだな? 」
冷静な状況判断は出来るらしい、正直こちらとしても限界だ。
戦闘を含む二時間近い『狼化』に体が耐えかねて、全身の骨が軋みを上げている。
ジリジリと下がっていく二人の天狗に背を向け、木の幹に寄りかかり休みをとっていた烏天狗に足を向ける。
あと数歩で文に届きそうな距離になったとき、感覚が捉えたのは全力で以てこちらに突撃してくる二人の存在感だった。
「懲りない奴らだ……っ!もう少し脳がある奴らだと思ってたよ!!」
長刀に手をかけ振り向きざまに一閃。
感覚によればこれで終わるはずだった……。
自分の武器で敵を斬る感覚の代わりに襲ってきたのは背中から刺された二本の冷たい金属の感覚。
「はて…脳がないのははたしてどちらかな? 」
「翼を持っている我々が空中で加速出来ぬはずがないだろう」
二人の烏天狗は無謀の突撃と見せかけて憩夜が振り向くのを予め予測し、振り向くタイミングで加速。
相対的に増えた速度で『狼化』の感覚の上を行き憩夜の背後へと回り込んでいた。
「お約束通りなのは俺の方だったってか………」
肝臓と肺にそれぞれ刺さった短刀に眼を向け、口からごぽりと下顎が全て紅く染まる量の吐血をした。
身体の外に刃の向いた二つの金属は俺の身体に止めを刺すために左右に振り抜かれた。
まるでマリオネットの糸が斬れたように膝が折れる俺の身体、目を開いているはずなのに暗くなる視界………
【俺は守れなかったのか…?】
後方からあがった悲鳴は俺には届かなかった……
どうでしたでしょうかねー?
もっと勉強しなきゃなぁと感じた回でしたけども書いててとても楽しかったですねー
次回は日常話の予定ですのでよろしければまたお越し下さいー。
それではまたお会いしましょう~( 。`- ω -´。)ノシ